日本ウマ娘史専攻   作:一般通過転生者

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今話は日本史ではありません
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番外編:世界史の中のウマ娘史とナーダム祭

 どうも、トレセン学園高等部歴史教員の一般通過転生者です。

 本日は予定を変更して中等部へ臨時授業している姿をお送りします。

 

 と言いますのも中等部の教員が病欠してたまたまその時間帯に空きのある人員が少なく、中高跨いでるはずなのに何故か私にお鉢が回ってきたんですね。ちなみに中等部と高等部では教員免許が違いますが社会科は取得過程で両方取るのがオススメです。

 それで前の世界では考えられない教員の病欠ですがこの世界ではよくあります。トレセン学園はアスリート育成機関と言い換えられますので教える側もひどい風邪など引いてたら生徒に伝染さないように休みを取ることになっているんですね。うーんこれはホワイト。

 

 本題の中等部の授業については主任から最悪自習でもいいと言われてますが生徒に進捗を聞いてから判断したいと思います。進捗が歴史の範囲であれば私としても楽しくできそうですが公民とか政治とかであったら教科書をなぞるだけとなります。

 

 

「起立~。礼~。ちゃくせ~き」

 日直の葦毛の子による緩い声の号令が掛かりました。

 

「えー、本来担当してる先生がお休みのため今回は臨時で来ました。見たことないと思いますがそれは私が高等部で歴史を教えてるので来年以降また会いましたらよろしくお願いします。

 それで前回の授業では何処をやってたのでしょうか?」

 

 そう言って教壇の一番前の子に教科書を見せてもらいながら前回の範囲を聞きます。

 なるほどなるほど。前回は人類の誕生から四大文明とシルクロードですか。これはもしかしなくても世界史の範囲ですねぇ。自習にするよりかはあまり得意とは言えない世界史でも歴史ですし、前回の復習がてら面白そうな話を混ぜてみるとします。

 

 

 それでは復習も兼ねていきましょう。この世界でも四大文明と呼ばれる古代文明が勃興しています。そうですね、メソポタミア・エジプト・インダス・黄河文明のことですね。いずれも大きな川のほとりに生まれたとして大河文明とも言われています。

 紀元前3000年、つまりは現代から約5000年前から勃興してどれが一番古いのかとか論争があるところですね。昨今ではこれにアメリカで興った文明も足して五大古代文明とか言うこともありますがこの話はまた後でしましょう。

 

 話は少しそれますが人類……ヒトの最古の化石はアフリカで発見されています。およそ700万年前の地層から発掘されている一方でウマ娘の先祖と思われる化石は5200万年前のものがイギリスと北アメリカで出土しているんですね。

 ちなみに頭骨か尾骨周りでヒトかウマ娘かは判断が可能です。

 ヒトが歴史に登場するまでの間、まだ未発見ですがもしかしたらどこかにウマ娘によるウマ娘の文明が足元に埋まっている可能性があるということに浪漫を感じませんか?

 

 話を少し戻しまして見つかった5200万年前のウマ娘の化石は、現在のウマ娘とは少し違っていまして大人が今でいう小学生くらいの大きさでした。時代が進むにつれて化石は大型化していき、ヨーロッパと北アメリカで発見されていたものが北アメリカだけから出土するようになります。そこからまた時代が進むにつれて何種か学名がついているものが登場しますがそこは割愛しまして、現代のウマ娘の直系の祖と言えるものは100万年前に登場しました。

 

 前置きが少し長くなってしまいましたが皆さんは画家のゴーギャンをご存じですか。とある絵のタイトルが印象的で聞いたことある人もいると思います。

 

 

 【ウマ娘はどこから来たのか ウマ娘は何者か ウマ娘はどこへ行くのか】

 

 

 横長に複数のウマ娘が描かれた都内の美術館でもたまに特別展などされている有名な絵画で右端から順に誕生、成熟期、そして晩年を表しているやつです。

 それではここからはヒトとウマ娘の歴史を話していきます。

 

