幼女戦記if 〜帝国軍第1装甲軍の戦歴〜   作:izuminnー3305

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第2章:終結への始まり
第7話:再教育訓練


 後日、伝令兵を通してターニャが指揮する新たな航空魔道連隊は『第203航空魔道連隊』、アルフレットが指揮する新たな機械化軍は『第1装甲軍』と命名されたことが二人に伝えられたのであった。

 

 ターニャとアルフレットが士官学校を卒業してから一週間後、第203の後方本部が置かれた参謀本部外局の旧編成課の一室でターニャは膨大な資料の山に驚く。

 

「なんだこれは⁉募集してまだ一周間だぞ!なのに、どう見てもブラックな求人募集だろ!」

 

 ターニャは203の兵員調達の為に出した応募ポスターを見て呆れる。

 

「無理だ。絶対に五ヶ月以内での編成は無理だ。よし!本部が自由にして構わないと言っているんだから暇な兵士をこっちに回すか」

 

 ターニャは嫌な笑顔をしながら目の前にある電話の受話器を手に取りダイアルを回す。

 

 すると部屋のドアを何者かが三回、ノックする。

 

「失礼します!」

 

 何処かで聞き覚えのある声、そして入って来た兵士にターニャは電話の手を止め驚く。

 

「貴官がなぜ、ここに?」

「お久しぶりです。デグレチャフ大佐」

 

 彼女に向かって笑顔で敬礼をするのは最初の部下で後方に送ったセレブリャコーフであった。

 

「ヴィクトーリア・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ中佐、参謀本部の命によりデグレチャフ大佐の副官として着任しました」

「貴官が副官なのか?」

「はい。大佐と同性でなおかつ同期である事からだそうです」

「そうか・・・遅れながら昇進、おめでとう」

「ありがとうございます。では早速、資料の整理を行いますね」

 

 そう言うとセレブリャコーフは山となってる資料の一つを手に取り空いている席に置く。

 

「やめとけ、中佐。この量は二人では無理だ」

 

 そう諦めな表情で言うターニャとは違い、セレブリャコーフは間向きな笑顔で言う。

 

「ご心配なく。手の空いている幾つかの憲兵をこちらに回す様にしております」

「え⁉そんな事をしていたのか?」

「はい。連隊の編成完了に尽力したと思いまして」

 

 セレブリャコーフの純粋な想いにフッと笑う。

 

「ありがとう、セレブリャコーフ中佐。すごく助かるよ」

 

 ターニャからのお礼にセレブリャコーフは作業の手を止め、目を見開き驚きながら振り向く。

 

「え⁉大佐殿、前とは凄く変わりましたね」

「え⁉・・・ああぁ、そう言われれば前線ではあまり部下を素直に褒めた事がなかったな」

「あのー、一体何かあったのですか?」

 

 するとターニャは右腕を立て右頬を手に置き、首を傾け資料を見ながら答える。

 

「実は私の友人からのアドバイスを貰ってなぁ。『皆から愛される上官となれ。お前はただでさえ怖いんだから』と」

 

 それを聞いたセレブリャコーフは感激した様な明るい笑顔で席を立ち祈る様に手を合わせターニャに近づく。

 

「大佐殿!その友人は素晴らしいです!分かりました。私も大佐殿が愛される上官になれる様にお助けします」

 

 セレブリャコーフからのやる気にターニャは何かあると確信し、少し苦笑いをする。

 

「あーーっ・・・あはははっ、ありがとう中佐。でも、お手柔らかにな」

「はい!」

 

 セレブリャコーフはやる気の満ちた笑顔で再びターニャに敬礼をすると席に戻り作業を再開した。

 

 

 一方、帝国領ノルデンの南西部にあるアルトマーディン陸軍演習場では中将となったアルフレットは第1装甲軍の編成の為に集結した二個軍団の近代化訓練を徹底的に行っていた。

 

「第1装甲師団‼陣形を崩すな!おい‼第2装甲師団!第7装甲師団に遅れているぞ!スピードを上げろ‼第6装甲師団!何をしている‼補給の自動車化部隊を置いて行くな!」

 

