幼女戦記if 〜帝国軍第1装甲軍の戦歴〜   作:izuminnー3305

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第9話:電撃のダキア

 第1装甲軍が南方軍集団に到着したのは三日後の事であった。

 

 昼間の帝国軍南方軍集団、ブカラ駐屯地の司令室には軍帽を取ったターニャとアルフレットが居た。

 

「中将、大佐。中央司令部からの伝令です」

 

 椅子に座りエレニウム通信機22型を操作する通信兵からの伝令書をターニャが受け取る。

 

「緊急、ダキア公国、我が帝国に宣戦布告。国境を超え侵攻中。規模は軍集団、約七十万か」

 

 ターニャは斜め後ろにいるアルフレットに伝令書を渡す。

 

「第1装甲軍はただ国境に接近するダキア軍集団を撃滅せよ。以後、コールサインは第1装甲軍を『ドラクル』、第203航空魔道連隊を『フェアリー』とする」

 

 命令書を読み終えたアルフレットはハッと笑う。

 

「『竜の子』と『妖精』ね。相性悪すぎるネームだな」

 

 するとアルフレットは伝令書を持ち通信兵の元に向かう。

 

「通信大尉、中央司令部に伝達。『了解しました。すぐに行動します。ただし第1装甲軍のコールサインが悪すぎたので以降は我が軍は“ニュンフェ(ドイツ語で精霊)”とする』以上だ」

 

 アルフレットの独断のネーム変更に通信兵は驚く。

 

「ええ⁉︎中将!一指揮官が勝手にコールサインの変更はいくら何でも無茶苦茶です‼︎」

「大尉、気持ちは分かるが、諦めろ。我、中将殿は自由人過ぎて手に負えないのだ」

 

 ターニャは皮肉とも取れるジョークで通信兵を宥める、通信兵は顔を下に向け渋々、納得する。

 

「分かりました」

「うむ。それより通信状況は?」

 

 ターニャからの問いに通信兵は気持ちを切り替えシャッキとし、答える。

 

「はい。傍受した通信では暗号化されていないダキア軍の英文通信を捕えました」

 

 それを聞いたターニャとアルフレットは目を見開き驚く。

 

「おいおい!嘘だろ‼︎暗号化されていないだと⁉︎ラジオ局の通信を間違えて捕らえたんじゃないのか?」

「いいえ、中将。国境付近で受信出来ているのは軍用の物だけです」

 

 アルフレットは呆れて言葉が出なかった。

 

「通信大尉、空戦はどうだ?」

「それもありません。空戦はおろか敵航空勢力も未発見です、大佐」

 

 アルフレットと同じく呆れて言葉が出なかったターニャ。

 

「暗号化せずに情報を垂れ流し、おまけに航空戦力もないとはダキア軍はそこまでとは」

 

 そう言うターニャ、二人は初の実戦の為に意気込んでいたが、ダキア軍の質の低さに逆に気が抜けてしまったのであった。

 

 

 それからターニャは連隊全員が大型の基地演説室で待機していた。

 

「総員!気をつけ‼︎連隊長より訓示!」

 

 大きな演説台の上で第203航空魔道連隊所属の第2大隊指揮官、ヴァイス中佐が大声で言うと彼と右に居るセレブリャコーフの間に立つターニャが訓示を笑顔で言い始める。

 

「諸君!戦争だ!いや、戦争の様な物だ!・・・あ!」

 

 再びターニャの脳裏にアルフレットのアドバイスが浮かび上がる。『どんな時でも戦争を軽視する様な発言はしない。逆に厳しさと残酷さを教えながら生きる発言をするんだ』と。

 

 ターニャは深呼吸をし、呼吸を整えると笑顔から真顔になる。

 

「失礼、諸君。今の発言は撤回する。諸君、開戦だ!我々、第203航空魔道連隊並びに第1装甲軍の初陣だ!敵は我が軍の足元にも及ばないが、これは実戦だ!」

「どんな敵であれ気を抜くな!我ら帝国魔道兵の力を思う存分発揮せよ!最後に一つ、皆、生きてここに戻って来い!以上だ‼︎」

 

 ターニャの訓示に腹の底から皆は生きる意欲が湧き、ターニャに向かって敬礼をする。

 

「「「「「「「はっ‼︎」」」」」」」」

 

 そしてターニャも皆に向かって敬礼をする。

 

「では諸君!祖国を守るぞ」

 

 場所は変わり帝国側、ダキアの国境付近を飛行するターニャ指揮の第203航空魔道連隊。

 

「敵は国境を超え、自国領を侵犯中だ。第2から第4大隊は先攻してダキア軍を撹乱せよ」

 

 無線からのターニャの指示で第2から第4大隊は敵軍目掛けて急降下する。

 

 一方の地上を徒歩で進軍するダキア軍は馬に乗る男性指揮官が大声で指示をする。

 

「進めぇーーーーーっ!列をくずすなぁーーーーっ!」

 

 すると頭上から第2航空魔道大隊が爆撃を行う。

 

「実戦と言うよりは実弾演習だな。爆裂術式よーい!()ぇーーっ!」

 

 ヴァイスの指示で第2大隊副官であるグランツ少佐を含めた全隊員が魔力を込めたワルサーGew43A2をダキア軍に向けて一斉発砲する。

 

「相手はカカシ同然、だが実戦だから気は抜けないな。貫徹術式よーい!()ぇーーっ!」

 

 第3大隊指揮官のケーニッヒ中佐の指示で全隊員が魔力を込めたワルサーGew43A2をダキア軍に向けて一斉発砲する。

 

「弱い敵とは言え外したらドヤされるな。貫徹爆裂術式よーい!()ぇーーっ!」

 