 ヒトとウマ娘の共生が歴史上に見られるのは紀元前2000年頃、現代からおよそ4000年前です。場所は南ロシアのドニブロ川、ドン川、ヴォルガ川流域のステップ地方と考えられています。

 この共生圏はクルガンと呼ばれてまして、同時期に発生した銅器時代のいくつかの文化の集合体です。そのうちのスレドニ・ストグ文化が最初にウマ娘と共生したと考えられてますね。

 クルガンは遊牧を成し、ヤギ・ブタ・ヒツジ・ウシの育成と南に広がる黒海沿岸部の都市と交易をしていて、その範囲は南のギリシャやペルシャ、東の四大文明である中国まで及んでいました。

 

 解像度を上げるために言語の話を少しします。

 このクルガンが後の英語やロシア語やスペイン語やペルシア語、ヒンディー語に分派した祖とされるインド・ヨーロッパ祖語を使っていました。見ての通りこれらはほぼクルガンの交易網と合致しているんですね。と紹介しましたが実はまだ専門家の中では仮説の話でして、目下白熱した研究中なのですがこれを聞いてどうですか、説得力がある気はしませんか?

 ちなみにメソポタミア文明は完全に独立しているシュメール語を用い、エジプト文明はアフリカ発祥のアフロ・アジア語族の中のエジプト語派で、インダス文明は当時使用されていた文字がまだ未解読ですが現インド南部でも用いられるドラヴィダ語族を使っていたとされ、黄河文明では中国北部から東アジアに広がったシナ・チベット語族を用いていて、言語圏として見るとやはり四大文明は独立していました。

 

 話を戻しまして、このクルガンによる広大な交易網を支えていたのが共生したウマ娘とされています。同時期にメソポタミアで車輪が発明され、それが各地に伝播していった結果ヒトは大量の荷物を運ぶことができるようになりました。最も恩恵を受けたのはクルガンで、ウマ娘がいるからより遠くまで行けるし運べるようになったということです。

 

 ではウマ娘がいると何故遠くまで行けるのかという話ですが、これはウマ娘である皆さんに聞いた方がいいですね。代表としてお聞きしますが1日ずっと走り続けておよそどれくらい移動できますか?

 

「えっと家から……あ、北海道の家から頑張れば2つ隣の市くらいなら行けると思います」

 

 ボブヘアの子に訊ねたところの回答ですが、北海道の市町村の間隔は本州の関東部とスケールが違いすぎるところがあるものの、とても遠いニュアンスは皆にも伝わったと思います。注目を集めてしまいあははと苦笑いしている彼女のためにささっと話を進めましょう。

 前世界のウマは駆け足と休憩を繰り返して1日60kmくらい移動できます。ですがそれは走行距離を把握したペース配分が不可能な場合であり、今の世界のウマ娘であれば理論上は1日で360kmくらいで実際は240㎞くらいではないでしょうか。24時間で360kmの2/3として換算しました。

 比較としてヒト側も出すとしましょう。時代と場所やら諸々違いますが江戸時代の旅人の1日の移動距離はおよそ40km程です。ウマ娘の実に1/6程度ですね。

 

 このようにウマ娘の移動可能距離はヒトに比べてとても長く、これが如実に現れていたのがクルガンの交易網ということです。

 クルガンの交易網の対比として既存の四大文明の支配面積を見ていきましょう。

 メソポタミアはやはり並列すると言ってもいい2つの河川の流域に集中していて水を引いて農業をしていました。ここは文化交差点とも言える場所でインダス文明やエジプト文明に繋がる通路でしたが主な運搬方法は水運でウマ娘はいませんでした。ですのでアラビア半島の北側を斜めに横断する両河川に沿った支配面積に収まっています。

 エジプト文明もナイル川流域に沿って都市がありました。ウマ娘がこの文明に入ってきたのは紀元前1000年頃からです。しかもオブラートで包んで言うところの他国との揉め事解決用に雇っていたという感じでしたのでクルガンのように共生していたとは言えませんでした。

