家入成り代わり(但し夏油傑は存在しないとする)   作:春さん

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☆呪詛師に手を掛ける五条に声をかけた人物とは────?




家入硝子に依頼されたと聞いた僕は、呪詛師への尋問を始める。

 

 

 

「五条さん!」

 

冷静を失った五条に声をかけた人物。

それは。吉野順平を保護し、離脱したはずの────

 

「手を緩めてください」

 

────灰原雄だった。

いつの間にやら五条の側に来ていた彼は、グイッと五条の手を掴む。

 

「その呪詛師、そのままじゃなんの情報も取れずに死んじゃいますよ。」

 

それを見ていた七海は、灰原に向けて声をかけた。

 

「灰原!吉野順平はどうしたんですか?」

「灰原サン!戻ってきて大丈夫なんすか!?」

 

二人被った言葉に、遠くで五条が笑う声が聞こえる。

対して、灰原は「ごめんもう一回言って!!」と再度問いかけた。そして、言葉を理解した灰原はその疑問たちに答える。

 

「医療班の人達に保護してもらった!ちょうど治してもらってる最中だよ!!」

「それに医療班の人達にもちゃんと伝えたからね!モーマンタイ?って奴だよ!!」

 

「そう、ですか…」

 

こんなに早く戻ってきたのには違和感があるが、今はそんなことを考えている最中ではない。兎に角、五条さんを止めなければ。でなければここら一帯がなくなる。

そう考えた七海は、遠くから呪詛師の首を握る五条に視線を向ける。

 

「五条さん!ここにはアナタが担当してる生徒の虎杖くんも居るんです。 家入硝子という人物が誰なのかは知りませんが、アナタらしくもない!!」

 

 

「……少し、冷静になりましょう。五条さん」

 

 

七海と灰原の言葉に目だけを向けて感謝を伝えた五条はしかし、手を緩めただけである。だが、それでも先程よりは平常心を取り戻したことだけは確かだった。

 

「それで?」

 

呪詛師の首を握りながら、身体を空へと掲げる。

 

「ソイツは、本当に家入と言ってたのか?」

「本当だ!!!!嘘ならこの命を掛けてもいい!」

 

呪詛師の言葉に、五条は思考する。

家入硝子は死んだはず。なら、家入硝子の名を語る誰かか?

そうだと仮定するならあっちになんのメリットがある?

疑問に思った五条は力を緩ませ、呪詛師に新たな質問をすることにした。

 

 

「なら、その人物は、本当に家入硝子本人だったのか?」

 

 

家入本人に会っていたのならそれはあの腐った蜜柑に報告をしなければならない。面倒だが。

しかし、そうでないのなら?

五条の言葉に呪詛師は暫し考え、口にする。

 

「いや、たぶん、本人じゃなかった。依頼した奴から言われたんだ、家入硝子に依頼されたんだと」

 

やはりそうか、と思う五条は呪詛師が言った後半の言葉に目を細める。

 

「依頼した奴?誰だソイツ。」

「フードが被ってて顔は見えなかった。声は、」

 

そこで、呪詛師の言葉が止まる。

 

「…あれ?なんだったっけか。」

 

五条は地べたで這いつくばっている呪詛師を見下す。

 

 

「覚えてるだろ?吐け、さっさと」

 

 

それは、絶対零度の瞳だった。

 

 

 

 

▷▶▷▶▷

 

 

 

 

 

五条のその言葉に、呪詛師は吠えた。

 

「いや、本当にわからないんだ!声を思い出そうとすると脳にノイズがかかる!!信じてくれ!!!」

「じゃあなんでその人の事を今まで信じてきたんです?」

「それは────あれ?なんでアイツのことを信じてたんだ?」

 

七海の疑問に、間抜けた声が響く。

なぜその人物を信用出来たのか分からない。声が思い出せないと言う呪詛師。

もしかしたら、その言葉自体が嘘かもしれない。しかし、こんな状況で不利な嘘をつくとは思えないのだ。

と、なると。

五条は七海と灰原に視線を向ける。

 

「ええ、十中八九何者かの作為が働いています。」

「もしかしたら顔の認識を阻害させたり洗脳させたりする術式でも持ってるのかもですね!!じゃないとこの状況の説明が付かないですし!」

 

ほぼ確信しながら話し合っていると、呪詛師がなにか言いづらそうにしているのが目に入った。

 

曰く、ソイツはここ数年で現れたらしい。

目的は不明。但し、呪詛師に個人的に協力をしたり、逆に邪魔をしたりと行動がチグハグで何をしたいのかがよく分からない。また、ソイツ自体の容姿も不明で姿を見た者は誰一人として居ないようだ。

 

「…聞いたことがありますね。その人物。」

 

