☆どう見ても束の間の休息でしかない───!
「ハァ…………面倒だ。」
嘆息する家入成り主に五条がめちゃくちゃキラキラとした笑顔と
その子供らしい姿に家入成り主はもう一度深い溜息を吐き、古いガラケーを取り出した。
画面に映っている現在の日付は8月31日。
そう、花火大会当日である。
五条悟は知っての通り御三家……つまりはお坊ちゃまだから花火大会なんて、まったくこれっぽっちも行ったことがないというのは夜蛾センから事前に聞いていた。
私も今世で面倒だからという理由でこれまで行ったことがなかった。前世を抜いてだけど。
つまり、私達は実質花火大会初参加みたいなものだ。
「楽しみだな、花火大会」
「……おー」
前日、花火大会なんて産まれて初めてなのか普段より目に光があった五条。
「面白いなこれ!」
五条がやっているのは金魚掬いだ。その才能もあるのか屋台泣かせに何匹も何十匹も取っている。
…店主は実際、泣いていた。
因みに数分前、「花火といえば着付けだろ!」と言う五条に五条家次期当主の権力を存分に使い、(強制的に)初めて着付けさせられ渋々着た浴衣。めちゃくちゃ、歩きづらい。しかも浴衣が古風なのかきちんとしたものなので余計に。
(あ"ー、歩きずれぇ)
なんならこれ下の履く物が違うだけで見た感じ殆ど着物だ。
この服だけで数十万すると判った時は柄にもなく少し焦ったが、まぁ御三家なんだから金銭感覚が緩すぎるもんかと無理矢理納得させた。
そう思ってないと多分これから
正直花火くらいではしゃくだなんて子供かよ、と思う。
けれど、これはこれで高専の五条らしいなと家入は少しだけ口元に笑みを浮かべた。
「しょーこ、これ射的で取れたからあげるわ!感謝しろよ!」
渡されたのは、そこそこスペックの良い景品のガラケー。
「……ありがと、五条」
ずっと不器用で優しい五条の顔をみていると、決意が揺らぎそうになる。罪悪感が溢れ出る。
五条悟が最強として産まれたのがこの腐った呪術界だとしても、五条はあまりにも純粋すぎた。
だからこそ私は、知ってほしいのだ。
でも私はまだ五条に言えていないことがたくさんある。
私は、彼と縛りをしてしまったことを。
前世があることを。
原作を知っていることを。
私が、本当の家入硝子ではないことを。
約束を、してしまったことを、言えていない。
【──約束だよ、××。】
痩せ細った彼のことを、今でも思い出せる。
約束をしたならば、果たさないといけない。
それが彼の、さいごの願いだったから。
(……ごめん、五条。私はもうすぐ__)
ぐるぐるぐるぐるとそう思考を巡らせていると、聴覚から脳に伝達してひゅー、という音が近くから聞こえてくる。
ひゅー、どんどん、ぱちぱち。
そんな破裂音のような、「私が主役よ」とでも言われるような声が、
赤、青、黄色、緑と様々な色で空が彩られていき、そのどれもが夜空の空中で儚く消えていく。
結局主役も主人公も、視界から
残ったのはその人の
そうなる、確信がある。
【あははっ、××ったらもー!イタズラしないでよ!】
楽しい記憶。
【…そんなにボクは、頼りない?】
苦しい記憶。
【…ごめん。でもボクはそれが最善だと思ってる】
【__ねぇ××。絶対に──】
悲しい、やるせない記憶。
私も、そうだったから。
その人と過ごした楽しい記憶も、嬉しい記憶もすべて、
思考していた
彼のことはもう終わったことだ。 約束はしていても、彼はもういない。
