ようこそデュエルアカデミア   作:るーるーる

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一挙配信の影響で某ケーキも大好きで君も大好きな人の楽曲達を久しぶりに聞いたけど
悪い……やっぱ泣いたわ

あと助けてマキマさん
俺レゼのこと好きになっちまった


地獄、それは一強環境である2(スパッと!SPYRAL)

 前回までのあらすじ へぇ、デートかよ

 

 

 人と目を合わせるのが苦手だ

 

『我らは神の代理人 神罰の地上代行者』

 

 人と触れ合うのが苦手だ

 

『我らの使命は我が神に逆らう愚者を』

 

 人が集まっている所で過ごすのが苦手だ

 

『その肉の最後の一片までも絶滅すること───』

 

 私はそれらが苦手だったから、一人で大丈夫。孤独でも大丈夫。

 そういつも自分に言い聞かせて仮面を被って生きていた。

 

『A M E N』

 

 今日という日までは

 

 

 

「シンクロ召喚、ヴァイロン・シグマ」

 

 小波 代栖 LP4000

 場

 ヴァイロン・シグマ(ヴァイロン・プリズム装備) ATK2800

 

 二年生 LP4000

 場

 オオアリクイアリ ATK2000

 伏せカード 1枚

 

 

「ヴァイロン・シグマで攻撃。攻撃宣言時にシグマの効果でデッキから《閃光の双剣-トライス》を装備」

「この瞬間、永続罠《魔封じの芳香》発動! お互いに魔法はセットしてからじゃないと発動出来ない!」

「そうか、では装備させて貰う」

 

 ヴァイロン・シグマ(ヴァイロン・プリズム+トライス装備) ATK2800→2300

 

「な、なぜ……魔法はセットしてからじゃないと発動出来ない筈だ」

「シグマの効果は発動ではなくコストを無視して装備する効果なんだ。シグマでそのまま攻撃」

 

 ヴァイロン・シグマ ATK2300

 VS

 オオアリクイクイアリ ATK2000

 

「ぐぅ……!」

 

 二年生 LP4000→3700

 

「トライスの効果で2回目の攻撃。シグマの効果によりデッキから《魔導師の力》を装備。こちらの場の魔法・罠の数×500攻撃力アップ」

 

『貴様は震えながらではなく藁のように死ぬのだ』

 ヴァイロン・シグマ ATK2300→3800

 

「そ、そんなバカなあぁぁぁ!!」

 

 二年生 LP3700→0

 

『決まったぁー! 優勝は全試合を怒涛の後攻ワンキルで全勝した小波代栖君だぁー!』

「やったぜ」ピース

『優勝者には5万pptが贈与されます! またの参加を待ってるぞ! 

 ケヤキモールではお客様の快適な暮らしに寄り添う商品を……』

 

 

 

 ◆ケヤキモール・カフェ店内

 

「優勝おめでとう小波くん!」

「ありがとう櫛田。小さいけどこういう大会はちょくちょく開かれているみたいだな」

 

 櫛田さんと小波君、それと私、佐倉愛里はケヤキモールの電器店でカメラの修理の依頼を済ませた後、モールのイベントのデュエル大会に飛び入り参加する小波君を見届けた。

 でもまさか優勝するなんて、小波君凄いや……。

 

「優勝記念に奢ってしんぜよう」

「ほんと? 小波くん太っ腹~」

 

 カフェの丸テーブルに腰かけて櫛田さんは早速メニューを開いて注文を決めていく。

 こういう時に乗っかっていいのかわからなくて注文を迷う私に遠慮するなと小波君が言ってくれた。

 

「カメラが修理保証の期間内だったけど迷惑をかけたのは間違いないからな」

「そうだよ佐倉さん、危うく例の事件の証拠写真が消えるところだったんだから遠慮しないでいいよ」

「は、はい……ありがとうございます」

 

 なんでお前が言うんだ、と小波君が備え付けのメニューを私の目の前に開いてくれる。

 遠慮しないでって言われても私の不注意も原因だしな……。

 とりあえずメニューのページを捲っていく。

 

 櫛田さんもニコニコしながらメニューを見てどれを頼むか悩んでいるようだった。

 

「すみません、トリシューラプリン一つとブルーアイズマウンテンをアイスで」

「「えっ」」

 

 思わず私と櫛田さんから驚きの声が上がる。

 今私たちが見ているメニューの1ページにでかでかと載せられている写真にはブルーアイズマウンテン1杯3000ppt、そしてトリシューラプリン一つで2700pptの文字。

 喫茶店で5700pptもの出費を出そうとしているのだ。

 いくら5万ポイントの臨時収入が入ったって言っても流石に贅沢しすぎじゃないかな……? 

