とある所に住む王様がいました、その王様は有能を絵に描いたような優秀な人物で、権力も人気もお金も人も全てを世界で一番持っていました、そして魔法も。
そんな完璧を体現した王様が治める国はやはり完璧な国で、そこに住む国民は何不自由なく暮らして、王様を見習い勤勉かつ誠実に生活を送っています。
全てが理想の国『エンド』
昔の神様が完璧であれと想いを込め名付けた名とともに発展する国、皆が憧れる国です
そんなエンドでは、昔から言い伝えられているおとぎ話があります、それはいずれエンドに訪れる災いが国も何もかも全て流してしまい、全てがなくなってしまうという恐ろしいものでした。
完璧な国で一つだけ、この言い伝えだけが人を不穏な思いにさせるお話です。エンドの人々は昔からこの言い伝え通りにならないように国中を豊かにし、自然災害にも強く負けず、そして医療も充実させ、魔法を使った予言も駆使してまであらゆる事を想定した対策を行い、言い伝えの時を待っています。
そして王様もこの言い伝えをなんとかしようとしています。
まさに今、王様の優秀な部下を集めてどうするべきか会議をしています。王様の部下は全部で14人存在し一纏めに呼ぶ時は『王従徒』と呼ばれます。王様はいつも何かあるとその14人を集め円卓で会議をします、そして自分を入れた15の意見を元に判断を下すのです、完璧な国では何より意見を求めているので多種多様な人材が『王従徒』に所属しています
「皆よく聞いてほしい、私はこのエンドに伝わる古い話を解決するために私が行くべきだと思っている。皆の意見を聞かせてくれ」
と、王様は円卓を囲んで部下たちに言いました。
王様はもちろん最高権力者でありこの円卓で最も強い決定権を持ちます、ですが『王従徒』達はソレを気にしないのです。この場においては誰しもが王様と同じ意見力を持つからです
「それがよろしいかと、このベスティラ賛成いたします」
王様の正当後継者で大臣を務める円卓のまとめ役、通称『副王』ベスティラは王様の宣言に賛成しました。ベスティラは王の心を知る唯一の人物とまで謳われる美男子です
「例え王とて無理ではないか? あるかもわからないソレに手を出すなど……俺は反対です」
王の右目の異名を持つ円卓一の切れ者『右参謀』コジューロはそれに異を唱えます、コジューロは右目に眼帯をした物腰柔らかな男性でベスティラの次に王様に近いと言われています
「どうかな〜まずはサイコロで占ってみよう! ……おっ! いい目出た! 賛成!」
占いにより天候や情勢の吉凶を占う『水先案内人』オルーベは明るくいつも通りに占おうとしています。オルーベは子供のような小さな体の女の子ですが天性の占い師の才能と一風変わった視点を買われています。王様と一番遊んでいるのはオルーベだと言われています
「おぉ我らの王よ……その身を世界に差し出すおつもりか……! なりません、なりませんぞ……! 《うーたらかーたらさむさむろーん》《ベベベっちょベベベっちょ》」
怪しげな宗教装束を身に纏うシワの深い『深理卿』マールチスはこの場の誰もが意味不明な言葉を羅列し、唱え、手を組み祈りを捧げています。この中で最年長のマールチスは誰よりも知識が深くそれだけに飛躍した考えの持ち主です、己だけの神を崇め日夜円卓に布教しようと企んでいます
「ありゃーマールチスの旦那のいつもの発作が……いやまぁ王さんの言いたいことはわかりまっせ? オレとしちゃ歓迎なんで」
円卓の奇術師、摩訶不思議な魔法を扱うピエロの姿をした『大道化師』ヒルヒュートは慎重な面持ちで自分の意見を述べるにとどめました。ま白い目と口の部分だけ穴を開けた仮面を被るヒルヒュートはシャイですが魔法の腕は随一で、それを使って王様を楽しませ日々の疲れを癒す
「無論。反対だ。以上」
天下に轟く武功の数々で唯一王様と並ぶ称号を得るに至った『戦王』ガデドは端的に言葉を伝えた。
『戦王』ガデドは頑丈な体躯と類まれな魔法の強さとを併せ持った生まれ持っての闘争巧者であり、このエンドに置ける国防の要を一人で担っている。
「賛成しますよ、王。私はあなたを生前から死後もお支えするのが、私の使命なのですから」
床まで届く金色の髪を持ちエンドでは不吉の証である褪せた黒布を纏う女性が王様の傍らに立ち王様に囁く。
彼女こそは命に終わりを告げる『狩人』ティティン、円卓に置ける役割こそ無いがその使命は王の命を刈り取ること。完璧な王に完璧な死をもたらす事が彼女の大切な役割と受け止める、だがこの世界で誰が死を与える事を真に栄誉に思えるだろうか。
