幼女戦記if 〜帝国軍第1装甲軍の戦歴〜   作:izuminnー3305

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第15話:戦後処理

 雪解けが始まった春の統一暦1925年。

 

 帝国と協商との講和会議は難航する事なくスムーズに進み、初春には講和条約は締結され正式に帝国と協商連合国の戦いは終結した。

 

 終結から一週間後、帝国領ノルデンに建てられた仮捕虜収容所で生活していたスー達、協商連合国の兵士達は帝国の輸送船に乗り、本国へ帰国したのと同時に帝国領ノルデンは正式に協商連合国へと返還された。

 

 それから更に三日後、とある協商の国際港で元の協商軍の軍服を着こなし、足元に軽めの荷物を置いたスーが一人、火の点いたタバコを口に銜え立っていた。

 

「ご家族を迎えに合州国に行くのか?スー」

 

 軍帽を被り、コートを着たアルフレットが笑顔で話し掛ける。

 

「ああ、アル。そっちの戦後処理はどうだ?」

「ああ。帝国領ノルデンの返還は終えたが、まだまだ復興完了は先だな。しばらくはノルデンに在留だな」

「ハハハハハハッ!まぁ、君達が派手に我が国を散らかしたからなぁ。お片付けはしっかり頼むぞ」

 

 スーが笑顔で言うとアルフレットは少し困った表情を交えた笑顔で後頭部を右手で掻く。

 

「アハハハハハハハハハッ!それを言われると頭が痛いです」

 

 すると、そこに軍帽を被り資料を持ったエーリャが現れる。

 

「中将、例の件ですが・・・あ!アンソン・スー大佐!」

 

 スーの存在に気付いたエーリャは彼に向かって敬礼をする。

 

「はじめまして、アンソン・スー大佐。私はエーリャ・エレナ・ミュラー少佐と申します。アルフレット・シュナイダー中将の専任秘書を務めています」

 

 スーも笑顔で彼女に向かって敬礼をする。

 

 すると、そこに合州国国籍が描かれた煙突の大型客船が二隻の曳船(タグボート)に牽引され入港する。

 

「はじめまして、ミュラー少佐。これから、よろしく頼むよ」

「はい。それとスー大佐、実はグンナー少佐から、あなたにビックリ・ニュースを預かっていまして」

「ん?グンナーが私に」

「はい、実は・・・」

 

 そして合州国へ戦時避難していた多くの協商国民が降りる中で一人の少女がスーの後ろ姿に気付き、降りる人達を掻き分けながら笑顔で走り出す。

 

「お父さぁーーーーーーん!お父さぁーーーーーーん!」

 

 エーリャと話すスーは聞き覚えのある声にフッとなり、振り返ると、そこには合州国に居るはずの娘、メアリーが自分に向かって走る姿があった。

 

「メアリー!メアリーーーーーーーっ‼」

 

 スーは驚きながら身を低くし、嬉し涙を流し、笑顔で走って来たメアリーをスーは受け止める。

 

「どうして、ここに!迎えに行くと言ったろ!」

「ごめんなさい!居ても立っても居られなくて!お母さんも一緒なの!」

 

 メアリーの後ろにはスーの妻、アリシアが嬉し涙を流して立っていた。

 

「アリシア・・・」

 

 スーは立ち上がり、ゆっくりと彼女の方へと歩み寄る。

 

「あなた・・・本当にお疲れ様でした」

「ありがとう、アリシア・・・本当!ありがとう‼」

 

 するとスーは生きて家族に会えた事にふっと喜びが込み上がり、涙を流し始める。そしてスーはアリシアとメアリーと共に深く抱きしめ合うのであった。

 

 その光景を見たアルフレットは笑顔になる。

 

「なるほどね。エーリャ少佐、スーに対するビックリ・ニュースってあれか」

 

 アルフレットからの問いにエーリャは笑顔で答える。

 

「ええ、そうなんですよ。グンナー少佐と話して終結の記念にって。それと中将、例の“彼”に関する件が終わりました」

 

 エーリャの報告を聞いたアルフレットはニヤリと笑う。

 

「そっか。無論、カバー・ニュースは整えているな?」

「はい、中将。もちろんです」

 

 アルフレットは少し安堵した様な表情で深呼吸をするのであった。

 

 

 時は遡る程、約一時間前。

 

 エーリャは帝国軍北方軍集団司令部の指揮官室に居た。

 

「こちらが北方軍集団のノルデンからの全面撤収計画に関する資料です」

 

 そう言いながらエーリャは目の前のデスクに座るシュライゼ大将に資料を渡す。

 

「うむ。ご苦労だった少佐。しかし、奇妙だな。敗北と言う引き分けで戦いを終わらせるとは」

「ええ。ですが、我が軍は大損害を出す事もなく温存した戦力を西方に投入する事が出来ます」

 

 エーリャが笑顔で言うとシュライゼはフッと笑う。

 

「そうだな。北方戦の手柄はアルフレット中将に奪われたが、次の西方戦では必ず手柄を立てんとな」

 

 シュライゼは、そう言いながらエーリャから貰った撤収計画の資料を別の資料と共にデスクの下から黒いバックを取り出し入れて行く。

 

 すると指揮官室の扉を三回、ノックが鳴り男性中佐が一人、入室する。

 

「シュライゼ大将、お迎えの車が到着しました」

「うむ。分かった。では少佐、私は先に失礼するよ」

「はい、シュライゼ大将。では、また本国で」

 

