家入成り代わり(但し夏油傑は存在しないとする)   作:春さん

8 / 14




☆第二章、密かに開幕────。





1年ぶりなので初投稿ということにしたい。


第二章
家入硝子がいなくなった僕は、虎杖悠仁を学友たちと再会させてある計画を立てる。


 

 

 

それは、ある日の午前中のこと。

クラスの名簿を持った五条は、今年に入学した1年生がいる教室へ向かっていた。

真ん中の机が空白になってから二週間前と3日。

虎杖が死んだ後も二人の生徒に本格的な呪術指導を初めてからもうすぐ一週間。…そして、同期である家入硝子が死んでから一ヶ月が経つ。

1年生が二人になってからも伏黒や釘崎など個々の任務はあるし座学も続く。虎杖が死んでも、それは変わらない。

ただ、伏黒と釘崎の二人は同級生がひとり居なくなったのが名残惜しいのか、たまにそこにいたであろう真ん中の席に座ったり、茶々を入れながら机を触ったりしている。

彼が死んだとはいえ、数週間一緒にいたのだ。情は湧く。それを五条も判っていたのか、彼女らの行動を咎めることはしなかった。

この光景も、6日も経てばもう慣れたものだ。もはやいつもと変わらない風景となっている。

 

因みに、家入硝子を暗殺しようとした加茂家当主は処理した。裏にいた呪詛師と手を組んでた家紋の奴らも同様に。

ふと、五条は足を止めた。

 

「…やっぱ殺り続けても無駄だな。」

 

職員室付近の廊下で、ぽつりと独り言を溢す。

上層部の一人を殺したからと言ってこの呪術界全体が女を卑下するという思想は変わりはしない。勿論正当な理由があったとしてもなんであったとしても、だ。

現に、今の加茂家当主は殺した加茂のことを死んでくれてよかったかのように嬉々とした表情で語っていた。

……家入硝子の遺体も上層部が引き取った。反転術式の解剖だと言って解剖に回したそうだ。

 

そこで、授業の始まりを知らせる鐘が鳴る。五条の歩幅はとてもデカイので、早歩きをすれば1年の教室がすぐ側にある。五条にとってすぐ着くのは有り難かった。

彼はいつものサングラスを着けて教室に入る。

自分の感情をひた隠しにしながら。

 

「二人共席につけー。ホームルームを始める前に、今日は少し紹介したい奴がいる」

「こんな時期に? 誰ですか」

「もしかして転校生?!」

 

五条がそんな言葉を言うと、そこには単に疑問な伏黒とウキウキする釘崎がいた。絶対怒るだろうな、と感じながら教卓に名簿を乗せて、言葉を発する。

 

「…入ってきな」

 

不意にそよ風が吹く。

どうやら全開にしていた窓から風が入ってきていたのようで、白や黒、茶色の髪が揺れた。

五条の掛け声と同時に、古びた扉が大きな音を立てながら開く。

──そして、そこには。

 

 

「え?」

 

 

間抜けた声をあげたのは誰の声だったか。

伏黒か、釘崎か、はたまたその両方か。

 

そこには、死んだ筈の桃色がバツの悪そうな顔で立っていた。基本的にここにいる生徒たちの出席者は二人。

今日の出席者は、三人の予定だ。

 

「さっきサプライズで『はい、おっぱっぴー!』って行って出るって言ってたでしょ。なにやってんの、ホントに。僕は知らないよ?さっさと殴られて来な」

 

五条はこんなことをしようとしようとしてたんだぞ、と流れるようにチクった。その動作は後ろの二人に知らせるかのようだ。

 

「へ?」

 

五条の擁護なしの言葉に、今度は虎杖が間抜けな声を上げる番だった。てっきり擁護してくれるかと思っていたのだ。

虎杖は突然すぎる五条の言葉に振り向く。そこには呆れた五条が後ろに親指を指していた。

 

その視線の先には────

 

 

 

 

 

「おいテメェ」

 

 

 

 

 

慣れ親しんだ声に虎杖は視線を向けようとする。

だがその動作は、まるでギギギと言う効果音が付きそうなものだった。

 

「ちょっとツラ貸せや。」

 

────大変怒っているであろう二つの鬼が待ち構えていた。

 

 

▷▷▷▷▷

 

 

 

 

「すみませんでした……」

 

 

 

 