虚しいことを考えるよりも今は、この時間を楽しみたかった。
なんとなく、視線を花火から
赤、青、緑、黄色、紫。
頬の色が、段々花火の色に変化して変わっていく。
無駄に顔が良いからなのか、はたまた表情が動かないからなのかは分からないが、五条が真顔でいると本当に動かない精密な人形のようだなと家入は思った。
次に五条の、
夜だからなのかそれとも自分の幻なのか、いつも見ている
…まぁ実際は、花火自体が消えているだけなのだが。
家入は、この美しい記憶を、美しい記憶のままにしようと思う。 この光景を、同級生と遊んだ時の記憶を忘れないよう大切な記憶になるように、ずっと眺めていた。
「ゔらやまじぃゔらやまじぃゔらやまじいゔらやまじいうらやましいうらやましいうらやましい」
「憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ」
「リア充死ネリア充死ネリア充死ネ爆発シロ爆発シロ爆発シロ」
__端っこにいる大量の呪霊を見ないようにしながら。
雰囲気ぶち壊しで悪いが残念ながらこんな時でも呪霊は湧く。なんならこんなぎゅうぎゅう詰めの人混みの中負の感情が起こらないのもおかしなことだ。
まぁ、高身長な五条が私の隣に居てくれているお陰でランウェイのように人が捌けていくのが面白い所でもあった。
それに、花火大会というのは恋人や友人と行くものでそこに負の感情が出てくるのはまあまあよくあることでもある。呪霊は基本的に目が合わなければ襲っては来ないので大丈夫だが、目が合ったら襲ってくる。
……知らないフリをしなければならない。苦痛だがそれが一番だ。
面倒に思いながらそう視線を逸らしていると__
「……しょうがねぇな」
__五条がポツリと呟いて、私が見ていた周囲の呪霊とその他の呪霊を一瞬で一掃した。
周りの
私達は、それに紛れて会話をする。
「…呪霊、祓ってくれたんだな」
「硝子の為じゃねぇよ。俺が邪魔だと思っただけだ」
「……そ。ありがと」
「………おう」
(不器用で優しすぎるよ、五条)
私が
私が同級生じゃなかったら、この
ああ、やっぱり死ねばよかったかな
__なんて独り言を、意味なく零してみた。
* * * * *
「……僕の同級生について聞きたいって?」
そう言うは呪術界が認める現代最強の呪術師の───五条悟。
呪術高専に入学してから先生は色々私に目をかけてくれて…感謝してるわ。あの気色悪いから出れたのも『どうだ?
何百回何千回産まれて来たら見た目も中身もこんないい男になるのかしら?
ショッピングは私が買ったものを持っててくれるし、食事は行きたい所に連れていってお金出してくれるし、メンタルただ下がりの時は何も言わないで相談に乗ってくれるし。
正直、いい男よね。
(…まぁ、少し違和感を感じる時も、あるけど)
そんなことはどうだっていいわ。
………話が逸れたわね。
「そうそう、五条先生の周りのことを色々聞いて回ってるのよ〜!」
私は今、その最強の強さの秘訣を知る為に先生の周囲の人間を聞いて回っていたのだ。それで話題に上がってきたのが、過去に五条悟の同級生と言っていた存在。
呪術師なら誰もが尊敬し、敬意を持つ者もいるくらいには五条先生のことを慕っている人は多いわ。その中に私も含まれているくらいだし。
本人に言う必要もないから言わないけれど、絶対本人も信頼されていることはわかってるでしょうね。
そんな
興味持たない方がおかしいと思わない?
