幼女戦記if 〜帝国軍第1装甲軍の戦歴〜   作:izuminnー3305

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第4章:春の帝都
第17話:まやかしの西方戦線


 統一暦1925年の春中旬。青空が広がるお昼のライン・西方戦線。

 

 皆さま、戦場からこんにちは。ターニャ・フォン・デグレチャフです。

 

 我々は今は懐かしの西方、ライン戦線に居ますが、あの激戦で泥と荒野だった戦線は嘘の様になくなり、今では緑が広がる平野となっています。改めて自然の力とは凄いと実感出来ました。

 

 一週間前にアルフレット達、第1装甲軍が北方戦線から戻るやいなや拮抗状態だった西方、ライン戦線に投入されていた。

 

 Ⅲ号指揮戦車J2型の砲塔ハッチから上半身を出し、無線でアルフレットは全軍に指示をしていた。

 

「進めぇーーーーーっ!我ら第1装甲軍の力を共和国共に見せてやれぇーーーーーーっ!」

 

 轟音と共に泥濘や鉄条網を突破するパンターとティーガーⅡに対して共和国兵士達は死に物狂いで火砲や戦車で応戦していた。

 

「撃てぇーーーーっ!撃ち続けるんだぁーーーーーーーっ‼︎」

「ダメだ!何だ‼あの帝国の新型戦車は⁉」

「くそ‼こっちの戦車砲じゃ威力不足だ‼」

「とにかくキャタピラを撃て!敵の足を破壊するんだ‼」

 

 共和国軍が運用するソミュアS35、ルノーR35、オチキスH39、M1916 37mm歩兵砲、M1897 75mm野砲、オチキス 25mm対戦車砲の前ではパンターとティーガーⅡの全面装甲を破る事が出来ず、瞬く間に蹂躙される。

 

 更に空中ではターニャ率いる第203航空魔道連隊と独立第8航空戦闘攻撃旅団隷下の第301戦闘飛行隊(通称:スカイ・ソード隊)が激しい空中戦を繰り広げていた。

 

「フェアリー・リーダーより全隊へ!共和国魔道兵を抑えつつ進軍する地上部隊を援護せよ!奴らをパリースィイへ追い返してやれ‼」

「「「「「「「「了解‼」」」」」」」」

 

 連隊全体に命令をしたターニャは持っているワルサーGew43A2を素早くリロードし、魔力を込めた弾丸で次々と共和国魔道兵達を堕として行った。

 

 一方、ターニャ達より更に上の高度では数十機のBf109F2が共和国軍が運用するニューポール28、SPAD S.Ⅶを次々と撃墜していた。

 

「メーデー!メーデー!」

「なんだよ!あの帝国の新型機は⁉」

「信じられん‼なんだ!あの機動力とスピードは⁉」

 

 更に独立第8航空戦闘攻撃旅団隷下の第313爆撃飛行隊(通称:サンダーホーク隊)はJu87B-3 スツーカと重爆撃機のドルニエDo217E-6、合わせて三十機が共和国軍野戦基地と物資集積所を徹底的に爆撃、二日で戦線の押し上げに成功した。

 

「攻勢だ!明日にでも全軍を持って大攻勢を仕掛けろ‼敵がどんな防衛線を築こうとも屈強な我が栄光ある共和国軍なら突破は可能だ!突破し!その勢いで帝国の首都へ攻め込むのだ‼」

 

 共和国軍の首都、パリースィイにある国防総省の最高司令室のデスクに座るド・ルゴール大将は怒りに満ちた表情で目の前に立つビアント大佐は険悪な表情で訴える。

 

「ルゴール大将!攻勢っと言っても帝国は未知の防御戦術を使用し鉄壁の守りを築いています‼既に三日間の攻勢で我が軍の戦死者数は百万人に達しています‼これ以上、犠牲を出すのは得策ではありません!攻勢を中止し作戦を練る時間を下さい‼」

 

 ビアントからの反論にルゴールはデスクに拳を叩き付ける。

 

「ダメだ‼作戦を練る時間を作れば、それこそ帝国に我が国に攻め込む準備を与える!何としてでも敵の防衛線を突破し帝都へ攻め込むんだ!いいなビアント大佐?」

 

 ルゴールからの命令にビアントは歯を強く噛み締めながら無言となり、彼のそんな態度にルゴールは怒りを表す。

 

「分かったな!ビアント‼」

「了解・・・です」

「では、すぐに持ち場に戻れ!これ以上、私を不快させるな!」

「はい。失礼します」

 

 ルゴールに嫌々従うビアントであったが、その内心では彼の横暴さに苛立ちを募らせていた。

 

