自由と解放のために   作:風ノ華

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今ある分を連続投稿です。(2017/02/09)


第10話「ドラムに残る医者。笑う魔女と逃げるトナカイ」

「こいつはそう簡単には死なないな」

 

 子ラパーンに別れを告げた後、更に数百メートル降りた所でサンジの気配を感じ取ったクロトは急いで掘り出しルフィの後を追い始めた。

 サンジについては簡易診断だが、雪に埋もれていたための体温低下と肋骨・背中等のダメージはあるが、漏れ出ている想…妄想を見聞色の覇気で感じ取れているため過剰な心配はせずに止血だけ行い腕に抱えて月歩で低空を駆けているところだ。

 

「…ぇい!」

 

 …幻聴だな、時間もなくまた関わりたくもないと判断したクロトは敢えてそう考え無視するように速度を上げる。

 

「それにしてもこの吹雪、視界も悪いしかなりの体温が奪われるな。ルフィはあんな格好で本当に大丈夫なのか?」

 

 先を進むルフィとナミの安否を気にするクロト、だがその思考は後方より放たれた矢によって中断させられてしまった。

 あの距離でも狙いをつけられるのか、なら仕方ないと月歩を止めて雪道に足を戻すクロト。後方からは上に馬鹿面下げた男達を乗せてドドドドッと音を立てて向かってくるカバが一頭。追い越し、通せん坊をするかのように立ち塞がったそれから降りた三人組はこの島に来る途中で出会った無能王(ワポル)一味だった。

 

「俺は急いでいるんだが何の用だ無能王?」

 

 というかお前、よく溺れていなかったな。

 

「むの!?貴様、ドラム王国国王であるこのオレ様に向かって何たる口の利き方!チェス、マーリモ、この無礼な男をやってしまえ!!」

「「御意に!」」

 

 カバから降りた二人は一人が弓矢で、もう一人が近接戦闘を仕掛けてきた。そのどちらも危なげなくかわしカバを飛び越え、油断することなく山へと足を進める。

 意外に早く攻撃を諦めたのか姿が見えなくなった。だがクロトは足を止め前方の雪の塊に向かって乱脚を三方向に繰り出した。

 

 見えない筈なのに突然の攻撃を受けて三人が雪の隠れ蓑から飛び出した。

 

「貴様、何故我等の居場所が分かったのだ!?」

「俺を殺そうという気配が漏れているからだ。いいから邪魔しないでくれないか無能王、こっちは急いでいると言った筈だが?」

「またしてもおれ様を侮辱するとはっ!王に対して本当に無礼な奴!…よしチェス、おれ様は新しい法律を思い付いた、書き留めよ。『王を無視する者侮辱する者、此れ死刑と処す』。まずはその肩の死に損ないから刑に処してくれるわアベシッ!?」

『ワポル様ァァッ!?』

「お前は…」

 

 後方から飛び跳ねてワポルに一撃を与えたのは顔に傷を持つボスラパーンだった。

 

「傷の浅い仲間を連れてきたのか。こっちの事は気にせず安静にしていろよ!」

 

 ボスラパーンは背中の子ラパーンを降ろすと一斉にワポル達に飛びかかっていった。

 

「ガウッ」

 

 子ラパーンは急かす様にクロトの腕を引っ張る。

 

「だがっ!」

 

 クロトはそれが引き起こす結果を分かっていながらも彼等の意思を汲み取らねばならないことに歯噛みをし、再び山を登りだした。

 

 

~ SIDE ワポル ~

 

 誰だ、このおれ様にこんなふざけた真似をしやがった奴はッ!

 

「ワポル様!ご無事ですか!?グッ!?」

 

 ラパーンだとッ!

 おれ様が幼少の頃の狩りで唯一仕留め損なったドラム一凶暴な生き物。おれ様の放った矢は僅かに額にかすっただけ、そうしたら奴は猛然とおれ様に襲い掛かってきやがった!

