前日各柱に飛ばした手紙の返事を持った鴉がその翌日にやってきた。各々が何処で柱同士の稽古をしているか、もしくは蝶屋敷に出向く日付が書かれていた。
同日、炭治郎くんとカナヲを中庭に呼び、悲鳴嶼さんの稽古を突破した二人に追加の鍛練をさせることになった。とは言っても、大まかな内容は実戦形式で戦うだけの単純なもの。要は柱同士の稽古と同じだ。
「まずは昨日言った通り、日の呼吸を繋げられるだけ繋げてみましょうか。」
「はい!」
炭治郎くんは木刀を持ち、日の呼吸の構えをとる。
「いきます…!」
前日、紙に記した順に技を繰り出す。
円舞
碧羅の天
烈日紅鏡
灼骨炎陽
陽華突
日暈の龍・頭舞い
と、六つの型を出したところで限界を迎えた。
「…はぁ、はぁ…」
肺や心臓に痛みが生じるらしく、胸を押さえていた。
「炭治郎!?」「大丈夫ですか?」
私は駆け寄り、少しでも落ち着くように背中を擦った。痛みは引いていないだろうけど、ほんの少しは楽になったみたいだ。
「…はい…今は…六つが限界…みたいです…」
炭治郎くんは息を切らしながらそう答えた。以前までは連続で出すことすら儘ならない状況だったので、六つ繋げられたのは凄い成長だろう。
「…技を出すだけでこんなことに…」
カナヲは炭治郎くんの状態を見て少し怯えていた。
「それだけ強力な呼吸法なのでしょう。」
聞くところによると、日の呼吸で斬ると鬼の再生が少し遅れるらしく、他の呼吸にはない特徴だ。適性があったとしても完璧な動きをしなければ、体が追い付かないのだろう。
暫くして、炭治郎くんは痛みが引いたようでゆっくり立ち上がった。
「もう大丈夫です。ありがとうございます。」
「さて、炭治郎くんも問題ないようですし、これから二人で実戦形式で戦っていただきます。意識して欲しいのは『呼吸』と『動作』です。とくに動作の方を重点的に意識してください。技の精度を上げることが目的ですから、呼吸主体で戦ってください。」
呼吸については『全集中の呼吸』だと思われる。二人とも常中ができているので、そこまで気にする必要はないだろう。
肝心なのは動作。無駄な動作を全て削ぎ落とし、完璧な正しい動きをする。無駄な動作というのは、存外自分でも気がつかないものだ。お互いに打ち合うことで自身と相手の無駄な動きを見つけ、それを一つずつ消していく。そうすれば技を含めた動きの精度を効率よく上げられるだろう。
「呼吸と動作ということは…」
「そうです。この稽古では、先日話した『透き通る世界』というものを会得するのが目的です。」
透き通る世界。炭治郎くんのお父さんが言うには無駄な動きを削ぎ落とし「正しい呼吸と正しい動き」をすることで、最小限の力で最大限の力を引き出すことができる。そうなったとき、無駄な思考も削がれ、頭の中が透明になり、やがて肉体が透けて視えるようになる。
相手の肺、血管、筋肉などの動きを見れば、何処を狙ってくるのかを先読みできるようになる。ということらしい。
炭治郎くんは上弦の肆との戦いで、一瞬『透き通る世界』に入り込んだそうだ。本体の居場所を探るときにその感覚だけに集中したことで、肉体が透けて視えたとのこと。
「『力の限り足搔いて苦しんだからこそ届く領域』とのことですから、会得するには血の滲む努力が必要となるでしょう。私の知る限りでは柱の中にも会得している人はいません。ですが二人なら会得できると私は思うのです。二人には刀の才覚がありますから。」
「しのぶさん…」「師範…」
恐らく、私に才覚がないということを認めたくないのだろう。しかし最近まで頸すら斬ることができなかった私には才覚なんてものはない。姉もそれを分かっていたから、鬼狩りを辞めて普通に生きて欲しいと最期に言ったのだ。
「ということで、目標は『透き通る世界』を会得すること。私の稽古はこれだけです。」
「一ヶ月以上稽古できていませんから、まずは呼吸を使わずに今の実力を見せてください。」