 インダス文明もインド西北にあるインダス川流域と流れ込むアラビア海沿岸部においてのみ繁栄していました。地理がら交易がメソポタミア文明を挟むためかここにもウマ娘はいませんでした。

 黄河文明は実はそれと長江文明の2つの大河文明をまとめて呼称しています。これらも流域に農耕集落を造り陶器などを作っていました。北にあった黄河文明のほうはモンゴルを経由してウマ娘が流入していたため陸運が、南にあった長江文明では水運が発達したと言われています。

 その後春秋時代と呼ばれる紀元前700年頃からはウマ娘を徴発した領地係争が始まり支配地は中華全土に及んでいきました。今に続く中国の文化はこの北部にあった黄河文明の後継と言われており、やはりウマ娘がいたことで支配面積が次第に広がっていったと考えられます。

 余談ですが紀元前200年頃にできた秦の始皇帝の墓から兵バ俑としてウマ娘を模した陶器が大量に発掘されていまして、ここからウマ娘の数イコール国力という考えが窺い知ることができます。

 

 クルガンや古代中国から見るにウマ娘と共生している場所の支配面積は大きくなります。

 この事実を踏まえて少し冒頭の話に戻ります。四大文明にアメリカ大陸の文明を足して五大文明と呼ぶという話ですね。具体的に言えばアステカ文明やマヤ文明のことです。

 簡単に補足すると紀元前1200年頃のメキシコでオルメカ文明が発展し後に続く文明の母体となります。その後テオティワカン文明とマヤ文明が別途勃興し、テオティワカン文明が衰退した後釜であるトルテカ文明がマヤ文明を飲み込んで14世紀にアステカ文明が成立しました。これらを総合してメソアメリカ文明といいますがここで問題です。

 このメソアメリカ文明は大きかったでしょうか、それとも小さかったでしょうか? とプロレスラーのようなマスクを被った子に質問を当てて答えていただきます。

 

「はい。メキシコは意外と大きいデスから文明もきっと大きかったと思いますデェス」

 お約束の回答をありがとうございます。と内心で感謝をしながらアメリカ大陸の話をします。

 

 5200万年前にウマ娘の先祖の化石が発見され、その後も繁栄をしていたと思われたアメリカ大陸のウマ娘は1万2000年前頃から17世紀頃の大航海時代で再上陸するまで居ませんでした。

 つまり、メソアメリカ文明ではウマ娘がいなかったので支配面積は小さく、やはりメキシコ湾沿岸部と細かな河川流域に集中しているんですね。

 先ほどのマスクの子がケッ!? という驚きの声を上げていますが、こういう驚きの声が歴史の本分なんですね。

 

 何故アメリカ大陸からウマ娘が消えたかについて話をします。

 地球最後の氷河期と呼ばれる時代が1万5000年前にありました。このとき氷の道ができてユーラシア大陸とアメリカ大陸が地続きになっていました。その道を通ってヒトはユーラシア大陸からアメリカ大陸へ移動しました。

 アラスカから流入し北米で出会ったのが小さな集落を築いていたウマ娘です。飢えたヒトの群れであった別大陸からの来訪者にウマ娘の大半は自分たちの集落ごと畑を譲り、同じようにウマ娘の大半がヒトが来た道を遡っていきました。

 これはおそらく話を聞いて助けられるなら助けようとして行ったと考えられています。また、氷河期だったのでウマ娘側も共に残ると全滅してしまうと判断したとの説もあります。

 ともあれこれによって直接的にウマ娘はアメリカ大陸から消え、一部残ったウマ娘もいたらしいですが次代にウマ娘が誕生せずそのまま姿を消していったとされています。

 その後移動したウマ娘達は氷河期が終わればアメリカ大陸へ戻れなくなったためユーラシア大陸を北から西へ進出していき、南ロシアのステップ地方でついに共生圏が確立されました。

 

 アメリカの話のついでに世界人口の話もしておきましょう。

 世界で最もヒトが多いのはインドで次に中国アメリカと続きますが逆に世界で最もウマ娘が多いのはどこだと思いますか?