 

 注文を聞いた店員さんも大声で「ブルーアイズマウンテン入りました~!」とキッチンの店員さんに伝える。

 

「そういえば小波くん、電器店のあの時佐倉さんの代わりに保証書に名前書いてあげたのはなんで?」

 

 櫛田さんの何気ない一言に思わず身体が跳ねる。

 電器店での店員の私たち……というより私を見る視線。名前を聞いた時の声。

 それらを前に動けなくなってしまった私を小波君が助けてくれた。

 

「佐倉はああいうの苦手だろうと思ってな。それに店員の様子も少し変だった」

「あーっ、確かにあの店員の人ちょっと怖かったよね」

 

 と、私たちの注文したジュースと少し遅れて小波君のブルーアイズマウンテンがテーブルに置かれる。

 高級そうなカップに注がれているコーヒー。その芳ばしい薫りがこっちにまで届いてくる。

 小波君はカップを手に取って香りを吸い込んだ後、ゆっくりと一口飲んだ。

 

「どう? 一杯3000pptのコーヒーの味って……美味しい?」

 

 コーヒーを飲んで少し、カップをソーサーに戻して無表情に小波君は答えた。

 

「口に含んでから鼻に抜けていく香りが良い。味は……苦味と酸味があって微妙に甘くて……コクが違う、らしい」

「らしいって?」

「コク……そう言えばコクってつまりなんなんだ? 味の濃さ? でもそれだと薄味にはコクがないってことか?」

「えーそんなの簡単だよ。コクってつまり味が……」

「味が?」

「味が……深くて良いってことだよ!」

「つまりどういうことだってばよ……?」

「……フフッ」

 

 櫛田さんと小波君がテーブルで繰り広げるやり取りになんだか可笑しくて思わず笑みが零れてしまう。

 

「良かった、やっと笑ってくれた」

「え?」

「佐倉さん今日ずっと浮かない顔をしてたから楽しくないのかなって」

「ご、ごめんなさい」

 

 ずっと気にされていたとか、不快な思いをさせて申し訳ないなとか、そんな感情が溢れて思わずうつむいてしまった。

 

「ね、佐倉さん 良かったら普通に話してくれると嬉しいな。同級生なんだし」

「あ、うん……わかり、わかった。頑張ってみるね」

 

 なんともぎこちない会話、だけどこんなに誰かと話すなんて久しぶりな気がする。

 主に櫛田さんが話を振ってくれて私がそれに返して、答えに詰まったりちょっと疲れたら小波君が櫛田さんの相手をしてくれる。

 そんな気遣いが我ながら情けないながらも嬉しいと思ってしまう。

 

「……佐倉さんはさ、私達に自分の隠しておきたかった秘密を知られた時、どう思った?」

 

 会話の途中、櫛田さんからの疑問に少し考え込む。

 須藤君の事件のことで私を気遣ってくれているんだろうな。

 

「最初はどうしようって思ってたけど、そのお陰で今はこうしていられてるから……良かったと思う、な」

 

 最初はどうしようって頭の中が一杯だった。でも、もしもあの時に出会えていなかったら私はきっと心を閉ざしてずっと一人のままだったから。少なくとも建前とか嘘ではない気持ちを伝える。

 

「……綺麗事だね」

「え?」

 

 いつもニコニコして笑う櫛田さんに一瞬、陰が見えた気がした。

 が、櫛田さんの表情はすぐにまた元に戻った。

 

「そんなことより、佐倉さんこんなに可愛いんだからもっとオシャレしたらいいのに! きっともっと綺麗になるよ!」

「え、えっと」

 

 見間違い、だよね? 

