「おかしい、気配が分かれている?」
離れていく気配と殺気、そして戦闘中と思われる二つの気配。とりあえずまずは、とより強い気の高まりの元に辿り着いたクロトは目の前で起こっている出来事に疑問を投げた。
「ナミ、これはどういうことだ?何故ルフィとゾロが戦っている?」
言葉には出していないがクロトは何故今こんな所でこの二人が戦っていると言いたげな顔だった。
「クロト!?いい所に!あの馬鹿達じゃあ役に立たないわ、ミス・ウェンズデーを探して保護して!!」
「…分かった。彼女はあっちに向かったんだな?」
「あ、あぁ。あちらに脱出用の船がっ!だが追っ手にはオフィサーエージェントがっ!!」
クロトは男の話の全てを聞かないうちに剃で駆け出していた。
「聞いてた通り本っ当に速いわね…。これからの海兵全員が会得しているわけじゃないってクロトは言ってたけど、うちにはすでにルフィとあわせて賞金首が二人もいるんだからホントいつ会うか分からないわね」
すぐにクロトの姿を見失ったナミは、これから先自分達に訪れるだろう脅威に自分の身の心配をしていた。
「き、君は何故一人で行かせた!?知らないだろうがオフィサーエージェントはあの剣士が相手取ったこの町の住人とはレベルが数段上なんだぞ!!それも二人とも悪魔の実の力を得た能力者!!!」
「大丈夫大丈夫、クロトは今のウチの一味の中では誰より何倍も強い…筈だから。あなたもグランドラインの人なら【黒龍】の名前を聞いたことくらいはあるんじゃないかしら?」
「な、何と彼が!?」
彼の驚きにクロトが思った以上に名が知られていることが分かりこれからの航海に思いをはせるナミであった。
~ SIDE ビビ ~
「終わりだ!アラバスタ王国王女ネフェルタリ・ビビ!!」
ようやく敵の尻尾をつかんだのに!ようやく争いを止められると思ったのに!!ここまでなのッ!!?
「死ね、鼻空想砲≪ノーズファンシーキャノン≫!!」
Mr.9を一撃で倒したMr.5の攻撃が私に迫ってくる。
悔しさで思わず顔を伏せる。
「キャハハハ、直撃~♪」
「任務完了、だな。簡単な仕事だったぜ」
二人の声が聞こえる?まだ何とか生きているのかな?痛みの限界を超えているからなのか身体の痛みが全く分からない。
少しでも動くならと身体を動かそうとすると不意に地面に下ろされる感触と頭を撫でられる感触を感じた。
「顔を上げなお姫様、上に立つ者は簡単に下を向いちゃいけない」
「なっ!?」
目を開いて顔を上げると黒い長い髪の毛が目に映った。
「あ、あなた…」
「そう、苦しいことがあってもそうやって前を向いてな。そうすればいつかきっと良いことが待っているから」
そこにはあの船の中でただ一人私の正体を見破った男が笑って立っていた
「テメェ一体何者だ!?」
声に気づいたMr.5は警戒心を露わに今度こそ止めを刺すために鼻へと指を伸ばした。
「今は海賊さ。そうだな、お前等だったら【黒龍】といえば通じるか?」
彼の答えが予想外だったのか鼻をほじっていたMr.5の指がズボッと奥に入り込んだ。
…思えばあれってかなり汚い攻撃方法よね。全身爆弾人間って言ってたけど、どうせやられるならMr.9がやられたさっきの技は勘弁してほしいわね。
それにしても………
「こ、黒龍だと!?馬鹿なッ奴はここよりずっと先の海にいる筈…」
そう、この【黒龍】って呼ばれた人はアイツ等があそこまで警戒する程の人なのかしら?
「ま、まぁいい。それが本当ならボスに良い土産が出来たぜ。覚悟はいいな黒龍!!」
「キャハハハ、これで私達の昇進間違いなしね」
「少し離れてろ、すぐに終わらせる」
私は言われるままにカルーと一緒に少し離れた建物の残骸の陰に隠れた。
後に気づいたことだけど、戦っている隙に逃げるべきだと欠片も思わなかったのは無意識にこの人を信頼してしまったからなのかな?
