家入成り代わり(但し夏油傑は存在しないとする)   作:春さん

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☆とりあえず先生のことは絶対怒らせないようにしとこう────!






呪詛師だった家入先生とかその家入先生が死んだとかなんにも知らない俺だけど、五条先生は最強ってことは再認識した。

 

 

伏黒たちと’’あること’’について話す前。

五条は虎杖にある任務をしてもらおうと一人の術師と補助監督を呼んでいた。

 

「それにあたって、虎杖には紹介したい人物がいるんだ。」

「入ってきてくれ、灰原、七海」

 

五条がそう言うと、それを聞いていたかのようにガチャリと扉が開く。

そこには茶色の髪をした元気そうな男性と、それと反対に大人しそうな金髪の男性がいた。

 

「まずこっちが灰原雄。今回の任務の補助監督を担当する。分からないことがあったら基本的に灰原に聞いてくれ」

「始めまして!たしか指を飲んだ虎杖くんだよね?よろしくね!!!」

 

恐る恐る手を出すとブンブンと腕を振って挨拶をされたので、虎杖は「おなしゃっす!」と頭を下げる。

 

「ん?」

 

その拍子に、彼の足になにか違和感のあることに気がついた。

 

「これ…」

「お、気付いた!?実はこれ、義足なんだよねー! うまくできてるでしょ」

 

彼が左手で左足を軽く叩くと、鉄の音がする。

 

「すっげーー!!!アニメでよく見るやつじゃん!!」

 

虎杖が大興奮していると、ポカンとした金髪の男性が目に入った。灰原は男性へ笑顔を浮かべている。

 

「ん?どしたん??」

 

目をパチパチとさせながら困惑していると、それを見ていた五条が虎杖の髪を撫でる。

 

「言っただろ?七海。虎杖は大丈夫だって」

 

五条が七海と呼ばれた金髪の男性にそう言うと、「…みたいですね」と穏やかな瞳を虎杖へ向けた。

 

「はじめまして、虎杖くん。私は七海健人と言います。よろしくお願いしますね」

 

差し出された手を取ると、灰原さんとは違いガッシリとした手をしていることが分かる。

 

「七海は数年前に出戻りで早々一級になった実力者だ。常識人だから頼んな」

 

五条の言葉に嬉しそうにしながらも表情を取り繕う七海に灰原は「嬉しいね!!七海!!!」と大きな声で言った。

その声は五条と虎杖に聞こえるような声だった。

 

「うるさいですよ、灰原」

 

七海はどうやら照れた様子で灰原に突っかかっている。

 

「七海と僕はね、五条さんのことが大好きなんだ!!」

 

「灰原!!!!」

「そうなんすか?!」

「うん!!ある時、僕が任務で死にそうになったときに助けてくれたからね!!!」

「へぇ〜〜〜!!」

 

あとで詳しい話を聞こうと心の中で思いながら、虎杖は七海へ質問する。

 

「てかさ、七海さんって五条先生のことどう思ってんの?」

 

単純に気になったのだ。

虎杖は五条のことを1年の担任だと思っている。しかし、第三者の目からするとそうでもないかもしれない。

だから、こんな質問をしたのだ。

 

「どう、とは?」

「んー…術師として?かな」

「それはもちろん信頼しています。五条さん以外に最強は務まりませんよ」

 

七海と虎杖の声が聞こえてきたのだろう、五条は七海の方へやってきて「嬉しいこと言ってくれんなー、七海」と微笑みを浮かべている。

対して七海は淡々と「事実ですから」と返していた。

 

「それと、虎杖くん。子供は大人に守られるのが仕事です。だから困ったことがあったら容赦なく頼りなさい。いいですね?」

 

急な真面目な雰囲気に虎杖は困惑しながらも「お、応!!」と答える。

 

「七海、そんな回りくどい言い方しないで心配だからちゃんと報告してって言えばいいのに。ツンデレだね!!!」

「灰原、いい加減にしてください」

 