 

「私なんかがそんな、地味なくらいが丁度良いっていうか……」

「そんなことないよー、ねえ小波くん?」

「そうだな、ところでやっぱりコーヒーってどれも苦すぎを越えた苦すぎ……」

 

 コーヒーに苦戦している小波君を置いて私に向き直る。

 

「お肌綺麗だから金欠でもプチプラのチーク使って整えるだけで全然違うと思うな。夏だしテカリ防止も大事だからミストとパウダーは大事だし。それに新作のコスメとかは人気になると直ぐに売り切れちゃうし高いからね」

「新しいテーマか何かの話か?」

「お化粧の話だよ小波君」

 

 そっか……と興味なさげにコーヒーとの静かな戦いへ戻っていく。

 

「人気のあるコスメ使ってると先輩に睨まれるからコッソリ使わないとね。この前、Bクラスの一之瀬さんが先輩に絡まれて大変なところ見ちゃったし」

「私がどうかしたかな?」

 

 驚いて声の方に振り向くと私たちのテーブルの側に長くて綺麗なストロベリーブロンドを揺らしながら一人の女の子が手を振って立っている。

 

「やっほー。見てたよ小波君、あの連続ワンキルは凄かったよー」

「一之瀬じゃん、おっす」

「おっす~。というか両手に花とは小波君も隅に置けないねー、このこの」

 

 小波君の隣に座って肘で小突く一之瀬さんと呼ばれた人。

 凄いコミュ力だ、間違いなく櫛田さんと同じタイプの人なんだろう。

 

「例の事件、大変そうだね。私にできることがあったら言ってね? できることがあれば協力させて欲しいから」

「本当に! あ、でも今回の事件にBクラスは関係ないし、むしろ私達が迷惑掛けちゃってる立場だから申し訳ないよ」

「そんなの関係ないよ、困ったらお互い様!」

「一之瀬さん……! ありがとう!」

 

 手を取り合って笑いあう二人。それに対して俯いて身を小さくするしかない私。

 一之瀬さんの言動が眩しすぎて、最初に言い出せなかった自分が少し惨めに感じてしまった。

 私もあんな風になれたら……。

 なんて考えていたら一之瀬さんが私の方に振り向く。

 

「櫛田さんのクラスメイトの人だよね。私、一之瀬帆波。よろしくお願いしますっ」

「は、はいっ。よろしくお願いします……」

「小波君も何かあったら言ってね。この間のお礼も兼ねて」

「……」

「小波君?」

 

 一之瀬さんが小波君に話しかけるが返事が返ってこない。

 当の本人は視線が集まることも気にせず、うつむいてただ一点を見つめて集中しているようだった。

 

「小波君なんだか凄い真剣な表情で考えてる……」

「クラスの為だから真面目に考えてくれてるんだね……!」

 

 佐倉と一之瀬が感動する中、視線は机の上に注がれていた。

(これは……通常の五倍以上のエネルギーゲイン……。

 具体的に言うとテーブルの三分の一ほど埋まっているんじゃないのかこれ)

 

「いや、もしかしたらそんなことないかも」

 

 

「お待たせしました。トリシューラプリンです」

 

 四人(主に二人)で話す中、店員さんが小波君の注文したプリンをテーブルに置く。

 高人気、高価格、高カロリーの三拍子を揃えて何より日に限定10個だけ販売していると言う。

 プリンの上には生クリームで氷を模した『氷結界』の紋章が描かれており、全体に氷砂糖の粉末が散りばめられていて物凄く凝っている。

 

 店員さんが置いたプリンをクリームと一緒にスプーンですくって一口食べる小波君。

 さっきのコーヒーの時と違って凄く美味しそうにしている。

 

「うん。久しぶりに食べたがやはり旨い」

「これは食べたことあるんだ?」

「まあな、一時期は毎日食べていたな」

「え……もしかして小波君のお家ってお金持ち……?」

 

 櫛田さんと一之瀬さんの問いに少し間を置いて

 

「まさか、生まれも育ちも最低だよ」

 

 小波君は笑って答えた。

 

 

 

「あ、私そろそろ行くね」

 

 一之瀬さんが時間を見て席を立つ。

 友達と待ち合わせしていたのだろうか、手を振ってお別れする。

 

「私も、ちょっと御手洗い行ってくるね」

 

 櫛田さんも同じくして席を立つ。

 テーブルには私と小波君だけが残されて隣を見ると相変わらずコーヒーをチビチビと啜っていた。

 

「あ、あの……」

「ん?」

「……私、どうしたら良いかな?」

 

 例の暴力事件のこと、私が証言すればきっと須藤君の一方的な暴力ではなかったと証明できる。

 でもそれは私の秘密をバラすことに繋がる。他人から見ればそんなことと言われるかもしれないが、どうしても二の足を踏んでしまっていた。

 

