鬼を斬る蝶と蝶を救う太陽   作:yuki_06090570

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鬼舞辻無惨が欲した物

炭治郎としのぶが蝶屋敷に戻ってきて数日、二人は各々でしたい事や、すべき事をしていた。

二人ともすぐにでも胡蝶宅に引っ越したいと思っているのだが、柱や隠を含む最終決戦に参加した者の全員は半年から一年の間、月一で蝶屋敷に来て定期検診を受けることとなっている。そのため、今しのぶが蝶屋敷を離れる訳にはいかないという状況なのだ。

 

 

炭治郎は木刀を持ち、中庭でヒノカミ神楽の舞を練習していた。

そして舞をおこなう炭治郎を、きよ、すみ、なほの三人が眺めていた。

 

「…ふぅー…」

 

大きく息を吐いて、吸って、全集中の呼吸をおこなう。

 

ゴオオオォォォ…

 

という呼吸音を出しながら、

 

円舞

碧羅の天

烈日紅鏡

灼骨炎陽

陽華突

日運の龍・頭舞い

斜陽転身

飛輪陽炎

輝輝恩光

火車

幻日虹

炎舞

 

壱から拾弐まで型を繰り返し丁寧に繋げる。

戦いをしているわけではないので、焦らず落ち着いて、身体の力は入れ過ぎないように注意する。

 

『日の呼吸』と『ヒノカミ神楽』

 

本質は同じでも『戦うための動き』と『舞をするための動き』という全く異なるモノであり、更には片腕を失ったことによる重心のブレが理由で、炭治郎の動作には拙さが見える。

 

「ふぅ…」

 

数十回繰り返したところで疲れが溜まり始め、舞を終了する。

終了したところで三人が小さい音で拍手をしていた。

 

「「「凄いです、炭治郎さん!」」」

 

「ありがとう!

…まあ、本当は年を越す時に夜通し舞い続けるんだけどね…」

 

称賛された炭治郎は三人に感謝すると同時に苦笑いをする。

 

疲れた身体を休め、休憩を終えた頃に昼食を作り始める時間となった。

 

「きよちゃん、すみちゃん、なほちゃん。今から昼ご飯を作るんだけど、手伝ってもらえるかな?」

 

「「「はい、勿論です!」」」

 

三人は元気良く答え、炭治郎と共に台所へと向かった。

 


 

炭治郎たちが昼食を作っている頃、しのぶはカナヲとアオイに医療分野の勉強を教えていた。今は主に調薬に関する勉強だ。

薬となる物の勉強や、実際に調合して、しのぶが調合した見本との差異を比較するなど、様々な方法でカナヲとアオイは知識を深めている。

 

二人は分からない所をしのぶに教えて貰いつつ、何方かが分かる時はもう一方に教え合う。とは言っても、カナヲがアオイに聞く割合の方が多い。

 

そして二人に教えている合間に、しのぶは本を読む。

 

「ところで姉さん、その本は?」

 

しのぶが読んでいる本は、市場に売っているような見た目ではないし、蝶屋敷にある本とは違う表紙をしていた。

しのぶがここ数日その本を読んでいたため、カナヲは不意に気になり、アオイもカナヲの言葉を聞いて、二人はしのぶの方を見る。しのぶもカナヲの声を聞き、本の方を向いていた顔を上げて二人の方を見る。

 

「気になりますか?」

 

しのぶは持っていた本を二人に見せる。二人はその見開きを凝視する。

本には幾つかの薬の材料が書かれており、難しくはないが少々複雑な調合方法となっているようだった。その材料の中には、見たことのないものが入っており、カナヲとアオイは顔を合わせて首を傾げる。

 

「青色の彼岸花?」

 

「赤色はよく見ますけど、青色なんてあるんですか?」

 

カナヲとアオイは自身の勉強そっちのけで、しのぶの見ていた本に集中する。

 

「それが…私も見たことが無いんですよ。」

 

三人は描かれた『青い彼岸花』の絵を見て唸る。

花は薬の材料になることがあるため、しのぶが知らない花は滅多にない。そのしのぶですら『青い彼岸花』という花は見たことも聞いたこともなかった。

 

「鬼舞辻が千年掛けて見つけられなかった花だそうですが…」

 

「鬼舞辻…ってことは、この本は…」

 

カナヲは何かを察して、少し目を見開く。

 

「恐らく太陽を克服するための薬の研究です。そしてこの『青い彼岸花』は、調合次第で人間を鬼に変貌させる薬になるのではないかと。」

 

様々な薬の材料が書かれているが、『青い彼岸花』を除けば他はそれ程珍しい材料ではない。

 

「鬼…」

 

