キヴォトス大陸召喚   作:召喚人

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第3話:第1回 日米ミレニアム会談

「では本題に入る前に、まずはここ、キヴォトスとミレニアムサイエンススクールについて説明しなければなりませんね」

「ええ。P-1の機器を通して何度か会話こそしていましたが、やはりこう、直接この目で見てみると、頭が追いつかないことばかりで……そちらから説明して頂けるならばそれ以上のことはありません」

「ご都合が合ったのであれば幸いです。――――それでは、準備できましたので前方のスライドにご注目ください。では、リン行政官と先生、お願いしますね」

 

 ノアがそう言うと、会議室前方に設置されたスライドの画面が切り替わり、部屋の照明がいくつか落とされる。

 

「ではここからは私、七神リンと連邦捜査部顧問が担当致します。まずは先程配布しましたお手元の資料の2ページ目をご覧ください――――」

 

 会議室に紙をめくる音だけが響く。

 

 始めにキヴォトスの地理的な内容、その次にここ数十年の大まかなキヴォトスの歴史等が続いた。   

特にキヴォトス人についての説明と、連邦捜査部に関する説明の際には、質問が相次いだ。

 

――――銃弾で死なないと言うのは本当なのか?

――――ヘイローの原理は?

――――本当にヘイローを持った男性はいないのか?

――――先生という存在は一体どこから来たのか?そもそも具体的には何者なのか?

 

等々、その数は細かいもの含め、30に迫るほどだった。

 

 特に、銃弾で死なないという説明に対して意義を唱えた者は、科学的には絶対に有り得ないと、いくら説明しても疑いの目を晴らさなかったため、とうとう堪忍袋の緒が切れたリンが、ホルスターに納められた拳銃を抜き出すと、自分の腕の袖をめくり、素肌に向かって発砲する騒ぎにまでなった。

 

 なお、撃たれたはずの腕は、穴が空くどころか皮すら剥けていなかった。

 

 

 ちなみに、"先生"に関する質問は殆どが回答拒否されるか、仮に質問が受け付けらたとしても、相手が納得行くとは言い難い、曖昧な返答ばかりが返って来た。

 

 

 その後は軽く軽食と休憩を挟み、地球国家並びに、日本とアメリカの説明に入った。

 

***

 

「ではこの時間からは我々地球国家……つまり、そちらで言うところの、"外の世界"とでも言いましょうか。その説明に入らせて頂きます。スライド及びお手元の資料はキヴォトス語(日本語)旧トリニティ語(英語)で作成していますが、もし解読できない箇所ありましたら、ご遠慮なくお伝えください」

 

 資料が全員に配布されたのを確認した司会は、スライドの画面を進めた。

 

 まず始めに映されたのは、衛星にて撮影されたキヴォトスの衛星写真である。

席に座る彼女たちも、キヴォトスの衛星写真程度ならば、学校の授業等でも見せられるため特段驚くことは無かった。強いて言うならば、画質が良いなと少し思った程度だ。

 

 しかし、画像が今度はキヴォトス中心ではなく、世界中を映し出した衛星写真に切り替わった瞬間、会議室中に驚愕とも、悲鳴とも言える声が複数に渡って広がった。

見慣れたキヴォトスの周りには、本来あるはずの無い大陸がゴロゴロと存在し、広大な面積を誇るはずのキヴォトス全土が小さく見えるほどの地球の面積比に、開いた口が塞がらない様子だった。

 

「皆さん驚かれてるとは思いますが、これは我が国の衛星が撮影した紛れもない事実です。では、暫くはこの写真を背景に、この地球という惑星がどんなものなのか、説明していきましょう。お手元の資料開きましてすぐ――――」

 

 まず始めに説明されたのは地球国家の大まかな位置関係だ。

地球上の主要国を各国の代表的な風景と共に簡潔に紹介していったのだが、意外にもキヴォトスの風景と瓜二つだという感想が多数寄せられた。

 

 例えば、アメリカの首都、ワシントンD.C.は連邦生徒会が直接管理しているD.U.という地区に似ており、ニューヨークの街並みはミレニアムの街並みと似ているらしい。

他にもドイツはゲヘナという学園に、イギリスはトリニティ総合学園という場所と似ているとの声も寄せられた。

 

 その中でも、特に「似ている」との反応が多かったのが日本の都心である新宿や秋葉原だった。

どうやらキヴォトス各地にはこのような街並みが多くあるようで、試しにキヴォトスの標準的な街並みを撮影した写真を見せて貰ったが、確かに瓜二つどころか、ほぼ間違い探しレベルで酷似していた。

 

 その後は簡単な地球史の説明に入った。

義務教育にて習う歴史の内容を限られた時間内に納められるよう、中身を大幅に噛み砕いて短縮した上、外交に影響を及ぼす可能性があるだの、いきなり初対面の人物達に見せるには刺激が強すぎるなど、様々な意見が寄せられた結果、核兵器の誕生や冷戦時に発生した代理戦争の数々の説明は大幅に省略されてしまった。

 

 そんな事情なものなので、本来の歴史を知る者からすれば、あまりにもお粗末な歴史解説だったが、外の世界(地球)の歴史など初見の彼女らは特に疑う余地も無く、やけにアメリカに都合が良いように締めくくられた地球史に、素直な拍手を送った。