 アルフレットは新しく配備したSd Kfz263重装甲指揮車両のMG13を二丁搭載した銃座砲塔から上半身を外に出し、双眼鏡と無線を使い指示をしていた。

 

「第11自走騎甲師団!支援砲撃を緩めるな!この馬鹿!第12自走騎甲師団‼前に出るな!下がれ‼支援任務を放棄するな!」

「しかし、中将、我が装甲軍に配備された新兵器は凄いですね」

 

 そう言う咽喉式Dfhb43ヘッドフォンマイクを付け、第二次大戦のドイツ戦車服を着た通信兵が笑顔で言う。

 

「そうだな、通信兵長。だが、実戦投入にはまだまだ。兵長も早く新しい暗号通信を覚えろよ」

「はい、中将」

 

 通信兵長は笑顔で敬礼をし、車両内に搭載された新型の法術(TO)()戦略()暗号()光通信機(OEC)41型(T-41)の操作に戻る。

 

 アルフレットが指揮する第1装甲軍の隷下である第1、第2装甲軍団に所属する四つの装甲師団と二個の自走砲師団にはアルフレットの命で優先的に配備された戦車と自走砲が稼働していた。

 

 主力はアルフレットのアイデアを取り入れ、前世を上回る性能と生産性を持った軽戦車のⅢ号戦車J2型、中戦車のⅤ号戦車G2型パンター、歩兵戦車のⅣ号戦車D2型、重戦車のⅥ号戦車A2型ティーガーⅡであった。

 

 そして主力の自走砲は対戦車自走砲として軽対戦車自走砲のⅢ号突撃砲G型、中対戦車自走砲のⅣ号駆逐戦車A2型、軽榴弾自走砲のⅡ号自走榴弾砲A2型ヴェスパ、中榴弾自走砲にⅣ号自走榴弾砲A2型フンメル、対空自走機関砲のⅤ号対空戦闘A2型ケーリアンであった。

 

 五時間に及ぶ厳しい訓練は一旦、休憩の為に終わると各師団の様子確認をアルフレットと副官二名を連れて行っていた。

 

「うむ。我が軍の装甲擲弾兵と降下猟兵に優先的に生産と配備がされた銃火器の調子はどうだバルト少将」

 

 アルフレットは右横にいる赤茶髪の男性将校のバルトは頷き、笑顔で答える。

 

「はい、中将。新型銃火器であるワルサーP38A2、Kar98k2、ワルサーGew43A2、StG44A2、MP40/Ⅲ、FG42/Ⅳ、MG42A2、擲弾器のシュトゥルムピストルMk.Ⅱ、そして携帯対戦車兵器のパンツァーファウスト150A2とパンツァーシュレック54A2は問題なく兵士達からも高い評価を受けています」

「そうか。それはなによりだ。グレディン少将、新しい軍服や戦闘ヘルメット、野戦服に対しての兵士達の評価は?」

 

 アルフレットの左横にいる眼帯で左目を隠す白銀髪のアルフレットと男性将校のグレディンが手に持っている資料を見ながら答える。

 

「はい。新型の軍服とM40E2野戦服に関しては兵士達から『帝国の威厳と栄光を感じる素晴らしい服』だと高い評価を得ています」

 

 それを聞いたアルフレットは笑顔になり、立ち止まる。

 

「そうか。そんな評価を聞けて嬉しいよ」

 

 ドイツ国防軍が使用していた小火器と軍服などはアルフレットのアイデアを銜えた改良された物で、今回の第1装甲軍の為に優先的に配備されていた。

 

 そして前を開いた状態で着ている将官用オーバーコートの内ポケットから帝国の国旗が描かれたタバコケースとマッチを取り出し、一服を始める。

 

「それは頂上だな。いいか、お前ら、訓練は引き続き早朝から夜間まで行う。いくら俺が選抜した優秀な師団とは言え、従来とは異なる戦術で戦うから万全を期せよ」

 

 アルフレットからの指示にバルトとグレディンは敬礼をする。

 

「「はい!中将閣下」」

 

 休憩後の第1装甲軍はアルフレットが制作した訓練をひたすら行い、予定より早く編成を完了するのであった。

 

 

