いかにして残り9個となったセフィラを回収するかどうかということ、それがこれからの方針決めに関して最も重要な案件だ。いや、そもそもそれしかないといっても過言ではないだろう。第10のセフィラ、マルクトが百年戦争の時代にあったことから、他のセフィラも他時代に移動してしまっている可能性は高い。そして、そこには円卓の騎士団の姿をしたファイントが待っているというわけだ。その一人であるトリスタンを相手取ってみてわかったことは、セフィラを神格開放された場合に戦闘力が著しく上昇してしまうこと、そして何かしらの目的をもって動いている可能性があるということ。その目的が何なのかまではわからないが、自らの意志で動いていることは確かなようだった。その意志が正しいものなのか、それとも間違ったものであるのかは計り知れない。しかし、それがどうあれ、俺たちは円卓の騎士たちからセフィラを回収せねばならないのだ。そうしなければ星そのものが崩壊する。その意志、あるいは正義を強く持ち、貫き通さなければならない。たとえそれが、ほかのものに対して悪になるとしても。
「で、ほかのセフィラの位置は把握できているのか?」
「それはわかんない。ううん、せいかくにはじぶんがもってるやつだけしかわからない」
「ということは、回収したマルクトは除いて、今わかるのはガブリエルのイェソドだけってことか・・・」
「そゆこと」
残り9個のセフィラ、それぞれの守護天使の助力がなければ回収は不可能ということか。まあ、今は一つイェソドのありかはわかるわけだ。しかし、また面倒なことになったものだ。これから9つの時代を渡り歩いて、それぞれの円卓から譲って・・・はもらえないだろうから、倒してセフィラを回収しなければならないのだ。倒さなければいけないのは分かっていたが、いくつもの時代を渡り歩くことになろうとは・・・
とてつもなく長そうだと思っていたのだが、いざ動き始めてみるとそれほど大したことはなかった。いや、もちろん円卓の騎士たちは強力であり、そのたびに苦戦を強いられたが、何せいった時代が時代だ。百年戦争も戦争といえば戦争だが、この後に行った時代とは比べ物にならない。かたや第一次大戦や二次大戦といった現代兵器飛び交う戦場、かたや魔術や魔法といったものが信じられ、後方からの呪い担当についていた円卓たちとの戦闘。つまり、前者では戦闘が激しすぎて、少し離れたところであればさほど目につかない戦闘にできたし、後者の方は能力を使っても魔法などの類だと誤認してくれて大事にはならなかったのだ。さらに、サンダルフォンやガブリエルが手を回してくれたおかげで、他の守護天使たちとは、問題なく時代時代で会うことができたし、果てには2・3の時代を共に戦ってくれた天使たちもいたのだ。俺たちも化け物級の強さだとは思っているが、それでもさすが星の核たるセフィラを守っていた天使たちだ。戦闘能力に関しては俺たちと同等かそれ以上といった奴らがほとんどだった。加えてセフィラの段階が上に行くにつれ、守護天使も強くなっていくという始末。どうやら先の戦闘で敗北したのは、いかんせん敵が多かったのと、攻め入る敵はいないだろうとたかをくくって、遊んでいたのが数名いたからだとか・・・いや、仕事しろよとツッコミたくはなったが、その遊びも仕事のうちらしいので深く追及するのはやめておいた。何はともあれ、俺たちはランスロットやモードレット、ガウェインといった姿をとっているファイントをことごとく倒し、セフィラの回収に成功したわけだ。そして現在、俺と雪穂は守護天使全員の前に立っていた。場所は
「この度は、
「そういうのは、いいって言ったろ?俺たちは任された仕事をしただけだ」
「おにいちゃんの言う通り。それに私たちは、各セフィラを回収した後にお礼はもらってる。もちろんあなたからも」
雪穂の言う通り、各セフィラを回収するごとにお礼はしてもらっているのだ。それゆえ、もう一度全員でといわれ、ちょっと遠慮しているのである。そもそも、お礼がほしくてこの仕事を引き受けたわけではない。誰かがやらねばいけないと知り、その誰かとは自分だと思ったからこそやってきたのだ。この説明も幾度もした、けれども取り合ってもらえないのだ。今回もそのようで、メタトロンはいや、と一言前置きすると俺たちの武勇を語り始めた。最後のセフィラの守護天使であるメタトロンが、どうしてここまで知っているかというと、書記として俺たちの武勇を書き記していたかららしい。