──のち、死亡する。
五条悟の家入硝子引き取り(と言う名の軟禁)から丁度2週間が経った。
「みつけた、しょーこ」
電話してから幽霊ばりに気配がなかった五条だが結局あのあと居場所がバレた家入は、渋谷でベンチに座っていた公園から五条に
雰囲気でなんとなく考えていることはわかるが、五条はどうやら家入硝子を呪術界に戻す気らしい。……私、これでも自ら進んで呪詛師になったのにな。
まあでも呪詛師は呪詛師でも私は土地の呪霊や人物の情報提供をしただけで殺しはしていなかったので、それが功を奏したらしい。
もしここで殺し等をやっていたら呪術界に戻せることはなかったと。
……まぁ。将来……というか、もしも五条と出会わなかったら殺しをやるつもりだったことはナイショである。
さてと。まず、羂索の
家入硝子を呪術界に戻すその代わりとして、なんとか羂索が言っていたあの条件を五条に言って縛りを結ぶことが出来た。
……本当に縛りを取り付けることが大変だったことを思い出す。
3つ目の【五条悟の監視下に置かれること】、4つ目の【虎杖悠仁を主とした呪術高専の生徒たちを治療をすること】は言ってから簡単にOKが出たのだが……大変だったのは2つ目の【五条悟と一ヶ月に一回会い、家入硝子が生きていることを上層部に言わない】縛りだ。
この縛りを設けることは言葉に表せないくらいに超大変であった。
いや、正確に言うならば一部分だけ五条が渋る部分があったらしいのだ。
その部分とは【五条悟と一ヶ月に一回会い、】である。
なぜそれが駄目だったのか?
それは五条が一ヶ月以上会いたいと言って中々承諾が貰えなかったからだ。…なんでこんな一ヶ月なんて月を指定したんだよ、と思いながら家入は何日も何日も五条に言い、そのたび何日も何日も渋られ五条に×の文字が出るたびに内心恨み辛みを日々日々募らせ込めながら羂索に飛ばして(あの無理難題野郎が)と思うのと同時に、どこからか「くしゅ、」とくしゃみの声がした気がしなくもないが…きっと気の所為であろう。
さて、話を戻す。
この過去の回想でなんとなく察しはついていると思うが、縛りは結ぶことができた。……まぁ、一ヶ月に一回は取り消しになったが。
しょうがないじゃないか。一ヶ月に一回を取り消しにしないと2個目の縛りを結ばない気配しかしなかったのだから。
だったら前半は取り付けしない方がまだマシだ。
余談だが、縛りが終わってからの家入成り主の顔はめちゃくちゃ虚無っていたことをここに示しておく。
そして──7月中旬。
今私は、医務室で虎杖悠仁の身体を解剖しようと手袋を付けている。
どうやら原作通り少年院が終わったようだ。
ここで生き返ることは判ってるので、遠慮なく五条に聞く。
「この
「……好きに有効活用しろよ。」
どうやら私がいても基本的には
「誰に言ってんの、
「…そうだった、硝子は、そうだったね」
私がここにいるのが懐かしいような表情をする五条。少しだけ"私"の仮面が剥がれたようだ。
まぁ、
伊地知は五条のお付きなのか原作と同じくここにいる。五条がマイルドになってるからか原作より隈がないし、多分五条から休暇を定期的に取らされているのだろう、少しだけ柔らかいような雰囲気もした。
伊地知は五条より半歩後ろの隅っこで観察をしている。
(──念の為警戒してるのは私だけってか。)
元々私は呪詛師だったからな。変な事をしないように念の為と警戒するのは間違ってない。……まあ変なことした時点で私は五条とした縛りによって首が吹っ飛ぶんだがな。
比喩ではない。
本当に、そうなるように縛ったのだ。
だからまぁぶっちゃけ伊地知の警戒は無駄な警戒なのだけれど…原作と違う人物が来るかもしれないし、好きにさせたらいいか。
そう思い、遺体に向き直る。
さて、原作通りならここで虎杖が起き上がるはずなんだが──
「そこで見てるつもりか?」
医療用の白手袋を付けながら気だるげ表情で言う家入の後ろに、あるはずのない呑気な声が。
「おっ、フルチンじゃん」
──驚くような表情をしている家入だが、家入にとっては想定内だ。
「ちょっと残念」
両面宿儺の器、解剖できると思ったのに。とぶつぶつ言いながら服を渡す。
なんで生きてるの???って伊地知の顔も想定内、五条がこのタイミングで笑うのも想定内。
