鑑定を使って集めた宝剣を、貸し出したり授けたり見せびらかしたりもっと集めたりする道楽冒険者   作:かてい

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5 精霊樹神殿と精霊剣

 なぜ俺がやたら驚いたのか。

 理由は簡単、これからユズリアが潜るというダンジョン――『精霊樹神殿』には存在を確認されていながら、誰も回収していない宝剣が眠っているからだ。

 名を“精霊剣ティタニア”、なんという王道な名前。

 その名前に恥じず、精霊剣は非常に有名な宝剣だ。

 

 かつてこの剣を使って、エルフの長たる”巫女”はエルフを平定したと言う。

 巫女がその役目を降りた後、精霊剣はエルフの聖地『精霊樹神殿』に安置された。

 以来、持ち主はいない。

 

 基本的に、持ち主のいない宝剣は見つけたものが次の持ち主となる。

 持ち主イコール所有者ではないのがポイント。

 というわけで、宝剣オタクの俺としては是非とも一度は手にしてみたい宝剣だ。

 別に所有者になりたいわけではない。

 こう、最悪拝むだけでもいいから。

 

 しかし、『精霊樹神殿』は基本的にエルフが許可を出さなければ入れないダンジョンだ。

 ダンジョンに潜る許可さえおりて、精霊剣を見つけ出すことができればそれを持ち帰っても文句は言えないが、そもそも許可が降りなければ入れないという。

 んで今回、ユズリアは緑石病の特効薬となる薬草を取りに行くため、その『精霊樹神殿』に潜るのだ。

 

 なんだってそんな場所に俺達が潜れるんだって話。

 エルフであるユズリアは、別に潜る許可を取ることはそこまで難しくないらしい。

 緑石病の患者が身内にいるなら、審査はなおさらすんなり通るとか。

 でも、俺は違う。

 どう考えても部外者で、一応それなりに名のしれたS級冒険者。

 『宝剣の棚の道楽冒険者』といえば、エルフの里でも通じるかも知れない。

 そんな如何にも宝剣をかっぱらいそうな奴をダンジョンにいれるか――?

 と、思っていたのだが。

 

「――すんなり降りちゃいましたね、許可」

「許可を出すエルフは顔が引きつってたけどなぁ。よりにもよって宝剣の棚かぁ、って言ってたし」

「あ、アズマさんって……有名人だったんですね」

 

 これがほとんどノー審査で通っちゃったんだなぁ。

 まぁ、ユズリアに俺を紹介した人物が誰かってのを考えればそれもおかしな事ではないのだが。

 許可を出すエルフ以外も、もう少しためらっても良さそうなもんだが。

 

「なーんか、面倒事を押し付けられている予感がする」

「……え、えっと。依頼は最深部までボクと一緒に向かう……でしたっけ」

「そうそう。まぁ、別に無理して受ける必要はないんだよ。ユズリアの用事だけならユズリア一人でもこなせるんだから」

 

 薬草は『精霊樹神殿』の上層にある。

 ”研澄剣鬼錆”を手に入れたユズリアなら、道中危険はあるだろうが問題なく研澄剣を抜いてそれを解決するだろう。

 だから最深部へ向かうのは完全に無駄な行為。

 多分、最深部で何かしらイベントがあるぞ。

 精霊剣なんてものを報酬にできるくらいのでかいイベントが。

 

「――ま、受けちゃうんですけどね、依頼」

「受けちゃうんですか」

「だって精霊剣だぞ、精霊剣! あの伝説の!」

「は、はぁ……」

 

 話しながら俺達はダンジョンを進む。

 『精霊樹神殿』は石造りの神殿が時間が立って自然に侵食されたような作りだ。

 荘厳な雰囲気が漂っている。

 

「伝説と呼ばれたエルフの巫女が振るっていた宝剣だ。“天衣鎧カグラ”と並んで、エルフの至宝だろ?」

「そうなんですけど……何分昔の話しすぎて、あまり実感が」

「これだから最近の若者は……」

 

 まぁ、年齢的にはユズリアの方が歳上なんだけどな。

 二十二歳だってさ、まぁエルフとしては子供もいいところなんだけど。

 

 ちなみに天衣鎧カグラとは、身につけるタイプの宝剣だ。

 女性が身につけるとソシャゲの巫女服みたいなデザインになり、男が身につけると袴になる。

 エルフが文化的に和服なのはこれが原因だ。

 

 閑話休題。

 

 というわけで、俺達は今『精霊樹神殿』にいた。

 どうやって俺までついてきたのかって?

