人形のような金髪の長い髪。切れるような細いツリ目とゴシック・ロリータの漆黒のドレスを纏う彼女はあの夜
髪の長い悪魔。細長い悪魔。ゴーレムのような巨体の悪魔。3体の悪魔はこちらを見ながら唸り声をあげています。
「
ピアスの乗った舌を出しながら、体をしなやかに横に振り、体で推進力を付けて
あなた達は智子を
それは
裏にいる鎌を持った悪魔に、
智子。大変だったよね。苦しかったよね。
私は泣いてた。智子を助けたかった。あんたが魔界に取り込まれている事は、他の
私が悪魔を祓ってあげる。闇を祓ってあげる。
最後の大きな悪魔がこちらに飛びかかってくる。
ゴーレムのような巨体。私は袖の下に仕込んでいたナイフのボタンを押す。
巨体に近づき刺さった刃を空に薙ぎ払う。
「動くな!」後ろから声が聴こえた。
今度は悪魔ではない。地獄の裁判官の手下。獄卒だった。
「
なぜこんな事をしたかって?
私ね。魔法少女になりたかったの。
小学校ではずっとひとりぼっちだった。私は言葉が上手く出せなくて、みんなから嫌われるようになったの。
「やーい。妖怪」と、この細目を気味悪がった。それで私は声を出すことも怖くなって、ただ下をうつむいて学校を過ごすしか無かった。
でも、そんな私に「おはよう!」って、クラスのみんなにも聴こえる声で話してくれたのが智子だった。
智子は私よりもかわいかった。三つ編みと眼鏡にタレ目。かわいさを体現した見た目とは対象的に心の奥には強い意志の力がある。そういう姿は私の憧れだった。
ある日智子が「私、もう楓ちゃんをハブるのやめる!」って、みんなの前で宣言した。あの時私の世界が変わったの。
それから私は自分を飾るようになった。髪も染めた。高いゴシックの服を着て、自分の美を飾る勇気を持てるようになった。
私も智子も日曜の朝からやってる「魔法少女ルナティックキューティー」の事が大好きだった。一緒にコスプレもやった。私がルナブラックで、智子がルナホワイト。ホワイトは魔法が主体なんだけど、ブラックは超武闘派なの。それがきっかけで格闘技にもハマった。アニメの感想を彼女と話すのが本当に楽しかった。
それからしばらく彼女とは疎遠になった。親友だからこそ自分の道を生きようと、最後にホワイトとブラックが別の人生を歩むエンディングを見て私達はそう決めたの。
けれど、別の高校にいた智子が昏睡状態で意識不明だとある日知らされた。
自殺未遂だったと聞かされた。受験への苦しみで、彼女は学校の屋上から飛び降りたと。
私は信じられなかった。彼女がそんな事をするとはどうしても思えなかった。
どうしても真実が知りたい私は、智子の家に行った。
そして智子の部屋で手紙を見つけた。
ルナティックキューティーのおもちゃがいっぱい入ったブリキ缶の中に、1つの手紙が入っていた。
「助けて。私死にたくない。でも、もうあいつらから逃げられない」
手紙の文字は滲んでいた。滲んでいる理由も私は理解した。
手紙に書いてあったヤツらの手段は巧妙だった。犯罪としての事件性が出ないように、的確に智子を追い詰めた。表ではいい子を装って、親しげな間柄だという空気を作り上げて、証拠が残らないように的確な知性で智子をいじめた。優等生と慕われる悪魔3人のしたたかさに、彼女は勝つことができなかった。
体を抑えられて水の入ったバケツに顔をゆっくりと押し込められる。限界になったら持ち上げる。息ができて安心するとまた沈められる。それをずっと。ずっと繰り返された。淡い希望と確かな絶望がただ繰り返されていく。傷跡は何も残らない。録音を防止するためにスマホは奪われる。先生から信用を得る立ち回りをしながら、智子をクラスから孤立させる。そういう知性で、智子を追い詰めていった。
そして智子は3人の悪魔によって屋上から突き落とされた。
学校はそれを事故として片付けた。進学への葛藤による自殺未遂という形で終わらせた。
生徒を追い詰めるような凶悪な悪魔がいると信じない学校側。そして悪魔の3人。その両方に智子は殺されたのだ。
「ごめんね楓ちゃん。わたしわかんなくなっちゃった。どうすればいいのかわからないよ。重い重力が私から消えないの。すべてがまぼろしのようで ほんとうにごめんなさい」
最後の文字はグチャグチャになって、読めるかどうかもわからないほどの形に崩れていた。
智子。怖かったよね。つらかったよね。ごめんね、気付けなくて。どうすればいいのかわからなくなって、誰にも言えなかったんだね。私に言ってくれれば、人生を賭けてでも貴方を救ってあげたのに。けれどもう遅かった。
大丈夫。私が全てを終わらせてあげるからね。
そして私は
私は鎖で繋がれ、赤く回転する照明の飾りが付いた馬車へと連れて行かれる。
智子、貴方は王子様だね。いや、目覚めないからそれともお姫様なのかな。
でも私にとっては王子様だわ。眠っていた私を起こしてくれた。おはようという名のキスでね。
智子。大好きだよ。闇は消えたよ。
ガタガタと揺れる馬車の中で、私は口笛を吹く。いつも智子とカラオケで一緒に歌ったオープニング・テーマ「ルナティック伝説」のイントロの部分を。
私は魔法少女。
智子。この世界には魔法があるんだよ。ありふれるほどの魔法が。
だからいつか目を覚ましてね。
その日夜の空に浮かんでいた月は、誰にとってもいつもよりも大きかったそうです。
そして馬車は空へ向かって飛んでいき、月へと向かっていきました。
魔法少女は馬車の中でゆっくりと眠りに尽きながら、王子様のことを思って涙を流しました。
こうして