かれこれ1時間が経った。

その間にも、虎杖は正座させられている。

目線を向けた先には金槌を持った釘崎と犬を呼ぼうとしている伏黒が腕を組んで虎杖の事を睨んでいた。

 

「ってかおっぱっぴーってなんだよ」

「いやだってさぁ、ギャグっぽくそう言った方が面白いかと思っ、」

 

釘崎の言葉に返した虎杖の言葉が止まる。

二人は見たことのないくらいに真顔だった。

 

「それ以上言ったらわかるな?テメェの眼球にコレ刺すぞ。だったら黙れ」

「てか釘崎に言われても全然反省してねぇだろお前。さっさとそこに直れ」

「ハイ…………スミマセン」

 

(だからあれほどやめとけって言ったのに…)

 

迷惑をかけた同級生らに正座しながらメッタメタに説教される虎杖を尻目にそう思うが、口にはしない。五条が虎杖に言ったとて変わらないことは五条自身がよく分かっていたからだ。

言うなら同期が言った方が説得力が増す。だからその説得を、彼女らに任せたのだ。

 

それはそれとして、五条は二人へ簡単に事情を説明することにした。無論虎杖は正座をしたままで。

 

「虎杖悠仁は死んだことになっている。書類上だけどな」

「ってことは…」

「あぁ…今上層部はお祭り騒ぎだろうな、宿儺の器(虎杖悠仁)が死んだから。どうせ宴会でもやってんじゃないか?」

 

 

「「……。」」

 

 

五条の言葉に黙り込む二人。

それもそうだろう。例え両面宿儺の器だとしても、呪肉したとしても、人は人だ。無関心ならばまだわかれど、死んで喜ぶなんて者は世の中にそういない。たった15歳の少年ならば尚更だ。

なのにも関わらず五条の言う上層部たちは喜ぶ。器が死んだと、危険分子が減ったと喜んで止まないのだ。…はっきり言って胸糞が悪すぎる。

 

「…あのぉ〜〜〜?」

 

絶妙な空気の中、手を上げたのは元凶の虎杖悠仁。

 

「そろそろこの体制キツくなってきたんですけども……」

「いいから、正座。まだ続けてろ」

「ハイ。」

 

伏黒たちの圧力に負け、続行と言われた虎杖は素直に正座する。そして、それらを見て笑いながら五条は言った。

 

「人間ってのは一度死んだ人間が生き返るとは思わないだろ?だからこれを機に、虎杖の身体能力・呪力諸々を強化することにしたんだ」

 

その言葉を聞いて正座していた彼は下げていた頭を上げ、サングラス越しにある五条の瞳を見る。

その瞳に吸い込まれそうになりながらも、虎杖は「強化…?」と口にした。

 

「あ、姿勢崩していいぞ。」

「あざっす!」

 

一時的な許しをもらった虎杖は姿勢を崩す。

同級生たちの冷ややかな圧を受けながらも普段通り底明るい姿の虎杖に、五条は苦笑した。

 

「お前、胆力あるな…」

 

褒め言葉だと思ったのか、虎杖は「あざっす!」と照れくさそうにしている。

 

「いや褒めてないからな?普通に」

 

虎杖の能天気さに五条はそう真面目に言いながら、ん''んっ、と咳払いをして虎杖にとっての本題を話し始める。

それは術式や呪力、そして呪術師に必要な知識についてだった。質問形式で五条が問い、虎杖が答えていく。

虎杖は半数以上が答えられなかったようだった。

 

「───虎杖、これで分かったな?お前はまだこれらについて何も知らない。特に呪術界隈の歴史を学ぶ呪術史については1ミリも答えられなかっただろ」

 

虎杖は口に手をあてて考える。

 

「…確かにこう考えるとなんも知らねぇわ。先生が言ってた言葉ぜんっぜん分かんなかったし」

 

呪術規定について、術式について。

虎杖は自身が思っていたよりも答えられなかったことに驚いていた。肝心な呪術のことを〝知っていたつもり〟にすぎなかったのだ。

 

「虎杖、それが駄目なんだよ。」

 

その言葉に、五条は真剣に話し始める。

 

「これは大前提として覚えておいてほしいんだが、呪術師の中の大半が保守馬鹿だ。」

 

それはこの呪術界全体についてのことだった。

知っておいて損はないだろう。

 

「保守馬鹿?」

「あぁ。…昔っからの嫌な古い風習をずっと守ろうと必死な奴らのことだ。」

 

