家入成り代わり(但し夏油傑は存在しないとする)   作:春さん

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☆五条との攻防戦が今ここに始まる────!


なんちって。


心を与えた五条悟を置いて呪詛師になった家入成り代わりだがどうやら五条は私を連れ戻す気らしい。けど、私は戻らない。

 

 

 

 

 

 

 

「どうして、硝子がそっちにいるんだよ」

五条がそう言っている時、私は──

 

(見つかったなー)

 

だなんて他人事のように思う。

 

驚きはなかった。が、少しだけ想定外だったという所だろうか。

まさかちょうど十年で見つかるだなんて。キリいいな。いや、寧ろ今まで見つかっていなかったのが幸いだったのだろうが。

それに…いつかは見つかるだろうとは思っていたからそれが早くなっただけなんだけど。

 

…あぁ、そういえば家入硝子って気怠げが常なんだっけ。間違えて表情筋を真顔に無言にしちゃったな。やらかした。…ま、いっか。私は家入でも完全な家入硝子ではないんだし。

 

「五条先生…あの女性、知ってるんですか」

 

ツンツン頭のウニみたいな髪型をした男の子…いや今の平成の時代では悪口になるからウニみたいな髪型なんて思ったら駄目か。

五条がより最強になったきっかけでもある人物の息子、伏黒恵だね。術式は十種影法術。

 

[十種影法術]はアニメでも漫画でも見たけど、御三家の一つの相伝なんだっけね。戦闘では自分の影を媒体とした式神を使うけど伏黒恵本人の身体能力もそこそこ高め。式神との連携を取りながら近接戦でも相手を追い詰めていく戦闘方法だっけ。原作では結構術式の応用性と潜在能力もあって両面宿儺から“宝の持ち腐れ”なんて評価されてたね。

原作五条には"奥の手"を出して最悪自分が死ねば全て解決出来ると思っているから、本気の出し方を分かっていないと指摘されてたんだっけ。だけど高専1年で既にオリジナルの拡張術式の開発と影への収納等の術式の発想の拡大を行ったセンスと才能は凄まじくて五条からは"ポテンシャルは悠仁にも引けを取らない"とも評されてたんよね。実際にその後に上記の五条の指摘もあって不完全ながらも領域展開を取得したって訳。まぁ原作ブレイクして原作では亡くなった夏油傑の立ち位置に亡くなってない私が来たから領域展開出来るか分からないしもしかしたらこれからの展開に改変が加わるかもだしどうなるかは明確に判らないけど。

 

…あぁ、そういえば今気付いたんだけど五条が持ってる少年は両面宿儺の器か。 アイツ(・・・)からの情報として聞いてはいたけど今日だとは思いもしなかったな。

それに多分原作では五条が瞬間移動して高専に向かってたんだと思うけども亡くなった(仮)私の性格が反映されたのかちゃんと構内に人がいるかどうかを確認してから高専に行くという判断になったらしいんだよね。まぁまぁ運が悪い。

んで、さらに最悪な事。今日実は単独行動してたんだよなぁ。普段なら呪詛師と組んで行ってたんだけど今日の"依頼"はそういう系じゃなかったし……まぁ最悪知人に作ってもらった呪具使えばギリギリいけるっちゃいけるかな。

まぁハナから五条に勝てるとは微塵も思ってないし知人が来る時間稼ぎ出来たらいいなーとだけ思ってるだけだしね。間に合わなかったら間に合わないで仕方ない、捕まるしかないな。拷問は勘弁だけど。

 

「さぁ、考えればいいよ」

 

私はいつものように腰に忍ばせてあったナイフを躊躇なく抜いて五条との距離を詰めた。

なんせ私と五条は呪詛師と呪術師…敵同士なのでな。

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

「さぁ、考えればいいよ」

 

 

 

瞬間、キラリと光ったナイフに目を奪われ気付いたら眼の前には硝子がいた。

…やろうと思えば無下限で防げるんだけどね、久方ぶりの再会だし防がないであげる。

 

