キヴォトス大陸召喚   作:召喚人

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第5話:作戦会議

――――ミレニアムタワー・セミナー会議室

 

「……では、これより車列襲撃による拉致被害者救出作戦の立案を始めます」

 

 いつもよりも数段低いユウカの声で作戦会議は始まった。他の参加者たちも、唐突に急変した事態に不安や苛立ちといった負の感情を抱いていることが見て取れる。

 

 なにせ、日米の主要人物とノアを乗せた車列は出発してから数時間後、郊外を走行中に突如戦車を伴う謎の武装集団に襲撃され、全権大使の田上とブレンドン、そしてノア達以下数名の重要人物達が拉致されてしまったのだ。

いきなりの緊急事態に、セミナーはもちろん、別の仕事を任されてミレニアムタワーに在留していた残りの日米の関係者たちも、本国に連絡を取ったり情報収集に勤しんだりで大忙しだった。

 

「武装集団から届いた犯行声明の動画は関係者専用チャットにて添付済みですので、恐らく皆さんは既に把握済みだと思われますが、一応動画の内容を整理しておきましょう」

 

 そう言ってユウカは、少し乱雑にノートパソコンを操作すると、暫くして会議室前のスクリーンにパソコンのスライド画面が共有された。

恐らく緊急で作成したであろうそれは、誤字脱字がところどころ目立ったが、簡単な現状確認とあれば必要十分な出来であろう。

ユウカは文中の誤字脱字を修正しながら話を進行していく。

 

「まず車列を襲撃した武装集団は反セミナー……つまりミレニアムの生徒会に不満を持った集団だということです。セミナーに部活を潰されたり、懲戒処分を喰らったことを根に持った人物達が主なメンバーなのでしょう。……いくつか心当たりはありますし」

 

 会計兼会長代理としていくつか思い当たる節があるのか、少し歯切れを悪くしたユウカだったが、すぐに話を再開した。

 

「そして彼女らの要求は、……まぁ、在り来たりと言うか、予想通りと言うか……。セミナーの解散と自分たちのかつて所属していた部活の復活ですね。こちら側の要求を吞む場合は、各種SNSサービスのセミナー公式アカウントから要求を吞む節の宣言を社会全体に向けて行うこと。それ以外の形での発表は認めない。また、交渉にも一切応じないとあります。

 そして……こちら側の要求を明後日までに吞まなかった場合、もしくはこちら側に敵対的な行動を取った瞬間、人質として預かったセミナー書記を筆頭とする、セミナー役員数名のヘイローを破壊し、日本とアメリカの外交官も殺害する、と……」

 

 "ヘイローの破壊"そして"殺害"。

体が異次元なほどに頑丈だからこそ、キヴォトスにおける命の重さは地球のそれとは何倍も違う。キヴォトスにおいて"殺人"とは如何なる重罪よりも重い、最上級の禁句であった。

そのような手段でさえ問わないと言っているのだから、相手は相当本気なのだろう。

 

「……私としてはC&Cと先生指揮下のSRTの皆様方との連携の下、即刻な人質救出を行いたいのですが、関係者の皆様はどう思われますか? 」

 

 そう聞いてきたユウカは、顔面上はポーカーフェイスこそ辛うじて保ってはいるが、眉は時々ピクリと動き、声も明らかに不機嫌なときの、荒っぽい声量だった。

折角良い幕引きで終わった会談を、翌日に台無しにされ、挙げ句には親友を人質に取られたのだ。相当頭に来ているのだろう。

 

「私が指揮するより、こういうのは実戦経験が豊富なミヤコやネルに直接指揮を執って貰った方が適任だと思うな」

 

 まず口を開いたのは、超法規的機関、連邦捜査部(S.C.H.A.L.E.)の顧問を務める"先生"だった。

今日の朝にミレニアムから出発したばかりだったが、ユウカからの要請を受け急遽、今は訳あって閉鎖されてしまっている特殊部隊の育成学校、"SRT特殊学園"にかつて所属していた生徒で構成された"RABBIT小隊"を引き連れ、ミレニアムに引き返して来たのだ。

 

「ミヤコ、何かいい案はある? 」

 

 先生はその若い容姿とは裏腹に、数々の実戦において、優れた指揮官として数々の生徒を勝利へと導いていった名将なのだが、流石に今回のような人質救出作戦の指揮は専門外だったようで、RABBIT小隊長の月雪 ミヤコにアドバイスを求めた。