 第4大隊指揮官のノイマン中佐の指示で全隊員が魔力を込めたワルサーGew43A2をダキア軍に向けて一斉発砲する。

 

 奮戦する各隊を少し離れた場所から第1大隊と共にターニャとセレブリャコーフが双眼鏡で観察していた。

 

「困ったな。やる事がない」

 

 呟くターニャに向かってするとセレブリャコーフは問う。

 

「あのー大佐殿、少しいいですか?」

「ん?何かね?セレブリャコーフ中佐」

「帝国が新に掲げた『帝国が負ける為の戦争』とは一体何なんでしょうか?」

 

 振り向いていたターニャは前を向き、再び双眼鏡で眺めながら答える。

 

「簡単な話だ。世界平和」

「せ、世界平和!?」

 

 不意を突いた様な答えにセレブリャコーフは驚く。

 

「ああ。勝つ事は簡単だ。だが、勝ち続けてたら負けた国の国民に憎悪が芽生える」

「は・・・はーーーっ」

「だから勝つより、負ける。お互いのどちらかが勝者と敗者ではなく、お互いに敗者となれば、どうなると思う中佐?」

 

 ターニャからのミニクイズにセレブリャコーフは右手で下顎を触りながら考える。

 

「うーん。お互いが敗者だと憎しみや恨みは持たない。争う理由も無くなるっと言う事ですね大佐殿」

 

 セレブリャコーフの答えにターニャは双眼鏡から目を離し、満面の笑みで振り向く。

 

「そうだ。その一歩がダキア戦線だ」

 

 するとターニャは観察をやめ、持っていたワルサーGew43A2を両手で持つ。

 

「さてと、我々もこのまま待機という訳にもいかんな。第1大隊!我に続け‼︎」

 

 ターニャの指示で第1大隊も地上攻撃に参加し、ダキア軍の頭上からM39型柄付手榴弾を数十個を投下した。

 

 

 一方、後方ではSd Kfz263重装甲指揮車両の銃座から上半身を外に出した状態の軍帽を被ったアルフレットが無線のスイッチを入れる。

 

「ニュンフェ・リーダーよりフェアリー・リーダー、応答せよオーバー」

「ニュンフェ・リーダー、こちらフェアリー・リーダーだ」

「フェアリー・リーダー、進軍するダキア軍はどんな状態だ?オーバー」

 

 アルフレットは右手に持っている双眼鏡で黒煙が昇る12時方向を見る。

 

「ニュンフェ・リーダー、敵部隊は我らの奇襲を受け混乱、指揮系統も麻痺しているオーバー」

「了解したフェアリー・リーダー。まもなく友軍の爆撃機隊が到着し、爆撃を行う。一分後だ。繰り返す一分後だ、ただちに空域から離脱せよオーバー」

「了解したニュンフェ・リーダー、ただちに空域を離脱します。フェアリー・リーダー、アウト」

「ニュンフェ・リーダー、アウト」

 

 アルフレットは双眼鏡を目から放し、通信が終わると例の通信兵長がアルフレットに問う。

 

「中将、相手は近代化されていない弱小軍ですよ。航空魔道連隊の奇襲で半壊、これ以上の攻撃は不要かと」

 

 アルフレットは左の手首に付けた軍用の腕時計を一瞬、見た後に答える。

 

「ああ。でも新戦術のテストが必要だし、それに俺は勝負師でな。どんな相手でも俺は全力で戦う派っなんだ」

「そうですか。おっと!中将!例の第1装甲軍支援用に編成された独立第8航空戦闘攻撃旅団の第15爆撃機大隊が到着、爆撃を開始しました」

 

 通信兵長からの報告にアルフレットは頷き、さっきと同じ方向の空を双眼鏡で見ると先行量産と配備がされた十機のJu87 B-3 スツーカが急降下爆撃を行った。

 

 それを見たアルフレットはニヤリと笑うと付けていた咽喉式Dfh b 43ヘッドフォンマイクのスイッチを入れる。

 

「よーし!各師団、全速力だ‼混乱する敵を一気に帝国から駆逐するぞ!パンツァーーーーーッ(戦車)‼︎フォーーーーーッ(前進)‼︎」

 

 アルフレットからの指示に各師団の主力戦車や自走砲、装甲車両などが車体後方から白煙を吹き出し、力強いディーゼル音と車輪の走行音を鳴り響かせ前進する。

 

「卑怯だぞ!空から強襲するとは‼︎」

 

 半壊状態となり各兵士達が混乱する中で空を飛ぶスツーカに向かって怒りに満ちた表情で言うダキア軍の男性指揮官。

 

 すると突然、地鳴りが起きダキア軍指揮官と他の兵士達は一瞬で冷静になる。

 

「な!・・・何なんだ、この揺れと地鳴りは?」

 

 ダキア軍指揮官がそう言っていると目の前の森から木々を薙ぎ倒しⅢ号戦車J2型、Ⅳ号戦車D2型、パンター、ティーガーⅡが物凄いスピードで突進する。

 

「な⁉︎何だよありゃ⁉︎」

「戦車なのか?」

「デカい、デカ過ぎる‼︎」

 

 帝国新型の戦車を目にしたダキア軍の兵士達は背筋が凍り、そして一両のパンターが密集しているダキア兵に向かって走行射撃を行う。

 

 そしてこの世の物とは思えない恐怖にダキア軍の兵士達は一目散に悲鳴をあげながら小銃を投げ捨て逃げ出すのであった。

 

 アルフレットの新戦術、“電撃戦”は絶大な効果を発揮。侵攻して来たダキア軍を敗走させるだけでなく三日でダキアの首都を占領した。

 

 後に帝国はダキア公国の和平会談を開き、終結。(のち)の後世で、この帝国とダキアの戦いを“三日間紛争”または“電撃のダキア戦線”と呼んだ。

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