コツン、と七海は灰原へ小突く。

「いてっ」と少し痛がりながらも、その表情は悪くなさそうだ。

どうやら二人は虎杖のことを心配しているだけで、悪い人ではないようだった。七海と五条が話している所でコソッと灰原は語る。

 

「七海は僕の義足についてよく悪いことを言ってくる人が多いからあんまり信用しないようにしてたんだよ。」

 

ふと、五条が言っていた言葉を思い出す。

 

「なるほどな!」

「それを覆してくれてありがとね、虎杖くん」

 

心から笑みを浮かべる灰原は初対面ながらも虎杖の心に強く残った。

 

 

「んじゃ、僕はここでお暇しようかな」

「自慢の後輩たちだ。是非仲良くしてやってくれよ。」

 

 

二人の肩を引き寄せた五条は七海と灰原それぞれをしっかりと見ながら虎杖の方へと微笑むと、姿が消えた。

 

 

「さて、では任務内容について話しましょうか。灰原」

「さっそく虎杖くんに資料渡すね!!」

 

灰原から【シネマサンシャインで起きた変死体について】という資料を受け取った虎杖は、その内容を見る。

 

 

 

「これは…」

 

 

 

「死因は頭部変形による脳圧上昇に呼吸麻痺。ただ、この通り頭の変形の仕方が可笑しいらしくこちら(呪術)側の案件になりました」

 

冷静に事件の概要を話す七海に、資料を見た虎杖は初めて見る凄惨なものに声が出なかった。映画館で発見された死体と思われるものは頭や体がぐにゃりと曲がっており、見れたものではない。

七海や灰原は沢山の任務を担っている為、慣れた物だ。しかし、虎杖はそうではなかった。

 

彼はたった15歳の少年なのだ。

 

本当ならば、非術師だったはずの。

 

 

 

 

それでも七海が虎杖にこの案件を課したのは、訳があった。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

───数日前

 

 

 

 

用事があるのだと五条に呼ばれた七海は放課後、呪術高専の校舎である場所へと来ていた。

その場所とはもう使われていない、七海と灰原が15歳の頃に使っていた教室だ。きっかり10分前に着き過去を思い出しながら五条を待っていると、大きな音を立てて教室の扉が開いた。

 

「音すっごいなこれ。こんなに大きいとは思わなかった」

「そうですね、私も開けたときは驚きましたよ」

 

なにぶん音が大きすぎる。あと閉まりも悪すぎる。

あの頃もこうだったか?と疑問に思いながら、この教室で学んでいた時のことを思い出した。

 

「覚えてますか?この教室でしたこと」

 

五条の瞳に目を細める七海の顔が映る。

眩しそうな顔だった。

 

「…あぁ、覚えてるよ。といっても、休み時間だけだけどな。 呪力と術式が分かんなくて苦戦して僕にどうだったか聞いたときもあったな」

「灰原が夜蛾さんを怒らせたこともありましたね」

 

情景が思い浮かんだのか、クスリと七海が笑う。つられて五条も笑った。

 

「あぁ、日下部さんからそれ聞いたな。なんだっけ、寝坊で無断欠席だったっけ?」

「そうですそうです、前日に桃鉄をやって夜更かししたのがバレて連帯責任で三人立たされたやつです」

「あー、あったな。正座もさせられた」

「日下部さんは呆れた目で見てましたよ。懐かしいですね、五条さん」

 

 

「ああ…懐かしいな、ここは。ここには僕達の青春が詰まってる」

 

 

「───そうですね」

 

 

しん、と静寂が訪れる。

しかしそれは、心地の良い静寂だった。

 

「……本題に入ろうか。七海、お前は虎杖悠仁のことを知ってるか?」

「ええ、知ってますよ」

 

