力なら負けません。それだけです。   作:中棚彼方

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第一章 ~忘却と異端、それは始まり~
落ちた彼


 

 

現状把握。

 

 

 

変なとこに飛ばされた。チャンチャン♪

 

 

 

……泣いてもいいかな?訂正。もう泣いたわ心の中で。

 

 

 

「此処何処だし?」

 

 

俺が聞きたいし。つーか俺が言ったんだけど。

 

 

マジ死ねる。なはははは、こん畜生。笑いたきゃ笑え。

 

 

上体だけ起こして周囲を見渡せば、あるのは深い緑と茶褐色の二色が視界を埋め尽くしているだけの寂しい空間。首だけ動かして前を向けば木、左を向けば木、右を向けば木、後ろを向けば――ま、言わずもがな。

後は、ざわざわと擦れ合う葉と葉の間を掻い潜って落ちる、茜色の空の木漏れ日。それだけ。

 

――と、

 

 

「つぅッ…………」

 

 

その茜色を直視しようとして、僅かだが眼球に痛みが走る。痛みが眼を刺激して視界を曖昧にした。イテェ。周囲の木が遮光機になって暗いからそうなるわな。目がなれねぇんだ。

 

手でそれを遮断し、しかし目線はそのままで。

 

しばし考察。

 

 

(空は茜色……って事は、やっぱ時間的には正午で間違いないよな?それも日没寄りの。見渡せど見渡せどあるのはでかい木小さい木、形の変な不思議な草花――何かの本に似たようなのが載ってなかったっけ?確か題名は……『古植物学教本』?――、それから後は薄ら顔を覗かせる茜空だけ。生き物の姿はまだ見てない。声は聞こえるけど、何の動物かは不明。その他もろもろは不確定要素として一括りして、それをふまえて統合すれば…………)

 

 

ちょっと唸りますので失礼。

 

 

 

うーんうーんうーんうーんうんーうーんうーんううーんうーんうーんうーんうーんうーんうーんうーんうーんうーんこうーんううーんうーうーうーうーうーう――――あれ、うーんがゲシュタルト崩壊してる?

うーんってこんな字だっけ?あれ、あれれぇ?

 

 

 

そんなことはともかく、ひとまず今現在の結論が出た。

 

 

(要するに考えたって端的且つ明確な情報が少なすぎて正否云々の判断のつけようが無い。押しても引いても何とも言えん状況である――こんな感じか……て、ん?)

 

 

ちょっと待て、結局これって俗に言う八方塞がりって奴じゃないかな、ねぇ奥さん?帰りたいこと山の如しだよ奥さん?それと全く関係ないけど、俺、守備範囲の広さには定評があるんだよ奥さん?俺はノンケだって喰っちまうようなすいませんさすがにそれは無いですごめんなさい。

 

 

 

携帯電話で時間を確かめようとしたが、液晶が割れていて使い物にならなくなってた。高かったんだけどなぁ……。結構愛着があった分、これは少々くるものがある。舌打ちが漏れてしまうのはここでは大目に見てほしい。

壊れた要因は……あー、何となく分かった。光で目がやられて瞑ってたから微妙だったけど、あの時(恐らく俺が此処に来たであろう時)に背中に受けた衝撃は空から落ちた故の衝撃だったようだ。それもそこそこ高い位置から。ゴォーッて風を切る音が聞こえたし。

地面が俺を中心に陥没してんのもそれが原因だと言えば納得できる。んで、その際に携帯が壊れたと見て相違ない、かな。

 

 

因みに誤解を招かない為(誰に、とは言わない)に口を孕ませゲフンゲフン挟ませてもらうが、文頭の宣言どおり俺は此処に飛ばされたのだ。名も知らないこの未開の地に、だ。決して自ら足を踏み入れたその結果がこれだとか、若さゆえの過ちでは絶対無い。断じてない。

でだ、飛ば"された"って『あたかも第三者が当事者で、主な原因と黒幕はそいつである』かのような表現をわざわざ用いてるあたり、やっぱりそこには第三者の介入が含まれている訳で。

 

 

つまるところ、俺はそいつにこんな得体の知れない僻地に飛ばされた訳で。

 

 

しかも間接的に俺の携帯電話壊した犯人がそいつな訳で。

 

 

おまけに空から落とされた訳で。

 

 

全部悪いのはそいつな訳で。

 

 

そいつは今頃高らかに、見下すようにほくそ笑んでるわけだ(被害妄想)。

 

 

 

――よし、回りくどいのはよそう。これからやることを考えるとか腹減ったとか、そんなのは後回しだ。ったく、何の為の本能だよ?今はこの溢れんばかりの不完全燃焼な思いを形にすればいいんだ。ただそれだけなんだ。そうだそうしよううんうん。

 

 

えーと、あいつ名前なんだったっけ?初対面だったから忘れちまったな。美人でドレスなのは覚えてんだけど。

 

すまんがまたちょっと失礼。

 

 

うーんうーんうーんうーんうーんうーんうーんうーんウーウーウーウー――お、今回はわりかし早いな、うんうん。やっぱ印象強かったもんなあの魔性の美女は、うんうん。笑顔とかめっちゃきな臭い顔してたもんな、うんうん。もっと普通に笑えねぇのかお前はってな、うんうん。今度会ったときに指摘してやろう、うんうん。変な力使ってたしね、うんうん。

 

 

 

よーし、吸ってー、吐いてー、吸ってー、吐いてー。

 

 

思いっきり、吸ってー。

 

 

『声』に変えてー。

 

 

一言、名前でー。

 

 

せーのー

 

 

 

 

 

 

 

「っ――――――――――――――――ふぅざっっっっ!けんじゃあっっ!ねぇえぞこんの――――――

 

 

 

くそ少女臭がぁぁぁぁああアアアアああああアアアアアアアアアアアアアアアアああアアアアああアアアアああああアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああ!!!!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あら?名前で言ったつもりなのに。

 

 

なんだよ少女臭って。聞いたことねぇし。

 

 

 

ま、いいか。

 

 

 

 

 

 

そんな俺の、物語。

 

 

 





※あらすじで述べている通り、この小説の主人公は色々ズレています。


※その為、彼の言動には度々あれっ?と思われる不可解な部分が含まれている場 合がございます。


※それらも全て、『彼だからこそ』と認識した上で読んでいただければ幸いで  す。


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