鬼と聞いてアオイは少し狼狽えるが、しのぶは「大丈夫」と言って、アオイを落ち着かせた。

 

「愈史郎さんと茶々丸さんは鬼として生き続けて珠世さんを待つ選択をしましたよね。

そこで、太陽を克服してしまえば今よりも楽に生きられるのでは、と考えていたんです。あとは、新たに鬼が生まれてしまわないように全て枯らしてしまおう、というのもあります。」

 

しのぶは珠世と共同で研究していたときに、鬼舞辻無惨が『青い彼岸花』を探していることを聞いていた。そして本に関しては、無限城から弾き出された場所の周辺に転がっていた物だ。つまりこの本は無惨が書いた物の可能性が高い。

しのぶが読み進めた限りではあるが、本の大半は『青い彼岸花』に関する内容であった。無惨がそれ程までに執着する物となると、鬼に何かしらの作用があると考えてもおかしくはない。

 

花を枯らして絶滅させてしまうことに何も思わない訳では無いが、『鬼舞辻無惨』という化け物が再度この世に生まれてしまう可能性があるのなら、その原因を消してしまわなければならない。

鬼と戦っていた者であれば、誰だろうとそう考えるだろう。

 

「それでこの花を探そうかと思っているのですが、いつ何処で咲いているのか…

言ってしまえば、何も分からないのです。」

 

無惨が千年掛けても見つけられなかった花をどう探せば良いのか、三人が頭を悩ませていると、

 

コンコンコン…

 

と、部屋の扉を三回叩く音がした。

 

「はい、どうぞ。」

 

しのぶが扉の向こうに居る人に呼びかけると、静かに扉が開く。

 

「皆さん、お昼ご飯ができたのでそろそろ休憩に…」

 

炭治郎が昼食の時間を知らせに、部屋へと入ってきた。

部屋へ入ると、しのぶ、カナヲ、アオイの三人が一冊の本に注目していたため、炭治郎は不思議そうに本へと目を向ける。

 

「…三人で同じ本を見て、どうかしたんですか?」

 

「少し気になったことがありまして…」

 

アオイの言葉を聞き、炭治郎は近づいて本の見開きを見る。

 

「青色の彼岸花ですか。…懐かしいなぁ…」

 

炭治郎は母である葵枝と一緒に見に行ったことを思い出していた。

そして、炭治郎が独り言のように呟いた途端、しのぶたち三人は目を見開いて炭治郎の方を向く。

 

「「見たことあるんですか!?」」「見たことあるの!?」

 

「は、はい…ありますけど…これが何か?」

 

三人の大きな声に少し驚きながら、炭治郎は先刻の反応の理由を聞く。

しのぶはカナヲとアオイに説明した通りに、炭治郎に花を探している理由を話した。

 

「無惨が探していた花ですか…」

 

「はい。それで、何処に生息しているかご存じですか?」

 

「俺の実家から少し離れたところに。ただ、いつ咲くのかまでは…

母が言うには、数回咲く年もあれば、一度も咲かない年もあるそうです。加えて咲く時間は日中の数分から数十分だけだとか…」

 

「日中…日が昇っている間だけですか。

鬼舞辻が見つけられなかった理由が分かりましたね。」

 

しのぶは開いていた本を閉じて立ち上がり、本棚ではなく鍵付きの引き出しに本を収納する。

 

「さて、区切りも良いですし、一旦休憩にしてお昼をいただきに行きましょう。」

 

カナヲとアオイも、既に中断していたかもしれないが、勉強を中断して昼食を摂りに向かった。

 


 

同日夜、

 

蝶屋敷からそう遠くない場所にある建物に一通の手紙が届く。

 

「しのぶからの手紙か。」

 

愈史郎は手紙を開けて中身を読む。

 

鬼舞辻無惨が探していた『青い彼岸花』の生息する場所が分かった。

その花から『太陽を克服できる薬』を作ることができるかもしれない。

 

大雑把にいえば、そういう内容が書かれていた。

 

「太陽を克服…

茶々丸、お前はどうしたい?」

 

愈史郎は横でのんびりしている茶々丸の方を見て問いかける。

茶々丸は愈史郎の言っていることが分かっているようで、声だけでなく身振り手振りで返答する。

 

「そうか。明るい時間に散歩したいよな…俺も同じだ。

…今になって、太陽を克服したいという無惨の気持ちが分かるなんてな…」

 

死にたくない。陽の下を歩きたい。

理由は違えど、自身が愛した女性を殺した者と同じ願いを持ったことで、愈史郎は自嘲気味に笑う。

 

「何年掛かるか分からないが…いつか太陽を克服して、一緒に散歩しような。」

 