 そのときはまだ従順であったドルトンが追い払ったが以降おれ様はラパーン殲滅を掲げてきたのだが、先王は良しとせずようやくおれ様が王となってから始まったが程なくしてあのヤブ医者騒ぎにドルトンの反逆に海賊の来襲。

 出ばなを挫かれてしまい今の今迄忘れていたが、王の座に戻ったあかつきには今度こそ実行せねばならないな。

 

 そうとなればおれ様のバクバクの実の真の力で…

 

「捻り潰してくれるわ!」

 

~ SIDE OUT ~

 

 

 

「ガゥッ」

 

 後ろを心配する子ラパーン、離れていても仲間の事が分かるのか。段々と聞こえなくなる『声』にクロトはやはり残るべきだったかと思いつつも足を止めずに山をひたすら登る。

 クロトにとってワポルなど敵にすらならない。それなのに敢えて初めて会ったときからほぼ無視をしたのは要らぬ【知識】があったからだ。このドラム島での出会い、それを書き換える訳にはいかないからと彼等を見捨てたのだ。

 

「まーっはっはっは!」

 

 だからこそ徐々に近づいてくるこの声には余計に不快になる。

 

「ガゥッ!ガウッガゥ!!」

 

 仲間の仇か俺を先に行かそうとするためか、ついに俺の手を離してしまう子ラパーンに不可避の矢が迫る。

 

「グッ…」

 

 サンジに当たらなかったのは僥倖か?左手・右脚に一本、背中に二本、鉄塊が間に合わなかったため深々と刺さるそれに無能王は一転して高笑いを始める。

 

「まーっはっはっは、まさかラパーンのガキを庇うとはカバな奴。まるで何処ぞのカバを見ているようだ。よぉし、お前達とどめを刺せ!」

「御意に!」

 

 ワポルの命令を受けチェスは再び弦を引き絞った。ギリギリと限界まで矢を引き、笑みを浮かべて指を離した。

 

「変化、龍化鉄塊"鋼"」

 

 風切音を立て飛来する矢を獣型へ変身したクロトはかなりの堅さを持つ龍の皮膚を六式の鉄塊により更に堅固なものへと変化させ今度はそれを弾いた。

 

「ヌッ!?貴様も悪魔の実の能力者だったのか」

「お前等はいい加減邪魔だ!黒炎弾!!」

 

 羽ばたき大きく拡げた口から放たれた火球はワポルの足下を的確に撃ち抜き中規模の爆発を起こした。当然のように起こる二度目の雪崩にクロトは一人と一匹を掴み急ぎ飛び上がった。下からなにやら喚いている声が聞こえるが一切無視して登るクロト。気配を探りながらのため時間がかかるかと思ったがルフィは程なくして見つかった。

 

「待たせたな、ルフィ」

「クロ、ト…」

 

 素手で山の半分以上を登っていたルフィ、上着は少しでも寒くならないようにとナミに着せて自分はガチガチに震え凍傷にかかりながらも懸命に上へと進んでいた。

 差し出された手に足を付けたルフィは気が抜けた為かそのまま座り込んだ。

 

「悪ぃクロト、後頼むよ」

 

 そのまま眠ってしまったルフィを包み込みクロトは風を切るように一気に飛び上がった。

 

 

 

「ようやく、頂上…か…イカンな、血を流し過ぎたか…」

 

 かなりの速度が出ていたため時間をかけずに登頂出来たが、あと数メートルで城門に辿り着くというのに血を失い過ぎたせいか視界が霞みだす。そのせいか目の前に二本足で歩くモコモコとした茶色い生物が見えた。

 幻影か?

 

……………

………

…あぁ、何だ『彼』か。

 

「ただのタヌキ…か…」

 

 こんな状況だがやはり一度はこの台詞を言っておかないとな。

 

「トナカイだよ!ってオイお前!!しっかりし………」

 

 予想通りのツッコミに満足したクロトの意識はそこで途絶えてしまった。

 

 

~ SIDE チョッパー ~

 

「ドクトリーヌ!患者だ、それも四人と一匹!!」

「島の奴等がわざわざ此処まで自力で来たのかい?一匹?それぞれの症状は?」

「それが島の人間じゃないんだ、全員から海の匂いがする。あぁでも一匹は違うか」

「さっさと言いな!患者は待っちゃくれないよ」

「わ、分かってる。それぞれの状態だけど凍傷になりかかっているのが一人、あばらと背骨にダメージを受けているのが一人、気絶したラパーンの子供が一匹」

 

 麦わらの人間は何で上着を着てなかったんだ?あんなんじゃ凍傷にかかって当然だよ。

 

「問題は残りの二人なんだ。一人は矢傷が数箇所、特に腹部が重傷で出血も酷い。もう一人も高熱、多分この島の外の病気でかなりの重病なんだ」

「分かった、ならまずは熱い風呂を沸かしてそこの馬鹿を放り込んどきな」

「うん!」

「さて、こっちのラパーンのガキと金髪はまぁそこまで問題ないようだけど、この二人は…」

「ドクトリーヌ、入れてきた!」

「よしチョッパーすぐに検査と手術だ。時間が惜しいから全員を同時にやるよ」

 