数回打ち合って二人の実力を確認すると、想像以上に強くなっていた。
カナヲは痣が発現すれば私と同じかそれ以上の実力を持つはずだ。できれば痣は出してほしくないけれど。
炭治郎くんは日の呼吸をしっかり扱えるようになれば柱に匹敵する実力になる。
「カナヲ…」「…うん」
「どうかしましたか?」
「…しのぶさんの方がまだまだ強いじゃないですか。俺結構本気でやったんですけど…」
「師範…自己評価低いですよ…」
私の実力が二人より上回っていたので、そう思ったのだろう。正直自分でも自分の実力に驚いた。
そしてカナヲも以前までならこういったことは言わなかっただろう。炭治郎くんと一緒に稽古をしたことで、カナヲも変わっていったようで嬉しい。
「ん〜…呼吸が変わったからでしょうか。以前より動きやすい気がします。」
こうなると稽古を少し変えても良いかもしれない。
「少し稽古方法変えましょう。炭治郎くんとカナヲは協力して私に斬り掛かってきてください。先程の稽古内容に加えて、仲間との連携力を上げましょう。同士討ちに気をつけてくださいよ。」
こうすれば私も二人の稽古をしつつ私の稽古にもなって、『透き通る世界』の会得に近づけるかもしれない。
「「はい。」」
炭治郎くんとカナヲは当然ながら同時に稽古する機会も多かったので、ある程度息は合わせられる。しかし今回は呼吸、動作を意識しながら戦わなければならない上、二人の呼吸は違う呼吸なので、息を合わせるのは中々難しいだろう。
木刀を構え、本格的な稽古を開始する。
「そちらからどうぞ。」
「はい!」
-日の呼吸
-花の呼吸 参ノ型
左右から同時に斬り込む二人に
-雪の呼吸 弐ノ型
素早く木刀を振り、二人の斬撃の軌道を弾いてずらす。
二人とも、呼吸を使った攻撃も以前より鋭くなっていた。
-雪の呼吸 参ノ型
隙の生まれた二人に斬り込むと
-日の呼吸
炭治郎くんは体を捻って回避、カナヲは持ち前の目の良さで躱した。
-日の呼吸
-花の呼吸 伍ノ型
炭治郎くんは死角から、カナヲは炭治郎くんに当たらないところから九連撃を放つ。
上手く動きを合わせて同士討ちを避けられている。
-雪の呼吸 肆ノ型
少し跳躍して体を捻じり、全方位に斬撃を放って全ての攻撃を防御する。
-日の呼吸
跳んだところに炭治郎くんは突き技を打つ。
突きの木刀の側面に打ち込んで軌道をずらして接触を防ぎつつ着地する。
-花の呼吸 弐ノ型
-日の呼吸
着地直後の隙を狙って二人とも技を放ってくる。
爪先が地面に着いた瞬間に後方に跳んで回避し、
-雪の呼吸 壱ノ型
接触させるつもりで横切ると同時に突きを放つ。
-日の呼吸
-花の呼吸 弐ノ型
炭治郎くんは自身の周囲を防御する。カナヲは自身に接触する突きを見極めて木刀で受ける。
そして、ここで日の呼吸が六つ繋がった。次が出せるかどうかを見るため、炭治郎くんに軽めの突きを出す。
カナヲも数えていたようで、私の意図を汲んで一旦技を止めた。
-日の呼吸
跳躍して体を反転させ、突きを回避する。
「七つ、繋げられましたね。そのまま繋げられそうなら続けて。」
距離を取って八つ目が出せるかどうかを見る。
-日の呼吸
少しきつそうにしながら、離れた私に向かって距離を詰め、斬りかかる。私はそれを木刀で受けて、余分な負荷がかからないようにする。
八つ目の型を繋げたところで限界を迎えたようで、日の呼吸が途切れた。
「ぅ…はぁ…はぁ…」
「お疲れ様です。よく頑張りましたね。」
その場で蹲った炭治郎くんに近づいて、毎度の如く気持ち程度でも痛みを和らぐように背中を擦る。
少し落ち着いたところで、カナヲにも手伝ってもらって炭治郎くんを縁側の方に移動させた。
「ふぅ…」
「八つ、繋がりましたね。」
「…体温と心拍数が上がった状態だと、いつもより繋げられるみたいです。」
炭治郎くんがきよに頼み込んで、熱が三十八度ある状態で鍛練していたことがあった。そのときも似たようなことを言っていた。
