どうも、どこぞの委員長です。
前回、長かったトリスタン戦が終わりました。
その続きです、どうぞ!
眩しい光に照らされて重い瞼を開けると、目に映るのは黒色をした何か。その色が見える世界のすべてだった。何度か瞬きすると、それが石で作られたものであることが分かってくる。さらに体が横たわっていることから、やっとそれが天井であることが分かった。しかし、この作りから考えるに俺の住んでいた時代のものではなさそうだ。
「俺は、何をしていたんだっけ」
ぼんやりする頭を軽く振り、目を擦りながら体を起こす。その先に見えたのは、天井から床まで届く細い鉄の柱。その柱は等間隔で視界をふさいでいた。その隙間からは、向かい側にも同じ作りの部屋のようなものがあるのが見て取れる。もちろん、その部屋も細い鉄の柱が何本も天井から地面にはしっていた。中には人がいるのも見て取れる。どうやら女性二人のようだ。二人とも縞模様の簡素な服を着ている・・・なんというか囚人服のような・・・?
ちょっと待てよ、あの模様をさっきどこかで見た気がする。そう、目を擦った時に見えた俺の服の袖がそんな模様をしていたんだ。俺はこんな服を着ていた記憶はないし、何よりよくわからない場所で三人が同じ服を着ている状況というのは、少しおかしい。二人は寝ているようだが、ベッドや布団なんてものはなく地べたに直接寝転がっている。あんな簡素な服で地面に直接寝転んでいること、この部屋の構造、服の模様、これらが導き出す結論は一つしかない。だが、考えたくないような結論だ。頭がはっきりしてきて思い出したが、俺はトリスタンと戦っていたはずだ。いや、あの戦いは終わって、俺は意識を失ったんだ。だがそれは固有結界の中、決してこんなつくりではなかったはずだ。それに仲間たちだっていたはずなのに、俺は今一人しかいない。意識を失ったことで、固有結界が解除されてしまったのか?いや、あれは俺が意識していなくても、中に人がいるのならば起動し続けるはず。意識的に解除しないと永久にヴンダーを持っていかれるような代物だ。勝手に消えるなんてありえない。仮に何らかの力が働いて解除されてしまったとしたら、時空の裂け目に吸い込まれ、仲間ごと時空漂流者になっていた。そうはならず、実態のある石の床の上で寝ていたということは、一度固有結界を出ていたのだろうか?だが、固有結界を出たところで繋がっていたのは
そんなわけで待ってみること数時間、やっと巡回の人物がやってきたようだ。足音と話し声から二人かそれ以上。次第に話し声もしっかり聞こえてくるようになってくる。
「あいつらどうするんです?」
「決まってんだろ、火あぶりだよ。なんせ魔女だからな」
「ま、魔女なんですか。会ったら殺されません?」
「ああ、気を付けておいたほうがいいぜ。なんせ、空から降ってきたやつらだ」
「空から?」
「ああ、いきなりな。あと一人はそいつらを匿ってた奴だ。聞いて驚け、そいつは
その後も何やら不穏な話が続いているようだったが、それどころではない。俺たちは魔女として捕まっているようだ。魔女と中世ヨーロッパといえば、あいつの火あぶりも冗談じゃないことは分かる。火あぶりじゃなくとも処刑されるのは明らかだ。そして、ここにはジャンヌもいる。それもまずい状況だ。間違いなくジャンヌは火あぶりにされてしまう。それは歴史から明らかなのだ。それを救うことも一つの目的だったはずなのに、捕まってしまってはどうしようもなくなってしまうじゃないか。それを雪穂とともに阻止する予定だったっていうのに・・・いや待て、雪穂も一緒につかまっているのか?あの言い方は二人以上じゃないと使わない言い回しだ。前の牢屋に入れられているのは二人の女性。つまり、ジャンヌと雪穂ということか。くそ、遠くて見えなかったせいで気づくのが遅れてた自分自身に腹が立ってきたぞ。何が情報収集だよ。さっさと牢屋ぶち壊せばよかった。どうせ、誰であっても最終的には助けるんだろうから一緒だ。いや、落ち着こう、怒りに任せてはできることもできなくなる。それに、あいつらがそろそろこっちに着くころだ。