 いつものようにおれは人型に変身して三人と一匹を手術室へと運んだ。

 ドクトリーヌが女の検査道具を用意する間、おれは髪の長い男の服を裂いた。

 ヒ、ヒドイ傷だ…。今回の出血多量となった矢傷以外にも男には様々な傷があった。そのほとんどがかなり昔のものだったけど右腕の包帯からは火薬の残り香もした。

 

「撃たれたのを自分で応急処置したのか」

 

 薬品の匂いと包帯の巻き方からそう判断し、一応確かめておこうとスルスルっと解いてみるとたしかにそこには銃痕があった。

 

「うん、これなら大丈夫だ。一応包帯を取り換えて…ん?何だこの火傷の痕…?」

 

 すぐ横にはとても印象に残る火傷があった。

 

「何のマークだ?」

「どうしたんだいチョッ…ッ!?チョッパー、こっちとそっちの金髪小僧はアタシ一人でやるから小娘を診な!小娘の方はお前の見立て通りこの島にはない病源菌だよ、処置を急ぎな!」

「わ、分かった!」

 

 ドクトリーヌ、いったいどうしたんだろう…

 

「チッ胸糞悪いね。こんなところでこんな紋章(モノ)見るなんてね…」

 

 

 

 手術と検査・治療は無事に終わった。

 まさか女のほうはケスチアにかかっていたとは思わなかった。ドクトリーヌが万が一の為にって薬を残していてよかったよ。

 

「なぁドクトリーヌ、何であの人間達は一人で診たんだ?そんなに難しい手術だったのか?」

 

 おれの見立てじゃあ二人とも出血が多かったけど片方は矢傷と銃創で、もう片方はあばら骨と背骨。おれでも十分に手術出来たと思う。

 

「そんなことはなかったさ。それよりチョッパー、お前が見た小僧の右腕の事決して誰にも言うんじゃないよ」

 

 右腕?あの古い火傷の痕のことかな?どういう事だろう?

 

「分かったら小娘の様子を見に行きな」

「わ、分かったよドクトリーヌ…」

 

 いつもよりピリピリとしたドクトリーヌの言葉を受けおれはその指示に従う事にした。

 

~ SIDE OUT ~

 

 

~ SIDE ナミ ~

 

 目が覚めたらまた知らない部屋だった。

 確か医者の所に向かうってことで高い山を登ることになった筈だけど、幾分辛さが和らいだ感じがする。ここがその医者の住まいなんだろうか?

 

 ゴリゴリと何かをすりつぶす音に気づいたけど、だけどそれを行っている人の姿が見えない。

 でも誰かが居るのは間違いないからと、まだ少しダルい身体を起こすことにした。

 布団を捲る音にその人も気づいたのかこっちを振り返った。

 

「えぇっと…誰?」

 

 ていうより人なの?それとも鹿のぬいぐるみ?その子は驚きを隠せないままぎこちない動きでドアのところまで後退り何をするかと思えばおかしなポーズで恐る恐るとこっちを窺ってくる。

 えぇっと、これはツッコむべきなのよね?

 

「…隠れるなら向き、逆なんじゃない?」

 

 言われて気が付いたのかビクッとした後そっと体を入れ換えるけど気付いちゃったんだから隠れるにはもう遅いわよ。にしてもこの子、青鼻だけど多分鹿、よね?なのに二本足で立つし人の言葉も多分理解している。どういうことなんだろう?

 

「ねぇ、ここはどこであんたは何なの?」

 

 もしかしてと思って質問をしてみたが返ってきた答えは別の所からだった。

 

「ヒーッヒッヒッヒッ、起きたかい小娘。ハッピーかい?」

 

 ラム酒をラッパ飲みしながら近づいてきたお婆さんは伸ばした片方の指で私の額に触れてきた。

 

「38度2分、熱は多少引いたようだね」

「貴女がこの島唯一のお医者さんの魔女さん?」

 

 医者には見えないけど魔女って呼び名はピッタリのお婆さんだ。見た目がすごく若そうに見えるけど。

 

「あぁそうさ。アタシはDr.くれは、ドクトリーヌと呼びな。ところで小娘、お前達を連れてきた長髪の小僧、ありゃお前達の何なんだい?」

 

 お前達?今の言い方だとクロトだけで行く筈だったけど誰かついてきたのかしら?