上層部のことを頭に浮かべる。

それだけで虫唾が奔った。あの腐ったみかん共は頭がスッカラカンな馬鹿しかいない。今後も将来有望な術師を死なせる馬鹿なことしかやらないだろう。

そんななくてもいい自信だけが、五条の中にある。

 

嫌な事を考えた五条は頭を振りかぶり、虎杖に視線を向けた。

 

「これから酷なことを言うが、自分のことしか考えてない阿呆や等級違い……要は呪霊で人を死なせる人間は、呪術界に山ほどいると断言できる。」

 

補助監督、呪術師。

周囲にいる人間はほぼほぼ信用できないのが大多数だ。親切にされてもよくしてくれたとしても、警戒は緩められない。良くしてくれたと思ったら次にはもうそれが仮初だったなんてこと、十二分に有り得る。任務に行ったら補助監督は信用せず、等級違いがあっても何もなかったですよと平然としていなければならない。それが、この世界の常識だ。

 

「お前は数週間かそこらでここに来た。だからこの保身馬鹿が多い呪術界にとって、なにも知らないということは致命的な訳だ。少年院で呪霊の簡易的な説明はされただろう?」

「でも、それで全てを知った訳じゃない。」

 

五条の話を聞きながら、虎杖は脳内で呪霊の階級について話した伊地知が浮かんだ。

 

「虎杖、伏黒、釘崎。」

 

五条は1年たちの顔を見る。

 

 

「前に戦っただろう特級。あれで力の差を思い知っただろう?」

 

 

四級、三級、二級、一級。そして特級。

虎杖たちが少年院で挑んだ呪霊は特級だったと報告書で聞いた。どうせこれも腐ったミカンの策略だ。けれど、これで特級との力の差をありありと思い知っただろう。

感謝はしたくないが…特級の強さについて知れたのならそれはよかったと思う。

呪術界は魔窟。今のうちに知っておいて損はないのだ。

 

 

「これからお前たちは自分の力に合った等級を自分で見定めて選ばなくてはならないんだよ。」

 

 

「死力を尽くせ。呪霊を観察しろ。死なないためにどうすればいいのか思考を止めるな。

 

───それが、私から言える言葉だ」

 

 

 

一瞬の静寂。

 

 

 

「…本当に、心配したんだからな」

「ほんとよ。…同期がいなくなったかと思ったんだから」

 

 

 

仏頂面の伏黒が言った言葉と唇を噛んで泣くのを我慢する釘崎の言葉に虎杖が止まる。そして、虎杖は同期の二人に頭を下げた。

 

「…! ごめん。本当に。」

「もう絶対すんじゃねぇ。…次やったら顔面パイ食らわせるぞ。」

「珍しく伏黒も良いこと言うじゃない。それいいわね!次からそうしましょう。」

 

伏黒の言葉に釘崎が同調した所を見て虎杖から助けを求められているのを感じつつ、五条は満面の笑みで言い切った。

 

「ちなみにもしそうなったら僕も参加するよ。虎杖、お前次やったら3連続顔面パイになるな。精々生きているうちはやらないことだな」

「ゼッタイヤリマセンゴメンナサイ」

 

三人から笑いが出始めた所で、五条はさっきの続きとでも言うように話し始める。

 

「伏黒と釘崎が呪術師をスタートしたなら虎杖はまだスタート位置にすら立ててないひよっ子なんだ。お前は二人に比べて知らないことの方が圧倒的に多いんだよ。」

 

真剣な虎杖を想う言葉に伏黒は補足をする。

 

「それもそうですね。元々五条先生の所で学んでた俺と祓ってた釘崎は呪霊のことを大体わかってる。だけど」

「───だけど、虎杖はそうじゃない。そう言いたいんでしょ、先生」

 

釘崎もどうやら伏黒の言った言葉に補足をしたようだ。

(やっぱり持つべきは優秀な生徒だな〜)なんて思いながら、五条は虎杖へ向き直る。

 

「そういう事だ。あと少しで姉妹校交流会があるんだ、そこまでに力をつけてもらわなきゃ間に合わない。」

「姉妹校交流会?」

 

虎杖の言葉に、釘崎が答える。

 

「高専には東京校と京都校があるのは知ってるわよね?それの交流戦みたいなものよ」

「え、高専ここだけじゃないん?」

 

虎杖悠仁の馬鹿さ加減に伏黒は頬を抑えた。釘崎はどうやら再度呆れているようだ。

 