「すぐに終わらせるだと?ほざけ、食らえ鼻空想≪ノーズファンシー≫…ど、どこ行った!?」
Mr.5が攻撃をしようと指を構えたが突然彼の姿が消えた。
「遅いな」
「なっ!?」
い、いつの間にMr.5の後ろに!?
この人だったらもしかして…!
「この距離では自分や仲間がいるから爆破出来ないだろう?」
彼のすぐ後ろにはミス・バレンタインがいた。
「フッ…フハハハッ甘いな黒龍、不用意に近づきすぎだ!喰らえ全身起爆!!!」
「ッ!!」
嘘!?ミス・バレンタインがいるのに爆破したの!!?
そんな私の考えを否定するかのようにミス・バレンタインは煙の中からフワッと飛び上がってきた。
「キャハハハ、甘いわね。Mr.5はボムボムの実の爆弾人間、火薬や爆発の類は効かないわよ!そして私は体重を操れるキロキロの実の能力者!爆風に乗るくらいの軽さに体重を変えれば問題ないのよ!」
そうだ、あの女も能力者だった!
「いくら黒龍っていってもMr.5の技をあんな至近距離からくらえば終わりよね。なら私は裏切り者の始末をつけてやるわ!くらえ一万キロギロチン!!」
私の真上から勢いよくミス・バレンタインが落下してくる。
「クッ「嵐脚」えっ!?」
やっぱり逃げるべきだった、そう思って武器を構えた瞬間、爆発があったところから声とともに飛び出てきた何かが落下する彼女を襲った。
「やれやれ、油断大敵だったな。おかげで服がボロボロだ」
煙の中から現れたのは爆発の影響でボロボロとなった服を脱ぎ捨てる彼と気絶させられたMr.5の姿だった。
露わになった彼の身体を見て私は息を呑んだ。
先ほどの爆発による傷は全くないが、体の至る所にある大小様々な傷、それに銃創も十は優に超えているのではないだろうか。そして複数の何かを押し当てられたであろう火傷の痕。
私の視線に気づいた彼は苦笑いを浮かべ「女性の前で配慮が足りなかったな」と踵を返しMr.5からコートを剥ぎ取り羽織った。
その時私は見た、月の光を浴びて浮かび上がった彼の背中の龍を…。
~ SIDE OUT ~
何故助けたんだと聞いてきたビビにことのあらましを説明し皆のところへ戻ってみると、そこには二重にタンコブを作ったルフィとゾロに、ビビと似た服装をしたイガラムと話をしているナミがいた。
ナミの様子が少し落ち込んで見えるのは気のせいだろうか?