 

「長髪…クロトのこと、よね?私達の仲間よ」

 

 しばらく私の目を見ていたドクトリーヌだったけど、やがて納得したのかピリピリとした気配を戻してラム酒にもう一度口をつけた。

 

「そうかい、ならいいんだ」

「ちょっと気になる言い方ね、クロトが一体どうしたっていうの」

 

 ドクトリーヌはもう一度私の顔を見ると小さく呟いた。

 

「…小僧の身体を見たことがあるかい?」

「見たことないわね」

 

 聞き取った呟きの【やっぱりね】と、質問の意図が分からなかったけどとりあえず素直に答えておく。

 ルフィにウソップ、この二人はだらしなくて暑いと上を着ないでいることもそれなりに多い。それにゾロ、アイツは修行だなんだって汗を拭いているところを何度も見ている。

 サンジ君はこの三人とは違うから見た事が…あぁ一度だけあったわね。ココヤシ村でアーロンと戦った後の治療の時に一度。

 

 でもそういえばクロトはないわね…。まだ出逢って短いから?うぅん違うわね、着替えは部屋で必ずしてるし『蒸し暑いな』ってリトルガーデンにいたときも腕まくりすらしてなかったんだから。上着を渡されたときも下にもう一枚長袖を着てたくらいなんだから。

 男連中はどうなんだろう、同じ部屋で寝起きしているから知っているのかしら?今度それとなく聞いてみよう。

 

 ちょっと待った、もしかしたらビビは見た事があるんじゃないかしら?ウイスキーピークを出航してすぐ、ビビがクロトの賞金額を知って『ならあの傷も納得出来るわね』って呟いていた。たしかあの時戻ってきたクロトが着ていた服はMr.5のコートだったわね。多分爆発で服が駄目になったから奪い取ったんでしょうけど。

 合流したら部屋で一回聞いてみよう。なんだかんだでクロトについては知らないことが多いから。

 

「治してくれてどうもありがとう。私達急ぐ旅だからもう行くわ」

「何?馬鹿言っちゃいけないよ。アタシの薬で多少は楽になったかもしれないけどケスチアの毒はまだ身体に残ってるんだ。同じ苦しみを味わいたくなきゃ最低でも後三日は休んでもらうよ」

「三日!?冗談じゃないわ!本当に急いでいるのよ!」

 

 ただでさえ私のせいで寄り道をして遅れているのにこれ以上時間をかけてられないわ!

 慌てて立ち上がろうとしたけどそれより早くドクトリーヌに抑えつけられてしまった。

 

「逃がしゃしないよ。小娘、アタシの所から出て行く条件は二つだけ、治るか死ぬかだ」

 

 つきつけられたメスと言葉の重さに思わず息を呑む。この人…本気だ。

 重苦しい雰囲気になるがそれを打ち破ったのは勢いよく開かれたドアの音と大声だった。

 

「ここかァ肉ッ!!!」

「いたぞ!少し待ってろルフィ、おれが調理してやる!!!」

 

 ルフィ!?それにサンジくん!?そっか、二人が来てくれたんだ。

 

「ギャーーーーーッ!助けてェッ!!!」

 

 食べられまいと必死に暴れ叫ぶ鹿の子と思われるさっきの子、不思議に思っているとドクトリーヌが答えてくれた。

 

「名前はチョッパー、青っ鼻のトナカイさ」

 

 トナカイだったんだ…。それにやっぱり喋れたのね。

 

「あいつが喋れるのは【ヒトヒトの実】を食べて人の能力を持っちまったからさ。あいつにゃあアタシの医術の全てを叩き込んである」

 

 悪魔の実を食べたからか、あっ変身した。ってことは【ヒトヒトの実】ってのはクロトと同じ動物系ってことね。

 にしても医者のトナカイか、オモシロイわね。

 

 

 

 地面にめり込んだ二人は何事もなかったようにすぐに顔を出した。

 

「おっナミ!元気になったのか!?」

「ウン、大分マシになったわ。それよりあんた達こそその包帯どうしたの?」

「気にしないでナミさん。全然大した事ないから」

「そう?」

 

 多分二人とも心配してここまでついてきてくれたのね、ありがとう。

 

「ねぇクロトは?」

 

 二人が現れたのにクロトの姿はなかった。まぁあんな馬鹿やるクロトじゃないけど姿を見せない事に少しだけ不安になる。

 

