鬼を斬る蝶と蝶を救う太陽   作:yuki_06090570

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閑話:栗花落カナヲ、我妻善逸の柱稽古

柱稽古が始まり、最初の稽古である元音柱様の稽古場に来ていた。正直なところ元音柱様のことは怖い。だってアオイを連れて行こうとしたから。

 

「よ、よろしくお願いします…」

 

「おう、胡蝶の継子だな。栗花落だったか。その節はすまなかったな。」

 

詳しく話を聞くと、遊郭に潜入していた奥様からの定期連絡が途絶えたので、女性隊士を必要としていたようだ。そうだったとしても連れていく方法が強引過ぎたとは思うのだけれど。

…というか、炭治郎たちは女性のふりして遊郭に潜入したということに…

 

「俺の稽古は基礎体力向上だが、お前は十分あるだろ。一通り手早くこなして次に行きな。」

 

「はい。」

 

稽古内容を手早く終わらし、実戦形式の稽古もおこない、次の稽古へと向かった。

 

 

二番目の稽古は、霞柱様の高速移動訓練。霞柱様とはそこまで接点はないけれど、師範から聞いたところ、刀鍛冶の里の一件で記憶を取り戻したらしい。

 

「やあ、君は胡蝶さんのところの人だね。」

 

「はい、栗花落カナヲと言います。」

 

「そっか。よろしく、カナヲさん。でもまあ、僕から教えることは(ほとん)どないだろうけど。」

 

師範から私のことは聞いているらしく、目が良いということもご存じのようだ。

 

「…そうだなぁ。実戦形式で稽古をしようか!」

 

「はっ、はい、よろしくお願いします。」

 

霞柱様の足運びはかなり特殊で、一瞬目の前から消えたように見える。とはいっても、慣れれば目で追うことはできる。

 

「ほんとに目が良いんだね。想像以上だよ!」

 

稽古とはいえ、戦闘の合間でも普段通りの会話をしていて、実力の差というか自分の余裕の無さを感じる。二ヵ月で柱に上り詰めた凄さを改めて実感した。

 

「うん!僕から言うことは何もないから、次の稽古に行って良いよ!」

 

「ありがとうございました。」

 

暫く打ち合って、合格を貰った。

 

 

三番目の稽古は、恋柱様の柔軟体操。恋柱様とは蝶屋敷に来る度にお話をしているので、それなりに交流を深めている。

 

「いらっしゃい、カナヲちゃん!」

 

「こんにちは、恋柱様。」

 

「もう!蜜璃って呼んでよね!」

 

「あ、すみません蜜璃さん。つい癖で…」

 

実は少し前に呼び方を変えて欲しいと言われていた。鬼殺隊にはどうしても女性が少ないので、上下関係よりも友人として接して欲しいのだと。

 

「今度は最初から蜜璃って呼んでね!えへへ!」

 

蜜璃さんとは稽古というよりも、お茶する時間の方が長かった。ここ数日は話をする時間がなかったので会話はかなり盛り上がった。

 

「いっぱい話せて楽しかったよ!じゃあね!」

 

「ありがとうございました、蜜璃さん。また時間ができたらご一緒に。」

 

お互い笑って手を振り、次の稽古へと向かった。

 

 

四番目の稽古は蛇柱様の太刀筋矯正訓練。蛇柱様とは直接会ったことはないけれど、蜜璃さんの話でおおよその人物像は分かる。

 

「…よく来たな、胡蝶の弟子。栗花落カナヲだったな。」

 

「はい。」

 

「お前のことは甘露寺から少し聞いている。…まずはお前太刀筋を見る。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

太刀筋矯正。部屋には二本一組の木材が縦横斜めに配置されていて、この木材と木材の間に刀を真っ直ぐ通すだけの単純な訓練。

 

「よし、太刀筋は問題ないな。では俺と戦ってもらう。」

 

「はい。」

 

戦闘開始直後、蛇柱様の不思議な太刀筋がやってきた。とっさに回避したけれど、少し掠ってしまった。しかし初撃で把握し、二撃目からは回避できるようになった。

 

「初撃は掠ったが、二撃目で対応するか…いい目を持っているな。」

 

分かったことは、蛇柱様の太刀筋は特殊で、蛇の如くうねる。関節が常人よりも柔らかいのだろう。どんな隙間からでも攻撃が飛んでくる。

 

「よし、次の不死川の稽古に行くといい。」

 

「ありがとうございました。」

 

十数回打ち合い、問題なしと判断された。

 

 

五番目の稽古は風柱様の無限打ち込み稽古。風柱様は師範をよく気に掛けているので、人柄は少し知っている。

 

「よォ。やはりお前が一番最初に来たか。」

 

どうやら私が最初に来ることは何となく分かっていたらしい。今の世代で継子は私と炭治郎の二人。その炭治郎は現在治療中なので、私だけということになる。

 

「俺の稽古は単純だ。俺が合格を出すまで斬りかかって来い。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

