鬼を斬る蝶と蝶を救う太陽   作:yuki_06090570

1 / 26
本編
竈門炭治郎と胡蝶しのぶの関係の始まり


最初は特別な感情などなかった。ただ、お友達二人がカナヲとの実力差で心を折っても努力し続け、強くなろうとしているところに興味を持っただけだった。

いや、もう一つあった。彼になら私の…私の姉の夢を叶えてくれるのではないかと思った。

 

 

「…怒ってますか?」

 

あまりに衝撃的過ぎて張り付けていた笑顔が崩れた。

以前の私を知らない人で、本当の私を見つけてくれたのは炭治郎くんが初めてだったから。

 

「…そうですね…私はいつも怒っているかもしれません…」

 

私は自分の想いを、亡き姉の夢を話した。話したというより、ほとんど独り言に近かったかもしれない。しかし炭治郎くんは私の独り言を真摯に聴いてくれた。そのおかげで、溜め込んできた『疲労』が少し薄れた。

 

立ち上がり、屋内に戻ろうとしたとき、

 

「…あの、胡蝶さん。」

 

「…しのぶで構いませんよ、炭治郎くん。」

 

「あ、はい…しのぶさんさえ良ければ…今後も俺と話をしてくれませんか…?」

 

そう言われたとき、最初は疑った。この人も下心から近づこうとしているのかと。しかし、雰囲気からそうではないということが…むしろ、私のことを心底心配してくれているのだということが分かった。

 

「…勿論です、私からもよろしくお願いします。…それでは、また明日…」

 

「はい、おやすみなさい。」

 

今後も話をする約束をして、私は部屋に戻った。

 

「…炭治郎くん、か…」

 

炭治郎くんと禰豆子さんの存在は、この現状を大きく変えるきっかけなのかもしれない。二人には頑張ってほしい。二人が強くなればなる程、組織内での言葉の重みは変わり、さらに鬼舞辻無惨に近づくことができるだろう。

 

 

翌日以降、昼間はお互いのやるべき事、炭治郎くんは『機能回復訓練と基礎体力向上』に励み、私は『任務で負傷した隊士の診察と治療、継子であるカナヲへの稽古』をおこなう。

そして時間のある夜に、炭治郎くんと話をするようになった。強くなるための助言だけでなく、今までの暮らしや鬼殺隊に入ってからの暮らしなど、さまざまな話を。

 

「そういえば那田蜘蛛山で少し見ましたが…しのぶさんの刀は普通の日輪刀と違うみたいですけど、どういう刀なんでしょうか。」

 

炭治郎くんは、ふと思い出したように聞いてきた。

 

「刀ですか?私の刀は突きに特化していて、藤の花の毒を仕込むことができるんですよ。肝心の毒は鞘で調合するんですけどね。」

 

そう言って、日輪刀を見せた。何度見ても不思議な刀だ。先端以外の刀身には刃と呼べるような部分が全くない。かろうじて『惡鬼滅殺』の文字の部分だけは刃が残っている。

 

「毒…ですか。頸は斬らないんですか?」

 

「私は他の隊士より小柄ですので、腕の力が弱くて鬼の頸は斬れないんです。」

 

勿論、刀は腕だけで振るものではないが、最低限の腕の力は必要になる。しかし私はその最低限すら持ち合わせていない。その代わりに押し込む力は強いけれど。

 

「そうなんですね。…もし鬼が毒に耐性があった場合はどうするんですか…?」

 

「その場合は効くまで戦い続けるか、逃げるか、死ぬかのどれかですね。」

 

申し訳無さそうに聞いてくる炭治郎くんに対して、私は冷静にそう返答した。

今まで毒に耐性をもつ鬼を見たことはないが、上弦の鬼ともなれば簡単な毒は分析・分解されてしまうかもしれない。

 

「頸を斬れない自分が嫌になるときもありました。…いえ、今もまだ…。頸を斬ることが出来たらどれだけ楽かと…

ですが、姉の仇を討つためには手段を選んではいられないんです…」

 

「しのぶさん…」

 

炭治郎くんは少し悲しい顔で何かを言いたそうにしつつも、かける言葉が見つからなかったのか、何も言わなかった。

 

「ゆっくり話してしまいましたね。明日のためにも今日は終わりにしましょうか。」

 

少し重い雰囲気になってしまい、いたたまれなくなってしまったので足早に自室に戻り、眠りに入った。炭治郎くんと話した日は深く眠れていたのだけど、今夜の眠りは少し浅かった。

 

 

翌日は新たに負傷した隊士があまり居なかったため、偶にはゆっくり陽の光に当たって体を休めようと思い、外に出ると、

 