「っ、」

 

──首にタラリと血が垂れる。

あぁ、そうだ。この…この感覚だ。

 

僕が硝子と出会って話したのも、こんな感覚のする明け方だったんだよ。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──対等なヤツと戦いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな欲求があってわざわざ近い京都校じゃなく五条家と程遠い東京校に入学した。

まぁ普通に考えて無理だしそんな欲求 (過去の僕)を見ると幼稚だなと思う。

 

 

だって僕には誰にも敵わない。

五条悟とは五条家の中で最高傑作なのだから。

 

 

 

 

驕りでも煽りでもなんでもない、ただの事実。

 

 

 

 

けど僕は今でも東京校に入学して良かったと心の底から思っている。だって──

 

 

──それのお陰で、硝子と出会えたのだから。

 

 

 

* * * * *

 

 

家入硝子の第1印象は "女かよ" だった。

正直、女と言うだけでかなりうんざりした。だって五条家の女は媚び、擦り寄り、夜這い等本当に毎日毎日ウザかったからだ。

家の家内は俺のことを優秀な(精子)としてしか見ていない。女は子供を産むための道具なんて考え方は当たり前の御三家。

 

五条家からの偵察かとも疑ったが、書類を見る限り一般家庭だったのでそこは少しだけ安心した。

 

第2印象は "言葉は荒いが反転術式を使える優秀な人材" だった。

反転術式は本当に才能がある人間にしか使えない。呪力を足していく(プラス)のはわかる、減らしていく(マイナス)のもわかる、でも掛け合わせるのが訳わかんねぇ。

家入に聞くも「ひゅーってやってひょいだよ、ひゅーひょい」と言われた。感覚派かよ、わかんねぇし。

 

 

 

「ったく…最強だって血流したら死ぬだろうが、もうすんなよ、貸し1だからな」

ある任務中に瀕死になった俺。

上層部に派遣されたのか呆れながらそう言って普段は高専にいるのにも関わらずに珍しく前線で傷を治した家入。反転術式のやり方を聞いてはあれど、治してもらうのは産まれてからこの方一度もなく、これまでの人生で初めてだった。家入が言うに初めての体験?らしい。

 

──俺はそういうのに無縁だと思ってたから。

 

もう任務は明け方で、反転術式に治された俺は速攻呪霊を祓い家入を運んだ。呪霊はそこそこ苦戦したものの同級生を襲わせるわけにはいかないと必死で戦った。

 

「ホンットに馬鹿だな」

 

ハハハッ、と笑う家入。

太陽の光が出てくる姿と家入との光の姿が相まって見えて。

───初めて同級生が、きれいだとおもった。

 

 

 

家入と仲良くなってから1年くらい経って、俺と家入…いや、硝子は3年に上がった。

1年は来なかったが2年も上がって来て、それと同時に俺はこの東京校に対等に戦う相手じゃなく対等に話す人物が欲しかったのだと気付いた。

 

 

 

家がすべて、六眼と無下限術式がすべて、男がすべて、五条悟がすべてだった俺に一般常識を教えてくれたのは硝子だ。

 

カップラーメンの作り方も、

コーラとかのぱちぱちした飲み物も、

だるまさんがころんだの (呪術の使わない)遊びも、

ぜんぶぜんぶ、硝子が教えてくれた。

常識の知らない俺に常識を()えてくれた。

 

 

「ねぇ、五条」

「なんだよしょーこ」

「これからも宜しくー、五条」

「…おう、宜しく」

「なんだ、照れてんのか?ウケる」

「うっせー」

 

 

──そう笑い合った翌日のことだった。腐ったミカンの命令で硝子が前線に立って、死んだのは。

昨日笑い合ってた人物が呆気なく死ぬなんて判ってた筈だった。ずっと覚悟してた、筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

