魔法少女が悪魔と戦うおとぎ話です。

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魔法少女の御伽噺

片桐楓(カタギリカエデ)という女の子は悪魔(デビル)との演舞(ワルツ)を踊りました。

 

人形のような金髪の長い髪。切れるような細いツリ目とゴシック・ロリータの漆黒のドレスを纏う彼女はあの夜鉄パイプ(エクスカリバー)で悪魔とダンスをしたのです。

 

満月(フルムーン)が空を覆い尽くすほど大きく空に浮かび、智子(トモコ)を傷つけた悪魔達の目を赤く光らせています。

 

髪の長い悪魔。細長い悪魔。ゴーレムのような巨体の悪魔。3体の悪魔はこちらを見ながら唸り声をあげています。

 

智子(トモコ)。敵(カタキ)は殺(ト)るよ。

 

「腐りきった煉獄(エデュケーションパーガトリー)に降り立ち 完全無欠(カンゼンムケツ)の華が咲く 悪魔の群れ(デビルズリジェクト)を殺(アヤ)めてくれよう 月に代わって天誅下す(アイアムグレートパニッシャー) かかってこい悪魔共(モクシロクヲココニ)」

 

3体の悪魔が一斉に私に襲いかかる(オープンユアマジックサーキット)

 

ピアスの乗った舌を出しながら、体をしなやかに横に振り、体で推進力を付けて鉄パイプ(エクスカリバー)を振る(フルスイング)。

 

完全腹部決定的命中(トータリーストマックビンゴ)。くの字に曲がった髪の長い悪魔が血を出して横たわった。

 

あなた達は智子を殺(ヤ)った。断罪者(パニッシャー)はお前らのやった事を無かったこと(イレースド)にした。

 

それは筋が通らない(ダズノットメイクセンス)でしょう?

 

裏にいる鎌を持った悪魔に、振り子のように(ライクアメトロノーム)パイプを後ろに下から上に振り上げる(スイングバイ)。

 

男体急所完全直撃(グレートナッツパーフェクト)。細長い悪魔が悶える中で、私は右からフィギュアスケーターのように回転蹴り(トリプルアクセル)。血が飛び散る。月にも届きそうだ(フライ・トゥ・ミー・ザ・ムーン)。

 

智子。大変だったよね。苦しかったよね。

 

私は泣いてた。智子を助けたかった。あんたが魔界に取り込まれている事は、他の煉獄(パーガトリー)に私はいたから気づかなかった。

 

私が悪魔を祓ってあげる。闇を祓ってあげる。

 

最後の大きな悪魔がこちらに飛びかかってくる。

 

ゴーレムのような巨体。私は袖の下に仕込んでいたナイフのボタンを押す。

 

軍用射撃型刃(スペツナズブレード)は完全に相手の首に命中していた(センターネックマキシマペネトレイト)

 

巨体に近づき刺さった刃を空に薙ぎ払う。月夜に照らされた鮮血が赤く輝いている(ブラッディファウンテンアルトラゴージャス)。薔薇の狂い咲きのように漆黒のドレスが赫に彩られる(ブラッドローズクレイジーフラワリング)。

 

悪魔祓い完了(エクソシストエクセレント)。完全試合(パーフェクトゲーム)だった。

 

「動くな!」後ろから声が聴こえた。

 

眩しい昼の様な光に照らされる(ハイヌーンブライトネス)

 

今度は悪魔ではない。地獄の裁判官の手下。獄卒だった。

 

「獄卒(ケイサツ)だ!地獄で悪魔殺しは契約違反だ!(この公園で何をしているんだ!)」槍を構えて獄卒は私に語りかける。

 

 

 

 

なぜこんな事をしたかって?

 

私ね。魔法少女になりたかったの。

 

小学校ではずっとひとりぼっちだった。私は言葉が上手く出せなくて、みんなから嫌われるようになったの。

 

「やーい。妖怪」と、この細目を気味悪がった。それで私は声を出すことも怖くなって、ただ下をうつむいて学校を過ごすしか無かった。

 

でも、そんな私に「おはよう!」って、クラスのみんなにも聴こえる声で話してくれたのが智子だった。

 

智子は私よりもかわいかった。三つ編みと眼鏡にタレ目。かわいさを体現した見た目とは対象的に心の奥には強い意志の力がある。そういう姿は私の憧れだった。

 

ある日智子が「私、もう楓ちゃんをハブるのやめる!」って、みんなの前で宣言した。あの時私の世界が変わったの。

 

それから私は自分を飾るようになった。髪も染めた。高いゴシックの服を着て、自分の美を飾る勇気を持てるようになった。

 