「殺してやるぅぅぅう!」

「すみません!すみません!」

 

炭治郎くんが、包丁を振り回している刀鍛冶師に追いかけ回されていた。

 


 

鋼鐵塚さんに追いかけ回された後、鉄穴森さんと伊之助のほうでも問題が発生してしまった。

 

「ふん!ふん!ふん!ふん!」ガッガッガッガッ

「よし…」

 

とんでもないことに、伊之助が刀を石で叩き削り始めた。

 

「ぶっ殺してやるこの糞餓鬼!!われおら!なに晒とんじゃいこら!!」

 

鉄穴森さんは、鋼鐵塚さんと同じかそれ以上に激怒していた。

 

「すみません!鉄穴森さん!落ち着いてぇ!抑えて!」

 

ちなみにこの間、鋼鐵塚さんは全くの無反応だった。自分の打った刀以外にはまるで興味がないようだ。

 

ひとまず鉄穴森さんを落ち着かせるために、伊之助と距離を取ってもらった。

 

「鉄穴森さん。少し相談があるんですけど…大丈夫ですか?」

 

「ふぅー…ふぅ…かまいませんよ…」

 

落ち着くために、ものすごい深呼吸をしているが、小声で「あんの糞餓鬼が…」と呟いていた。

温厚な人が怒るととても怖いことがよく分かった。

 

「ほんとにすみません…実は…

 


 

炭治郎くんたちが部屋に入っていってから、またまた刀鍛治の怒号が聞こえてきた。先程の人とは違う声、口調だったので、恐らく伊之助くんが何かとんでもないことをしてしまったのだろう。

 

などと思いながら休憩を終え、研究部屋に戻る最中、

 

「あっ、いたいた!しのぶさん!」

 

炭治郎くんに呼び止められた。

 

「どうかしましたか?炭治郎くん。」

 

「ちょっと来てもらっていいですか?」

 

追いかけ回されていた時とは違う、いつもの元気そうな顔をしていた。しかし、理由は特に話してくれなかった。何か見せたいものでもあるのだろうか。

 

「?わかりました。」

 

何がなんだか分からないので、ひとまず付いていくことにしたところ、

 

「こんにちは。胡蝶しのぶさんですね。私は鉄穴森と申します。」

 

「えっと…はい、胡蝶しのぶです。こんにちは。」

 

恐らく先程の怒号を飛ばしていた人だろう。伊之助くんはこの穏やかな雰囲気の人を一体どう怒らせたのだろうか。

 

「私になにか御用でしょうか?」

 

「炭治郎くんから少し話を伺いましてね、鬼の頸を斬れないことを悩んでいらっしゃると。それで一つ話があるのですが、里にかなり特殊な刀を打つ刀鍛冶が居るのです。その刀鍛冶の打った刀であれば鬼の頸を斬ることが出来るかもしれません。」

 

「私が…鬼の頸を斬れる?」

 

想定していなかったことだったので頭に?が出てきた。

炭治郎くんは何も言わず、ニコニコしていた。

 

「はい。しかし、貴女がいま御使用になられている刀や、従来の刀とはかなり変わったものになりますので、その刀を選ばれるかどうかは貴女次第なのですが…」

 

今の刀もかなり変わっているとは思うが…ひとまずそれは置いておいて、

 

「どのような刀なのでしょう?」

 

少し、いやかなり期待してしまい、若干食い入るように聞いてしまった。

鉄穴森さんはそれを特に気にせず続けた。

 

「実物を見ていただいた方がより分かりやすいとは思いますが、現在持ち合わせていないので、私の知る限りの特徴をお伝えしますね。」

 

鉄穴森さんはその新しい刀の特徴をいくつか話してくれた。

 

一つ、従来の刀より厚みがなく極薄で、その分刀自体の重量も減少している。

二つ、包丁のように押し斬り、引き斬りをする事でよく斬れるようになる。

 

とのことだった。

 

「なるほど…押して、引いて斬るわけですから本来の刀よりは腕の力が不要ということですね。」

 

話を聞いて少々興味を持ったことが分かったのか、

 

「もし興味がおありでしたら、里の『鉄原』という者をお尋ねください。」

 

面をしているため、顔は分からないが、おそらく優しい顔をしていただろう。

 

「ありがとうございます。時間に余裕ができたら伺います。」

 

「はい。それでは失礼いたします。」

 

そう言って鉄穴森さんは、待っていたもう一人の鍛冶師と共に里へと帰っていった。

「刀折りやがって…」「二度と作ってやるか…あの糞餓鬼が…」と、お二人とも若干不機嫌だったけれど…

 

