エタり過ぎ、でもストックが出来ない。
とりあえず今ある分だけ(2話分)を投稿します。
「ようやく着いたか」
「じゃああの島がそうなの?」
「あぁ、間違いない。上陸準備にとりかかるから、皆を呼んできてくれ」
ドラムの無能王ワポルが船を襲った翌日、夜通しで船を進めていたためようやく目的地のドラム島が見えた。少数人数での航海は忙しい。ビビに皆を呼ぶように、見張り台にいるゾロに準備をするように伝える。
島への到着の知らせを受けルフィがいつもの格好で船内から出てきた。現在の気温はマイナス10℃、熊も冬眠を始める気温。ようするにとてつもなく寒い。
「う~~~おおおぉぉ!島だあああぁあぁ!白いってことは雪だろ?雪島か!」
だがルフィはそんな事には気づかないように雪でいっぱいの島に感動を覚えている。それでも見ている者にとってはそこにいるというだけで寒くなるのが心情だ。
「ル、ルル、ルフィ…そんな事よりお前そのカッコで寒くねぇのか?」
「えっ………?」
かなりの厚着をしてなおかつ震えているウソップの問いにルフィは何度か瞬きをする、そこにヒューと吹く風。
「…寒ブッ!!!」
今更気づいたようにガチガチと体を震わせるルフィ、当然のように『遅ェよ!!』とサンジとウソップからツッコミが入る。
ルフィが上着を取りに行く間に船は島の内部へと進んでいく。
「そこまでだ海賊共。速やかにこの島から立ち去りたまえ、そうすれば危害は加えない」
錨を降ろし上陸の準備を整えていると数十もの銃を構えた一般人と、その一歩前に屈強そうな男が船を見下ろしていた。
「あなた方に危害を加える気はない!仲間が病気なんだが医者がいないんだ、どうか上陸させてはくれないか!?」
「お願いします!ナミさんを助けて下さい!!」
「黙れ海賊が!!」
クロトとビビ、二人の頼みも島の人達には届かない。それどころか『自業自得だ』や『いい気味だ』などと言ってくる者達までいる。
病気で苦しんでいるナミに向かってそこまで言われて黙っているほどサンジは温厚ではなかった。
「テメェ等!それが病気で苦しんでいるか弱いレディに向かっていう台詞か!?」
「落ち着いてサンジさん!そんな言い方しちゃ!!」
「うわああぁぁっ!!!?」
ビビがサンジを止めるべく前に出るが、怒りが恐怖を呼び起こし、恐怖は彼の銃の引き金にかけられている指を容易に引かせてしまった。
発砲音と同時に二人は突き飛ばされる。
「ったくお前は無茶をするなビビ。それとこの状況での恫喝は減点だサンジ、ルフィにゾロもこのくらい大した事ないから荒立てるなよ」
それを行ったのはクロトだった。身代りとなったためポタポタッと赤い血が伸ばした右腕から滴り落ちる。だというのにその痛みに顔を歪ませることなく両膝をつき手と頭を床につけた。
その行動に島の人達は勿論、仲間であるルフィ達も驚いた。
「あなた方が海賊を憎んでいるだろうということはなんとなく分かります。ですがこっちも一刻の猶予がないんです。仲間の命が懸かっているんです」
「医師さえ呼んで頂けるなら上陸はしませんしすぐに出ていきます」
「仲間を助けてください」
ビビに続きルフィも地に頭つけ、残った三人も同様に頭を下げた。
静寂が辺りを支配する。
その光景に数人を除き引き金から指が離され銃先から外された。そして時間にして数十秒のことだった。
「…分かった。村へ案内しよう、ついてきたまえ」
思いが伝わったのか、代表する男が出した答えは一行にとっては一番嬉しいものとなった。
「ドルトンさん!?そんな…海賊の事を信じるんですか!!?」
当然のように反対の声を挙げる者もいる。
「海賊といえど真摯な思いは汲んであげるべきだと思わないか?それに彼等は普通の海賊とはどこか雰囲気が違う。ここは私を信じてはくれないだろうか?」
「あなたがそう言うのなら…」
男は周囲に頭を下げる。男の信頼の賜物か、残った数人もようやく銃を下して場の殺気と恐怖の気配が薄れていった。
「ついてきたまえ、村へと案内しよう。だがそこには残念ながら医者はいないのだが…いやこの島には医者と呼べるのは、もう魔女と呼ばれる一人しかいないのだ」
こうして上陸を認められた一行だったが、前の島での足の怪我もあり船番として残したゾロと、あまりの寒さに上陸を拒否したカルーを置いて一同は村へと案内されていった。