ふと、すべてを聞いた七海が口を挟む。

「本当か?」と言う五条に、七海は頷いた。

 

「少しだけですが。その人、呪詛師だけではなく呪術師にも協力したことがあるそうですよ」

「呪術師にも?」

 

目を細める五条に、七海は「ええ、そうです」と相槌を売った。

 

「味方か敵か分からないので、それによって上層部はどうやら手を焼いているようですね。 非術師の間では都市伝説化してオカルト掲示板で憶測が飛び交っていますよ」

 

「アイツは、他にも目的があるって言ってたんだ」

 

ここからは三人で話した方がいいだろう。そう結論を出した彼らは、未成年の虎杖を帰す事にした。

もう日も暮れている。ここからは────

 

「ここからは、私達の仕事です。虎杖くんは先に帰って今日の報告書を書く練習でもしていてください」

「でも…」

 

七海の言葉に、心配そうな瞳を五条へ向ける。

 

「虎杖。お前は七海の言うように、まだ子供だ。たった15歳のな。…本当はこの任務を任せるつもりだったが、こうなると任せることはできない。さっさと呪術高専に帰れ」

「………分かった。 先に帰って待ってるわ!」

 

五条の言葉に、虎杖は太陽のような笑顔でその場をあとにしようとする。

だが、のちに交通手段がないことに気が付いたのかUターンして五条たちの所まで戻ってきた。

 

「伊地知さんはたぶん帰っちゃっただろうし、先生たちはこの呪詛師の処理やるんでしょ?あの、俺ってどう帰ればいいの?徒歩?」

 

虎杖の疑問に、スマホを手にした七海が答えた。

 

「伊地知さんが戻っているそうです。校門前に車を停めてあるようなので早く行きなさい」

 

虎杖が視線を校門前に向けてみれば、確かに車が停めてあるようだ。伊地知がいることも確認できる。

これで高専までは帰ることができるだろう。

 

「おっ、なら大丈夫そうだな!じゃあ先に戻ってまーす!先生たちも早く来いよな!」

「だから私は先生じゃないと何回言えば……聞きなさい虎杖くん!!!」

 

高校の校庭に虎杖を叱る七海の声が響くが、それを虎杖本人が聴いている訳でもなく。

叱った本人は車に乗って出発してしまったようだった。

 

「はぁ…まったく、虎杖くんは……」

「まぁ、虎杖くんっぽいよね!」

 

嘆息する七海と笑う灰原、そして見守る五条が虎杖を見送った所で、三人は呪詛師へ向き直ってお話(尋問)続ける(始める)

 

「それで。その目的ってなんだ?」

「そ、それは、五条悟───」

 

そこまで言った所で。

パチン、と。誰かが指を鳴らした音が聞こえた。

 

「を、」

 

呪詛師の言葉が不自然に止まる。

いいや、止まざるを得なかったのだ。

そうして、次の瞬間には────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眼の前にいた彼の頸が、スパンと落ちた。

ごろりと五条の下へ頸が転がる。それは、恐怖のまま表情が固まった呪詛師だった。

 

「……虎杖くんを帰しておいてよかったですね。これは流石に、気分の良いものではない」

 

先程まで喋ろうとしていた呪詛師の顔は欠片も残っておらず、肉塊だけとなっている。

前屈みになって近付こうとする七海を、五条は手で止めた。

 

「五条さん…?」

 

彼は、鋭い瞳で視線を向ける。

声や顔は灰原の顔。しかし、パチンと言う小さな音は、近くから聞こえていたのだ。そしてその源は────灰原本人。

そうして、五条は七海へ向けて手である()()をした。

 

 

「……お前、灰原じゃないな?」

 

 

目が開かれる。

視線の先には、灰原。

状況を理解した七海は地を蹴り、五条はそれを援護するように蒼を放つ。

 

「えぇ?! どうしたの七海!!!あと五条さん!!」

 

灰原と思しき人物はそう言いながら七海へ距離を詰めながら呪力を練り、五条の攻撃をヒラヒラと躱していく。

その影響で、周囲のネットやグラウンドが消し飛んだ。

 

「その声と瞳をやめろ。お前は灰原じゃない。」

 

だが、二人はそれを意に止める様子はない。

 

「なぜそれがわかったんですか?!完璧な容姿と声をしてるのに!」

 

灰原の姿をした彼は、五条へ問いかけた。

 

「確かに、並大抵の術師なら騙されたかもな。でも、僕にはわかる。」

 

断言するその様子に、彼は「なんでですか!」と楽しそうにしている。

 

 

 

 

「───お前と灰原の呪力の密度と質が違いすぎるからだ。」

 

 

 

 

五条のその言葉に、ぐにゃりと。

その顔が、変わった。

 

 





次回投稿、3月15日(日)予定。
次回、五条たちは灰原(偽)を────?
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