 

「えーと、やはりアメリカだと思います」

 

 指名した栗毛のロングヘア―の子が小首を少し傾げて素直に回答を挙げました。もちろん正解です。アメリカのウマ娘人口が世界第1位です。

 

 ここで取り上げたいのはウマ娘の数についてです。といってもウマ娘の人口調査のデータが少し信ぴょう性が低くて、実際はこの3倍はいるんじゃないかと思うのですがここでは調べたときの数値を扱います。

 

 代表的な国を取り上げていきましょう。ちなみにウマ娘の世界統計の総数は約6000万人です。

 インドの人口は14億4000万人で1位に対し、ウマ娘は75万人。

 中国は14憶2500万人に対し、ウマ娘343万人。

 アメリカは3憶4000万に対し、ウマ娘1050万人。

 日本は1憶2000万人に対し、ウマ娘52万人。

 イギリスは約6800万人に対し、ウマ娘42万人。

 フランスは約6500万人に対し、ウマ娘37万人。

 余談としてモンゴルは349万人に対し、ウマ娘394万人です。

 番外としてウマ娘人口トップ2と3を紹介しておきましょう。メキシコとブラジルです。

 ウマ娘人口トップ3がアメリカ大陸なんですね。

 アメリカ大陸のトップ3を併せてのウマ娘合計数は総数の1/3となる約2000万人になります。

 

 先ほども言いましたように17世紀の大航海時代によってウマ娘がアメリカ大陸へ再上陸するまでの間は居なかったとされます。その後急速に増えて今では世界で最も多くなった理由はやはりアメリカの広大な土地が手つかずで残っていたことが挙がります。

 

 本題とは外れますが文化侵略と言えなくもないこの欧州勢によるアメリカ上陸の際に、連れてこられたウマ娘たちが先住民を手助けしたという話があります。

 当初、アメリカ大陸に存在する文化遺産や土地をウマ娘の競争力で奪おうとし、実際に成功していたのですが相手がヒトばかりで公平性に欠けるとして先住民に与するウマ娘が現れました。

 両者の代表がウマ娘になったことで勝負は一時拮抗していましたが、徐々にまた先住民側が押され始めます。その理由として有力なのが先住民側の食料生産能力がヒトしかいなかったため余剰があまりなかったことが挙げられます。

 ここで得られた教訓が、腹が減ってはレースで勝てぬなんですね。

 この後アメリカは急速に開発が進み広大な耕作地にウマ娘の活動範囲が合わさりそこから得られる生産力と、この時代からはウマ娘が誕生するようになって国力が跳ね上がりました。

 このあとはまぁ課税の苛烈さからイギリスからの独立を目論み、成功する流れとなります。

 

 授業時間も押してきてますので最後に皆さんが好きなレースのような話をしましょう。海外のレースと聞いて何を思い浮かべますか?

 

「海外のレース……フランスの凱旋門賞かアメリカのクラシック三冠レースではないかしら?」

 

 ミディアムウェーブの子から返答を聞きますが、話の流れ的にフランスの凱旋門賞の話ではありません。そしてアメリカのクラシックレースの話……でもありません。

 ヒントは人口がヒトよりウマ娘のほうが多いモンゴルの話です。はい、最も過酷と有名なエンデュランス競技のモンゴルダービー……でもありません。

 ここではナーダム祭の話をします。最初に言ったように海外のレースのような話です。

 補足ですがナーダムという言葉がモンゴル語でお祭りにあたりますがややこしいのでナーダム祭と表現するのが一般的ですね。

 

 ウマ娘のお祭りと走ることは密接な関係にあります。日本でも神メ駆だったり鎌倉時代から続くソウマノマオイだったりとウマ娘が神事として走るお祭りがあり、このような催しは外国でも見られる様式です。

 

 ナーダム祭はモンゴルのウマ娘によるお祭りで、相撲、弓術、駆け比べの3つで構成されていますが、その内容は国を挙げての競技大会みたいなものなんですね。

 