ドルトンの家にやってきた一行は早速この島唯一の医者という魔女の話を聞く。
「窓から山が見えるだろう?あの山々の名はドラムロッキーといって、他より一際高い真ん中の山の頂上に城があってそこが彼女の住処になっている。魔女、名をドクトリーヌというのだ、が…」
ドルトンは窓を指差すが肝心の景色が雪で何も見えない。雪といってもそれだけの豪雪というわけではなく、代わりに見えたのは奇妙な二体の雪のオブジェ。
「ハイパー雪だるさんと!」
「雪の怪物シロラーだ!」
外では
「てめぇ等オロすぞ!!」
サンジの蹴りによって破壊された雪のオブジェの向こう側に山々が見える。
そのオブジェから二組の足が生えているがそこは気にしなくてもいいだろう。
「何つぅ場所にいるんだよその医者は…。まぁ場所に文句を言っても仕方ねぇが急患なんだ、すぐに呼んでくれ!」
「そうしたくても連絡手段がないのだ」
電伝虫も山の高さと吹雪のせいで通じないらしい。そんな状態でどうやって診察に来るのかと問うてみれば、気まぐれに山を降りてきては診察をし、暴利とも思える程の金品・物品を貰っていくらしい。
まるで海賊だなと戻ってきたウソップの言葉にドルトンは苦笑する。島の人達からしても【腕は良いが出来れば関わりあいたくない】と言われる程でドルトンも似たような思いを抱いているようだ。
そしてこの町には昨日降りてきたばかりらしく、次はいつになるか分からないとの事だ。
「なら山を登るしかないな」
「時間がない以上無茶だっても言ってられねぇか」
サンジの苦々しい言葉にビビもナミを見ながら首を縦に振る。
「ん?医者はどうなった?」
雪に埋もれて冷えた体を温めるため熱いお茶をズズ~ッと飲んでいたルフィがクロトへと尋ねる。それに対してクロトは【医者】【あの山】【登る】と単語だけ伝え納得したルフィを置いて編成を決めることにした。
本当なら月歩と悪魔の実の能力の両方で飛べる自分独りでナミを背負い行動しようとしていたクロトだったが、ドルトンから教えられたラパーンの迎撃にルフィ、サンジの両名が一緒に行くと言い出した。ならばと山の麓までの護衛として連れて行くことにし、そこからは月歩で山を登るから下山するようの旨を伝える。
「まぁそれが妥当な線か」
「気をつけてねルフィさん、サンジさん」
「まっかせてよ~ビビちゅゎ~ん!」
「クロトさん、腕大丈夫?」
ビビはナミが落ちないように二重三重に縛った布を確認しながらクロトの右腕の傷を心配していた。
「弾も貫通してたし応急処置も済んだ、問題ない」
助けられた手前、本当だったらちゃんと確かめたいと思ったビビだったが、簡単な処理だから自分でやると応急処置すら頑なに拒んだクロトにビビは顔を曇らせる。それに対しクロトは本当に問題ないと処置したところを見せる。
確かに包帯もきちんと巻いてあるしそこから血が滲み出てくる様子もない。しかしどうして治療を拒むのか、その理由を聞きたいのを堪えてビビは一応は納得することにした。
「もう一度言っておくがこの二つには注意しておいてくれ。まず一つ、直線の最短距離を行くということだが、そこにはラパーンという獰猛な肉食のウサギがいる。そしてもう一つ、こちらのほうが重要だが…魔女には年齢の事は禁句だ」
ドルトンの再度の警告に頷いた三人は山に向けて走り出した。
目指すはドラムロッキー頂上。
村を出て三十分、既に人里からは遠く離れ道と呼べぬ道を四人はひたすら山へと進んでいく。
黙って進むのにも早々に飽きたルフィは自分のポリシーや他愛ない話、昔村の酒場で聞かされた雪国の人は寝ないという嘘話など色々な話を始めた。それに対しサンジも雪国の女性の肌について自分なりの妄…見解を述べるがルフィに馬鹿にされる。
自然と話の流れがクロトへと移り、ならばと雪の色について話し出した。黄色い雪に黒い雪に蒼い雪、話を聞いて文字どおり目の色変えたルフィは蒼い雪を確かめようと足下を掘り始めた。その単純さに呆れ返るサンジには輝く雪や黄金の雪の美しさを説き、いつか誰かを誘うといいと言うと訪れることのない妄想に浸り始めるのだった。
黄金の単語を発したとき寝ている筈のナミの手に幾分力が込められたのは気のせいだろうか?