「…ハァ…本当に何も知らないのね。そう、高専には東京や京都の他にも北海道などの呪術高専があるのよ。」

 

釘崎の言葉に、虎杖は頭を傾げた。

 

「ならなんでその高校はここに来ないんだよ?」

「話は最後まで聞きなさい。他の呪術高専と一緒に模擬実技する場所と面積はここにはない。それに人もいっぱいは呼べないの。だから歴史のあるこの二校が戦うことになったらしいわ」

 

続けて、伏黒が喋る。

 

「で、京都と東京で生徒同士の模擬戦して勝った方で来年のやる場所を決める。それが例年のルールだ」

 

「へー、なるほどなー!だから先生はその交流戦?までに力つけろって言ったのか」

 

正座の体制のまま納得がいったとでも言うようにぽんっ、と手を叩く虎杖に、伏黒は「お前は何も知らなさすぎんだろ」と軽くツッコむ。

 

 

そうして、五条は虎杖に手を差し出した。

 

 

「間に合わなかったら困るのは僕なんだよ、だから修行をつけに行ってもらう。 これから僕が信頼の置く呪術師を紹介するからさっさと行くぞ。とりあえず立て、虎杖」

 

手を差し出された虎杖はその手を掴んで立とうとする。だが、うまく立てない。と言うか足の感覚自体がない。

この現象を、虎杖はよく知っている。

 

「……ごめんちょっと待って先生。足痺れた」

「虎杖お前…なにやってんだよ」

数分座っていただけなのにも関わらず足を痺らせた彼に、伏黒はさらに呆れた眼差しを向けた。

 

「すんません!!!」

「まぁゆっくり行こう、任務は逃げないからな。 ───あ、あと。ちょっと二人には話したいことがあるんだ。だからここで自習しててもらってもいいか?」

「分かりました」 「わかったわ」

 

了承の言葉を聞いた五条は満足そうに頷き、虎杖は情けない体制(へっぴり腰)のままとある呪術師()()の所まで案内されるのだった。

 

 

 

 

 

▶▶▶▶▶

 

 

 

 

 

数十分後。

五条は伏黒たちのいる教室へ帰ってきた。

 

「意外と早かったわね」

 

そこには、しっかり自習と予習をしている二人がいる。

 

「お、ちゃんとやってんな。偉い偉い」

 

二人の頭を撫でた五条に伏黒はそっと五条の手を掴む。本題を促すためだ。

 

「先生は確か話したいことがあるんですよね。俺たちはどうすればいいんですか?」

「おぉ、さすが伏黒。察しがいいな。」

 

五条は、姿勢を直す。

 

 

 

「───両面宿儺の器こと、虎杖悠仁についてだ」

 

 

 

そう言うと、二人の表情は自然と硬いものへと変わっていった。さっき会った同級生のことだ。その話題がここで出され、しかも本人が居ないのならなにかしら理由があるのだと察するだろう。

 

「基本的には普段と変わらず座学と任務を熟していってくれればそれでいい。だが、二人には秘密裏にやってもらいたいことがあるんだ」

 

五条の言葉に、伏黒は首を傾げる。

 

「やってもらいたい事?任務ですか?」

「…そうだな、まぁ、ある意味そうとも言うな」

「ある意味?どういうことよ」

 

歯切れの悪い五条に問うたのは釘崎。

 

「これは僕の個人的な頼みごとだ。だから、断ってくれても構わない」

 

そう彼らに前置きをした五条は、伏黒たちの目を見つめる。

そうして、口を開いた。

 

 

「僕の頼む”あること”。

      それはな────」

 

 

対面は果たしていないが、2年生や夜蛾学長には事前に虎杖悠仁が生きていることを知らせているし、伏黒たちに頼んだ”あること”については本人たちと京都校からの了承も貰っている。

”あること”(ソレ)について知らせていないのは唯一、五条が信用できないと思っている呪術界の上層部たちだけ。

 

「…虎杖が生きているとわかった瞬間の顔が見物だな。」

 

五条はすぐそこまで来ている未来のことを考えながら鼻歌交じりに謳い、デコピンで目の前にいた呪霊を祓った。

 

 

 

 

 





違和感ありまくり。実質1年なのでしょうがないね。
IFは投稿するのに邪魔なので消しました。完結まで行ったら再掲予定ですが完結まで走れるかは微妙。
程々にやります。

次回投稿日は3月8日(日)です。
次回、虎杖はとある呪術師たちと対面し……?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。