脳無(幼女)のヴィランアカデミア 作:殻木の弟子
「オールマイトへの
「うん、準備できてるよ」
かつてオールマイトに全てを奪われたオール・フォー・ワンからの、悪意を込めた贈り物。
作ったのはわたしなんだけど、我ながら趣味の悪いものを作ったね。
「それじゃ、行こうか・・・
タルタロスにオール・フォー・ワンを迎えに行った時、黒霧はいなかったんだよね。
黒霧も大事な仲間だから、個性をフル活用して一生懸命探した。セントラル病院にいることをなんとか突き止め、襲撃して黒霧を奪還、そして今に至るって感じ。
「荼毘はエンデヴァーの病室へ。ちょうど一家全員が見舞いに来て集合しているはずだよ」
「承知しました」
今日で、わたし達の前に立ち塞がるものを全て片付ける。
オール・フォー・ワンはオールマイトを完全に殺し、荼毘は家族との因縁に決着をつける。
わたしと弔は・・・今の世界をぶち壊すときに最大の障壁になる存在、スターアンドストライプを
世界の命運を決める最終決戦・・・と言っても、結果は分かりきってるけどね。
「さあ、今こそ全てをわたし達の手に!!」
「・・・緑谷少年、無事でいてくれ」
緑谷出久が行方不明になってから、今日で3日。
未だに連絡は取れず、手掛かりは一切ない。
・・・と言っても、犯人は分かりきっている。
「オール・フォー・ワン・・・ッ!」
タルタロスから脱獄し、世界中を荒らし回る
十中八九、犯人は奴だ──「やあ、呼んだかい?」
背後から声がかかる。
よく知った声・・・できれば聞きたくない声。
「おやおや、無視かい?せっかく君にプレゼントを持って来てあげたというのに」
「何だと・・・?」
振り返るとそこには、緑谷少年の首元あたりを掴んで引きずっている、オール・フォー・ワンの姿があった。
「緑谷少年!」
「呼んでも無駄だよ、意識を失っているからね」
奴はあのマスクを着けておらず、顔の上半分も再生している。
相変わらずニヤニヤと笑みを浮かべている奴に、私は叫ぶ。
「緑谷少年を放せ!!」
「いいとも。もう個性は貰ったからね」
そう言って奴は、緑谷少年の体をこちらへ放り投げた。
床に放り投げられた緑谷少年を抱きかかえる。
脈は・・・ある。
「よかった・・・」
「・・・フフフ」
オール・フォー・ワンはこちらを見てニヤニヤ笑っている。
「本当にそうかな?
「何を言って・・・?」
呼吸もしている。
心臓も動いて──
「・・・!」
おかしい。
緑谷少年の体から、
「前にも言った通り、僕は君にできる限り惨たらしい死を迎えて欲しいんだ。だから──君の全てを奪うことにした」
「君は、個性も家族も持っていない。なら、今の君から奪えるものとは何か・・・」
オール・フォー・ワンがニヤニヤ笑いながら見つめてくる。
「そう、生徒だよ」
「今君が持っているそれは、君の教え子達を繋ぎ合わせて作ったんだ」
「・・・は?」
腕の中の緑谷少年から、『メキメキ』と異音が聞こえる。
「骸の『オーバーホール』で無理矢理1人分のサイズに押し込めたんだが、無茶な作りだから長くは持たない・・・おや、彼も目を覚ましたらしいね」
緑谷少年が僅かに目を開き、こちらを見てくる。
「オール・・・マイト・・・。すみません、僕──」
私の目の前で、緑谷少年は弾けた。
物言わぬ肉片となって、飛び散った。
「フフフ・・・ハハハハッ!実にいい顔だ、八木俊典!!」
「オール・フォー・ワンッ!!!」
怒りに身を任せ、殴りかかる。
しかしその腕は、簡単に奴に掴んで止められた。
「哀れだね・・・怨敵たる僕が目の前にいるのに、君は何の力も持たないんだから」
オール・フォー・ワンは拳を握り、腕を振るう。
「『OFA』最大出力・・・消え失せろ、オールマイト」
私の意識は、そこで途絶えた。
「弔、準備はできてる?」
「ああ」
わたし達は今、北アメリカ大陸の端っこにいる。
わたしの個性のうち『光学迷彩』とか『ステルス』を使って、こっそり上陸した。
わたしと死柄木はトゥワイスの個性でそれぞれ4人ずつに増えて、大陸の東西南北にそれぞれ配置されている。
「『肉体変形』+『肥大化』!!」
翼を6枚に増やし、展開する。
「『閃光』×63+『レンズ』×50!!」
わたしは翼を煌めかせ、弔は地面に触れる。
最大出力で一気に消し飛ばす!