打ち合って分かったことは、風柱様は柱の中でも上位に入る実力を持っている。風の呼吸の特性を最大限利用していて、中々隙が無い。

 

「良い動きだァ!だが防戦一方だな、どうにかして一撃入れてみなァ!」

 

「っ!」

 

暫く撃ち合い、見つけたほんの少しの隙を突いて一撃入れることができた。それを何度か繰り返し、

 

「…よし、いいぜ。悲鳴嶼さんの稽古に向かいなァ。」

 

「ありがとうございました。」

 

合格を貰うことができた。

 

 

六番目の稽古は岩柱様の筋肉強化。岩柱様のことは師範の恩人だということくらいしか知らない。何でも、幼少期に鬼に襲われていたところを岩柱様に救われたのだとか。

 

「ようこそ…わが修行場へ。なんとも早い到着だ…素晴らしい。」

 

「えっと…ありがとうございます。稽古よろしくお願いします。」

 

「うむ。私の稽古は皆同じ内容となる。まず滝に打たれ、次に丸太三本を持ち上げる。最後に大岩を押して一町先まで運ぶこと。」

 

滝行と丸太担ぎはなんとか突破できた。しかし大岩というのがかなり難関で、動かすのにそうとう難儀した。岩柱様が岩を押して運んでいるのを見て、体をどう使えば良いかを学び、真似することで少しずつ動かすことができるようになった。

 

「…よくやった。私の稽古はこれで終了だ。」

 

「…はあ…ありがとうございました。」

 

息を上げながら感謝を述べ、蝶屋敷へと戻った。

 


 

炭治郎と伊之助が大岩を動かし始めたとき、チュン太郎から手紙を受け取った。

 

「…そうか。届けてくれてありがとう、チュン太郎。」

 

手紙を読み、やるべきこと、やらなくちゃいけないことがはっきりした。

手紙を受け取ってからは意識を変え、稽古に全力を出す。とはいえ、大岩を動かすということに変わりはない。

 

炭治郎が岩を動かした二日後、俺も一町動かし終わることができた。

 

「我妻隊士。よくぞ大岩を動かし終えた。」

 

どうやら陰から見ていたようで、動かし終えたところで悲鳴嶼さんが俺の所に来た。

 

「…此処に来た時と随分変わったようだが、何かあったのだろうか?」

 

俺は届いた手紙について話した。すると悲鳴嶼さんは驚愕していた。どうやら悲鳴嶼さんも無関係という訳ではないらしい。

 

「でも…これは俺がやらなくちゃいけないことなんです。」

 

「…そうか。ならば君に任せるとしよう…私の稽古はこれにて終了だ。よく頑張ったな。」

 

「…ありがとうございました。」

 

悲鳴嶼さんの稽古が終わり、早々に冨岡さんの所へと向かった。

 

 

到着すると、冨岡さん、伊黒さんと不死川さん、時透さんが二対二で手合わせしていた。

珍しい組み合わせだ。水の呼吸とその派生である蛇の呼吸、風の呼吸とその派生である霞の呼吸ということなのだろうか。

 

「ん?我妻か。ここに来たってことは、悲鳴嶼さんの稽古は終わったってことだな。」

 

手合わせ中に不死川さんが俺に気づいた。

 

「はい。なんとか動かし終えました。」

 

「…何かあったのかァ。」

 

一週間前と雰囲気が変わったからだろう。不死川さんだけでなく、他の三人も心配そうに俺を見ていた。

悲鳴嶼さんに説明したことを四人に話した。

 

「…そうかァ。」

 

「あいつの頸は俺自身の手で取りたいんです。いえ、取らなきゃ駄目なんです。上弦はまだ三体残っていますし、人員をこちらに割く訳にはいかない。

でも俺は壱ノ型しか使えない。それで――」

 

今の俺にできることで、あいつに止めを刺すにはこれしかない。それを不死川さんに話した。

 

「…分かった。オメェの実力は申し分ねぇ。完成さえすれば頸を斬れるだろうよ。

で、俺たちにもう一度稽古をつけて欲しいって訳だな。」

 

「はい、時間があればで良いんですが。」

 

「良いぜ。お前らも良いだろォ」

 

冨岡さん、伊黒さん、時透さんも頷いていた。

 

その日は昼過ぎまで四人に稽古をつけてもらい、以降は冨岡さんと手合わせすることとなった。




【あとがき】

義勇が柱稽古に参加するという知らせは、カナヲが稽古終了した時点では届いていないので行冥の稽古で終了しています。

善逸が大岩を動かせているのは、炭治郎と一緒にしのぶの継子稽古に参加する機会が多かったからという理由です。

かまぼこ隊はしのぶの稽古のおかげで原作よりも実力が高くなっています。稽古が原作よりも早く進んでいるのはそういう理由があるからです。

ちなみに、柱の義勇に対する誤解は解けています。


伊之助と玄弥はいまいち思いつかなかったのでありません。メインは炭しのですからご了承ください。
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