「でな、魔女だとはいえ、あいつらは女としてはイイ。まだ誰も手は出してないそうだが、どうだ一緒に?ちょうど二人いるしさ」
「呪われませんかね?魔女ですよ?」
「一回見てみろって、気持ちが変わるぜ」
薄気味悪い笑いが牢屋の中に反響する。ジャンヌが火あぶりになる事実が変わらないのならば、雪穂と共にその現場からどうにかしてジャンヌを助け出すことが最善だと思っていた。そのために息を殺してこの場を乗り切ろうと考えていたんだ。コンタクトはお互い起きていれば取れる雰囲気ではあったから・・・しかし、あの発言は俺をキレさせるには十分だった。二人が牢屋にたどり着き、鍵を開けようとしている。仰向けの状態から、反動をつけて起き上がった俺は、それと同時に
「な、何だお前は!」
「ひぃぃ、やっぱりだ。呪われる!」
散々な言われようだが、全く俺には届かない。いや、喚き散らしている者の声など既に聞く気もない。目の前に邪魔なものは無い・・・いや、邪魔な者なら二匹ほどいるな。俺の顔が歪むのが分かる。これは憤怒の形相ではなく、薄笑いだ。人間っていう生き物は、笑いながら傷つけられるのを恐れる傾向があるからな。
「恐怖し、絶望し、そして消えろ」
「主よ、われらに慈悲を!」
「救いを!」
こいつらは何なのだ。全く何の関係もない女性、しかも少女を凌辱しようとして、神に救いを求めるのか?愚かしい、贖罪すれば神が罪を許すとでも?神がいないとは言わない。実際、天界は存在するし、神の言葉を聞く上級天使も存在した。神は存在するのであろう。だが、こんな下衆を許すほど寛大ではないだろう。
「神の慈悲など、お前たちには必要ない。せいぜい痛みなく殺してやる」
俺は笑顔を絶やさず、剣を振るった。その切っ先は寸分たがわず、腰を抜かして倒れている二人の首を刎ねる進路で、数瞬後には二つに分断されるはずだった。しかし、剣の刃は共に二人の首ギリギリのところで不可視の何かによってせき止められたのだ。
「ッ!」
鉄ですら音もたてずに切り裂いたはずの刃は、どれだけ力を入れても、それ以上押し込むことができない。そして、逆に引いて手元に戻すこともできなくなっていた。笑みを浮かべていた俺の表情が曇ったのは言うまでもないだろう。そしてそこに、声が響いた。
「そこまでです。無抵抗の人間を殺めることは私が許しません!」
慌てて声のほうを見ると、右手を前に突き出したジャンヌが立っていた。その手の先には薄い青色をした円形の何かが光り輝いている。複雑な文様が円の中に納まっているそれは、魔法陣と呼ばれるもの。どうやら、俺の剣を防いだのはジャンヌの魔法のようだ。
「ジャンヌ、こいつらはお前らを凌辱しようとしたんだぞ!それを救うのか!」
「はい!私は無用の殺生は行わず、行わせません!悠樹さんといえども、容赦はしませんよ」
ジャンヌは空いている左手を上げると、まっすぐ俺のほうへとむける。その手に赤色の魔法陣が浮かび上がると、そこから巨大な炎が噴き出てきた。剣を拘束され、ましてや救おうとした相手から攻撃されるとは思ってもみなかった俺は、反応が遅れる。接近戦において反応速度は
「ジャンヌ・ダルク。あなたとはいえど、おにいちゃんに手を出すなら・・・殺すよ」
その手には濁流を流す村雨と、炎を纏った刀。あれを見たのは過去に一度、パーシヴァルとの戦闘で、俺が死にかけた時以来だ。あの武器は名称も使用法も一切分からない。どうやら雪穂は俺の知らないもう一つの武器を召喚できるようだ。そして、その刀が出る時は雪穂の怒りが最大限に発揮された時。手が付けられないことになる。