この雰囲気だと宿儺の【契闊】の縛りも出来たようでなによりである。色々違うとこもあったろうが軌道修正軌道修正。
「なにはともあれだ──おかえり、悠仁」
「応!」
パチン、と乾いた音が部屋に鳴った。
場所は変わり。
「報告書、書き換えとかないとな」
古風な京都の道を歩く家入と五条。
今は上層部に報告する前である。
虎杖が生き返ったとなればまた上層部が騒ぐだろうが仕方がない。両面宿儺の器の虎杖悠仁は(知ってはいださたが)現に生き返ってしまったのだから。
(報告する前だとはいえ、辺りを見てもここら辺は下の景色がいいので気分が少し浄化されるんだよな)
そう思っていると。
「…硝子、それはいい」
五条に、呼び止められた。
「ん?」
「少しだけ、試したいことがあるんだ」
ニヤリ、と子どもがする悪戯のような顔。
「『手伝ってくれる?』」
手を差し出す五条に重なる面影。
『手伝ってよ』
───ふと。
私と彼が出会ったのも、こんな感じで始まったのかと思い出した。
まぁ、面影は振り払ったけれど。
五条に、返答を返さなくてはならないから。
「もちろんだ」
迷わずその手を取った。
たとえ、彼がもういないとしても。
私は彼の願いを聞き入れる義務がある。
【 、 】
──またね。
そういって、弾け飛んだ上半身。
骨すら、遺灰すら残らなかった。
彼を助けられなかった私はそれからずっと彼の約束を思い出し、
━━それが、私の生きる意味だ。
* * * * *
「ちょっとこの子治してあげてくれないか?」
風が吹き抜ける。
昨日まで聞こえていた筈のあの声は、もう聞こえない。
「硝子?」
最悪の事態を予想した。
でも、硝子は医務室のベッドに横になっていただけだった。まぁ反転術式を他者に施すとなると
「よかった…」
硝子が、いて。
いなくならないで、よかった。
「硝子、起きて。」
……嫌な予感がする。硝子がいなくなった時のような、ある種の予感。
「硝子」
返事がなくて、身体を揺さぶった。
けれど、返事がない。
かけている布団をバサッと剥ぎ取る。
でも、人間がするはずの眉を動かしたり、足を動かしたりがない。
なにも、反応がない。
胸の膨らみが一定のリズムで上下をしていない。
──呼吸を、していなかった。
気付けば硝子の腕を取って脈を測っていた。
脈が、ない。
「フーーーー………」
息を吐く。
動揺している心を落ち着かせたかった。
…落ち着け、僕。
発見してからまだ一分。一分なら心臓マッサージをすればまだ間に合うはずだ。
大丈夫、大丈夫。硝子は死んだ訳じゃないから。
とりあえず野薔薇を医務室から返そう。
「すまん野薔薇、治療出来なくなった。応急処置はするから終わったら3人で夕飯食べに行ってきな。カード渡すから」
硝子は一刻を争う。けど、それでも教え子の怪我は放置してられないのだ。
もしかしたら教え子に応急処置を施すことになるかもしれないと思い予めどこになにがあるのかを把握しておいて正解だったと頭の冷静な
「ちょっ、五条せんせ──」
「今は一刻を争うんだ。悪いがあとで説明する。」
野薔薇が言っている言葉も全部全部無視してお姫様だっこをしながら医療室に硝子を運ぶ。
悠仁が一回死んだとき部屋のような、無機質な室内。
そこには悠仁ではなく、硝子がいる。
「助けるからね、硝子。必ず。」
そうして僕は、心臓マッサージを開始した。
* * * * *
一日中、心臓マッサージをやった結果として。
__家入硝子は、亡くなった。
四肢はもげていなくて、身体の破損もなく。
内臓等の臓器が、血が飛び出ていることもない。
遺体は思ったよりも綺麗だった。
家入硝子の死で呪術界が動くとか、なにか起こるということはない。あり得ない。
大勢の呪術師たちの反応の中で多いのは「へぇ、そうなの」と無関心を貫くか「よくやった!」と手放しで喜ぶかの2パターン。
前者の「へぇ、そうなの」という無関心はその人物を知らないのは交流がなかった・または興味かなかった人らで、後者の「よくやった!」と知っていて喜ぶのは脳が腐りに腐った蜜柑共しかいない。
腐った蜜柑って何って?…言わなくても判るだろ。
加茂と禪院と五条の御三家共に上層部共、平たく言えば術師家系ぜーんぶ!ほとんど!
