記録の地平線~記された器~   作:Chirumori

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敵を知り、己を知れば

ぱらり、ぱらり、ぱらり。

紙をめくる音が三つ、部屋に響く。

その内の一つが止まり、その主が伸びをする。

そして、侵入者二人に気付いて眉をひそめた。

「あれ、二人がどうしてここに?」

「情報収集」

「だ、そうだ」

侵入者二人は、ヒバリとトバリである。

「いや、ここ、僕の部屋なんだけど」

「公的資料に八割占領されながら言われても説得力がない」

「いや、そうなんだけどさぁ」

ヒバリの言葉に頭を掻き、困った顔でその相棒に視線を向けるシロエ。

「そもそも、機密混じりの資料を自室に置くのはいかがなものかと思うが」

「いや、執務室も兼ねてるから」

「兼ねてるってか、ほぼそっちがメインになってるよな」

ついに耐えかねたか、シロエは机に撃沈した。

「………で、二人はなんで資料を漁ってるの?」

典災(ジーニアス)に関する情報を集めている」

ようやく復活したシロエにトバリが返答し、そこで無言になっている相棒に気付いて視線を向ける。

ヒバリが真剣な視線を向けているのは、一つに纏められた資料だった。

「それは…ミナミの情報か?」

「うん。ギルマス、パイセン以外にも忍びの者を雇っとったんやな」

「いや、違うからね。向こうの知り合いから色々聞いてもらってるだけで…」

何故か弁明させられたシロエが、ん?と気づいて眉根を寄せる。

「…典災(ジーニアス)の情報を調べに来たんじゃなかったの?」

「〈北風(ボアレス)の移動神殿〉。あれさ、どう考えてもおかしゅうない?」

「そんなにおかしいか?大神殿の機能を代替しているだけだろう」

トバリは首を傾げるが、シロエは難しい顔で頷いた。

「あんな、トバリ」

「なんだ?」

「蘇生場所って言うのは、大神殿以外にも…ほら、あの〈呼び声の砦〉入口のセーフエリアとか、他にも色々あるやろ?」

「そうだな」

「けど、それって、世界の理(システム)側が指定しとるはずなんよ。『そういう風に決まっとる』から」

「そうだ……ああ、それでか」

やっと得心が言ったようにうなずくトバリを横目に、シロエがヒバリに問う。

「君は、あれに典災(ジーニアス)の関与があると?」

「うん。実際、死ねば共感子(エンパシオム)が放出されるんやろ?アレ、そのサイクルを相当早めよるやろうしな」

「しかし、そこまで知恵が回るものか……」

トバリは眉をひそめているが、ヒバリはほぼ確信している。

「〈監視者(フール)〉…もとい、ロエの姐さんは、僕らのことをランク3である()()()()()()って言うとったんやろ?つまりランク2知性でも、僕ら人間並みに頭が回る連中はおるっちゅーわけや」

「………なるほどな」

「そこで納得するのもどうかと思うんだけどな」

顔を見ながら言葉を交わす二人に、苦笑いを返すしかないシロエ。

「それで、欲しい情報は得られたの?」

「うん。まだまだ情報が足りんってことがわかった」

「………」

「主君、失礼す……どうした?」

こめかみを押さえるシロエと、腕を組んで無駄に偉そうなヒバリ。

そんな二人を見て困惑するアカツキに、トバリは同情のない混ざった視線を向けるのであった。

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