 

「…ありがとうございます、炭治郎くん。私のためにわざわざ相談してくださって。」

 

「いえ、これくらいは。禰豆子を保護してくださってますし、俺の修行のために時間を取っていただいてますし!」

 

にこにこした笑顔でそう言った。穢れが全く無く、太陽のような明るい笑顔だ。

その笑顔のおかげで、体の内側にこびりついた怒りが少し消えたような気がした。

 

「あっそうだ。しのぶさん、今日は時間空いてますか?聞きたいことがあるんですけど…」

 

「今日は隊士の数も少ないですし、時間は空いていますよ。診察のときに聞きましょうか。」

 

「はい!ありがとうございます。」

 

 

その後、診察が終わり、

炭治郎くんが聞きたかったことは

 

「ヒノカミ神楽って聞いたことありますか?」

 

「ありません。」

 

「えっ!じゃあ火の呼吸とかは!?」

 

「聞いたことありませんね。」

 

「実は…俺の子供の頃の話になるんですが…」

 

炭治郎くんが那谷蜘蛛山で使った呼吸に関しての話と、幼少期の話だった。

病弱だった父親が、神楽を一夜舞い続けることができたこと。そしてその神楽を戦いに応用することができたこと。その神楽は『ヒノカミ神楽』というらしい。

 

「なるほど…しかし、炎の呼吸はあっても火の呼吸ではないと言われています。」

 

「同じではないんですか?」

 

「私も仔細は分からなくて、ただそのあたりの呼び方について厳しいようなのです。炎の呼吸を火の呼吸と呼んではならないと……

炎ではなく火の呼吸、火……ひ……日?」

 

火と日、呼び方は同じでも全くの別物…

そういえば…

 

「どうかされました?」

 

「…炭治郎くんのその耳飾りは誰かから頂いた物ですか?」

 

「?はい。父から受け継いだものです。ヒノカミ神楽とこの耳飾りは子供に継承してくれと言われて…それがどうかしたんですか?」

 

質問の意図が分からなかったのか、首を傾げていた。

 

「…思ったのですが、『ひ』の字は火ではなくて日なのかもしれませんね。その耳飾りも『陽の光が地表を照らしている』ようにみえますし。」

 

私は紙に『火』と『日』を書きながら、耳飾りの話もした。恐らく、『炎の呼吸』を『火の呼吸』と呼んではならない理由と関係あるのだろう。

 

「言われてみると、確かにそう見えますね。なるほど、火ではなく日ですか…」

 

「今の私に分かることはその程度ですね。他の柱の方、炎柱の煉獄さんなら何かご存知かもしれませんね。今は任務に出ていますが。

一応こちらでも調べておきます。何か分かり次第情報共有しますね。」

 

「分かりました。ありがとうございました。」

 

そう言って炭治郎くんは、また鍛練に戻っていった。

私は、お館様に炭治郎くんを煉獄さんの任務への同行の許可をいただくため、産屋敷邸に赴いた。

 

 

次の日、私の進言により、炭治郎くんと禰豆子さん、善逸くん、伊之助くんは煉獄さんの任務と同行することとなった。

 

私は隊士の診察の傍ら、日の呼吸について考えていた。

 

(日の呼吸、太陽の呼吸…名前の通りなら鬼に対して一番強い呼吸の可能性がある。

お館様曰く、鬼舞辻は炭治郎くんに向けて鬼を放っているらしい。鬼舞辻が炭治郎くんに向けて鬼を放っている理由は、炭治郎くんが日の呼吸の使い手だから…?

そして炭治郎くんの刀は黒色だった。日の呼吸に適性がある者は刀の色が黒くなるのかもしれない。黒刀の剣士が出世できないと言われるのは、鬼舞辻が日の呼吸の剣士を優先的に始末しているからなのか…)

 

「もしそうであれば、鬼舞辻に近づくことだけでなく、倒すことでも炭治郎くんが要になりそうですね…」

 

私にとってはそれよりも、鬼の頸を斬ることが出来るかもしれないということの方が、今は重要だ。もしそれが叶うのなら、姉さんの仇敵を倒せる可能性が上昇することになる。

 

「にしても…那谷蜘蛛山で負傷した隊士が多すぎて、里に伺いに行く暇がありませんね…」




ハーメルン初投稿です。

炭治郎としのぶが恋仲になるまではある程度サクサク進める予定です。
原作とはかなり乖離すると思われるので、苦手な方はご注意ください。
何となくで書いていたものを載せているので、文才はお察しください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。