「イガラム!無事だったのね!!でもその格好は!?」
「ビビ様こそよくぞご無事で!がん……ゴホッ!マ~ママ~♪……感謝しますぞ黒龍殿」
「礼はいいんだが、何故うちの航海士はこうもショックを受けているんだ?」
「その、ですな…つい喋り過ぎてしまいまして…」
どうやらイガラムはバロックワークスについて話しているうちにうっかりと敵ボスである王下七武海クロコダイルのことを言ってしまったらしい。
それを聞いていたのだろうすぐ傍にいたラッコとハゲタカによって三人は似顔絵つきでマークされてしまったそうだ。当然、Mr.5ペアを破ったこともありクロトのほうにも二匹はやってきたが、どうせ関わり続ければいつかはバレることと一瞥だけして無視することにした。
「なるほどな、安心しろナミ。確かにクロコダイルは七武海で当時の賞金額は八千百万ベリー、自然系悪魔の実であるスナスナの実の能力者だが勝てない相手じゃない」
七武海に入った時点で賞金額はなかったものといしてしまうので判断材料としては弱いが、悪魔の実の種類についておおまかな話を一応してあるためナミの表情はさらに悲壮感が漂いだす。
「すっごく不安になる要素が沢山なんだけど…アンタはそんなヤバイ奴に勝てるの?」
「言っただろ、勝てない相手じゃないって。根拠は後々話すとして、今はここから一刻も早く離れるべきじゃないか?」
その恰好から同じ考えをしているだろうイガラムに視線を移すと彼は静かに頷いた。
「そうですな。アンラッキーズに知られた以上奴等の情報網にかかれば今すぐにでも千人を超す追手がこの島にやってくるやもしれません、この付近にはそういう島が多数ありますからな。ではビビ様、アラバスタへのエターナルポースを渡していただけますか」
ビビからエターナルポースを受け取ったイガラムは、ダミーの人形を四体乗せアラバスタへと船を出した。
さぁ私達も行きましょう、ナミが言ったその矢先のことだった、突如船が爆発し海が炎で赤く染まったのは。
「なっ!!?」
「そんな…もう追手が!!?」
「いや、気配が少ない。それにいくらなんでも早すぎる」
「どっちにしろここでおれ達が見つかったらあのとっつぁんの行動が無駄になる!ルフィ、お前は馬鹿二人を起こしてこい!クロト、お前はおれと船の出港準備をッ!!」
それからの行動は早かった。
船へと戻り錨を上げマストの用意をし、ルフィが連れて投げてきた二人を受け取ってナミ達を待つ。
「カルガモなんて探してる暇ないわよ!」
「けど置いていけないわ!」
ナミの怒声に船上の三人は同じ方向に視線を向ける。
そこには船に乗ったときから気になっていた存在がいた。
『こいつのことか?』
「クエッ!」
カルガモのカルーは元気よく羽を上げ返事をした。
『そこかァ!!!』
「おれ達より先に来てたぞ」
「ならもう大丈夫だろ?ビビ、進路は川上でいいのか?」
「えぇ、少し上れば支流があるから、少しでも早く航路にのれるわ!!」
「よし、行くわよ!!!」
船を出してしばらくの後、ようやく目を覚ましたお気楽二人組にナミが説明という名の鉄拳制裁を行いもう一度気絶させた。
島を抜ける頃には薄明るくなり辺りには霧が立ち込めてきたそんなとき、ふと知らない声が聞こえてきた。
「あー追手から逃げられてよかった」
「本当よね」
「霧が深いから船を岩場にぶつけないように気をつけなきゃね」
「誰に言ってるのよ。その辺は任せな、さい?…って誰よアンタ!!?」
聞き覚えのない声の出所を探してナミが見つけたのは帽子をかぶった褐色肌の見知らぬ女性だった。
「いい船ね」
「ミス・オールサンデー!?何でアンタがこんなところにいるの!!?まさかアンタがイガラムを!!?」
「今度は何!?何番のパートナーなの!!?」
ビビの様子にナミはクロトが倒した刺客より大物の気配を感じ怖いながらも続きを促した。
「|Mr.0≪ボス≫の、クロコダイルのパートナーよ!!」
「ミス・ウェンズデー、尾行させてあげた情報は役に立ったかしら?」
「わざとだったって事は分かってたわ!そしてクロコダイルに私達の正体を告げたのもアンタでしょ!!一体何が目的なの!!!」
「さぁ、いったい何かしらね?………フフ、そうね、本気で国を救おうとしている王女様があまりにもバカバカしかったから、かしら?」