「痣を出した状態だと扱いやすいということですか。」
始まりの呼吸の剣士は生まれつき額に痣があったと、あまね様は仰っていた。痣があることが前提で作られた剣技だから、生まれついての痣者ではない炭治郎くんは適性があっても完全に使いこなすことはできないのだろう。
「とりあえず、炭治郎くんは少し休憩しててください。カナヲは私と稽古を再開しましょうか。」
それからはカナヲとの稽古を続け、回復した炭治郎くんもその後参加し、また休憩という流れを何度か繰り返した。
互いに気づいた相手の無駄な動作を適宜指摘しながら木刀の打ち合いをする。
指摘された場所、自分で気づいた場所を意識して修正し、技の精度を上げていく。
そして夕方頃、今日の稽古を終了して体を休めていた。
「…少しずつ慣れてきました。」
あれから炭治郎くんは、何度も何度も繰り返し型を繋げる練習をしたことで、十個の型まで繋げることができた。
「私も、以前より長く動けるようになりました。」
二人とも動きの無駄を少しずつ減らしていくことが出来たようで、稽古開始時より体力が長続きしていた。カナヲに至っては昼食、水分補給、
「カナヲも炭治郎くんも初日からよく頑張りましたね。明日もありますから、今日は体を休めてください。」
それから同様の稽古を数日間続けたことで、技の精度が稽古開始時より格段に上昇し、それに付随して体力も向上した。厳密には向上したわけではなく、無駄に体力を消費しない動きが出来るようになってきている。
稽古開始から数日後の夕方、
「今日もお疲れさまでした。」
「「はい。」」
「しのぶさん、この後何か予定はありますか?」
カナヲも炭治郎くんも体力はまだ残っているようで、もう少し鍛錬を続けるつもりのようだ。
「今日は不死川さんと伊黒さんが此処に稽古をしに来て下さるので夜はお二方と柱同士の稽古の予定です。」
不死川さんは柱の中でも上位の実力を持ち、伊黒さんは私と同じく小柄なので、お二人から学べることは多い。そして風の呼吸、水の呼吸の派生である蛇の呼吸。私の今の呼吸とも似通っている。
「…見学させていただいてもいいですか?」
「私も構いませんか?」
炭治郎くんとカナヲは少し悩んで言った。他人の戦い方を見て学ぶのも大事だと思ったのだろう。
「勿論、構いませんよ。」
許可すると、二人顔を合わせて「やった!」と言わんばかりの握り拳を作っていた。
二人の顔を見ると、相性が良さそうに感じた。もし私が居なかったら二人は恋仲になっていたかもしれないと、不意に思ってしまった。
その日の夜、
「邪魔するぜェ」「同じく失礼するぞ。」
「こんばんは、不死川さん、伊黒さん。」
蝶屋敷に不死川さんと伊黒さんが来た。お二人は気が合うようで、他の柱より頻繁に稽古をしているらしい。
「早速だが、稽古は中庭でやるってことで良いんだよな?」
「はい。こちらへどうぞ。」
時間が勿体ないので早速始める流れになった。
「ん?あれは…竈門と栗花落か?」
中庭では縁側に炭治郎くんとカナヲが座って待っていた。二人は私たちに気づき、近寄ってきた。
「ご無沙汰しております。しのぶさんからは許可を貰ったんですが、皆さんの稽古を見学させていただいても良いでしょうか?」
炭治郎くんは丁寧に見学の許可を貰うために聞いた。カナヲはそれに合わせて頭を下げた。
「…いいぜ、存分に見て盗め。伊黒ォ、それで良いだろ?」
「ああ…構わないが、見学するからには必ず役立てろ。」
「「はい!ありがとうございます!」」
二人は許可を貰えて、嬉しかったようで感謝の意味でまた頭を下げた。
「それで、組分けはどうする。三つ巴か。それとも二対一か。」
「今の呼吸がどれほどか確認したいので二対一で、私が一の方をします。」
伊黒さんに聞かれて私は二対一で、一の方を選んだ。
炭治郎くんとカナヲを相手にした時は攻守ともに問題なかったので、相手が変わるとどうなるかを確認しておきたかった。