 一方のターニャは旧編成課室のデスクで電話でゼートゥーアと話していた。

 

「はい、そうです。閣下に提出した報告書でも我が航空魔道連隊の状態は中隊規模です。これでは五ヶ月以内での編成完了は無理です」

 

 参謀本部の司令官室でデスクに座り葉巻を吸いながら電話をするゼートゥーアも、その深刻さを受け止めている。

 

「確かに。では貴君ならどの様な方法で連隊の編成を完了させる?」

「はい、私でしたらアルフレット中将から頂いた編成用の新たな再教育訓練課程を実施します」

「分かった。この際、手荒でも構わん。再教育してやれ」

「分かりました。それと閣下、例の海空の部隊の編制は?」

 

 ターニャが一枚の資料を手に取ったのと同時にゼートゥーアは答える。

 

「ああ、参謀本部直属の海軍独立第1機動艦隊と海軍独立第3潜水隊群、そして空軍独立第8航空戦闘攻撃旅団はアルフレット中将のお陰で予定より編制を完了している。貴君も急ぎたまえ」

「分かりました。では、失礼します」

 

 会話報告を終えたターニャは受話器を電話に置く。

 

「セレブリャコーフ中佐!」

「あ、はい!大佐殿!」

 

 デスクで作業をしていたセレブリャコーフはその手を止め、ターニャの座るデスクに向かう。

 

「大佐殿、一体何でしょうか?」

「すぐに選抜で不合格にした魔道兵全員を今日の午後六時にツークシュピッチェ演習場に集めろ!」

「え⁉全員ですか?」

「全員だ。急げ」

「は、はい!大佐殿!」

 

 セレブリャコーフはターニャに向かって敬礼をし、その場を去る。

 

 そしてツークシュピッチェ演習場でアルフレットから受け取った再教育訓練課程を実施した。

 

 第二課程の積雪の行軍訓練で山岳に差し掛かった時にターニャはあえて行軍する訓練連隊に向けて雪崩を起こす。

 

「行軍中に昼寝とはいい度胸だな。厳罰に処されたいのか?」

 

 装備を着こなし空中から訓練を()ていたターニャは降り立ち、雪に埋もれた訓練兵達を引っ張り出し、気絶したグランツを蹴りで叩き起こす。

 

 その姿にヴァイス達は恐れを始め、ターニャは最後の埋もれた訓練兵を引っ張り出す。

 

「さぁてと、これで全員だな。この調子では今日中に行軍完了は無理だな。リタイアしたいなら・・・っ!」

 

 ターニャの脳裏にアルフレットのアドバイスが浮かび上がる。彼から『厳しい訓練で疲弊した兵達に対してはやる気を呼び起こす言動をするべき』と。

 

 そして一呼吸をし、落ち着いた表情でヴァイス達に言う。

 

「すまない、諸君。今のは言い過ぎた。諸君達は帝国で優秀な魔道兵だ。だが、魔道兵がこれでは話にならん‼いいか!この訓練が厳しいのは己を鍛え!己の弱さに勝つ戦いだ!私は諸君達のまだ見ぬ力を信じている‼定めた時間が過ぎても構わん!皆‼助け合い最後まで訓練を完遂するんだ!」

 

 ターニャの激励にヴァイス達は腹の底から奮起し、ターニャに向かって敬礼をする。

 

「皆!聞いたな!訓練を完遂するぞ‼」

 

 ヴァイスの言葉にセレブリャコーフを含んた皆は気合いの入った返事をする。

 

 そして三ヶ月後、第1装甲軍が編成完了と同時に第203の編成を完了する。

 

 最後にターニャは訓練を終えた皆に向かって演説台に立って激励をする。

 

「諸君!厳しい訓練をよく助け合い完遂させたな‼私は非常に嬉しい限りだ!いいか諸君!我々の戦いは帝国の為、そして愛する人達の為に戦う‼しかし!これだけは忘れるな!絶対に死ぬな‼以上だ!」

 

 ターニャが皆に敬礼をすると、皆も気合いの入った返事で敬礼をするのであった。




今作のターニャは話が進むに連れて性格が原作とは大きく丸くなりますので、お楽しみに。
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