虎杖悠仁。

その名を知らない者は、この世界にはいないと呼ばれるぐらい有名になってしまった。

なぜならば、彼は15歳にして両面宿儺に適合した器なのだから。

 

「何処まで知ってる?」

 

五条の言葉に、七海は眉を顰めた。

 

「…何処まで、ですか。両面宿儺の器として適合し、秘匿死刑となったことくらいですかね」

 

虎杖悠仁の事は嫌でも流れてくるので基本情報は知っているが、それしか知らないのだ。

 

「……なら、虎杖が死んで生き返ったまでのことは知ってるか?」

「全然これっぽっちも知りませんね。」

 

七海は食い気味に即答した。

死んで生き返った?知らないに決まっている。

 

「じゃあ七海には話せるか。実は───」

 

少年院での虎杖のことや保護した理由について全てを聞いた七海は、五条の次言うだろう言葉を予測する。

 

「なるほど、つまりは私の次の任務に同行させてほしいと。そういうことですか?」

「あぁ、そういうことだ。理解が早くて助かる」

 

「しかし、この案件は些か15歳に早すぎるのでは?」

 

七海の言う言葉は最もだった。

人の生死や呪霊の悪意にまだ触れていい年齢ではない。そういうことを言いたかったのだろう。

だが、五条はその見解を(こと)にする。

 

「かもな。だけど、今のうちに触れておいて損はない。上に行くにつれて呪霊がどれだけ賢くなるのかはお前も知ってるだろ、七海」

「…それもそうですね」

 

呪霊は上の階級に行くにつれて、頭を使うようになる。

卑劣なことも平然とするようになる。それが呪霊だ。

だからそれを認識させる為にも、この任務で呪霊とはこんなものなのだと思っておいてもらう。そして後々できれば慣れさせる。

五条が言いたいことは、こんな所だろう。

 

「…分かりました。灰原もいるんですよね?」

「あぁ。補助監督として着いてもらう予定だ」

「なら大丈夫です。灰原とならどこへでだって行けますから」

 

 

 

「じゃあ、当日はよろしくな」

 

五条は手をヒラヒラと振りながら、車へ乗っていった。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

時は戻り、現在。

七海はチラッと虎杖の様子を横目に見る。

動揺はしているようだが、虎杖は現場に決して目を逸らさない。五条が思っていたことも必然的に達成できそうだなと思っていると、灰原が喋った。

 

「虎杖くんは、呪術界が政府公認の組織だって知ってるよね?だから今回も知ってる政府内部の人にちょちょっと細工してもらったんだ!」

「けれど、現場の人は私たち呪術師のことをよく思ってない人も多いです。」

「まぁ呪霊を視れる人もこの世界では少数だしね!当たり前だよね!!」

 

ポンポンと淀みなく進む当然の会話。

長年付き添って来たというのも間違いではなさそうだ。

 

「じゃ、早めにいこっか!」

 

灰原が歩を進める。七海もどうやらついていくようだ。

 

「え? どこに行くんっすか?」

 

その返答はすぐに返ってきた。

 

 

 

 

 

 

「事件現場のシネマサンシャインですよ。」

 

 

 

 

 

 

▷▶▷▶▷

 

 

「てか、なんで指食べた俺を信頼してくれたん?」

 

現在 シネマサンシャインまでの道すがら。

車で移動している最中、ふと疑問に思ったのは虎杖だった。その疑問に、ハンドルを握る灰原が答える。

 

「五条さんが紹介する人なら大丈夫だなって思ったんだ!ね、七海!」

 

隣にいる七海へと話しかけると、彼は「…まぁ、そうですね。大部分は。」と素っ気ない言葉が返ってくる。

 

「へー!そうなんだな!」

 

関心しながら気になることを話していると、どうやら目的地へ着いたようだ。

 

「さ、行きますよ。」

 

 

 

それからは色々あった。

 

 

 