「あぁ…あのロンゲは今はちょっと寝込んでいるかな。あ、でも心配はいらないさ、なぁルフィ」

「あぁ!ばあさんだってすぐに元気になるって言ってたしよ!」

「あ、おいルフィ!!」

「アッ!?肉ッ!!?」

 

 サンジくんは部屋の入口にいたチョッパーを見つけルフィと一緒にまた追いかけ始めた。

 

「待っててね~ナミさん、今元気の出るトナカイ料理を作ってくるから!」

 

 バタバタと出て行く二人と一匹、ドクトリーヌはスクッと立ち上がるとどこからか何本もの包丁を取り出し追いかけていった。

 

「『ばあさん』?…今、何て言ったクソガキ共オォォッ!!!」

『ギャアアァァァッ!?鬼婆ァァッ!?』

 

 この人には年齢の事は禁句のようね。それにしても………

 

「料理よりも少し静かにしてもらえないかしら…」

 

 エコーになって響く二人の叫び声に自然と溜め息が出た。

 

 

 

 

「えらく寒いと思ったら建物の中に雪?」

 

 ちょっと耐えられない寒さだったし誰もいないからとベッドを下りようとすると戻ってきたチョッパーが注意してきた。

 もう随分楽になったんだけどと伝えると、

 

「ドクトリーヌの薬は良く効くから熱はすぐ下がるんだ、でもケスチアの毒はまだ身体に残ったままなんだ。無理をしたらまた体調が悪くなるぞ」

 

 とのことで、チョッパーは二人の追っ手がないことを確認するとドアをそっと閉めてくれた。

 

「ありがとう。アンタが看病してくれてたのよね?」

「!!?う…うるせぇなっ!♪に、人間なんかにお礼を言われる筋合いはねぇよ!!♪ふざけんな、コノヤローが!!!♪」

 

 チョッパーは口だけ憎まれ口を叩きながら、うきうきニコニコと体で感情を表していた。感情を隠せない子なのね。

 

 何か聞きたそうな顔ね。チラチラとこっちを窺うチョッパーにどうしたのと尋ねる。

 

「なぁ、お前等本当に海賊なのか?」

「えぇそうよ」

「ドクロの旗も持ってるのか?」

「勿論船に掲げているわよ」

「…」

 

 この反応…ハハーン。

 

「なぁに?もしかしてアンタ海賊に興味があるの?」

「バ、バカいえっ!!!興味なんてねェよ!!!ねェよ、バカ!!!」

 

 そんな否定の仕方、興味津々ってのが丸分かりじゃないのよ。…そうだ♪

 

「ならさ、アンタも一緒に来ない?そしたら私も三日も待たずに此処を出れるしウチに船医も入る」

 

 まさに一石二鳥よね。この子も口では否定しているけどなーんか海賊が気になっているみたいだし。

 

「お、おれはトナカイなんだぞ!!人間なんかと一緒にいられるか!!!」

「でもドクトリーヌとはここに住んでんのよね?」

「そ、それは…。だ、だいたいだな、お前はおれを見て…怖くないのか?トナカイなのに二本足で立つし喋るし………青っ鼻だし…」

 

 最後の理由はよく分からないけど悪魔の実を食べたってくらいならもう既にウチには二人いるからなんとも思わないわね。クロトの変身した姿で動物系には多少慣れてきたし。

 

「ったく、すばしっこいガキ共だ…」

「あっドクトリーヌ。…おれ、もう一人の人間を診てきていいか?」

「…そろそろ麻酔も切れる頃だ、話くらいならしてくるといいさ。ただあの事には触れるんじゃないよ?」

「分かってる」

 

 そう言ってチョッパーは私から逃げるように出ていった。出ていってすぐ叫び声が聞こえたことから多分またあの二人に見つかったんだろう。本当に逃げるようになっちゃったみたい。

 

「感心しないね、アタシがいない隙にトナカイを誘惑かい?」

 

 聞いてたのね。

 

「あら、男口説くのに許可なんているのかしら?」

「ヒーヒッヒッヒッ!そりゃそうだ、ならおとしたその時は何処へなりとも連れてくがいいさ。だがアンタ等になびくかどうかは分からないがね…」

 

 それってどういう事かしら?

 

「医者でも治せない傷ってのがあるのさ」

 

 そう言った彼女の顔はどこか悲しげだった。

 

~ SIDE OUT ~

 

【続く】




未来で出そうと思っていた悪魔の実が出てきてしまいました。
 メモメモの実・・・

原作と異なる能力になるかもしれないけど、「独自設定」タグをつけることで対応します。

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