キヴォトス大陸召喚   作:召喚人

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現実のRIMPC:2024との関連性はございません。(嘘つけ)


第2話:黒船来航

―――自衛隊機強制着陸から数日後・ハワイ周辺海域

 

「そろそろ、だな……」

 

 ニミッツ級原子力空母3番艦、『カール・ヴィンソン』の艦橋で双眼鏡を持ちながら、そう呟いたのは艦長を務める米海軍大佐だ。

 

「それにしても、圧巻ですね」

 

 すぐ隣の補佐官が、周囲を見渡しながら言う。

カール・ヴィンソンの周辺には星条旗を掲げた艦だけでなく、他にも日章旗やユニオンジャックを掲げた艦が、数十隻に迫る勢いで同時に航行していた。

 

「なにせ環太平洋合同演習(RIMPC)からそのまま多国籍艦隊を引っ張って来たからな……。全くもってイカれてやがる」

「本音は?」  

「俺の数十年のキャリアで一番興奮している」  

「でしょうね」

 

 そんな軽口を叩いていると、彼らの目の前に突如、巨大な陸地が姿を現した。

それは彼らの祖国(アメリカ)……ではなく、数日前にハワイ諸島と米本土の間に挟まれるように出現した謎まみれの新大陸であった。

 

 彼ら多国籍艦隊の目的地はその新大陸である。

 

「それにしても、いきなりオーストラリア並みの大きさの大陸が現れたかと思ったら、そこに近代文明が存在するなんて……とてもじゃないですが、信じられません」

「だが自衛隊のP-1から送られてきたリアルタイムの映像はお前も見ただろう?」

「そのP-1は新大陸文明とやらのジェット戦闘機に強制着陸させられてしまいましたがね」

「そのP-1と搭乗員、そして新大陸との接触を目論むいろんな国のお偉いさんを運ぶのが俺らの仕事だ」

「……さぁ、そんなこと言ってる内にお出迎えのようです。レーダーにも反応がありますし、旗に描かれた紋章もP-1の中継に写っていたものと同じです。例の"ミレニアムサイエンススクール"とやらで間違いないでしょう」

 

 遠くからこちらに向かってくる小型艦を指差しながらそう伝える補佐官に、艦長は黙って頷いた。

 

 

――――ミレニアム自治区領海内

 

「あれは……船……?」

 

 ミレニアムの生徒会(セミナー)隷下である海上保安部の部員たちは混乱していた。

セミナーから今日の正午頃に、領空侵犯機に関する会談の為、海路で相手の代表者が来訪して来るので、誘導を頼まれていたのだが、目の前に現れたのは外交目的というよりかは、侵略戦争でもするかのような、そんな規模の大艦隊であった。

 

「と、とりあえず接触を……」

 

 誘導を担当された監視艦の艦長は、そう命令すると、通信士は無線の周波数を事前に指定されていたものに変更し、交信を試みた。

 

「相手艦隊、応答に出ました」

「よし、私が話そう」

 

 艦隊は艦長室から通信室へ向かうと、通信士から無線のマイクを受け取った。

どうやら相手の『アメリカ』という国は旧トリニティ語を使うらしいので、一応翻訳アプリの準備をしておく。

 

「えー、こちらはミレニアムサイエンススクールの海上保安部である。貴艦隊は停止の上、確認作業に協力願いたい。まずは所属と航行目的について述べよ」

「こちらはアメリカ合衆国海軍所属の原子力空母、カール・ヴィンソンだ。航行目的は外交である」

「了解した。今から監視艦とドローンにて国籍の確認を行う。よろしいか」

「許可する」

 

 艦隊の旗艦と思わしきカール・ヴィンソンから国籍確認作業の許可を貰うと、二隻の監視艦から次々とカメラ付きの小型ドローンが飛び立つ。いかにもAIと小型化が進むミレニアムらしい手法だ。

 

「えーと、セミナーから連れてこいって言われてるのはアメリカって国の船と日本って国の船でしょ?だとしたら旗は……」

「アメリカの国旗はこの青と赤と白のラインが入ってて、左上に星がいっぱい付いてるやつだってよ。それで日本のは……分かりやすいね。白の布地に赤丸が一個だけ」

 

 事前に手渡された資料にて記載されているアメリカと日本の国旗のイラストを元に、監視艦の搭乗員達はドローン越しに国籍の確認を行う。

 

「こちらミレニアム海上保安部からカール・ヴィンソンへ。国籍確認が終わった。今現在入港が許可されているのはアメリカと日本の船だけである。その他の国の船は退避を願うよう要請できるか?」

「了解した。貴艦の要請に従う」

 