いや、書いてるなら助けに来いよと思うのだが、どうやら自分のセフィラがある時代以外には滞在できなかったようだ。連続で時代を超えて助けてくれていた天使たちは、確かにセフィラを持ったうえで助けてくれていた。例外としてサンダルフォンだけは超精巧なレプリカを作ることで、救世主探しのため様々な時代を渡り歩いていたようだ。そういえば、サンダルフォンと初めて会った時、確かにレプリカを持っていた。あれはどうやら、そういうことだったらしい。初めて会ったといえば、住みやすそうだからと、初めて会ったにもかかわらず農家に厄介になると言って、あの時代へ残ったジャンヌは元気にやっているだろうか。まあ、もともと農民の娘だったらしいし、その農家の人も天使たちの働きによって、ジャンヌが天からの授かりものと信じていたし、それが無くともジャンヌはよくできる人間だから上手くいくだろう。ただ、ともにいくつかの時代を渡った仲間として、心配するくらいは許されるはずだ。
「それでは、これよりセフィラを
過去に思いをはせている間に、最初の戦いから最後の勝利までにわたる、長い話が終わっていたようだ。メタトロンの一声で、他の天使たちも顔をあげ立ち上がる。そして、
しかし、この神秘的な、人間では決して見ることが出来ないであろう光景を最後まで見ることは許されなかった。突如、疾風が巻き起こったのだ。それは
空間の歪の黒とは相対する銀色の髪と白い肌、それはかつてとある島で出会った女性と酷似していた。いや、酷似なんてものではない、その人そのまんまだ。そして手には一振りの剣。その剣は見れば一目でその人物が誰なのかがわかる代物。つまり・・・
「アーサー王」
ぽつりと雪穂の口から言葉が漏れる。しかし、その言葉ははっきりと周囲へ響いた。間違いない、
「アーサ・・・姉ちゃん、どうしたんだ?」
ここに来たことは不思議で、そして有り得ないことではあるが、そういうことを可能にしそうなのがこの人物である。少し、疑問には感じるものの、何か目的があってきたのだろう。俺は特に警戒心もなく、姉に話しかける。しかし、返ってきたのは言葉ではなく、寸分たがわず俺を両断するように振り込まれた剣の一閃だった。瞬時に右手に
「おにいちゃん!」
雪穂が全力で駆けてくるが、間に合いそうに無かった。ここまで追いつめられるのは久しぶりかもしれない。何だかんだでセフィラを集める時も雪穂や天使たちの助けで、ここまでピンチに陥ることはなかったのだ。俺の脳内で再生されるのは、巡ったいくつもの時代、そしてその中にある雪穂の姿だった。くそ、走馬燈が流れるとは俺らしくもねえな、それは負けを認めたことになるだろうが!頭を振ってその映像を消すと、右手を自身にあて俺は一言発する。
「
瞬時に俺の体がアーサー王の背後20mほど離れた位置に移動する。刹那、俺がいた場所を聖剣が勢いよく通り過ぎた。まともに食らっていたら、おそらくここに立ってはいられなかっただろう。狙うべきものが消失し、不意を突かれたアーサー王はそのまま3mほど転がる。しかし、さすがは戦闘経験者、すぐに立ち上がりこちらを牽制するように剣を構える。その間にそばに来ていた雪穂と共に、俺たちは二人で剣を掲げそれに返した。天使たちは俺たちの後ろに五人、残りはアーサー王を包囲している。
「さて、やっと話ができるようになったな。どうやら姉ちゃんとは違う存在のようだ」
「おにいちゃんを殺そうとした。あなたの目的は!」
目をもって威嚇を止めない俺と、殺意がむき出しになっている雪穂、それを前にしてもなお怯むことなく、俺たちを見返してくるアーサー王。
「神格開放、@¿;/‽›-!」
突如、アーサー王が言葉を発した。しかし、その中で唯一聞き取れたのは神格開放のみ、後に続いたのはこの世のどこの言語でもない、言葉とすら言えるのかわからないものだった。そして、アーサー王は様々な色がぐちゃぐちゃと混ざった、もはや人とは言えない存在へと変貌した。その中で判別できるものが一つ、こちらに向けられていた剣だ。それだけは誰もがわかった。そう、最後の剣・・・マルクトが称すとされるものだ。つまり、あの剣一つがマルクトなわけである。ここからは推測だが、その他の部分の色は、おそらく
「ダアト・・・」
天使たちが息をのむ音が聞こえる。何人たりとも、それがたとえ天使だとしても触れられぬもの。神を除く、すべての生命あるものを超える存在の誕生の瞬間だった。
今回も読んでいただきありがとうございます!
なんか一気に話を進められた気がします・・・
ということで、次回もよろしくお願いしますm(__)m