ナナミンたちと一緒に呪霊の残穢と言うものを視たり、順平の学校で四級の呪霊を祓ったり、その道中で灰原さんが死にかけた任務について聞いたり、順平と知り合ってミミズ人間を一気見して、順平の母親の凪さんに泊まらせてもらって…それで、医療班からの人から学校で祓った呪霊が元々人間なのだということを知らされた。

 

 

俺が殺したのは、人間なんだ。

俺は人間を殺したんだ。

そう、思った。

 

 

つい数分前のことだ。

順平が非術師を傷つけている所を目撃した。だから止めようとした。で、話を聞いたら母親──凪さんが死んだらしい。………話したときは、元気だったのに。ミミズ人間の映画について話してたのに。

ギリッ、と奥歯を噛みしめて、目線の先を見る。そこには長髪の呪詛師がニヤニヤとしながら突っ立っていた。

 

それから非術師について話して───順平と話し合って、俺を殺していいと言った。

俺は順平のところを立ち塞ぐ術師だ。だから当然のように攻撃をされたけど、反撃はしなかった。…反撃をしたら、終わりだと思ったから。

…宿儺からは馬鹿だとかアホだと言われたが、それでいい。それで順平の気が晴れるなら、それでいいんだ。

そして、今。

 

なぜか分からないが、順平がフッと意識を失ったのが分かった。理由も分からず虎杖は急いで脈を確かめる。

ドクン、ドクンと脈打つ血液。

 

弱々しいけど、まだ生きてる…!

 

──順平には、まだ生きられる可能性がある。そう考えたら、自然と身体が動いた。

今ここで動けば順平は助かるだろうと俺の直感が言ってる。なら、助けなきゃ。順平はここで死んじゃ駄目なんだ。

 

これは絶対、正しい死じゃないと思うから。

 

急いで遠くからやってきただろう気配を感じて、俺はその名前を呼ぶ。

 

 

「ナナミン!!」

 

 

ナナミンと過ごしたのはたった少しだけ。

でも、ナナミンは俺に呪術を教えてくれた。子供は大人に守られるべきだと言ってくれたんだ。

先生が言ってた七海は信頼できる、ってモンの意味がなんかわかった気ぃする。ナナミンはなんか信頼できるし信用できるんだ、無条件に。

 

「…ナナミンと言うのを辞めてくださいと言ってもアナタは聞かないんでしょうね。どうしましたか、虎杖くん。」

「順平、まだ意識があるみたいなんだ。──だからソイツの相手お願いしてもいいかな。」

 

順平を殺そうとしたソイツに視線を向ける。

呪詛師はどうやら、鼻から血を流しているようだ。さっき一撃は食らわせられた。だから、足止めはできてる。

 

「俺は順平を医療班の所に送るから、お願い。」

「その必要はありません」

「え?」

 

足を踏み出そうとした俺は、バッとナナミンの方向へ向く。医療班が来ないと順平は間違いなく死ぬ。だから俺は移動させようとした。なのに───

 

「必要がないって、どういう」

 

疑問を言おうとした瞬間、ナナミンと言葉が被った。

 

「そもそもこの任務は五条さんが私に振った任務なんです。なにかあると思っていました。ですから、この高校へ来る前に連絡しておいたんです。」

 

 

 

────五条さんに。

 

 

 

「さっき現在地を添えて連絡をしておきました。よっぽどのことがない限り五条さんは遅刻なんてしない。もうすぐここに来るはずです」

 

その言葉を言い終わった瞬間、どこからか現れた手がナナミンの肩を労るように軽く叩く。

その手を辿ってみれば────

 

 

「やっほ〜、虎杖。見ない間に随分成長したな」

 

 

────五条先生が、ナナミンの肩を占拠しながらヒラヒラと手を振っていた。

 

 

 

 

 

▷▷▷▷▷

 

 

 

 

 

「先生!?」

 

 

七海は独占する肩を意識することなくそのままに会話する。

 

「連絡しておいてよかったです、本当に」

 

一方その頃、虎杖悠仁(宿儺の器)の言葉に、呪詛師は背中に冷や汗を垂らしていた。

呪詛師には他者の魂を知覚することができる力がある。もしあれが偽物ならあんなに魂がダイヤモンド鉱石のように神々と虹色に輝いている筈がない。

 

 

だからあれは、間違いなく本物…!