「で、だ。さっきから襲ってくるコイツがドルトンが言っていたラパーンって兎か?」
ナミに負担がかかるからと手を出すのも受けるのもサンジに禁止されたクロトは僅かに上体を反らして小さな襲撃者の攻撃を避ける。
「小せぇのに攻撃的で…ウゼェんだよ!」
同じく攻撃を避けていたルフィにサンジだったが、辟易したサンジの一撃によって子兎は吹っ飛んでいった。
そしてまた進むこと数分、今度は白くて大きな生き物数十匹が行く手を塞いできた。真ん中の顔に傷を持つ奴の肩にはたんこぶをこさえた見覚えのある一匹の姿がある。
「お前が蹴っ飛ばしたのは奴の子供だったってわけか」
「そういうこったな。いいかクロト、もう一度言うがお前は絶対手ェ出すなよ!剃ってやつで避けるのも無しだ!!」
「ナミへの衝撃を与えないためだろ?分かってる、そいつ等の相手は任せた」
襲い掛かってきたラパーンの右腕を屈んでかわし、空いた土手っ腹にサンジの蹴りが入る。ラパーンは確かに吹っ飛んだがすぐに起き上がってきた。降り積もった雪のせいで足場が悪くサンジの蹴りにはいつもの威力がなかったからだ。
仲間が攻撃を受けて頭にきたのかラパーンは一斉に跳びはね襲い掛かってきた。
「ルフィお前何とかしろ!」
「サンジ!」
「何だよ!?」
「………やっぱ寒みィぞッ!!!」
「だから船出る前にもっと厚着しろって言っただろうが!!!」
二人の漫才を聞きつつクロトは足を森へと向けた。当然追いかけてくるラパーン、繰り出す攻撃は木々を簡単に薙ぎ倒しその連携は下手な軍隊以上の力を見せている。多少の崖も何のその、余裕のジャンプで越え四人を追い越していった。
「諦めたのかな?」
ルフィの言葉を否定するかのように、ラパーンはしばらく跳びはね山に向かうとクルリとこちらを振り返りその場で勢いよくジャンプを繰り返した。振動はすぐに自然の脅威となって現れた。雪山での最大の脅威、雪崩だ。
「やりやがったなあのクソ兎!!」
「ルフィ!サンジを掴んで俺の足につかまれ!」
クロトは一足早く跳躍し、月歩で空へと退避する。クロトの考えが分かったルフィはサンジの服を掴み上空のクロトの左足へと腕を伸ばした。
空を蹴り上昇していたクロトだったが片足で四人分の重量はやはり想定外だったらしくルフィが足を掴んだ途端上昇速度が鈍くなる。加えて雪崩の勢いを利用して襲ってくるラパーンの攻撃を避けようと下でルフィが体を揺するためなおさら鈍くなる。
「チッこれじゃあ高さが足りねぇ…おいクソロンゲ、ナミさんを絶対医者に連れてけよ!!」
「バッ!?」
バカ野郎、そういう前に手を放したサンジはラパーンの一撃を受け、雪崩に呑み込まれていった。一人分の重さがなくなったおかげで間一髪雪崩を逃れた三人だったがルフィは慌てて未だ辛うじて見える左手にゴムの手を伸ばした。
「サンジィィーーー!!!うおおぉぉっ!!?」
確かにルフィは掴んだ。だが、引っ張ってこれたのは手袋のみ。
「ルフィ、悪いがナミを連れて先に行っててくれ。サンジを見つけ次第俺もすぐに後を追うから」
「分かった、サンジの事頼んだぞ!」
雪崩の脅威が去った後、二人はその役割を交替することにした。ルフィが闇雲に探すよりも見聞色の覇気で気配の読めるクロトが探したほうが早いからだ。
ビビが結んでくれたようにルフィの体にナミをしっかりと結び、彼を見送る。
「さて、近くにいるといいんだが………」
目を閉じ精神を統一し周りの気配を探る。動かない複数の似た大きめの気配に悲痛な感情を出す小さな気配が一つ、どうやらサンジの気配はすぐ近くにはないらしい。
クロトは気配が感じたところに木の枝を刺しマークをつけ小さな気配の元へと向かった。
「ガァウゥ!」
そこにはラパーンの子供が必死に雪を掘る姿があった。硬い雪を掘り続けていたからなのだろう、その手からは血も出ていた。だがそれでも子ラパーンの手は止まらない。
見かねたクロトが近づくと、気配と足音で気づいた子ラパーンは眼前に立ち威嚇するように唸り声を上げる。
急いでいる状況なのだが思わず目尻が下がって口元も緩んだ。近づくだけで身を屈めた子ラパーンの頭を撫で、腕を取り雪に埋もれた体を引っ張りあげる。掘り出された親ラパーンを見て子ラパーンは体当りでもするかの勢いで抱きついた。
端から見ると感動的な場面かもしれないが生憎と時間のないクロトは子ラパーンの肩を叩き、数回目で気づいた子ラパーンはクロトの手を取り頭を下げた。感謝をしているのだろう、クロトはもう一度頭を撫で複数用意した目印を指さす。
「いいか?あの目印の下にお前の仲間達が埋まっている。お父さんが気が付いたら掘り起こしてもらえ」
知能も高いし何より匂いで気付いたのだろう、指の先を見て大きく頷いた。
【続く】