「「ぶっ壊れろ!!」」
閃光が地上を包み、辛うじて残った大地も一瞬で『崩壊』していく。
スター・アンド・ストライプと戦わないのかって?
雄英生徒から奪った『洗脳』と『真実吐き』を併用して、「貴様たちは、死ね!!」するだけだし、誤差だよ誤差。
そんな感じでこの日、『アメリカ』は文字通り消滅した。
「死柄木〜、領民の様子はどう?文明発達したりしてない?」
「特に事件は起こってないな・・・一昨日、自動車の残骸が地下から発見されてたくらいか」
わたし達は今、オール・フォー・ワンの魔王城にいる。
わたし達がアメリカを吹き飛ばし、オール・フォー・ワンがオールマイトを始末したあと、トゥワイスがわたし、死柄木、オール・フォー・ワンを増やして全世界を襲撃した。
核兵器やら何やらが使用され、地上は荒廃。
それでもあの時代の人類は、わたし達に勝つことはできなかった。
戦争で文明は完全に破壊され、人口は10分の1以下に。
そんな荒れ果てた世界をわたし達は掌握し、500年以上かけて中世くらいまで文明は復興した。
オール・フォー・ワンは『大魔王』として、死柄木は『統括官』として、そしてわたしは『大天使』として世界を支配している。
死柄木は役職を貰ってはいるけど、実際はほとんど何もしていない。
反乱勢力が出た時に粛清するくらいだ。
他のメンバーはどうなったのかって?
ドクターは今もオール・フォー・ワンに、黒霧は死柄木に今も仕えている。
荼毘はエンデヴァー一家を燃やし尽くしたあと、姿を消した。
どこに行ったかはわたしも知らない。
・・・別れの挨拶くらい、してくれてもよかったと思うんだけどな。
トガは、人生を謳歌して寿命で死んだ。
普通に恋愛をして、普通に結婚して、子供や孫に囲まれて息を引き取った。
最期もいつもの笑顔のまま、眠るように死んだ。
トゥワイスも天寿を全うした。
ちょこちょこ不運な出来事は起こってたけど、なんか気合で乗り越えてた。
「そういえば、コンプレスは今めっちゃ忙しいらしいね。悪徳領主がどんどん増えてるとかで」
「ほっとけばいいだろ・・・やりたくてやってんだから」
コンプレスは、悪徳領主とか不正をしてる役人をしばいてる。
『世直し』しまくりで人生が楽しそうだ。
ナガンは治安維持組織のトップをやってる。
暗殺じゃなく、普通に証拠を掴んで逮捕。
公安みたいな組織にならないよう頑張ってるみたいだ。
元異能解放戦線の面々は、『異能』の訓練講座みたいなのを各地で開いている。
制御できないと世界が滅ぶようなのも結構あるからね。
「お前の調子はどうなんだ、大天使様?」
「う〜ん。医療も進歩してきたし、あまり忙しくはないかな」
今この世界には、『死者を埋葬する』という文化はない。
誰かが死んだら、『大天使』であるわたしが取り込み、それによって天界へ行ける・・・ということになっている。
わたしを信仰対象とした宗教ができていて、全世界の人々がそれを信仰しているんだ。
「やあ、待たせたね」
死柄木と話していると、ようやくオール・フォー・ワンがやって来た。
今日はわたし達が世界を統一してから600年の記念日。
魔王城にて、記念式典が行われるのだ。
「その服かっこいいね、わたしも欲しい」
「嘘だろ・・・」
オール・フォー・ワンの『ザ・魔王』って感じの服を見て呟いたわたしを、死柄木が信じられないものを見るような目で見る。
かっこいいからいいじゃん。
「まぁいいや・・・そろそろ式典始まるし、行こう!他のみんなも待ってるよ!」
と、わたし達の物語はこんな感じで、ずっとず〜っと続いていく。
まあ、別の世界から侵略者がやってきたり、宇宙の果てから星を食べる化物がやって来たりしたんだけど・・・それはまた別のお話。
「ここからは『敵』じゃなくて世界を守る『ヒーロー』の話になっちゃうから、ここでおしまいってわけだね!」
「急に何言ってんだ?つーか誰に喋ってる?」
それじゃ、またね!
これにて本作は完結です。
普通に人類が滅亡寸前まで行って征服されるバッドエンドルートですが、骸ちゃんは敵サイドなのでハッピーエンド。
敵サイドは全員夢を叶え、骸ちゃんも仲間とずっと一緒にいられるのでハッピーです。
ヒーローサイドは・・・まあ、ドンマイ。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。