 今回は相撲と弓術は割愛して駆け比べについてのみに焦点を当てます。

 ナーダム祭の駆け比べに参加できるのは日本の小等部にあたる年齢からでして、小等部1年にあたるウマ娘は15km、2年は20km、3年は25km、4年は28km、それ以上の年齢は30kmと年齢があがるにつれて距離も伸びます。

 そして参加者はゴール地点に一度集合してスタッフが年齢を確認し、300~400人ずつスタート地点に移動してそこから再度駆け比べが始まるので実質2倍の距離を走るんですね。そのため無理をしてしまい途中でリタイアする子とかは残念ながらたびたび出てしまいます。

 

 ナーダム祭の駆け比べの全体ルールとして原則参加資格は特に設けてないこと、開始前のゴール地点からスタート地点へ移動するときはギンゴーというチベット仏教の歌を歌うこと、前を追い抜くときは左側から抜くこと、全レース5位まで入賞者として扱われることが制定されています。

 中でも最もハイライトされるのが小等部4年の28kmコースのもので、その1位だけは勝利が確定してすぐ特別に皆から胴上げをされるんですね。その時砂まみれであればあるほどその砂を払い終わるまで担がれ、胴上げをする者からはその砂を浴びる事でご利益があるとして有難がられます。その後表彰の際にモンゴルでも神メの称号と青または白色の絹織物が贈られます。

 

 ナーダム祭は競技性があり白熱する花形レースもあるものの、本質はお祭りなので怪我無く参加することに意義があります。そしてその前身の神事であるオボーのお祭りという土地神を祀る要素も受け継いでいるので、駆け比べに出て完走することが神様への奉納になるんですね。なので小等部を超えても参加して毎年走り続けるウマ娘もいるにはいますが、一説によると5位入賞者に振る舞われるバにゅ……牛乳の炭酸飲料のようなもの目当てに走る人もいるとかいないとか。

 

 

 さて、後半は駆け足になってしまいましたが今日はこんなところにしましょうか。自習で時間を潰してしまうよりかはマシな時間だったと思っていただければ幸いかと思います。

 

 日直に号令を促し、今回も早々に退散することにします。

 私の世界史が苦手な理由が実は2つありまして、得意でないことの他にウマ娘の昔話を始めると猫が私を見てくるんですね。中等部3年ということで3階の教室のはずなのに授業開始からベランダの手すりの上に猫が居ました。ええ、いつも見る奴です。灰色の毛並みで右だけ緑の眼をした子ですね。そしていつも授業が終わると目を離した隙に消えてるんですよね。

 今日もウマ娘による文明の話と北アメリカの絶滅の話と繁栄の話、バ乳酒のあたりで猫の瞳が輝いて見えて寒気を感じました。……もしかしたら風邪をひいたかもしれません。

 

 

 

 

 

 

「起立~。礼~。ありがとうございました~」

 

 スカイさんの号令で授業が終わり、見慣れない高等部の先生は足早に帰っていった。

 授業内容は前回の復習の範囲として一貫性があるような無いようなそれでいて早口で詰め込まれたという印象だったけど、ウマ娘はどこから来たのかという話は面白みがあったと思う。

 

「それでスカイさんは授業中何を見てらしたの?」

「えぇ~? ちゃんと黒板を見てましたよ~」

「ウソおっしゃいな。ベランダ見てたじゃない。つられて見たけど何もいなかったわよ」

「キングこそ何言ってるのさ。ちゃんと居ましたよ~ネコが。授業終わったらいなくなっちゃったけど~」

「もう、黒板見てないじゃないの」

 

 バレたか~と笑うスカイさんの言葉を否定するわけではないけれど外にネコが居たのは私には見えなかった。教室の窓はカーテンが束ねてこそあれど曇りガラスでも何でもないので何かいれば見えるに決まってるのに。

 

「でもあのネコどっかで見たことあるんだよね~。あ~三女神様の近くに居た子かな~」

 

 確かに三女神様の一人はよく猫と戯れていた印象があるわね。……まってスカイさん。三女神様はVRウマレーターの中の存在で、その中で見たってことは現実では他ネコの空似だと思うわ。