 元々今回の航行はアメリカと日本の二ヶ国艦隊のみで行う予定だったが、少しでも新大陸文明と繋がりを持ちたい各国の首脳部が、環太平洋合同演習(RIMPC)に参加してる艦船を通して接触を図ろうと、無理して同行させて貰っていたこともあり、相手側から入港許可が下りなかった以上、強行できる立場でもないので残念ながらアメリカと日本以外の第三国の艦船はここでご退場となった。

 

「こちらカール・ヴィンソンからミレニアム海上保安部へ。第三国の艦船へ退避命令を出した」

「こちらでも複数の艦船の領海離脱を確認した。協力感謝する。……そしてようこそ、ミレニアムサイエンススクールへ。セミナーからも入港の最終許可が先程下りた。これより誘導を開始する。貴艦隊は本艦に付いてきて欲しい」

 

 そう言うと監視艦はカール・ヴィンソンの前を先行するように前進を始めた。

小型の監視艦の搭乗員たちは、すぐ後ろを航行する自身の船の数倍どころか、数十倍はありそうな大きさのカール・ヴィンソンに、生きた心地はしなかっただろう。

 

 

 

 

――――ミレニアム・セミナー会議室

 

「アメリカ合衆国と日本の代表者を連れてきました」

 

 ミレニアムサイエンススクールの中で最も高層かつ、重要な建物である、"ミレニアムタワー"。

その最上階付近に位置する、本来であればミレニアムの生徒会である"セミナー"が会議をするために使用するこの大会議室に、続々と日米の外交官や使節団、その他関係者が入室してきた。

 

 

「先生たちは?」

「あと10分ほどで到着するとのことです」

「……そう。とりあえず時間も押してるし、挨拶だけでも始めちゃいましょうか」

 

 藍色の髪をツインテールにまとめた少女はそう告げると、まずは言い出しっぺの自分からと、先陣を切って簡単な自己紹介を始めた。

 

「ミレニアムサイエンススクールの生徒会、セミナーの会計と訳あって会長を兼任しています。早瀬 ユウカと申します」

 

 簡潔に自己紹介を済ませたユウカが席に戻ると、次はその隣で書類の整理をしていた白髪ロングの少女が作業を中断し立ち上がる。

 

「私もユウカちゃんと同じくセミナー所属で、書記と諸事情あって、ユウカちゃんと共に会長を兼任しております。生塩 ノアと申します。以後お見知り置きを」

 

 ユウカよりも多少丁寧な礼儀で挨拶を済ませたノアは席に戻ると、再び書類の整理を始めた。

その後も横続きで挨拶と自己紹介は続き、数分ほどでセミナー側の主要人物の自己紹介は終了した。

 

「それでは次は"大人"の皆様、名前と所属をお願い致します」

 

 セミナー側の主要人物の自己紹介が終わったことを確認したノアは、反対側に座る日米の外交官達に話を振った。

 

 

「アメリカ合衆国全権大使のブレンドン・ロイルと申します。今回の会談がアメリカ・ミレニアムサイエンススクール双方にとって有益なものになるよう、全力を注いでいきたい所属です」

「日本国特命全権大使を努めさせて頂きます、田上 大輔(だいすけ)と申します。この度は我が国の海上自衛隊の航空機がお騒がせしたこと、深くお詫び申し上げます」

 

 今回日米から参加した外交官の中でも、トップクラスの権限を持つ全権大使の自己紹介が終わると、その他の関係者の自己紹介もスムーズに進み、最後の一人が席に着いたところで、会議室の扉が勢いよく開かれる。

 

 

「申し訳ありません。渋滞で少々遅れました」

「ユウカ、ノア、ごめん!事故の渋滞で遅れちゃった!」

 

 同じような台詞を言いながら、会議室に入って来たのは、白を基調としたコートに身を包み、お伽話に出てくるエルフのような尖った耳を持った、ユウカやノアよりも数段大人びた少女と、まだ20代半ばであろう若い男性であった。

 

 お待ちしておりましたと言わんばかりに、ノアが二人を席に案内すると、二人は軽く会釈し、簡潔な自己紹介を行った。

 

「お初目に掛かります。キヴォトスを総括する連邦生徒会の会長代行を務めさせて頂いております、七神 リンと申します」

「始めまして。連邦捜査部"S.C.H.A.L.E(シャーレ)"の顧問をしている者です。私の事は"先生"とお呼びして頂けると幸いです」

 

 周りが謎の輪っかを頭上の上に浮かべた少女ばかりの中、一人だけ輪っかが浮かんでおらず、しかも男性。さらには名前を名乗らず、"先生"呼びを要請したり、連邦捜査部という謎の組織の顧問という、あまりにも不可解な点が多すぎる人物の登場に、日米双方の関係者は顔をしかめるが、ノアが会談の開始を宣言したため"先生"という人物に関しての考察は後回しとなった。

 

 

「……では、これより第1回、日米ミレニアム会談を開始致します」

 

 ――――こうしてキヴォトス史上初の、外の世界との会談が始まった。

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