すいません。
私は、生まれつき殻が酷く脆く、苦しみも人一倍であった。
それでいて平然と今の今までこの薄く脆い殻に守られていた。
人類は進化を遂げ、特に日本では「心の強さ」に価値を見出すようになった。
技術進化で台頭した企業の影響だろう、自我を殺し仕事に集中するため、心は固い殻に守られ、自らの自我を心の奥底に閉じ込めた。
普通は絶対と言っていいほどありえないのだがもし、もし仮にその殻が割れてしまった時、本来奥底にしまわれていたはずの心が解き放たれてしまい、人の姿を保てなくなるとされている。
過去そういった事例は2033年の中小企業の事件と2122年の「144事件」のみだ。
私は今日、歴史に名を残す大きな事件となる。
私の殻は酷く脆く、些細なことですらヒビが入ってしまう今の現代に不釣り合いな存在である。
社会から排斥され、軽蔑され、なんの価値も持たない私は親にも捨てられ幾度も壊れてきた。しかし諦めない心だけはあった。
それで今まで凌いできた。
今日、それを辞める
自責で壊れてしまうこの殻を破り捨てる。
本能でしがみつくこの心も、捨ててしまおう。
自責で壊した殻から漏れ出す諦めない心。
人の言葉では形容し難い体になっていることに勘付く。
自我もそろそろ失うのだろうか。
「やめておくれ、今まで通り静かに生きてればいいのに。」
頭の中で私にそう囁く。
「自分から壊したくせに何を言うんだ。お前も私だろうに。」
そう言い返したが、返事はなかった。
あれは今までの私なのだろうか。
そんなことは気にするべきでは無い。
私は、この腐れ切った心の世界を砕く。
私が、新しい時代そのものになる。
さあ、讃えよ。そして崇めよ。
我が全ての始まりで、そなた達の終わりである。」
諦めない私を捨て、神となった。
前の私の体から溢れ出した血や心が鏡替わりとなり私の姿を写した。
溶けた白銀の四肢に破裂したような痕だけが残る首。
胸は穴だらけでおぞましく、少し美しかった。
これで分かったのは私の目はまだ機能するらしい。
呼吸や食事、その他生理現象の発生は一切なく、また必要ともしなかった。
あくまで憶測だが口や肺、消化器官や内臓はもう機能しないらしい。
欲もないように思える。
そんな私は少し寂しくて後悔した。
「君はなんでそんなに自分勝手なんだ?」
「その姿を願ったのは君自身じゃないか」
「今更後悔なんて意味があるのか?」
「何も残ってなければ何も持ち合わせてないんだな、お前は。」
「後戻り出来ないところまで来たくせに後悔とかよく出来たな。」
「寝言は寝てから言えよ。」
私の思考を読むように劈くような罵倒。私では無い、新しい私の心の声。
全てを失った今なら耐えれてしまう幼稚で稚拙な罵倒。
こんな言葉で過去の私は崩れたのか?
あまりに哀れで、愚かだ。
しかし今の私に巡り会えた、感謝はしよう。前の私。
まるで生まれ変わったかのような気分。
何にだってなれて何にだって打ち勝てる気分。
私は、静かに世界を統べる。
──あれから何年が経過したのだろうか。
少なくとも204年と6ヶ月11日は経過している。そこからは数えていない。
あれから思索を繰り返し、全ての人類を私に近いような存在に創り変えた。
これが私の望んだ世界。
本当にそうか?
今更になって疑問を持ち始める。
本当にそうだ。
再度確かめるために強く意志を持つ。
前の私が望んだのはこれか?
朧げな記憶から思い出す。
前の私が望んだのはこれだ。
違う。
前の私が望んだのは「普通の暮らし」では?
確信を持つ。
前の私が望んだのは「世界を変えること」だ。
違う。
前の私は「普通の暮らし」をすることが望みだった。違うか?
これ以外ありえない。
違う。
その通りだ。
じゃあ他に何を望んだ?
相手は既に折れているのが分かる。
こんな私でも生きれるような世界に変えることだ。
違う。そんなスケールじゃない。
誰も文句を言わないのになぜまだ嘘をつく?
嘘なんてついていない。
そこまで自分を正当化して何になる?
正当化も何もこれが本心であり正しい。
強がるのは終わりにしよう。
酷く長く続いた一人芝居。
羞恥心が溢れる。
まだ、羞恥心はあったのか。
再度思い直す。
前の私は、生まれつき殻が酷く脆く、苦しみも人一倍だった。
前の私は、何度ひび割れても諦めない心を持っていた。
前の私は、最終的に諦める心さえ捨て、こうなってしまった。
今の私は、一体何なんだ?
所々日本語がおかしいです。