───たった一人の同期を喪って悲しいはずなのにこの六眼(まなこ)から涙は出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何年経っても、硝子が亡くなった日が来ても、お墓参りに行っても、ただぽっかりとした穴が空いただけ。

呪霊を祓って祓って祓って祓い続けるだけの日々に戻っただけ。夜蛾センから最期に硝子が持ってたガラケーを持たされて、その思い出だけを…家入硝子はいたんだっていう証明(存在)を確かめた。

本人が戻って来る訳でもないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう高専に帰ってきても、硝子が話しかけて来ることは絶対にないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──一瞬、ほんの一瞬だけ腐ったミカンを潰そうかとも考えた。

 

 

 

けれどもまだその時期じゃないから、辞めておいた。

 

 

 

2年になった後輩は弱そうだった。

だけど硝子が居なくなってから口調を硝子っぽくして、態度もなにもかもを硝子に寄せた。

だって忘れたくないんだよ。

ずっと記憶に残してたいから。

幸い僕も硝子も新2年にまだ会っていなかったから猫被りは成功していた。まぁ、夜蛾センと以前僕に担当してた補助監督以外で僕が変わったのは気付かれなかったし猫被りが良かったのかは分かんないけど。

 

 

その日は2年の任務だった。

なんとなく任務の等級の違和感を感じて着いていった。

 

 

(──ビンゴ)

 

 

任務は産土神信仰という任務で、等級違いだと言うことが判った。

 

(相変わらず腐ったミカンは余計なことをしてくれるな…大方未来ある戦力を潰したかったんだろうが僕に邪魔されたってとこだろう。脳が腐ってるな、病院に行った方がいいんじゃないか?)

 

そこまで考えて(いや、)と内心首を振った。

 

(……病院に行ったとしても絶対無理だな、なんせ上層部は根本から腐ってる。上辺だけを切り取っても頸が変わるだけだ、意味がない。)

 

五条は上層部のことを理解し始めていた。

なんせ五条が17歳の時にはもう1年の付き合いだったのだから。五条にとっては不名誉ではっきり言って嫌だし勘弁してほしいのだが。

 

「ありがとうございます!!五条先輩!!!」

「灰原を助けてくれてありがとうございました。本当に本当に、ありがとうございました」

 

産土神の任務後、2年の後輩2人がこの教室にやってきてお礼を言われた。

当然のことだから気にするなよ、奢るならそこのブラックコーヒー奢れと適当に言っておいた。

ブラックコーヒーは硝子の大好物の一つだ。どれぐらいの苦みなのかと思って試しに言ってみたが本当に奢ってくれた。

 

ブラックコーヒーを初めて飲んだ感想は「(にがい)」だった。一口飲んだだけで苦かった。

後輩(2年)がいたから先輩(3年)としてのプライドが保られた為眉を潜ませず表情を動かさずブラックコーヒーを全て飲み干したが、あれを1日一本は僕には無理だなと悟った。

硝子は凄いな、と改めて感じた。

 

 

 

 

…硝子自身に口酸っぱく言われてきた言葉を硝子は覚えてる?僕は、覚えてるよ。一言一句、覚えてる。

 

 

 

「呪詛師になっても非術師は治すんでしょ、硝子は」

 

 

 

──だから僕も、非術師を守ってきたんだ。

硝子を真似しながら、五条家当主として必要な切り捨てもして。

 

 

「戻って来いよ、呪術高専に。オマエの呪詛師の件ならなんとかするからさ」

 

 

五条家の権力を振りかざせばなんとでもなる。

ここ数年で学んだことだ。

 

 

 

「……私はそっちには…呪術師には戻んないよ」

 

 

 

でも硝子は──否定した。

道を用意したのに、その道を切り捨てた。

 

「そうか。なら──」

実力行使しか、ないな。

 