「…僕のことを育ててくれたのもその同級生なんだよ」
── いちど、言葉を飲み込んだ 。
「ええ?そうなの?」
(五条悟を育てたなんて、全然想像が付かないわね…)というのが、飲み込んだ本音。
「まぁ、今は想像できないと思うが結構子供だったからな〜僕も。夜蛾先生に高専時代の僕のこと聞いてみな。思い出して絶対胃を擦るだろうから」
「それはもう聞いたわ」
五条先生に聞く前に夜蛾学長にも少し聞いてみたけど、高専時代の五条先生は夜蛾学長も手を焼くほど苦労したらしい。
今はもう
「へぇ〜、五条先生にもそんな青春時代があったのねー!知らなかったわ」
五条先生の思い出を聞きながらそう言う私。
「お前も虎杖達とちゃんと青春謳歌しろよ〜、青春なんて過ぎ去ればあっという間だぞ。 ──なぁ、虎杖と伏黒。いるの判ってるんだからな」
そう言いながら先生は、後ろに目を向けた。
五条先生に言われてから私は二つの影がこちらを見ていることに気が付く。
「ゲッ、バレてたんすか」
「…だから言っただろ、もっと呪力隠さないと五条先生にバレるぞって」
(全然気が付かなかったわ…)
「もっと呪力を察知できるようにしたり隠せるようにしないとな。これに気が付かないならまだまだだぞ、虎杖、釘崎、伏黒?」
「うす…」
「はい…」
「わかってるわよ…」
ふと、先生が
「ああ、あと僕の同級生について知りたいだっけか?」
「……たった一人しかいない同級生だよ。僕に”人間”を教えて消えた、ね」
哀しげな微笑みをしている五条の脳裏には、いる筈のない高専時代の彼女の姿がいつまでも生き続けている。
そして三人は__
「さ、もうすぐ任務の時間なんだろ?時間遅れたらやばいんだからそろそろ行きな」
__しっしっ、と払い除けるように教室から追い出されてしまったのだった。
「同級生の話をしてる五条先生、なんだか嬉しそうだったな」
補助監督の車に乗りながらそう言う伏黒に虎杖は「んー、そうか?俺はなんか、哀しそうな表情だった気がするけど」と言った。
「…そうね。でも私は少し、その同級生に妬けちゃうわね」
尊敬している人の同級生が先生の記憶にずっと残ってるのが羨ましいと、そう思ってしまうのだ。
__目を瞑る。
切り替えるわよ、私。
「さて、じゃあ今日も任務行きましょうか!」
「おう!」「ああ!」
────今日も、彼・彼女らの青春が、日常の記憶として残されていく。
これは、彼が彼女を亡くした数日後のお話だ
「懐かしいな。これ、俺が景品であげたんだっけ」
五条が手に持つのは、家入のガラケー。
今はスマホがあったりで便利だが、まだこの頃はこのガラケーが最新式で、なんとかしてプレゼントしたいって思って硝子にバレないように術式も使いながらあげたんだった。
(射的のおっちゃん、稀に見る良い人だったな)
そんなことを追憶する。
一般人なんだから、最新のガラケーを景品にするには自分のお金も使ったろうに。
あの頃の僕は呪術界しか知らない人間だったからとても新鮮に思ったことを覚えている。
僕のことを何も知らない。からこそ、その善性が垣間見えると言うもの。
こんな人を守れるならまあ呪霊から守ってやらなくもないと子供ながら思ったっけ。
「本当に、懐かしいな」
ガラケーを触りながらそう懐う五条。
俺は "僕" に矯正した筈なのに、思い出が転がっているとどうにも口調が昔に戻ってしまう。
まぁ、いっか。それだけこの記憶は大切なものなんだ。もう誰にも汚されることのない、とても綺麗な記憶なんだから。
今日は何月何日なのかを思い出してからふと、生徒達のことを思い出していると──
「先生!」
「センセー!」
「五条先生!」
──自分の名前が、当たり前のように呼ばれる。
「先生は本当に普段から忙しいんだからな」
「わかってるって、伏黒!」
「まったく…ほら、先生も行くわよ!」
「汚れのない少年少女たちよ。
もう二度と戻りたくても戻れない青春を、今存分に楽しみ給え。……なんてな」
「ん?なんか言ったセンセー?」
「…いや、なんでもないぞ」
3人に連れられて、3つ分の影と自分の影が街頭の光に照らされ繋がっていった。
2018年8月31日。
現在時刻、20時29分56秒。
──あ、今20時半になったな。
時は過ぎるのがあっと言う間だ。
__さぁ。
ひゅ〜、どんどん、ぱちぱち。
__五条にとって、或いは少年少女にとって、また違う景色の風景がやって来る。
これからも存分に、地獄を楽しもうじゃないか。
*仕組みを知らない人は、「まったく…ほら、先生も行くわよ!」の下を範囲選択してみてください。
8月に投稿しないと言ったな?あれは嘘だ!(という名のギリギリセーーーッフ!!)
ちゃんと参考として花火大会に行ったのですが、花火はめちゃくちゃ綺麗でした。
ただ単純に、人が多いかな!!!!!!!!!
もう人混みの多いとこはいかない…(とか言って多分また行く)
次回投稿日は9月22日(日曜日)です。
次回、まさかのアイツが……!?
やるならどっち?
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家入成り原作世界転移
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原作五家成り世界転移