 エーリャが敬礼をするとシュライゼも彼女に向かって敬礼をし、黒いバックを持ち迎えに来た男性中佐の後に付いて指揮官室を出るのであった。

 

 シュライゼの退室を見送ったエーリャは一人、指揮官室の左の壁に向かいノックする。

 

〔トン・トントン・トン()・トン・トン〕

 

〔トン・トントン()・トントン〕

 

〔トントン・トン・()トントン〕

 

〔トン・トントン・トン・トントン・()トントン・トン・トン〕

 

〔トントン・()トン〕

 

〔トン・トントン・トン・トントン・()トン・トントン〕

 

〔トン・トン()トン〕

 

〔トントン・トン・()トントン〕

 

〔トン・トン()トン〕

 

〔トン・トン・トントン・()トントン〕

 

〔トントン・トントン・トン・()トントン・トン〕

 

〔トン・トントン・()・トン〕

 

〔トン・トントン・トントン()・トントン〕

 

〔トン・トントン・トン()・トン・トン〕

 

〔トン・トン・トン・()トントン〕

 

〔トントン・トントン()・トントン〕

 

〔トン・トントン・トン・トントン・()トン・トントン〕

 

 すると指揮官室の左側の部屋からノック音が返って来る。

 

〔トン・トントン(了解)・トン〕

 

〔トン・トントン・トン・トントン・()トン・トントン〕

 

〔トン・トントン・()トントン〕

 

〔トントン・トン・トン()・トントン〕

 

〔トントン・トントン・トン()・トントン〕

 

〔トントン・トントン・()トントン・トントン〕

 

〔トントン・トン・()トントン・トン〕

 

〔トン・トントン・トントン()・トン〕

 

〔トントン・()トン〕

 

〔トントン・トン・トントン・()トントン・トントン〕

 

〔トントン・トン・トントン・()トントン・トン〕

 

〔トン・トントン・トン・トントン・()トン・トントン〕

 

 エーリャは左隣りの部屋に居る人物にノック音でモールスを伝え終えると、シュライゼの座っていたデスクの引き出しを(ひら)き、底を()けると厚い帳簿を取り出す。

 

「これで保守派(ほしゅは)の首根っこはガッチリね。いやぁーーーっ、この帳簿を手に入れるのに苦労したわ」

 

 エーリャは嬉しそうにそう言うと帳簿を持って部屋を出る。

 

 一方、雪が残る海岸沿いの道路を走る黒い車体のベンツ770 W150に乗ったシュライゼは後部座席に座り、右の窓から流れる光景を眺めていた。

 

(アルフレットには手柄を奪われたが、まぁいい。いくら参謀本部でも予算の最終決定件を持っているのは我々、だ。それに俺には帳簿がある)

 

 シュライゼは足元にある黒いバックを見てニヤリと笑う。

 

(こいつを使って参謀本部を操るのは簡単だ。せいぜい、俺の出世の踏み台になってくれよ)

 

 などとシュライゼは心の内で語っていると道路の左側に広がる森林の影から何かが光り、ベンツ770 W150の前輪がパンクする。

 

 パンクした車はコントロールを失い、ガードレールを突き破り、シュライゼは車と共に崖へ落下、炎上するのであった。

 

 その光景を木の幹にSG84/98Ⅳバイヨネットを刺し、その上にKar98k2を置き、雪原用のギリースーツを着た男性帝国狙撃兵が双眼鏡で見ていた。

 

「よし。これでシュライゼ大将の退役は完了だな」

 

 すると狙撃兵は木の根元に置かれた携帯魔道通信機を取り、無線を入れる。

 

「コトリハ准将、私です。オノダです。はい、シュライゼ大将の退役が完了しました。はい、では私は連隊に戻ります。はい、大丈夫です。証拠は何一つ残っていませんので。はい、では後ほど報告はします。では」

 

 無線を切ってオノダは木の幹に刺したバイヨネットを抜き、その場を静かに素早く去るのであった。

 

◾️

 

 エーリャからシュライゼの退役報告を聞きながら彼女から帳簿を受け取るアルフレット。

 

「よくやった少佐。すまんな、俺の秘書をしながらスパイ活動をさせてしまって」

 

 それを聞いたエーリャは笑顔で右手を横に振る。

 

「いいんですよ。それに情報戦略部では女と言う理由で雑用されていた所を私の才能と知識に目を付け、ヘッドハンティングしてくれたアルフレット中将には、とても感謝していますので」

 

 エーリャ、その正体は帝国の情報戦略部に所属していた情報工作員であったが、社会情勢で活躍の場がなかった。

 

 だが、彼女の高い能力に目を付けたアルフレットの誘いで第1装甲軍並びに彼の専任工作員となった。

 

 またフィヨルドへの強襲上陸作戦の際にも協商連合軍司令部に『帝国軍は海上からの侵攻の予定なし』と言う欺瞞情報を流し、フィヨルドの防衛増強を妨害工作を行った。

 

「さてと、俺達は残っている戦後処理の片付けの為に行くとしよう。家族との再開を喜ぶスーの邪魔をするのは失礼だからな」

 

 アルフレットが笑顔で言うとエーリャも笑顔で頷く。

 

「そうですね。では、我々は失礼しましょう」

 

 そして二人はクルっと後ろを向き、その場を静かに去るのであった。

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