私も智子も日曜の朝からやってる「魔法少女ルナティックキューティー」の事が大好きだった。一緒にコスプレもやった。私がルナブラックで、智子がルナホワイト。ホワイトは魔法が主体なんだけど、ブラックは超武闘派なの。それがきっかけで格闘技にもハマった。アニメの感想を彼女と話すのが本当に楽しかった。

 

それからしばらく彼女とは疎遠になった。親友だからこそ自分の道を生きようと、最後にホワイトとブラックが別の人生を歩むエンディングを見て私達はそう決めたの。

 

けれど、別の高校にいた智子が昏睡状態で意識不明だとある日知らされた。

 

自殺未遂だったと聞かされた。受験への苦しみで、彼女は学校の屋上から飛び降りたと。

 

私は信じられなかった。彼女がそんな事をするとはどうしても思えなかった。

 

どうしても真実が知りたい私は、智子の家に行った。

 

そして智子の部屋で手紙を見つけた。

 

ルナティックキューティーのおもちゃがいっぱい入ったブリキ缶の中に、1つの手紙が入っていた。

 

「助けて。私死にたくない。でも、もうあいつらから逃げられない」

 

手紙の文字は滲んでいた。滲んでいる理由も私は理解した。

 

手紙に書いてあったヤツらの手段は巧妙だった。犯罪としての事件性が出ないように、的確に智子を追い詰めた。表ではいい子を装って、親しげな間柄だという空気を作り上げて、証拠が残らないように的確な知性で智子をいじめた。優等生と慕われる悪魔3人のしたたかさに、彼女は勝つことができなかった。

 

体を抑えられて水の入ったバケツに顔をゆっくりと押し込められる。限界になったら持ち上げる。息ができて安心するとまた沈められる。それをずっと。ずっと繰り返された。淡い希望と確かな絶望がただ繰り返されていく。傷跡は何も残らない。録音を防止するためにスマホは奪われる。先生から信用を得る立ち回りをしながら、智子をクラスから孤立させる。そういう知性で、智子を追い詰めていった。

 

そして智子は3人の悪魔によって屋上から突き落とされた。

 

学校はそれを事故として片付けた。進学への葛藤による自殺未遂という形で終わらせた。断罪者( パニッシャー)は悪魔の存在を全く信じなかった。

 

生徒を追い詰めるような凶悪な悪魔がいると信じない学校側。そして悪魔の3人。その両方に智子は殺されたのだ。

 

「ごめんね楓ちゃん。わたしわかんなくなっちゃった。どうすればいいのかわからないよ。重い重力が私から消えないの。すべてがまぼろしのようで ほんとうにごめんなさい」

 

最後の文字はグチャグチャになって、読めるかどうかもわからないほどの形に崩れていた。

 

智子。怖かったよね。つらかったよね。ごめんね、気付けなくて。どうすればいいのかわからなくなって、誰にも言えなかったんだね。私に言ってくれれば、人生を賭けてでも貴方を救ってあげたのに。けれどもう遅かった。

 

大丈夫。私が全てを終わらせてあげるからね。

 

そして私は全てを終わらせる事を決意した(パーフェクト・ダーク・デターミネーション) 。こうして悪魔抹殺計画(デビルキラーデッドデストラクションズ)が発動した。

 

 

 

 

私は鎖で繋がれ、赤く回転する照明の飾りが付いた馬車へと連れて行かれる。

 

智子、貴方は王子様だね。いや、目覚めないからそれともお姫様なのかな。

 

でも私にとっては王子様だわ。眠っていた私を起こしてくれた。おはようという名のキスでね。

 

智子。大好きだよ。闇は消えたよ。悪魔は完全排除したよ(デビルターミネートデブリーフィング)。

 

ガタガタと揺れる馬車の中で、私は口笛を吹く。いつも智子とカラオケで一緒に歌ったオープニング・テーマ「ルナティック伝説」のイントロの部分を。

 

私は魔法少女。血まみれで撲殺をする魔法少女(ブラッディー・ワルツ・マジシャンガール)

 

 

智子。この世界には魔法があるんだよ。ありふれるほどの魔法が。

 

だからいつか目を覚ましてね。私の美しい王子様(マイ・フェア・プリンス)

 

 

 

その日夜の空に浮かんでいた月は、誰にとってもいつもよりも大きかったそうです。

 

そして馬車は空へ向かって飛んでいき、月へと向かっていきました。

 

魔法少女は馬車の中でゆっくりと眠りに尽きながら、王子様のことを思って涙を流しました。

 

街の灯り(シティライト)と星の灯り(スタァライト)が馬車を包み込みながら馬車はいつしか星と同じ大きさへと変わり、私達の地球(ほし)にとっての1つの光(シューティングスター)になりました。

 

こうして魔法少女の御伽噺(マジシャンガール・フェアリーテイル)は終わりましたとさ。


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