お二人を相手取るのはとんでもなく厳しいことだろうけど、その逆境を利用すれば『透き通る世界』を会得できるかもしれない。
「分かった。ただし手加減はしないぞ。」
「勿論です。では、始めましょう。」
「あァ、いくぜェ!」
柱同士の稽古は単なる打ち合い稽古ではなく、呼吸を使った技を出し合ったりしている。要は今日おこなった稽古と似たようなものだ。
-風の呼吸 弐ノ型
-雪の呼吸 弐ノ型
不死川さんとしのぶさんはお互いに風の刃を飛ばして相殺する。
-蛇の呼吸 壱ノ型
伊黒さんは予測不能の斬撃を繰り出す。
-雪の呼吸 肆ノ型
しのぶさんは全方位に攻撃して予測不能の斬撃を防ぐ。
-雪の呼吸 壱ノ型
不死川さんに接近し、木刀を振る。
不死川さんは跳んで回避し、
-風の呼吸 漆ノ型
-蛇の呼吸 肆ノ型
しのぶさんに上空から反撃する。それに合わせて伊黒さんは左右両側から斬り込む。
-雪の呼吸 伍ノ型
六連撃の突きを、左右の伊黒さんの攻撃に二回ずつ、不死川さんの攻撃に二回で防ぐ。伊黒さんの攻撃は捌き切れたが、不死川さんの攻撃を捌くには不十分だったようで、少し攻撃に当たっていた。
若干しのぶさんが劣勢気味ではあるが、一進一退の攻防を繰り広げていた。
稽古前の俺だったら、この戦いを目で追えないであろう程に高次元の戦いだった。
「これが、柱同士の稽古か…」
「…うん…凄い…」
俺とカナヲは、三人の柱の戦いに目が離せなかった。
-風の呼吸 壱ノ型
二対一で一時間近く戦っていた。人数不利と力の差でかなり体力を削られている。しかしお二人は宣言通り手加減は全くしないので攻撃に対応しなければならない。私は息を整え、動作一つ一つに集中した。その一瞬、視界にいた不死川さんと伊黒さんの体がほんの少し透けて視えた。その一瞬だけ周りの動きが遅く見え、
-雪の呼吸 参ノ型
不死川さんの攻撃の隙間を突いて、衝撃波もろとも搔き消した。
「…!なんだァ…」「今のは一体…」
不死川さんと伊黒さんは先刻の私の攻撃を見て驚嘆していた。
「今一瞬…」
私自身も驚くほどの現象が起きた。恐らく一瞬だけ『透き通る世界』に入ることができたということだろう。
「「しのぶさん(師範)!今のは…」」
「…はい。『透き通る世界』に一瞬だけ入ることができたみたいです…」
「透き通る世界ィ?」「なんだ…それは…」
不死川さんと伊黒さんに言われて、まだ炭治郎くんとカナヲにしか話していなかったことを思い出した。
「説明していませんでした。説明しますね。ですがすみません、先に少し休憩させて貰います…」
私は縁側に移動して息を整え、『透き通る世界』について知りうる限りの情報を話した。
「なるほど…それであの二人は『透き通る世界』とやらを会得するために胡蝶と稽古をしていたと…」
「力の限り足掻いて苦しんだからこそ届く領域かァ…よし、伊黒ォ!俺とお前、一対一で勝負しろォ!朝が来るまでなァ!」
「奇遇だな…俺も同じことを考えていた…」
不死川さんと伊黒さんは私の話を聞き、早速二人で戦う準備をした。
「あの…お二人とも少し休憩しませんか?そのままだと水分不足とかで体が持ちません。」
炭治郎くんが不死川さんと伊黒さんを引き留めた。冬場とはいえ、あれだけ動いたのだからかなり汗をかいている。朝まで続けると塩分水分その他含めて不足してしまうだろう。
「…それもそうだなァ…」「もっともな意見だ…少し休憩を挟もう…」
「そうですか!少々お待ち下さい!」
そう言って炭治郎くんは屋敷の奥へ入っていった。
少しして戻ってきて、
「おまたせしました!どうぞ!」
と言って、不死川さんにおはぎと抹茶を、伊黒さんにとろろ昆布のお茶漬けを持ってきた。
「「…えっ…はっ?」」
二人とも出てきたものに困惑していた。
「あれ?違いましたか?伊黒さんの好物はとろろ昆布だって聞いたのでお茶漬けにしたんですけど…不死川さんの方は稽古つけてもらってたとき、もち米とあんこの良い匂いがしてたので…つぶあんかこしあんどっちか分からなかったので両方作っておきました!」