硝子がいなくなって取りこぼしのないようにしてきた。

捨ててきた命もある、けど僕はそれより…それ以上に助けてきた命は多いと思ってる。

硝子の代わりに助けてきた命。

僕も…いや、呪術界最強でも特級呪術師でもなんでもないただの五条悟は硝子に心を育てて貰ったから。

だから、ここで、捕らえる。

なんとしてでも呪術界隈に引き戻す。

それが──それが、硝子に心を貰った()の出来る最大限だから。

 

 

「ごめん、硝子」

僕はスッと硝子の後ろに立って悠仁と同じように気絶させようとして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念だけど家入硝子はあげられないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知らない声が聞こえた。

声の源を辿り視線を向けると、いつの間にか吊り目で長髪の中性的な人物が立っていた。

その人物に視線を向けた一瞬の隙で硝子が回収されてしまう。

 

──油断したな。…今回は無理そうだ。仕方ない、諦めるか。

 

五条悟の五条家当主としての判断は早かった。

それに、家入硝子が呪詛師としてなにで活動しているのかを調べれば近い内にまた会えるだろう。

だから今は見送る。…名前を変えてまた活動したなら、それはまた考える、うん。

 

 

硝子は吊り目の人物の肩を触り──

 

「それじゃあね、五条悟。また会おう(・・・・・)

「私はもう会う気はないけどな」

 

サラサラと砂のようにその場からいなくなった。

 

 

次は硝子を絶対取り戻す、と五条は決心しながら学校の後処理をしようと伏黒恵の方向へ目を向ける。

 

「説明は後でする、今は撤収するぞ」

「…わかりました」

 

気絶させた虎杖悠仁が起きなかったのは不幸中の幸いだろう。後処理を隅々までしながら五条は腐ったミカン共がまた煩くなるだろうな、とある種の確信を持ちながら伏黒と共に呪術高専へ戻ったのだった。

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話。

産土神信仰の任務が終わり、五条が後輩2人にブラックコーヒーを貰って教室に戻った時のこと。

 

 

 

「五条先輩、もう一人の先輩はいないんですか!」

「良ければ挨拶したいのですが」

 

 

 

後輩2人にそう言われて思わず言葉を噤んだ。

なんせ、硝子はもう居ない。僕を置いて死んだ。

なんだかまたぽっかりとした風穴が開いていったような気がして、そっとまた蓋を締めた。

誰にもわからないように。

誰にも、見つからないように。

 

「訳あっていないんだよ、あの馬鹿は。」

 

だから、僕は居ない人物が硝子じゃなくて俺に近しい性格ということにした。

硝子なら僕がもし居なくなったらこう言うだろうから。

 

「そうなんですか?!」

「そう、なんですか」

 

同じ言葉でも意味は違う。

片や純粋な目、片や何かを察したような目。

七海は隣の席がいない理由をなんとなく察したようだった。……察しが良すぎて逆に困るな。

 

「まあでも大丈夫でしょ。あの馬鹿はどっかにいるだろうし戻ってくるだろうからな」

 

死体は見つかっていない。

僕は、硝子が死体で見つかるまではずっと身体を探そうと思っていた。

死体で見つかったのならもう諦める。

だってもうそれなら死んでるの確定だろうし。

 

 

 

 

飲み干したブラックコーヒーをゴミ箱に捨てて、灰原が買ってきてくれた缶コーヒーをもう一つ開けひとくちだけまた飲んでみる。

やっぱり表情を動かしたくなるほどに苦かった。

…開けたは良いもののさっきのように後輩がいるので眉一つ潜ませずに飲まなければ行けないと考えると…なにか背中に嫌な寒気がした。

 

 




第四日曜に投稿することが決定しました。いえーい。
30分後に1000文字くらいのIF世界線が投稿されます。
そっちは完全ギャグですのでご安心下さい。





感想くれたら嬉しいなぁ………なんて。

今更ながら。
2024/11/21
叶わない→敵わないへ変更しました。
脱字報告ありがとうございます!!

やるならどっち?

  • 家入成り原作世界転移
  • 原作五家成り世界転移
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