「その答えは自分自身で見つけるしかない」

「自分自身で……?」

「難しく考えることはない。ただ佐倉の好きなようにすれば良いんじゃないか」

 

 私の好きなように、か。

 どうしたら良いかじゃなくて、どうしたいのか。

 

「……黙っていたら後悔すると思う」

 

 私の言葉に何も言わずただ聞いてくれる小波君。

 

「皆凄いなって思ったんだ。須藤君の為にたくさんの人に話を聞いて回った櫛田さんも、他のクラスの為に困った時はお互い様って言える一之瀬さんも。……私もあんな風に、誰かの助けになる力があればなって」

「確かに、あの二人には佐倉にはない力があるな。だが今の佐倉にしかできないこともあるし、それは今のあの二人にはできないことだ」

 

 そう言って小波君はコーヒーを飲み干す。

 苦いぜ……と渋い顔をしながら彼は続けた。

 

「人は結局、自分が持たない力に惹き付けられるものだ。魅力、知力、権力、財力。それに筋力、求心力、コミュ力。それから後は……運命力」

 

 最後のは初めて聞いたなぁ……。

 

「そして持たない力を人は追い求める。努力という過程を乗り越えて、あるいはその為に何かを犠牲にしてまでも。

 そして力を得た者はその力の振るい方を知らなければならない。

 ただ自己顕示欲や闇雲に振るうのではなくて、自分の成したいことの為に振るう。それが願いを叶える力になって、誰かを守る力になる」

「……力を求める、かあ。何も無い私には合ってるかもね……」

「そうかな? 魅力では負けていないと思うが」

「たわっ……!?」

 

 いきなり言われた言葉に思わず顔が熱くなるのを感じる。

 そんな私を知ってか知らずか小波君は話を続ける。

 

「俺ももっと瞬発力と動体視力を鍛えないとな。まだまだ上位の人間に太刀打ちできないレベルだ」

「……それってゲームか何かの話?」

「いやそれがなかなか攻略できなくてだな」

「本当にゲームの話なんだ……」

「それにそうだな、佐倉だけが秘密を知られるのは不公平だよな」

 

 プリンで口直ししながら小波君は続けた。

 

「この後少し良いか?」

 

 

「お待たせ~ってあれ、なんだか二人共仲良くなった?」

 

 戻ってきた櫛田さんの言葉にはっと気付いた。

 どうやら話し込んでいたせいでいつの間に近くまで寄り合っていたようだった。

 顔が熱くなるのを自覚しながら急いで離れる。

 

「ご、ごめんねっ。近すぎたよね……!」

「いや、俺も寄りすぎたよ」

「……ふーん?」

 

 櫛田さんがこちらをじっと見つめる。

 

「……それじゃあ今日はそろそろお開きかな?」

「もう良い時間だしな」

 

 お会計をした後、櫛田さんとモールで別れて小波君に着いていく。

 

 

 櫛田さんと別れて外に出るともう夕方頃。

 小波君に案内されたのは広場にキッチンカーで営業しているホットドッグ屋さんだった。

 こんなのあったんだ……入学して数ヶ月経つけどここら辺のことは全然知らないな私。

 

「草薙さん、調子はどう?」

 

 小波君はソーセージを焼く男の人に話しかける。

 紫の癖毛と顎下の髭が大人っぽい感じの出で立ちで半袖に可愛い犬がプリントされたエプロン姿で暑そうにしている。

 知り合い、なのかな? 

 

「小波か、今日もいつも通りだよ」

「客は全然来てないってことか」

「やかましい。というかその娘もしかして」

 

 草薙さんと呼ばれた人が私に視線を向ける。

 

「は、初めまして。佐倉愛里って言います」

「……なんでここに?」

 

 何故か草薙さんに見つめられて思わず小波君の後ろに隠れてしまう。

 わ、私なにか失礼なことしちゃったかな……? 