「…そうか…」「…」
カナヲは炭治郎くんの異常なまでの天然さに目を丸くしていた。
私は不死川さんの好物がおはぎだったことが意外で、くすくすと笑いを堪えるのに必死だった。
「…いたって真面目…なんだよなァ…」
「そうですよ、炭治郎くんは真面目で素直な方ですよ。」
「…胡蝶ォ…笑うんじゃねェ」
こんなやり取りをしている間も炭治郎くんは一点の曇りもない目でこちらを見ていた。
「…まあ、ありがたくいただくぜ…」
「…俺もいただこう。」
お二人とも受け取り、食べ始めた。伊黒さんは受け取ったとき、不死川さんの方を見て少し笑っているような感じがした。
「…美味ェ…」「ああ…店で食べるより美味い…」
不死川さんも伊黒さんも満足そうに食べていた。
炭治郎くんは終始ニコニコしていた。
カナヲは啞然とし続けていたようだった。
「「…ごちそうさま。」」
お二人が食べ終えて、こちらを向いた。
「胡蝶…お前、とんでもない男を捕まえたな…」
「ああ、本当になァ…こんなに美味えもん作れるとは…他の奴らにも言ってやるかァ…」
「あ…あはは…」
私は炭治郎くんが褒められていて、少し嬉しくなった。
「もしご存知なら皆さんの好きな食べ物を教えていただけると嬉しいです!味の濃さとかも…」
それから炭治郎くんは不死川さんと伊黒さんから各柱の好物を教えてもらっていた。
「さて、休憩も終わったわけだ。今度こそ…伊黒ォ!俺と勝負しろ!」
「ああ…竈門の賄いで気分も良好だ…思う存分やり合うとするか…!」
不死川さんと伊黒さんは稽古を再開した。
「というか、柱合会議で会ったときはあんなに『仲良くしません!』という雰囲気でしたが…今回の柱稽古で何があったんですか?」
純粋に気になり、お二人の戦いを見ながら聞いた。伊黒さんはともかく、不死川さんとあんなに話をするとは思わなかった。
「しのぶさんのおかげですよ。不死川さんが言ってました。しのぶさんが俺と禰豆子を鬼殺隊として認めたって。」
「それはそうですが…不死川さんは私が認めたから認めたんですか?」
「カナエさんが柱のときからの関係で、ほとんど妹のようなものだそうです。だから妹が認めたなら認めるって。」
「そうだったんですか。それで…」
不死川さんが頻繁に私を気にかけてくれる理由が漸く分かった。不死川さんと姉さんは恋仲と言っても過言ではないほど深い関係だった。だからそれも含めて私のことを妹のように感じていたのだろう。
「伊黒さんの方はどうしてですか?」
「それは…俺が甘露寺さんから伊黒さんの相談をされていたのを浮気してるって誤解されて…その弁明をした結果です。」
伊黒さんは蜜璃さんが絡むと恐ろしいほど番犬になる。犬どころか狼の如く周りに噛み付く。私が男性だったら今頃伊黒さんに殺されているだろう。
「ふと思ったんですけど…甘露寺さんの稽古の次に伊黒さんの稽古にしたのって…」
「…さあ、どうでしょうか?」
実際のところそういった意図はなかったけど、濁した方が面白そうなので濁しておいた。
その結果、私が今まで見たことがないくらい恐怖していた。
「…鬼よりも怖い…」
「炭治郎…こういう時の師範の言葉は真に受けたら駄目だよ…」
不死川さんと伊黒さんの稽古を見ながらも聞いていたのか、カナヲがそう言ってきた。
「あら、カナヲにはバレましたか。」
長い付き合いのカナヲにはバレてしまった。しかし、炭治郎くんの新しい表情が見られたので私は満足だ。
その後、お二人は宣言通り夜明け近くまで戦い続けた。しかし『透き通る世界』を会得するには至らなかったようだ。
「…かなり限界だが、視えねェな…」
「…他にも条件があるのかもしれん。例えば…痣を発現させているか、とかな…」
お二人は悩んでいたが答えは出なかったようだ。
「竈門、お前の父は痣を持っていたのか?」
「…薄っすらですが、持っていました。父が言うには額の痣は生まれつきのものだった…そう…で…」