(クソ!あのガチガチの石頭大将が‼今、現在の共和国軍の戦術じゃ帝国軍の防衛線は破れないと言うのに‼)

 

 それからルゴールの無茶な攻勢で多くの共和国兵士が命を堕とすだけであった。

 

 更に各西方戦線で帝国軍の縦深防御(じゅうしんぼうぎょ)戦術で共和国軍の主力が敵地で孤立し、激しい包囲攻撃に晒されていた。

 

「クソ!何が攻勢を仕掛けてベルンまで攻め込めだ‼︎」

「ちくしょう‼︎こうなったら撤退だ!撤退して体勢を立て直す‼︎」

「ダメです‼︎師団長!先程、帝国軍が我が軍の後方に回り込み退路を断たれました‼︎もう後退が出来ません!」

「クソったれ‼︎とにかく応戦だ!」

 

 四日間の共和国軍の大規模攻勢で帝国軍の戦死傷者は301人に対して共和国軍は装甲車両、合わせて二百十両に戦死傷者は約5万人と大損害を(こうむ)った。

 

 それ以降、共和国軍は大規模攻勢を中止し、西方には静かな平穏が訪れたのであった。

 

⬛︎

 

 少し高い丘で(から)の木箱を椅子代わりに座り、のんびりと左手に持った小麦100%の白い焼き立てのKパンで作ったサンドイッチを食べながら代用コーヒーではなく本物のコーヒー豆で入れた温かいコーヒーを飲んむアルフレットが居た。

 

「うーーーーーーん。こうやって、のんびりとした所で美味いサンドイッチを食べながら美味いコーヒーを飲むのは最高だ」

 

 アルフレットが明るい笑顔で言っているとターニャが笑顔でアルフレットに近づき、彼の右隣に立つ。

 

「よ!アル。コーヒー、貰えるか?」

「よ!ターニャ。ああ、いいとも」

 

 アルフレットは笑顔でテーブル代わりにしている(から)の木箱の上に自分のコップを置き、サンドイッチは皿に置く。そして木箱に置かれていた白いコーヒーポットを手に取るとターニャが持っていたアルミ製のコップを受け取り、コーヒーを入れる。

 

 ターニャはアルフレットが飲んでいた温かいコーヒーを飲むと今まで見た事もないホッとした顔をする。

 

美味(うま)い!代用コーヒーじゃない本物のコーヒー豆で入れたコーヒーだ!」

 

 ターニャのそんな姿にアルフレットは笑顔になり、空になったコップに再びコーヒーを入れながら言う。

 

「実は、このコーヒーを入れたのがグランツ大尉なんだよ」

 

 アルフレットの口から出た以外な人物にターニャは驚く。

 

「ええ⁉そうなのか?」

「ああ、そうなんだ。まぁ立ち話もなんだから、そこにある(から)の木箱に座れ」

「ああ、そうするよ」

 

 そしてターニャは近くにある空の木箱をテーブルの近くに置きすわる。

 

「それで本当に、このコーヒーを入れたのがグランツなのか?」

 

 ターニャの問いにアルフレットはコーヒーを一口飲むと笑顔で頷く。

 

「そうなんだよ。グランツの奴、軍に入る前は小さな喫茶店でバリスタとして働いていたんだと」

「へぇーーっじゃあコーヒーの種類も詳しいんだな」

「ああ、そうなんだよ。でもグランツ(いわ)く“齧った程度の知識”だとよ」

「あいつらしいなぁ。グランツは意外と自分が持つ知識を披露しない内気な所があるからな」

 

 アルフレットとターニャは笑顔で会話をしていると、そこに白いKパンを沢山持って、その一つを食べながらセレブリャコーフが現れる。

 

「大佐ぁーーーーーーーっ!そろそろ偵察任務の時間ですよーーーーーーーっ!」

 

 アルフレットとターニャは振り向き、彼女は頷く。

 

「分かった。でもセレブリャコーフ中佐、いくらKパンが美味しくても食べ過ぎは体に悪いぞ」

 

 ターニャの指摘にセレブリャコーフは驚き、口に入っているKパンを喉に詰まらせる。

 

「〜〜〜〜〜〜〜ッ‼︎〜〜〜〜〜ッ!~~~~~~~ッ‼~~~~~~~~ッ!」

 

 そんなセレブリャコーフの姿にアルフレットは軽く溜め息をし、M31A2型水筒を笑顔で彼女に渡す。

 

「ほれ、水だ。飲んで流し込め中佐」

 

 セレブリャコーフは何度か頷き、持っていたKパンをターニャを渡し水を一気に流し込む。

 

「ぷはぁーーーーーっ‼︎はぁーーーーーっ!死ぬかと思ったぁーーーーーっ!」

「セレブリャコーフ中佐、食べるのは結構なんだが、戦場で死ぬ前に喉に物を詰まらせて死ぬぞ」

 