 

 

***

 

「では、お待たせしました。これより本題の領空侵犯に関する会談に入りましょう。ここからは私、早瀬が担当致します」

 

 キヴォトスと地球、双方の説明が終わり、夜食を含む休憩を取った頃には、もうとっくに日は暮れていた。

徹夜作業には慣れきっていた日米の関係者や、セミナーの首脳部達と先生はまだまだ平気そうだったが、一部の少女達は少し意識が逸れると、思わずうたた寝を始めてしまうような、そんな時間帯になって、ようやく本題である領空侵犯に関する対応を決める会談が始まった。

 

「では、まずは該当機を強制着陸させるまでに至った経緯をご説明します。

四日前の午後12時23分、ミレニアム自治区の東航空レーダーにて該当機の反応をキャッチ。その1分後には――――」

 

 スライドの画面を切り替えながらユウカは当時の状況を説明していく。

そのすぐ横では、ノアが異常とも言える早さでメモを取っている。

 

 スライドに映るのは、領空侵犯を犯した海上自衛隊機の信号の推移だとか、地上から撮影された該当機と思わしき航空機の写真、スクランブル発進した戦闘機のパイロットが撮影した写真などの他に、当時の通信記録を収めた音声資料も提示するなど、徹底的に解説がなされた。

 

 一部自衛隊関係者に関しては、その数々の領空侵犯の証拠に分が悪くなったのか、あからさまに顔を伏せてしまっていた。

 

「――――以上が当時のミレニアムサイエンススクールの状況と対応の一部始終です。なにかご質問等はございませんか?」

 

 ユウカの問いに、日米双方の関係者たちは沈黙で返した。

 

「質問は無い……ですかね?それでは次は地球側の状況説明を求めます」

 

 ユウカはそう告げると、PCとスライドとの画面共有を終了させ、ノートPCと共に席に戻って行った。

 

 日米の視点から見てみれば、状況はハッキリ言って最悪だった。

しかし、たとえ自分の娘と対して年の変わらない少女達に頭を90度下げることになったとしても、搭乗員と機体、特に前者は絶対に返して貰わなければならない。

担当官が演説台に就き、PCにコードを繋いでスライドに画面の共有が完了したのを確認すると、日米側の弁明が始まった。

 

「ではこれより我々の状況説明を行います。

まず、該当日の11時45分頃に青白い閃光のような光を1秒程継続して観測。光が消えた5分以内に今度はオーストラリア大陸並の反応をハワイ諸島周辺に確認。

至急航空偵察を行う指示が出されましたが、ハワイ島に駐留している部隊には偵察任務に適した航空機が配備されていなかった為、合同演習にて偶然飛来していた海上自衛隊の哨戒機を急遽借り入れ、観測を行うよう指示しました」

「つまり機体は海上自衛隊の機材だが、出動を指示したのはアメリカ合衆国……ということですか?」

「ええ。そう捉えて頂いて結構です」

 

 その後も日米側の説明は続いた。

 

***

 

 領空侵犯に関する会談が始まってから数時間。双方の状況説明が終わる頃には、時計の針は日を跨いでいた。

 

「それでは最終的な審議を決めたいのですが、なにか要求等はございますか」

「非常に恐縮ですが、我々としては、搭乗員と機体の返還、特に搭乗員に関しては全員の即時解放をお願いしたい。機体に関しては最悪搭乗員と引き換えにミレニアムサイエンススクールへ受け渡してもいいと考えております。賠償金も指定された額は出来る限り支払うよう善処致します。これが日本国としての、全権大使としての総意です」

「アメリカ合衆国も指示した立場にあるとして、謝礼金を支払う準備はできています」

 

 とりあえず搭乗員だけでも返してくれと日本国全権大使の田上は懇願する。

それに対しミレニアム側は先生も交え、少し後ろで話し合った後、最終的な結論を発表した。

 

「我々ミレニアムサイエンススクールとして、そしてキヴォトス全体としても、これから、この状況において外の世界の皆様と良好な関係を築き上げたいと考えております。

つきましては、ミレニアム首脳部と先生との話し合いの結果として、今回の領空侵犯の件については、不可思議な現象が相次いで発生したことによる事故として処理するという結論に達しました」

「それは、つまり……? 」

「搭乗員全員の即時解放と、多少時間は要しますが、機体の返還も約束しましょう。賠償金に関しても人的、物理的被害は発生していないことから不問とします」

 

 ユウカの口から告げられたミレニアム側の総意に、一瞬会議室内が静まりかえる。 

 

「寛大なるご対応、誠に感謝致します」

 

 なにか失言をしてしまったかと、ユウカの心境が少し不安になり始めた頃、突如会議室内から拍手が湧いた。

それと同時に田上は感謝の言葉を口にし、手を差し出し握手を求めた。 

 

 その手をユウカは緊張のせいもあってか、少し力強く握り返した。

   

 

 こうして第1回、日米ミレニアム会談は双方納得する形で無事に終了した。

 

 後に新聞の一面を飾った田上とユウカの握手は、歴史を変えた一枚として後世に伝わることとなる。

 




 早く戦闘描写を書きたいが上、外交描写が少しお粗末な出来になってしまいましたね……その内改稿するかもです。
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