「こう言うと駄目だと思うけど〜王様さぁ~その自分がやればみたいな思考止めろよ、無理なもんは無理なの、現実見ろ。んなことよりもっと稼がせろよ」
遊び人風の着崩した格好の人物は咥えた煙草を二本の指で挟みながら雑に言い放った、円卓には様々な者が集められている話だが『王従徒』の中には悪辣な道に精通した人物たちもいる、『黄金髑髏』エルはその中でも特に深い闇を知るものだった。陽あらば陰あり、完璧な光を持ってしても影全てを照らすのは難しく、だから彼は円卓に座っている。
「賛成だ。根拠がないから対応しないは逃げの言葉だからな、場当たり的な対策ではなくて根本的な解決をするなら僕や僕のような人間は背中を推す用意がある」
自慢のメガネを中指で押し上げレンズがキラリと光らせ濃紺のローブを揺らす。
この国で学問と言えば算術、語学、魔法学と呼ばれる三大学問が出てくる、そのうちの魔法学へ傾倒する探求者を取りまとめる実質的なリーダー『魔法狂い』クラナリン、追求し蓄えてきた魔法の知識で完璧な国エンドの土台を支えています
「どうかな……? それはどうだろう、王様」
「いいかな? ダメかな? 私はどっちかな」
「王様は良い人、王様の言葉を聴くべき」
「なら、王様に賛成だ」
左右の手にハメられたぬいぐるみと腹話術で劇を行う深緑色の布を被った人物はぬいぐるみの話し合いという体裁で意見を述べた、布を被った正体不明の人物は『神秘卿』スメルフィー、マールチスの双子の弟。ぬいぐるみと腹話術による降霊術を行い王に助言を与え支えています
「王に反対を突きつけるのは何物にも勝る快楽! イケナイ事をしていると気分がいいの! だから反対するわ! あぁ罪深いワタクシは業を背負う事をやめられない……っ!」
一糸まとわぬ姿で全身を己の罪深さで震わせ両手で己を抱きしめ頬を紅で染める。無駄に毛艶の良い超が付くほど長い髪を巻き付け体の局部を隠している自他ともに認める『裸人』プシレスカ。
人の中にある隠され溜め込む業の体現者を自称しその行動は混沌として秩序が感じられない、ルールにそぐわない事をする事に快楽を覚える変質者の立場から王に意見を述べる人物。
「獣の鋭い勘は言っている、王よ、あなたを行かせてはならない。反対する」
狼から剥ぎ取った皮を被り獣そのものとなろうとしている『獣形人』ユッテルは獣の勘を頼りに確かな提言をする。
ユッテルは獣の立場になり獣そのものになり獣の本能を理解している、獣の本能とは、人より優れた合理性を持ってると言う。
「リィ、把握。リィ、王に賛成。リィ、応援」
円卓の誰よりも小さい、それこそ手に乗る程の大きさしかない羽の生えた小人は片言で王を肯定する、もっともこの小人が自由意志を持っている事を証明出来るものはいない、何故ならこの小人が作られた存在だからだ。
『魔工精霊体』リィ、人の欲が行き着いた果ての存在。
そして、円卓の最後。『王従徒』としては最古の人物。ありふれた人物でありながら円卓には欠かせない存在になっている者。
「あの……王様……本当に私たちのためにそこまでしでくれるんですか? 私たちはもうこんなにも幸せなのに……もう、良いんですよ。もう私達は良いんですよ。王様、行っちゃダメですわ私達『国民』はもう私達でやれるんですから」
円卓の最後は完璧な国エンドの『国民』アリス。
この国の礎であり柱であり全てを動かす原動力、民なのです。
アリスは民を代表し円卓に座るしっかりものの女の子、個性豊かな『王従徒』の中で唯一常識と普通の二つを持ち合わせる人物。
アリスが意見を述べた所で円卓の意見は反対と賛成に綺麗に分かれ、納得できない双方賛成派と反対派が言い合いになると、王様はその手を掲げその場を鎮めた
「なるほど、皆の意見は聞かせてもらった」
王様はいつも半分に割れた意見を決める為に最後には自分の意見を十五人目として含めることが通例となっています、双方の意見を吟味して改めて意見を出す王様を否定するものはこの場には居ないのです
「最後に私の意見を出そう、私は___賛成だ」
更に王様は続けます
「このエンドを襲うモノの正体は分からない、だが、私はこの国のために行く。ということで1週間私が不在になるのでよろしく頼む」
そう言うと王様は席を立ち玉座に立てかけてあった剣を取ると、腰に差し、窓から飛んでいきました。
後日、王様は言い伝えに出てくる災厄を可能な限り排除してきたと宣言しました。その手には小さな肉片が着いていたのですが、言い伝えの災厄は、その、言葉に出来ないほどの処置をされたようです。
「今日もエンドは平和だな、ヒルヒュート」
「だな、エル」
これは、王様と風変わりな14人の完璧な国での完璧なお話です。