 

「うん多分そうだ。額の模様とか目の色とか覚えてるし~」

「そ、そうなのね……。まったくスカイさんの猫好きにも困ったものだわ……」

 

 一流のウマ娘は日常に忍び寄るホラーにも恐れない……私も気づかない振りをするからお願いだからスカイさんも気づかないで。

 

 

 

 

 

 

 寮の門限が迫っている中、私は自室で帰り際に配られたプリント用紙に向かっていました。

 いつものように廊下を軽やかに進む音でスズカさんが返ってきたことを把握します。

 

「あ、スズカさん。お帰りなさい」

「ええ、ただいま。スペちゃんは宿題?」

 

 机の上に置かれた用紙と鉛筆を持った私を見てスズカさんが訊ねます。

 

「いえ宿題じゃなくてですね、今日の授業のアンケートを書いてって帰り際に配られまして」

「授業のアンケート? ちょっと聞いたことないわね……」

「私も初めて見ました」

 

 おそらく授業が代理の先生だったからだと思いますと今日の出来事をスズカさんへ喋ります。

 

「それで何のアンケートなのかしら?」

「えっと、社会の授業でやった内容を簡単にまとめることと、それを聞いて何か思ったりしたことがあれば別途記入欄に書くことと、最後のは学園で野菜を育てるなら何がいいですか? って書いてありますね」

「社会で野菜の話でもしたのかしら?」

「えっとそんな話はしてなかったような? うん、農地がどうとか言ってた気がするけど野菜を育てるなんて話はなかったはず……でも育てるならニンジンがいいですよね」

 

 1番目は古代文明とウマ娘と書き、2番目には特になし、3番目ににんじんと書いて終わりです。

 アンケートを書く過程でノートを出してスズカさんと話します。古代文明と人口のくだりは興味薄げでしたがモンゴルのお祭りの話では逆に興味津々という感じになってしまい、

 

「そんな小さなころから思いっきり走れるところがあったのね。想像したらもう少し走りたくなったわ。スペちゃん、寝るときは窓のカギ開けといてね」

「ちょ、スズカさん! ダメですって! フジ先輩が来ちゃいますよ」

 

 再度ドアを開けて出ていこうとするスズカさんを止めます。しばらくすれば寮長が各部屋を回って確認するので今いなくなればどのみちバレます!

 

 

 

 翌日、朝のホームルームで集めるかと思っていたアンケートは登校してすぐに教室の教壇の上に置かれた箱に入れるよう誘導がありました。特に意識せず提出した後いつものメンバーで話をします。そして不可解なことが発覚しました。

 

「みんなはアンケートの育てたい野菜なんて書きました?」

 私の言葉に4人は怪訝な表情を浮かべます。

 

 え、3つ目に書いてありましたよね? 私はニンジンて書きましたけど?

 

 その言葉に3つ目なんてなかったというのがセイちゃん、エルちゃん、グラスちゃん。

 キングちゃんは話している間に顔色が悪くなってきたけど3つ目には、好きな猫は何ですか? と書いてあったそうです。

 




クラスメンバー(C組)(他の中等部3年生は別クラス)
エルコンドルパサー
キングヘイロー
グラスワンダー
スペシャルウィーク
セイウンスカイ
ツルマルツヨシ(保健室)


・スペシャルウィークの実家を紋別市と考えて2つ隣の市(だいたい230km超)としています
・最大走行可能距離はシーズン3の第4話から憶測で出しています
・ウマ娘の人口数は現実の飼養頭数の数値です。現実の馬の寿命を考えるとウマ娘世界では2~3倍いるのではと考えました
・現実のナーダム祭との違いがあります。ラダーン祭ではありません
・中等部3年=学園3階はオリジナル設定です(公式が判明次第修正予定箇所)
・三女神様周りはフィクションです。実在の人物及び団体名と一切関係はありません
・スズカさんのイメージに多大な影響を与えた二次小説がいくつかあります
・アンケートを集めた箱は三女神が責任をもって回収しました
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