愈史郎は茶々丸を撫でながら優しく言う。茶々丸は太陽の下をまた歩けるようになることを楽しみにしていた。

 

「まあ案外、『青い彼岸花』が手に入ったらすぐに完成したりするかもな。」

 

無惨の遺した研究をとことん利用してやろう、と意気込むのだった。

 


 

愈史郎のところに手紙が届いた頃、

 

「いつ頃咲いていたかは覚えていますか?」

 

「確か俺が見たときは…九月頃だったと思います。」

 

風呂を済ませた炭治郎としのぶは、しのぶの私室で『青い彼岸花』についてもう少し詳しい話をしていた。

 

「九月頃…咲く時期は普通の彼岸花と同じかもしれませんね。

花が咲いていないときの見た目とかは?」

 

しのぶは花の図鑑などで通常の彼岸花の情報を見ながら、『青い彼岸花』についての情報整理をする。

 

「咲いていないときは…土筆(ツクシ)のような見た目だったと思います。」

 

今度は土筆の情報が書かれた頁を開き、それを見ながら唸る。

 

「なんとも不思議な花ですね…彼岸花なのか、土筆なのか…

…あれ、そういえば確か…土筆は食べられる植物ですよね?」

 

「そうですね。山に住んでたこともあって、何度も食べた覚えがあります。…もしかして、そのときに…?」

 

炭治郎はしのぶの質問の意味に気づいたようで、若干出始めた眠気が消えた。

 

土筆は食用の植物で、『青い彼岸花』は花を咲かさないときの見た目は土筆に似ている。気付かぬ内に『青い彼岸花』を摂取していたのかもしれないということだ。

 

「炭治郎くんと禰豆子さんに鬼の適性があったのは、幼少期に『青い彼岸花』を摂取していたからということでしょうか…

鬼に変貌させる薬の材料なら、そのまま摂取したとしても何かしら影響がでてもおかしくはないですよね。」

 

「そうであれば、薬を作る場合に必ずしも咲いている状態でないといけない訳ではないかも…ですね。」

 

しのぶは軽く頷く。その後も暫く考えていたが、しのぶは眠気が強まり欠伸が零れた。炭治郎もそれにつられて眠気が戻ってきて、欠伸が零れる。

時計を見ると二十二時を回る頃だ。

 

「ひとまず今日はこれくらいにして、そろそろ寝ましょうか。」

 

本や紙を机の隅にまとめて置き、見返しやすいように片付ける。

 

「はい。…今日も一緒に寝ますよね?」

 

「勿論ですよ。」

 

炭治郎が念の為に確認すると、しのぶは嬉しそうに笑って言った。

 

そしていつものように一組だけ布団を敷き、二人で横になって密着する。

 

「最近少し寂しいです…」

 

しのぶは炭治郎を抱きしめながら、小さく呟く。

 

この数日、炭治郎は父との約束である『神楽の継承』のための練習、しのぶは医者を継いでくれるカナヲとアオイのために勉強を教える、各々ですべきことをしているため、二人きりの時間が少々減ってしまっていた。

ゆっくり二人きりになれるのは、今のような一緒に寝るときくらいなのだ。

 

「俺はいつでもしのぶさんの時間に合わせられますから、時間があるときはいつでも来てください。

…というより、来て欲しいです。俺も寂しいですから。」

 

そう言って、炭治郎はしのぶを抱きしめ返した。

 

「…分かりました。空き時間は炭治郎くんのところに行きますね。」

 

『青い彼岸花』の情報も概ね出揃ったため、今後は空き時間が取れるようになるだろう。

そう思いながら、しのぶは眠りに入った。




【あとがき】

青い彼岸花は日中の数分程度しか花を咲かせない設定のようですが、普通の彼岸花も1週間程度で枯れてしまうそうです。
短いなあ…なんて思っていたんですが、普通の花も同じくらいで枯れてしまうんだとか。
"花"は短命なんですね…


未だにカナヲを誰かとくっつけるか悩んでいます。
原作を読む(アニメを見る)と炭治郎以外は想像つかないんですよね。あるとすれば伊之助ですが、伊之助はアオイなので。


ぼやきになるんですが、炭治郎としのぶは互いに話すときに口調が似ているので若干会話が難しいです。
とはいえ、タメ口なのは個人的に合わないと思っているので、判別できるように頑張るしかないんですがね。


これは気が向いたらになりますが、義勇カナヲ伊之助の猗窩座戦と、その後の無惨戦を書くかもしれません。
あとは今更ながら、おばみつの二人を死なせたのは勿体なかった気がします。炭しのとおばみつのやり取りとか書いてみたかった…
無惨戦を書いたときにおばみつ生存に改変するかもしれません。あまりしたくないですが…
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