 

「そうですね……。GPSによって潜伏している場所は割り出されているとのことですが、外観の画像等はありますか? 」

「こちらにありますよ」

 

 画面が開かれたパソコンごとミヤコに受け渡される。

そこに映っていたのは、築数十年は経っているであろう古ぼけたアパートに、周囲を巡回する銃を持った少女たち。元々駐車場であったであろうスペースには戦車が停められていた。

 

「内部構造が単純な倉庫等であれば手っ取り早かったのですが……。よりにもよって集合住宅ですか。これでは人質がどこにいるのか把握するのは難しいですね。もしかすると分散して人質を配置している可能性もあります。しかも装甲戦力まであるとは……」

 

「ねぇねぇ! アレってミレニアムの最新戦車だよね?! もし鹵獲できたらRABBIT小隊の備品にできないかな~」

「モエ、今回の任務は人質救出で装備品の入手じゃないぞ。それに、生徒会の目の前で堂々と他学園の備品を自分たちの物にしようとするな」

 

 ミヤコが真剣に考察をしている中、そのすぐ横では生粋の兵器マニアである風倉 モエと、興奮するモエを宥める空井 サキの姿があった。

 

「え~っと……それで、作戦の方は立案できそうですか? 」

 

 人質救出計画が、危うくミレニアムの戦車鹵獲計画になりかけたところで、ユウカは慌てて話を戻す。

 

 しかし、ユウカからの問いにミヤコは難しそうな唸り声で返す。

 

「人質救出までは難なく遂行できると思うのですが、問題はその後ですね。人質を引き連れながら外の巡回兵を倒し、戦車も無力化しなければならないとなると……」

「やはり厳しい……ですかね? 」

「いえ、決して不可能ではないのですが、やはり隠密を維持したままとなると、不確定要素が多く……」

 

「隠密だぁ? そんなちゃちなことするぐらいだったら、とっとと正面から殴り込んだほうが手っ取り早いんじゃねぇのか? 」

 

 そう声を荒げたのはC&Cのリーダーを務める美甘 ネルだ。

C&Cのリーダーにして"約束された勝利"を意味するコールサイン"00(ダブルオー)"を名乗る彼女は、C&Cのいつも通りのやり方である、正面突破を提案した。  

 

「正面突破となると、当然隠密性は失われる訳ですよね? だとしたら人質の命が危なくなります」

「だったらウチらが暴れて気を引いてる内に、SRTお得意のヘリボーンで背後から人質を解放すればいいじゃねぇか」

「人質の中にはヘイローを持たない外の世界の方もいらっしゃいます。もし銃撃戦に発展したとして、その瞬間に射殺される可能性もあるのですよ? 」

「わざわざ人質を取るなんて姑息な手段を使う奴らに、殺人を犯す勇気があるとは思えないがな」

「あなただって、犯行声明の動画はご覧になったでしょう? しっかり殺害すると宣言しておいて、それでも殺害される可能性は無いと? 」

 

 RABBIT小隊長のミヤコと、C&Cリーダーのネルはお互いに自分たちのやり方があるとして、断固として譲らない。

頼みの綱であるC&CとRABBIT小隊が口論を始めてしまい、会議室内に暗雲が立ち込め始めた。

 

 そんな最中、今まで沈黙を貫いていた日米関係者側の席から手が上がる。

 

「お取り込み中失礼。ご意見1ついいですかな? 」

「え、あっはい。アメリカの方ですね? どうぞ」

 

 発言を許可されると、挙手をした初老のアメリカ政府関係者は、ゆっくりと立ち上がる。

いきなりの先生以外の"大人"からの発言に、先程まで口論を展開していたミヤコとネルまでもが黙って耳を傾ける。

 

 手元にあるペットボトル飲料を一秒ほど喉に流し込み、会議室内が静まり返ったところで、彼はゆっくりと深呼吸をし、ハッキリとこう述べた。

 

 

 

「――――単刀直入に言いましょう。今回の人質救出作戦、我々の、アメリカ合衆国の特殊部隊に、全て一任させて貰えませんか? 」




 本当は自衛隊も絡ませたかったんですが、流石に今ここで自衛隊をキヴォトス本土に上陸させて軍事行動を行わせるのは、現実味が無いのでやめておきました。
自衛隊の活躍を期待されていた方には申し訳ありません。
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