 

 と、周囲を見渡しながら小波君がキッチンカーに歩いてくる一人の男子生徒に声をかける。

 

「お~い、遊作~」

「……何をしに来た」

 

 小波君に声をかけられた男子、確か同じクラスに居たあまり目立たない人がこちらに気付いた。

 

「佐倉、LINK VRAINSの有名人って言えば誰か解るか?」

「え? えっと、最近playmakerって人が話題だけど……」

「……おい、まさか」

 

「藤木遊作、こいつがplaymakerの正体ってやつだ」

「……へ?」

 

 

 

「どういうつもりだ」

 

 キッチンカーの中、外見からは似つかわしくない大きなモニターの前に三人で椅子に座って藤木君は小波君を睨み付けている。

 

「秘密を知ったからこっちの秘密も教えておこうと思ってな」

「お前の秘密じゃないだろ」

 

 購入したホットドックを食べながらどこ吹く風な様子の小波君。

 甘いものを食べたからしょっぱいものが食べたくなったらしい。

 

「わざわざ遠くから守るよりこうした方が確実だと思ったんだ」

「関係ない人間を巻き込むな」

「そうも言ってられない。何かあった時近くに居た方が安全だろう」

 

 座ったまま二人が言い争っている。

 言ってる内容はなんだかよく解らないけど凄いこと聞いちゃったよね私……? 

 

『別にいーじゃーん、男ばっかりでむさ苦しかったからこんなに可愛い女の子が来てくれて。あれ? もしかして遊作ちゃん緊張してる~?』

「……黙れ」

 

 あれってA.I.搭載型ディスク……私とおんなじだ。

 でもあんなモデルあったかな……? 

 

『あの須藤とかいう赤髪ゴリラの為にわざわざ特別棟まで行って情報やら集めてたんだぜ~? 遊作ちゃん優し~……』

 

 ミュートにされたみたいで何も音声が届かなくなっていた。

 容赦なく黙らせた藤木君に苦笑いしているとチリーンと呼び出し鈴の音が鳴る。

 

「はーい、ただいまー」

 

 

 

 草薙が向かうと30から40歳程の男が店の前に立っていた。

 運動でもしていたのだろうか、少し息遣いが荒くなっている。

 

「ご注文は?」

 

 草薙の言葉を無視して男は話を始めた。

 

「こっ、ここに高育の女子生徒が来てないですか?」

「高育の女子生徒? ……ここよく人が通るからたくさん見るけど来てはいないかな」

「で、でもさっきこの車の中に男子生徒と入っていったように」

「それより注文あるかい? 今ならセットでコーヒーが安いよ」

 

 草薙は男に営業スマイルで話しかけるが言い淀んだ後休憩終わるんで、そそくさと帰ってしまう。

 

「あの男、確か例の……小波達、というより佐倉ちゃんを追いかけていたのか? 

 警察に任せると情報も抜き取れないし、やっぱり現行犯しかないか」

 

 去っていく男の背中を睨みながらキッチンから遊作達の元へ戻るとスマホを覗いて写真の画像を見ていた。

 

「このコスプレも凄いなキャラクターそっくりだ。自作とかしてるのか?」

「うん、たまに自分で加工したりして作ってるよ」

『へー、わざわざ自分で作ってるのか。LINK VRAINSのアバター姿じゃダメなの?』

「あっちにはない衣装もあるから……それに自分で作るのが好きなんだ、私」

『ふーん。てか遊作ちゅわ~ん、混ざっておいでよ~恥ずかしがらないでさ~』

「……別に恥ずかしがっていない。興味がないだけだ」

『それムッツリの常套句じゃーん、むしろそういう態度の方が感じ悪いんじゃないの?』

 

 遊作は深く溜め息を付いて画面に向き直った。 

 

「何でもいい、ならこれで」

 

 鬱陶しそうにしながら出された画面を指差す。

 

「あ、それは……『聖♡プルプル女学園 お嬢様は恥辱倶楽部 ハレンチミラクルライフII』の黒江雫ちゃんのコスプレだねっ」

「……なんだって?」

 

 一瞬の静まりと共に肩を震わせながら遊作の肩に手を置いた小波。

 

「大丈夫だ遊作、年頃の男はそういうのに興味を持つものンゴプファ」

「……歯を食い縛れ」

「まあまあ遊作。で? 佐倉ちゃんを連れてきた理由を教えて貰おうか小波」

 

 

 

「なるほど、遊作のクラスでそんなことが……」

「秘密を共有した者同士、言えることがあるんじゃないか?」

 

 二人(と一体)に注がれる視線を受けて藤木君は私に向き直った。

 

「……わかった。今の俺から言えることを言っておく」

 

 

 

「余計なことはするな」

「……っ」

 

 冷徹で厳しい言葉が飛んで来る。

 