 “運命剣ディステ”はすごいのだ、こうして俺まで転移してくれる。

 運命剣的には、俺を精霊剣に引き合わせたかったのかもな。

 だってこう、何百年単位で使われてないから……。

 剣だって、仮の使い手が使うのだとしても振るわれたい時はあるのだ。

 俺の店には、そういう宝剣が山のように眠ってるぞ。

 なお、帰りも運命剣が運んでくれると見越している。

 運んでくれなかったら着の身着のままに店を目指すことになるな、それはそれで楽しそうだ。

 

「それでえっと……薬草はもう回収できましたけど」

「このまま、入口まで戻るか?」

「いえその……もう少しお付き合いします」

 

 さて、ユズリアの本来の目的である薬草の回収はすでに終わった。

 彼が身につけているバッグの中には必要な数の薬草が詰め込まれている。

 俺のアイテムボックスにも予備として確保しているから、これでユズリアのお母さんは大丈夫だろう。

 だからか、ユズリアも母のこと以外に意識を向け始めているようだ。

 彼は、自分の腰に刺さった宝剣に目を向ける。

 

「……その、研澄剣をまだ抜けていないので」

「そうだなぁ、抜く必要のある危機は俺が排除しちゃったからな」

 

 そう、ユズリアはまだ研澄剣を使えないでいた。

 鬼錆はその効果が有効になると刀身が淡く光るのだが、ユズリアが刀を抜いても刀身が一向に光らない。

 どころか、ユズリアの剣鬼も起動しない。

 これでは剣を抜いているとは言えないだろう。

 

 ま、原因は俺なんだけどね。

 鑑定スキルで危険は事前に排除してしまうのだ。

 

「――と、ストップ。少し先に罠がある」

「えっ、あっ、はい」

 

 俺は、自分の鑑定スキルを通して発見した罠の存在をユズリアに告げる。

 現在俺は鑑定スキルを使いっぱなしにしていた。

 こうすると、俺の青い魔法陣を通した視界にはトラップや隠し通路の存在が映し出される。

 かつて斥候という役割で周囲に認められていた俺の、ある意味必殺技みたいなスキルの使い方だ。

 本来、スキルは魔力を消費して使用する。

 だがユニークスキルはそうではない、なので俺はスキルを使いっぱなしでダンジョンを探索できるのである。

 少し酔いそうになるが、流石にもう慣れた。

 

「モンスターもいるな、避けていこう」

「倒さない……んですか?」

「面倒は避ける主義だ」

 

 そう言って、俺達は先に進んでいった。

 俺の斥候として有用すぎるスキルのせいで、問題と言える問題は起こらない。

 結果としてユズリアがいまだ剣を抜けないでいるわけだが。

 運命剣が俺を導いた以上、どこかでそれを抜く機会はある。

 というわけで気にせず進んだ結果。

 

「――行き止まり、ですね」

「ここが最深部へ続く通路のはずだけどな」

 

 俺達はなにもない場所にたどり着いた。

 なにもないけれど、祭壇みたいなものがある如何にも、といった感じの場所だ。

 

「何も無い……んでしょうか」

「いや、あるよ。俺には見えている」

 

 単純な転生者的メタ視点以外にも、俺の鑑定スキルがここに最深部への道があることを伝えている。

 隠し通路を阻む壁を、俺は鑑定することができるのだ。

 そしてその壁が、祭壇の石畳にあることがわかっている。

 開けば、地下へ続く階段が見つかることだろう。

 

「とはいえ、それを開く手段がないんだけど」

「えっとじゃあ……これ以上は進めませんか?」

「普通ならな」

 

 本来なら、たとえダンジョンへ潜ることが許可されても、ここで引き返すこととなるのだろう。

 だがそこは宝剣オタクの俺。

 こういう状況をどうにかする宝剣も、所持しているわけだ。

 

 俺は祭壇に歩み寄って、地面に手をつける。

 それと同時に、アイテムボックスからある宝剣を取り出した。

 

「……それは?」

「――”解錠剣スターキー”」

 

 鍵のような形をした、特殊な宝剣だ。

 鍵を剣にしたような形……というと、有名な鍵の剣を思い出すが。

 あれを短剣にしたような感じ。

 効果は、名前のとおりだ。

 

「これで、祭壇の封印を解く」

「で、できるんですか!?」

「俺の鑑定スキルができると言ってる。こと、罠と隠し通路を無理やりこじ開けることに関してはこの組み合わせはほとんど無敵だ」

 

 俺の持ってる宝剣の中では、運命剣と並んで特殊な宝剣。

 それでいて、運命剣と同じく俺が“所有”する剣でもある。

 俺の持つ宝剣のほとんどは、ただ俺が持ち主というだけで俺が所有しているわけではない。

 数少ない例外が、この解錠剣だ。

 

 というわけで、俺は解錠剣を地面に突き刺す。

 光のようなものに飲み込まれた剣をぐるりと回すと――ゆっくりと、地面が動き始めた。

 

「よぉし、開いたぞ。待ってろ精霊剣!」

 

 さぁ、進むとしよう!

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