 ターニャからの指摘にセレブリャコーフは苦笑いをする。

 

「アハハッそうかもしれませんね」

 

 などとセレブリャコーフが言うとアルフレットとターニャが笑うのであった。

 

⬛︎

 

 その後、ターニャを筆頭にセレブリャコーフ、ヴァイス、グランツ、ケーニッヒ、ノイマン、その他十名で編成された航空魔道分隊で西方中央戦線側の共和国軍野戦基地の偵察へ向かっていた。

 

 隊の先頭を飛行するターニャは後方司令部に無線を入れる。

 

「フェアリー・リーダーよりオーディン(西方戦線司令部のコールネーム)へ。これよりレッドライン(安全限界線)を超え共和国東部方面軍の偵察を行う、オーバー」

「オーディンよりフェアリー・リーダーへ。了解した。今、現在では共和国軍の動きはないが、警戒は(げん)にせよ」

「了解したオーディン。フェアリー・リーダー、アウト」

「オーディン、アウト」

 

 すると彼女の右横を飛行するセレブリャコーフが双眼鏡で正面を見ながらターニャに声を掛ける。

 

「大佐!デグレチャフ大佐!前方12方向から共和国軍魔道兵!規模は一個分隊です!」

 

 ターニャは首に掛ける双眼鏡で前方を見ると三角陣形で空中静止していた。

 

「おやおや、私達が来る事を傍受でもしていたのかな?ヴァイス中佐!例の“あれ”は持って来ているな?」

 

 双眼鏡から目を外し笑顔でターニャは振り返るとヴァイスは笑顔で右手でサムズアップする。

 

「ええ、バッチリです。ついでに友人の(つて)でいい黒ビールが手に入りまして」

「それは素晴らしい!では行くとしよう!」

 

 ターニャは笑顔で言うと速力を上げるのであった。

 

 一方、空中静止していた共和国軍魔道兵の小隊は近付いて来るのを先頭にいる男性共和国小隊長が双眼鏡で見ていた。

 

「帝国からの団体旅行様だ。皆!入国手続きの用意だ」

 

 双眼鏡を目から外し笑顔で振り向き、命令すると他の隊員達は笑顔でサムズアップをする。

 

 まだ戦時中にも関わらずターニャ達は接触した共和国軍魔道兵達と笑顔で物の取引をしていた。

 

「いやぁーーーーーっ。いつもすまないな“ラインの悪魔”。こんな素晴らしい物を持って来てくれて」

 

 共和国小隊長が笑顔で言うとターニャは苦笑いをする。

 

「あははははっラインの悪魔か。まぁ仕方ないか。じゃいつも通り」

「ああ。我々は何も受け取ってないし何も見ていない」

「ああ、それじゃな中尉殿」

「じゃあな。ラインの悪魔」

 

 お互いに手を振り合い別れる。そしてターニャ達は共和国軍の野戦基地上空に到着し、飛行しながら偵察を始める。

 

「フェアリー・リーダーよりオーディンへ。現在、共和国野戦基地を偵察中。現時点では目立った動きはない。オーバー」

「オーディンよりフェアリー・リーダーへ了解した。共和国軍に動きが無ければ、ただちに帰投せよ。繰り返す帰投せよ」

「了解した。フェアリー・リーダー、アウト」

「オーディン、アウト」

 

 西方司令部との連絡を終えたターニャは今度は内部通信に切り替える。

 

「フェアリー・リーダーより全隊員へ。先程、オーディンから帰投命令が出た。ただちに戻ってのんびりと待機任務を過ごすぞ」

 

 ターニャは笑顔で命令を出すと皆は嬉しそうな口調で返事をする。

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 一方、ターニャ達が偵察していた共和国軍の野戦基地にある機関銃陣地では一人の共和国軍兵士がターニャ達に向かって8×50mmR弾に改修されたヴィッカース重機関銃の銃口をターニャ達に向けるが、共和国軍小隊長に止められる。

 

「いい。機銃手、攻撃する必要はない」

「ですが、小隊長。敵は我らの基地を偵察したのですよ」

「いいんだ。どうせ帝国も俺達も攻勢する気はないからな。それより機銃はいつでも撃てるようにメンテはしておけよ」

「分かりました、小隊長」

 

 機銃手は溜め息を吐き、ヴィッカース重機関銃の銃口を水平に戻しメンテを始める。そして静かな青空と平野を見る。

 

 戦時下でありながらお互いに物を交換し、そして見ないふりをする光景は西方・ライン戦線全体で見られ後世にこの戦闘が行われなかった期間を『まやかしの西方戦線』と呼ばれる様になった。

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