地獄ノ釜ノ蓋ガ開ク
―――西暦5012年。
―――突如として地上は、謎の生命体Xに侵略を受ける。
―――研究が進み、侵略者に呼称が付けられることとなった。皆が知るスペースファンタジーを模した呼称にし、共感を得て立ち向かわんとしたのだ。
―――しかし、時は無常なり。古くには謎の生命体Xと呼ばれた侵略者たち……後の世では通称、<エイリアン>と称した生命体による地球侵略の進行が進むにつれ、彼らが繰り出す兵器「機械生命体」の圧倒的な戦力を前に、人類は月への移住を余儀なくされた。
―――地球を奪還するため、人類は手段を模索した。作戦を重ね、軍議を重ね、研究を重ね。長き歴々の末に、人類軍は戦闘型アンドロイド兵士で構成された「レジスタンス」を組織する。
―――状況は打破出来なかった。
―――西暦11945年。
―――硬直した戦況を打破するため、人類軍は新型アンドロイドである戦闘用歩兵「ヨルハ部隊」を投入する。
「人類に栄光あれ!」
メーデー!メーデー! テステス、あー、あー、マイクテスト!遥か遠くの過去より、最果ての未来へ。聞こえているかい、未来のオレ! それとも過去のオレ? まさか非人道的行為を率先してやるとは思わなくて精神ブッ壊れちまったよ、笑えるね。
マ、そんな些事はどうだっていいか。ていうか聞こえてなけりゃ人類が困るだろう。技術者のみんなァ、がんばれよ。うるせえぞ、
親しみのこもった怒号が響く中、データを受け取ったねという柔らかな声は、凍結保存から再起動したばかりのアンドロイドの音声モジュールと同じ音を発していた。
―――なんだ、この
不気味な感覚が全身を撫ぜるように駆け上がり、アンドロイドは植え付けられたIAとしての機能を追った。情報を得れば得るほど人類と同じように”感情”をなぞらえることが出来るのだ。
機械生命体に月へと追いやられてしまった人類は、誰もが等しく寂しがった。蒼きうつくしき星への帰郷を夢見て、希望論を語れば衝突する対話に誰もが疲弊し、けれども対話を諦めきれずに作られた原初のアンドロイド。―――そのうちの一機こそが、棺のような箱に収納されたアンドロイドの正体である。
しかし、だからこそ、当初の対話と介護を目的として生み出されたプロトタイプであった頃の記録が、アンドロイドを未曽有の恐怖に震わせた。この記録はなんなのだ、と。
対話を目的としたアンドロイドは、月の住民となった人類に新たなる文明を開花させることに至り、人類史の中では「成功した」と言える偉業の一つだろう。嬉しそうに語らう人類のすがたは、今もなお、アンドロイドが保管されるバンカーのビッグデータの中にある。
そのうち、技術を求める人間が増え始め、研究所は襲撃を受けるようになった。技術を独り占めしようとする人類による暴動の始まりだ。
研究ばかりにかまける
たとえば、当アンドロイドの正式名称は、
現在の正式名称は、新型戦闘モデル・ヨルハ隊員468■号機である。
新型モデルとなる前の468号は劣勢を強いられるさなかで戦況を押し返すために改良を期待を寄せられて、人類のためにその身を投資した。
研究に根を詰めすぎて無理がたたった彼は、壊れかけの肉体の半分をサイボーグに転化した。それゆえに、目を付けられたのである。
―――『 S××ゥし××は■■だKeD■。 』
その時の恐怖が、痛みが、468号を襲った。
狂ったように笑って
―――『 ××シ×e 』
嗚呼。……