「佐倉、お前が最初に名乗りを挙げなかったのは自分の秘密を知られるのが怖かったから。事件発覚の数日経った今証言したところで逆に疑いの目を向けられて悪印象を与える。

 後に控えるクラス間での審議でお前が周囲から無理矢理言わされていると不利になる可能性もあるかもしれないし、上手く行ってもこの先Cクラスの連中から余計な邪魔をしたとして嫌がらせのターゲットになるかもしれない」

 

 それはそうだと思う。

 あと数日後に控えた生徒会を交えた話し合い、私が今さら出てきたところで何も変わらないかもしれない。

 ……けど、それでも。

 

「遊作、そんな言い方は……」

「待って」

 

 小波君が草薙さんを制止させた。

 ありがとう、小波君……。

 

「ここまで聞いて佐倉、お前はどう思った?」

「……それでも私は言おうと思う」

 

 今までずっと一人だった私でも、これから先クラスの皆にずっと後悔したまま居たくないから。

 

「良いんだな?」

 

 ゆっくり頷くと、目を閉じて藤木君は三本の指を立てた。

 

「一つ、「緊張は自然なこと」と受け止め、深呼吸や筋弛緩法などのリラックス法を実践すること。

 二つ、段階的に成功体験を積み重ねて、自信を高めること。

 三つ、迷ったらお前の心に従え。以上だ」

 

 椅子にかけたまま背を向けた藤木君。

 でもその声はさっきまでより少しだけ優しく感じた気がする。

 

「遊作のツンデレっ」

「黙れ」

 

 

 キッチンカーの外に出ると夕焼けが完全に沈んで辺りはすっかり暗くなっていた。

 

「ありがとう遊作、やっぱり来て良かったよ」

「しばらく厄介事はゴメンだ」

 

 キッチンカーを後に二人で寮に帰っていく。

 

 藤木君の言った「成功体験を積み重ねる」を早速実施するとのことで小波君に誘われるまま寮に戻って二人で彼の部屋に向かう。

 明日も学校がお休みとはいえ中々のハードスケジュールだと思うが私も必要なことだとは思う。

 

 私はそれよりもずっと一緒に居たのに私服が変じゃないか気になってしまっていた。

 趣味のコスプレ衣装にポイントを注ぎ込んでしまっているのと例の事件によって私のポイントはそろそろ底が付きそうになってしまっている。

 櫛田さんの言う通りにもっと普通のオシャレにも気を付けていれば良かったかな……。

 

 というかこんな時間に男の子の部屋に行くなんて、と変な想像が私の頭の中に浮かんでいく。

 こんなときに一緒に来てくれる友達がいれば……ダメだ、私に友達なんていなかった。

 だ、大丈夫だよね……小波君は私のこと変な目で見ないでくれるし……。

 あ、でも『プル女』だとこの後二人でずっとドキドキする展開だったような……? 

 どど、どうしよう……!? ※(『プル女』は健全なゲームです)

 

「いつも鍵開けてるから好きな時に来ていいぞ」

 

 今とんでもなく怖いことを聞いた気がする。

 小波君がドアノブに手を掛けると本当に鍵を掛けずにいたようですんなりと扉が開く。

 

「お、お邪魔します」

 

 部屋に入ると奥の部屋に一人の生徒の姿が漫画を読んでくつろいでいるのが見えた。

 

「えっと……」

「同じクラスの綾小路だ、よろしく」

「は、はい……よろしくお願いします……?」

 

 想定していなかった男の人に思わず声が上ずる。

 抗議の意味で小波君に視線を向けると当然のような反応が返ってくる。

 

「人数が多い方が経験になるからな」

「に、人数が多い方が……!?」

 

 そんないきなり複数人を相手に……!? 

 

「後で十代も来る」

「よよ、四人で……?」

「ん? あぁ大丈夫。疲れたらその間は男同士でやれば良いからな」

「おおおお、男の子同士でもやるんですか!?!?」

「それじゃあ早速始めようか、デュエル特訓を」

 

「デュエ、デュエル……?」

 

 力が抜けて膝から項垂れてしまう。

 

「ど、どうした佐倉」

「何でもありません……」

 

 うぅ……は、恥ずかしくて消えてしまいたい……。

 

 

 

 

 

 こうして私に自信を付けさせるという名目のデュエル特訓が始まった……。

 

「う~ん……弱いな!」

「ぴぃ……」

 

 

 




俺は見たんだ、ZEXALIIIでIVさんの服が爆発するところを
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