その薄笑いがビビを激昂させるのには十分すぎるものだった。
「ナメんじゃないわよ!!!」
その言葉を皮切りとしてルフィ、クロトを除く一味全員がミス・オールサンデーに敵意を向ける。
「………そういう物騒なもの、私に向けないでくれる?」
ミス・オールサンデーはため息をつくと手も触れずサンジとウソップを投げ飛ばし、ゾロとナミの武器を叩き落とした。
そしてじっと見ていたルフィの帽子を自分の手元へと投げ渡した。
「お前帽子返せー!!!やっぱケンカ売ってんだろコノヤローーー!!!」
「フフフッ焦らないで。私は別に指令を受けてきたわけじゃないわ。だからあなた達と戦う理由はないわ、提案をしに来ただけよ」
「提案?一体何の?」
「あなた達のログポースの示す次の島の名は【リトルガーデン】。私達がわざわざ手を下さなくてもそこの彼以外は全滅するでしょうね」
手を振るミス・オールサンデーの視線の先にはクロトがいた。
「お久しぶりね、黒龍さん」
「クロト以外?クロト、アンタあの女と知り合いなの?」
相手が悪魔の実の能力者と知ったナミは一味の中で一番頼りになりそうなクロトの後ろに隠れながら問いかけた。
「まぁな。ロ…っと、ミス・オールサンデーとは三年ほど前に一度会ったことがある」
「少し前の新聞は見たけどいつの間にこの一味に入ったのかしら?」
彼女が言っているのはおそらく懸賞金が上がった例の記事の事だろう。
「なに、ほんの少し前だ。それより提案の方を先に済ませたらどうだ?」
「それもそうね」
ミス・オールサンデーは麦わら帽子を器用にルフィの頭に投げ、次いでビビにエターナルポースを渡した。
「それはウチの社員も知らない秘密の航路。行き先はアラバスタの一つ手前の【何もない島】よ。これで随分と危険が下がるんじゃないかしら?」
ビビはじっとエターナルポースを見つめしばらく思案していると横からルフィの腕が伸びてきてそれを奪って握り潰した。
「何やっとんじゃーーーっ!!!」
ナミが折角危険な旅が少しは楽になるかもしれないのにとキレるが
「この船の航路をお前が決めんな!」
と自分がこの船の船長なんだと言い放った。
「フフ、威勢のいいことね。そういうの嫌いじゃないわ。それじゃあアラバスタで会えるのを楽しみに待ってるわ」
そしてクロトの横を通る際一度足を止める。
「…あなたは私を止めないの?」
「お前の目的を知ってるからな、それに対する覚悟も…」
「………そう、相変わらずの情報網ね」
その言葉を聞いて若干ミス・オールサンデーが纏う空気に緊張が走る。
「一つ予言しておこうか。今回の事件が終わった後、お前はまたこの船に乗る」
「フフッ面白い冗談ね。その前に生きて会えるかどうかすらわからないわよ?Mr.0は狡猾な男だから」
ミス・オールサンデーはそう言い残して船の横にいた亀に飛び乗った。
「(ニコ・ロビン、まだ彼女はしばらく心を閉ざしたままなんだろうな)」
クロトは遠ざかっていく亀を見ながらそんな風に思った。
~ SIDE ロビン ~
「彼等は無事アラバスタに来れるかしらね…いえ、出来ることなら来てほしいものね」
提案をした理由は単純に無事にアラバスタに着いてほしかったから、麦わらの船長さんには断られちゃったけど。
本心から言えば私は国の乗っ取りなんて望んでないもの。
ただあの国には私が求めてやまないものがある。そのためにあの男に手を貸している。
あまり考えたくないことだけどもしも今回のものが求めるようなものじゃない場合…いえ、今考えることじゃないわね。
「それにしても黒龍のクロト、彼の情報網は一体どうなってるのかしらね?」
初めて会った時は三年前、そのときにはすでに私の名前も今居る場所も、そしてMr.0の正体も知っていた彼。
邪魔はしないという彼の言葉と私自身と同じような境遇だと思ったからと今までクロコダイルには報告しなかったけど、今回の件で知られることになるわね。
~ SIDE OUT ~
【黒龍】のクロト
年齢:18歳
賞金額:2億5千万
賞金首時年齢:4歳
[*NEW*]容姿:龍星座 紫龍
悪魔の実:動物系幻獣亜種・ドラドラの実 モデル紅眼黒龍
戦闘スタイル:拳、トンファー、六式