 

 

「んー、これは件の吉野順平だな。」

 

五条はサングラスを外し、呪力の流れを確認する。

 

「………どうやら素人故に呪力を使いすぎて気絶したようだ。これくらいなら死にはしないだろう、大丈夫だよ」

 

五条の洗練された呪力に、呪詛師は一歩後ずさる。逃走を図る為だった。

 

「……本当に、?」

 

五条は虎杖を安心させる為に、桃色の髪を撫でる。

 

「あぁ、本当だよ。僕が嘘を付くとでも思うか?」

「いや、それは……思わないけど…」

「なら僕を信じろ」

 

力強く笑う五条に虎杖の強張っていた力が抜けた。

 

「よかったぁー!!先生、あんがとな!」

 

逃げること(イコール)負けではない。

この世界では生きていれば勝ちなのだ。

もう一歩、後ろへ下がる。…あと二歩後ろに下がればそこには窓がある。そうすれば、体を小さくして逃げられる。確実に。

 

「…七海がいるんなら灰原もいるんだろ?」

 

五条が七海の方へ視線を向けると、七海はスッと虚空の方へ視線をズラす。すると、

 

「いますよ!!!」

 

そこには、居なかったはずの灰原が元気よく立っていた。呪詛師はまた一歩、後ろに下がる。

どこから現れたのか、そんなのはどうでもいい。早く、早く逃げなければ。

 

「吉野をお願いしてもいいか?」

「医療班に運び込みでいいですか?」

「それでいい。治療費代は五条家に頼む」

「了解です!では、お預かりしますね!!」

 

灰原が慣れたように吉野を背負うのと同時に、さっきまで居たはずの彼らは姿が共に掻っ消えた。…あと一歩!!一歩で逃げられる!!

呪詛師は勝ちを確信して口元に笑みを浮かべながら後ろに下がろうとし、虎杖はなにがあったのか混乱して五条へ話しかけようとしたその瞬間。

 

「おい、お前」

 

虎杖は一言で五条が出した迫力に、唾を呑み込む。喉はカラカラで目が離せない。

 

あと一歩で五条から逃げられると慢心した呪詛師は、最後にチラッと視線を向ける。

………そう、目を五条悟へ向けてしまったのだ。よりによって、最強に。

刹那の出来事だった。

首根っこを掴まれた呪詛師は、外に移動させられ校庭で無様に這いつくばっていた。

 

 

 

 

「え、どうなってんの?!」

 

五条先生が呪詛師の首を掴んだかと思ったら、校舎中から校庭に場所が変わっていた。虎杖の状況を説明するならこんな感じだろうか。

数メートル遠くには五条先生と呪詛師が派手に戦闘している。しかし、呪詛師はどうやら五条先生には叶わないようだ。その証拠に防戦一方なのだから。

いきなり風景が変わったのは呪詛師だけではない。虎杖と七海が高校の校庭にいる。

だが、どうやら混乱しているのは虎杖のみで、七海は慣れたように呪詛師へと向き直っている。ここで理解をしていないのは虎杖だけだ。

 

「詳しいことは後で話します、まずは()の祓除をしましょう。」

 

七海は、冷静に呪詛師を見つめている。

 

「ここには、もう五条さんがいるんですから」

 

信頼が込められた言葉。

その言葉に虎杖は頷いた。

 

 

「────! 応!!」

 

 

虎杖悠仁は、殺意を呪力にして拳に纏う。

 

 