炭治郎くんは途中で言葉を止め、考え始めた。
「…どうかしましたか?」
「思ったんですが…お館様は俺が最初の痣持ちって仰られてましたけど、もしかすると…俺は父の痣に共鳴して発現したのかなって…
あっすみません、話が逸れました。」
「構いませんよ。今わかる範囲だと痣の発現は必須なのかもしれませんね。」
もしくは『透き通る世界』を会得する近道になっているのかもしれない。
「…まあなんにせよ、痣を発現させることに変わりはねぇな。…そろそろ日も昇る頃だな、俺たちは帰って隊士の稽古をしなきゃならんからそろそろ帰るぜェ。」
「そうだな…じゃあな。時間があればまた来る。」
不死川さんと伊黒さんは帰っていった。
「結局夜通し起きてしまいましたね。」
「そうですね。」「ふわぁ…」
カナヲは欠伸をして眠そうにしていた。ほとんど休憩なしで稽古をしていたのだから仕方ない。
「ふふっ。ひとまず寝ましょうか。」
「はい。」「ん〜…」
夜明け前ではあったけど、各々自室に戻り就寝した。
【あとがき】
戦闘というか稽古の描写ってこれで良いんでしょうか…
もしよければ良し悪しを感想で教えていただけると幸いです。
戦闘シーンを想像させるセンスがなくて悲しい。
実弥と小芭内の描写を作ったのは、おはぎのネタがしたかったというだけの理由です。
『透き通る世界』の会得は少々無理矢理が過ぎるかもしれませんが、二次創作なのでお許しを。なんとしてでもしのぶさんを生存させたいのですッ!
ちょっとした考察part2
痣の発現条件ですが、体温を39度以上、心拍数を200以上にする。これに加えて、身近に痣者が居るというのも条件なのかなぁと…
戦国時代の最初の痣者は継国縁壱で、縁壱から共鳴して痣が発現した。
それから鬼殺隊は何度も壊滅しかけたことで、痣者は全員死んでしまい、共鳴していた者も他2つの条件を満たせずに全滅して、その後の剣士たちが痣を発現させられなかったのは周囲に痣者が居なかったから。
大正時代の最初の痣者は竈門炭十郎で、炭十郎も縁壱と同じく生まれつきの痣者。
炭治郎は炭十郎から既に共鳴していて、遊郭での戦いで体温と心拍数の条件を満たしたから痣が発現した。
そして、炭治郎から共鳴して柱たちも痣を発現させた。
なんてどうでしょうか。
あくまで一個人の妄想考察です。
↓自作の呼吸の内容です。
雪の呼吸
水の呼吸が派生して、風の呼吸と合わさった。
壱ノ型 垂り雪(しずりゆき)
『蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ』のように高速で横切ると同時に攻撃する。
状況によって『突き』と『斬撃』を使い分ける。突きの方が速度は上。
弐ノ型 細吹雪(ささめふぶき)
刀を素早く振り上げ、続けて振り下ろす連撃技。一瞬で二度斬るため、反応が遅いと一度で二度斬られたように感じる。
振り上げで風を起こし、振り下げで『風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風』のように風の斬撃を複数飛ばすことができる。
参ノ型 風花(かざばな)
相手の隙を斬り込む連撃技。
隙が多ければ多いほど斬撃の数は多くなり、隙が大きければ大きい程強い斬撃になる。
肆ノ型 銀華白風(ぎんかしらかぜ)
『水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦』のように体を捻り、自身の周囲に強力な斬撃を放つ。
防御技としても使える。
伍ノ型 天華六角(てんげろっかく)
目にも止まらぬ速度で六連続で突き斬りする。
『蟲の呼吸 蜻蛉の舞 複眼六角』 を雪の呼吸に合わせて作り変えた。
しのぶ本来の性格(少し短気な性格)が風の呼吸に合うと思ってこうなりました。
水の呼吸に関しては、蟲の呼吸の大元が水の呼吸だからという理由です。