あーもう本当嫌にやるよな〜今は平成だっつの。昭和しか生きてない時代錯誤のジジィ共が。今は改革が必要なんだっての。
っと、話が逸れた。
家入は非術師や術師を誰も殺していないとしても、呪詛師としてそこに
呪詛師が死んで悲しむ
……いや、一つだけいるか。それは、その者の身内。
家入硝子を悲しむ人間は、悲しめる人間は、同期の五条悟とかつて担任だった夜蛾正道しかいなかった。
……あーあ。どうしようね。
「……縛り、意味なくなったな」
家入硝子と僕で結んだ縛り。
本人がいなくなったのだから、この縛りも機能しなくなってしまった。現に効力もなくなっている。
縛りはそこに居なくなっても継続出来る縛りと、居なくなったら継続出来ない縛りがある。
五条と家入がしていたのは後者だった。
「ねぇ、先生」
「…なんだ、悟」
「やっぱり、こっちの世界に戻したのは間違ってたのかな。…いや、そもそも僕と硝子が再会したこと自体が間違ってたんだよ。僕が硝子と会わなければこんなことにはならなかっ───」
ただただ、淡々と。
ただただ、起こった事象を受け入れるように。
ただただ、五条にとっての事実を受け入れるように。
つらつら、つらつらと。
あるはずのない
「やめろ!!!」
夜蛾は思わず言葉を荒げて止めてしまう。
だって、あまりにも。あまりにも、五条の姿を見ていられなかった。
もしもなんてない。
もしもなんて、ありえない。
その数多あった選択肢を五条自身が選択してどうするか選んでここまで進んだ時点で、もしもはあったかもしれない事になる。
もし万が一、億が一に家入硝子と再会しない道があったとして、この世界の五条は無意識に
それは、その真実だけは、一生変わらない。
過去が変わらないように、今この1秒を変えられないように。
──もしもは、夜蛾にとって…そして家入を含めた目の前の教え子にとって、必要であったのかもしれない。けれど、それを使うことは出来ないだろう。
「…お前だってとっくに分かってるんだろう。そんな "もしも" のことは、もうありえないと」
「……。」
五条は、わかっている。
硝子が死んだ時点でもうそんなIFはやってこないことを。もう、話すことや声を聴くこと、表情を見ることすら出来なくなったことを。
わかっている。……わかっている、けれど。
脳では理解していても、
「…今日は休め。しばらく休暇を出す」
パタン、と。
五条にとっては数秒とも数分とも感じられる扉が閉まった。
* * * * *
__あれから。
五条は夜蛾の言う通り、マンションで休んでいた。
教師としての仕事は熟しているが、今は一時的に任務をストップしている。
本当だったら五条は任務を詰め詰めにして鬱憤を晴らしたかったのだが、それは夜蛾が伊地知に根回しをして「任務をやりたいと言ったらなんとしてでも止めろ」との命令を下していたので振り分けることもなかった。
半分
いつもはやることが多いのに、今はやることがなさすぎる。暇だ。とも思う時は高専に行き、なんにもしたくないと思う時はなんにもせず。
2週間経ってやっと五条悟に心の余裕が出てきた所で──(そう言えば野薔薇にちゃんと説明してないな。説明、しないと)と脳に信号を送って、身体が動き出す。
靴を履き替えて、いつも通り高専に
ある一通の五条の筋からメールで、
[家入硝子暗殺の件について]
加茂××殿
どうやらこれはメールの宛先の違う、所謂世間で言う誤爆らしかった。しかし、家入硝子暗殺の件という議題で上層部が関わっていることを知り、五条は__
「……あ"ぁ?」
"五条先生" ではまったく考えられないような、通常より格段に低い声。
高専生徒と幼児に見せたら絶対に驚かれ泣かれるであろう顔をスマホの暗闇に落とした。
「ちょっとお話(言い訳と言う名の強制)、聞かないとね?」
疑問符なのにも関わらず有無を言わせぬ言葉で目をガン開きにしながら口元だけ笑う五条。
口調が荒れている時点でだいぶ…いや、結構キレていることが察せられる。 ……上層部、死体残ってるといいね。南無。
───ちなみに。
これも羂索の
えっえっえっ今気付いたんですけどもしかしなくとも評価が赤になっている???投票してくれた人ありがとうございます!!そしてお気に入りが93?????三度見しました。夢か?再度感謝を。ありがとうございます嬉しいですうへへ。
次回投稿日は12月24日(火曜日)です。
もしも家入が だったら?
勘の良い方は日付だけで気付いてくれると信じてる。
やるならどっち?
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家入成り原作世界転移
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原作五家成り世界転移