だが。

そこから始まったのは、圧倒的な蹂躙だった。

ここまで虎杖たちはなにも手を出していない。ただ見て呆然としているだけ。

他者が手を出す暇すらない質量と呪力量。術式、足し引きの力。

どれをとっても上質で、油断という二文字すらない。さらには虎杖たちのことを気にかける(加減できる)余裕すらある。

呪詛師()は人を殺してきた。日常的に、ずっと。

それは呪霊の見えない大人子供であったり、一緒に仕事をする呪詛師であったり、将来活躍しそうな術師であったりもした。けれど、それが通用していたのは相手が格下だったり対等だったからだ。

対等ではないヒエラルキーの上の上なら、話は完全に別になってくる。

呪詛師には天罰が下ったのだ。今まで殺した、人で遊んできたツケを今払わされているのだ。

現に彼は術師を殺す呪詛師(人でなし)を決して逃がすまいとしている。それだけでもう彼の負けは既に決まったようなものだった。

 

「五条先生、やっぱすげぇわ」

「そうですね、あの人は凄い。」

 

やはりあの人の前で悪いことはするものではないな、と。七海は密かにそう思いながら虎杖と見つめる。

一応臨戦態勢はしているが、この様子だと決着がつくのは早いだろう。二人はそう思っていた。

 

「で、ここからどうする気なんだ?」

 

絶対零度の青い瞳で首を掴む力を強める五条はそう、まるで人を殺すかのような目をしている。

五条は数多もの呪詛師・呪霊を当然のように祓い続けているのだ。虎杖が座学を受けているときも、鍛錬している時も、さらには任務を受けているときも変わらずに。

そうだ。虎杖は、普段教師をしている五条しか見ていなかったのですっかり忘れていたのだ。

彼は呪術界隈の改革を掲げ、特級の名を冠している。

 

 

 

 

 

──────現代における、史上最強の術師なのだと。

 

 

 

 

 

▶▶▶▶▶

 

 

 

 

 

五条悟からの首絞めをどうにか出来ないかと足掻く。あがいて、あがいて、あがいて。

けれど、どうにもならない。絞め上げられた首はとっくに息すら出来なくなっている。

五条悟の手は首のみぞならず、心臓を通り越して魂までもを潰されそうになっているのだ。背丈を小さくしても変形して攻撃しても意味はない。なぜなら、それらをもう試したからだ。

これでは魂が潰される未来はもう変わらない。

 

どうする、どうする、どうしたら逃げられる。

思考は絶やさない。どうやったら逃げられるかパターンもいくつか用意した。

 

 

だけど、どうなっても勝てる道筋が見えない。

 

 

不気味すぎるアイツから会得した領域展開も発動しようとした。けれど、今領域展開をしたところで五条悟には勝てないだろう。どう足掻いても、勝てないのだ。

俺は知ってる。五条悟の領域展開は、動けなくなるものだと言うことを。アイツから聞いたんだ、領域展開をされたらそれでおしまいだと。あっちの仲間が来るまでは死ぬと思いながら過ごすしかないのだと。

五条悟は最強。それは自他共に認められている。

だからこそ五条を封印するしか方法はないのだと。それは知っている。だけどこんなのは知らない!聞いてない、俺は聞いてないぞ!

 

「順平に呪いを生まさせて虎杖悠仁を殺す簡単な計画じゃなかったのかよ!ここに五条悟がいるなんて聞いてないぞ!!おい、返事しろよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

───家入硝子!!!!!

 

 

 

「…は?それ、どういう意味?」

 

彼が言葉を理解した瞬間、サァーーッと強い風が吹き抜ける。五条の髪と、呪詛師の髪が揺れた。

同時に、呪詛師の首絞めが僅かに強くなる。

 

瞬間。

 

 

「五条さん!」

 

 

彼は、五条の行動を止めた。その人物とは────

 

 

 

 





ストックそろそろなくなります(早い)
次回投稿日は3月14日(土)です。
次回。五条は呪詛師を…!?
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