「ジャンヌ、剣の拘束を解け。死ぬぞ!」
「え?」
だが時すでにおそし、雪穂の刀は俺の剣の拘束が解かれたところで、どうにもならない速度で打ち出されようとしていた。あの進路だと、間違いなくジャンヌの体が真っ二つだ。それに振ったのは炎の刀、何が起こるか全く見当がつかない。そして、その刃はジャンヌに吸い込まれていき、その前で障壁に防がれた。が、それも一瞬、俺がどうしても抜けなかった障壁を打ち破り、雪穂の刀はジャンヌに再び向かい始めた。しかし、ジャンヌも負けてはいない。障壁の破壊を感じ取り、とっさに後ろへ飛んでいた。それが功を奏し、刀の刃はかするだけで済んだようだ。
「終わりだよ、おにいちゃんは私が守るんだから」
まだ戦闘は続くかと思ったが、雪穂はにっこりと微笑んで刀を鞘に戻す。何とか事なきを得たのだろうか。そう思ったのもつかの間、ジャンヌの体にかすった部分から極大の炎の柱が出現し、一気にジャンヌを包み込んだのだ。その光景は、ジャンヌの火あぶりの刑そのもの・・・ッ!
「サンダルフォン、今すぐ
「やっと見つけた。そっちから繋がないと・・・ってなんだ!」
「早く彼女を!」
「了解、
即座にジャンヌの足元にゲートが開かれ、自由落下の要領で彼女はそのまま
「おにいちゃん、どうして助けたの?殺されそうになった・・・って痛い!」
「俺たちの第二の目的を忘れたのか?あいつを助けるって話だったろ」
雪穂は何か言いたげな目でこちらを見てくるが、それを俺は目で制した。たとえ一時の感情であっても、それで保護対象を殺したら・・・って、俺が言えた立場じゃねえな。ここに転がって気絶してる二人を殺そうとしてたんだから。
「すまん、俺もこいつら殺そうとしてたし一緒か。助けてくれてありがとう」
そういって、雪穂の頭を撫でてやると、ひっついてきて上目づかいでもっとしてほしそうに見てくる。うわぁ、ずるいなこの顔。でも、どうせ周りには気絶してるおっさんだけだし、もうちょっとやってても大丈夫・・・
「ゴホン」
わざとらしい咳払いが聞こえた。あ、サンダルフォンのこと忘れてた、呼んどいてなんだけど・・・。慌てて手を放すが、周囲のことは気にしない主義なのか、雪穂はさらににじり寄ってくる。俺もその誘惑には抗いがたく、また雪穂の頭に手を伸ばし・・・
「いつまでやるつもりだ」
しかし、サンダルフォンに諭されて俺は渋々手をもとの位置に戻した。それから、互いの情報交換が始まった。どうやら気絶した俺を仲間たちが固有結界から外へ出してくれていたようだ。固有結界のゲートは、雪穂が開いたらしい。それによって俺たち二人は
「それで、さっきのジャンヌ・ダルクは転移させて良かったのか?彼女には資格があったとはいえ、定まった日付と時間で死んでしまうはずだが」
「今日は何日だ?」
「1431年5月30日だが、それが何か・・・そういうことか」
「そう、ジャンヌが処刑された日。この日に同じ状況でジャンヌがこの時代を去る。それは死じゃないか」
ジャンヌが死ぬ、つまりこの時代から消える、ならば時間的に移動させてしまえば、この時代から消えた=死ということになるのではないかというわけだ。もちろんあくまで仮説でしかない。成功しないかもしれない。だが、うまく再現はできたはずだ。なら、後は確かめに行くのみ。
「じゃあ、探しに行こう、いきなり水中に落とされた少女を探しに」
「私も、ジャンヌにやりすぎちゃったことを謝らなきゃ」
「では、
俺はジャンヌを探すため、雪穂の手を引いて
はい、今回も読んでいただきありがとうございます!
タイトルは、言ってみたかった台詞というだけで、特に意味はありません・・・
それはさておき、次回もよろしくお願いします!