鬼を斬る蝶と蝶を救う太陽   作:yuki_06090570

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炭治郎十七回目の誕生日

七月十四日の朝、

しのぶは炭治郎を連れて出掛けた。わざわざ炭治郎を連れた理由は、今日が彼の誕生日だからである。

 

「炭治郎くん、誕生日おめでとうございます。」

 

「ありがとうございます。」

 

畦道をのんびり歩き、時間を潰しながら街へと向かう。

 

「…漸く十七歳ですね。」

 

「はい、法律的に結婚できる年齢ですよ!」

 

炭治郎はしのぶと正式に結婚できるようになったことに喜ぶ。そんな炭治郎を見てしのぶも嬉しくなる。

 

明治中期以降、政府が定めた婚姻可能な年齢は男性が十七歳、女性が十五歳である。先日まで炭治郎がその年齢を満たしていなかったために祝言を挙げていなかったが、今日で漸く正式に結婚できる年齢になったのだ。

 

「ひとまず今日は君の誕生日のお祝いです。行きたいところがあれば言ってくださいね。」

 

「うーん…特に何処に行きたいとかは…俺はしのぶさんと出掛けるだけで十分幸せなんです。」

 

「私も、炭治郎くんと一緒に居るだけで幸せですよ…」

 

満面の笑みで言う炭治郎を見て、しのぶも幸せな気持ちになって頬が緩む。

 

「では、行きたいところがないのなら、少し付いてきてもらえますか?」

 

しのぶが炭治郎の手を引き、目的の場所である指輪屋へと向かった。

 

「指輪…ですか?」

 

「はい。外国では祝言を挙げるとき、互いに指輪を贈るそうですよ。別に指輪に拘るわけではありませんが、何かの参考になればと思いまして。」

 

しのぶは話をしながら、売り場にある指輪を覗き込んで吟味する。そして炭治郎もしのぶのように指輪を覗き込む。

 

「へぇ…綺麗ですね、指輪って。簪とかとはまた違った趣があって中々…」

 

「指に嵌めるだけなので邪魔にならないでしょうし、相手の雰囲気に合わせてみるのも良いですね。」

 

幾つかの指輪を眺めていると、各々一つの指輪に目が留まる。

 

「この宝石の色は炭治郎くんの雰囲気に近いですね。」

 

「こっちはしのぶさんの色ですね。」

 

しのぶは赤色の宝石が埋め込まれた指輪を、炭治郎は紫色の宝石が埋め込まれた指輪を指差す。

 

「試しに買ってみますか?お金は沢山ありますし、使って経済回さないとですし。」

 

「確かに…恐ろしいほどの金額が支払われましたもんね…」

 

お館様こと産屋敷輝利哉から退職金という形で、鬼殺隊士には大金が支払われており、特に鬼舞辻無惨討伐に大きく貢献した者には更に多くの金額が支払われている。そして炭治郎と禰豆子は、最初は支払いを断り受け取らなかったのだが、断れば断るほど大金になって返ってきたため、結局根負けして受け取る形になった。

 

「よし、買いましょうか。俺は赤い方を買いますから、しのぶさんは紫の方を。といっても、お金は共有してるので何方を買ってもあまり関係ないんですけど。」

 

値段で言えば炭治郎が買う指輪の方が高いのだが、どうせ結婚するのだからと、二人の持ち金は随分前から共有している。そのため、どちらかが高い方を買ったとしても何も変わりはないのだ。

 

「まあ、こういうのは気分が大事ですから。」

 

そうして各々指輪を買う。成人にも満たない二人が顔色一つ変えずに何十万円という大金を出し、店員はかなりの驚きを見せていた。

 

その後店を出て少し歩き、人目が少ないところへやって来た。

 

「折角買ったわけですし、交換してお互いの指輪を嵌めてみましょうか。炭治郎くん、片手を出してもらえます?」

 

言われた通り炭治郎は右手を出し、しのぶは炭治郎の薬指に紫色の宝石が埋め込まれた指輪を嵌める。

そして少し離れて、指輪を嵌めた炭治郎の姿を見る。

 

「うん、よく似合ってます。」

 

「良かった。でも、こういうのを着けるのは初めてなので不思議な感じがしますね。」

 

違和感を感じつつも嬉しいようで、自身の右手薬指にある指輪を見ながら笑みを零す。

 

「じゃあ、今度はしのぶさんも」

 

今度はしのぶが手を出し、炭治郎は薬指に赤色の宝石が埋め込まれた指輪を嵌める。

そして炭治郎も同様に少し離れて、指輪を嵌めたしのぶの姿を見る。

そしてしのぶは先刻の炭治郎のように、自身の左手薬指にある指輪を眺める。

 

「指輪もですけど…しのぶさんが綺麗です。」

 

「そう言ってもらえると…嬉しいです。」

 

聞き慣れるほど何度も"綺麗"と言われても嬉しいのは変わらないらしく、しのぶは若干頬を赤らめる。

 

「…私も初めて着けますが、案外着けたままでも気になりませんね。形状のおかげかもしれませんが。」

 

指輪に付いている宝石はそこまで大きさではなく、引っ掛かるような突起はほとんどない。そして指輪の形状は甲丸(こうまる)という一般的なものである。

 

その後、指輪を見ていたしのぶは袖から懐中時計を出して時間を確認する。

 

「…準備はまだ掛かるでしょうから、もう少しゆっくりしていきましょうか。」

 

「準備とは?」

 

「帰ったときに分かりますよ。」

 

少し歩いて近くの公園に入り、そこに設置されている木の椅子に座る。

公園の真ん中には小さい子どもが居て、その子は親と一緒に遊んでいる。

二人は座ったまま、その様子を眺めていた。

 

「子どもはかわいいですねぇ。」

 

「そうですね。…六太もあのくらいでかわいかったなぁ…」

 

子どもの年齢は見る限り二、三歳ほどで、楽しそうに走っている。親は少し離れたところに居て、子どもは父と母の居る所を行ったり来たりしていた。

 

「あの方たちを見ていると、早めに子どもが欲しいと思いますね。

ね、炭治郎くん。」

 

「えっ、はい、そうですね。」

 

しのぶは炭治郎の方を向いて距離を詰め、悪戯っぽく笑う。炭治郎はからかわれて少し慌てる。

そんな二人のやり取りを、公園にいる沢山の人たちが微笑ましそうに見ている。傍から見れば逢瀬中としか思えないのだから、注目を集めるのは仕方がないだろう。

 

「なんか…凄く見られてますね…」

 

「この公園は広くて眺めも良いので利用する人が多いのですよ。」

 

視線を感じつつのんびりしていると、走っていた子どもが躓き、

バタッ

という音と共に転んでしまい、大泣きしてしまう。親は慌てて駆け寄り、何とか泣き止ませようとするが、擦り剥いた怪我が相当痛いようで泣き止まない。

 

「あら、転んでしまいましたか。炭治郎くん、水を汲んできますので先に行って話してもらえます?」

 

「分かりました。」

 

炭治郎が子どもの親に近づき、怪我の手当をするという話をする。そして子どもの方に向き、屈んで目線を合わせる。

 

「大丈夫だよ。あのお姉ちゃんが助けてくれるからね。」

 

炭治郎が頭を撫でながら優しく言うと、子どもの泣き声が収まる。

 

少ししてしのぶが絆創膏など用意し、子どもに近寄る。

 

「痛いところを見せてもらえますか?」

 

「…うん…」

 

子どもに分かるように身振り手振りで表現しながら話し、子どもはすすり泣きながら擦り剥いた箇所を見せる。

 

「ヒリヒリしますが、少しだけ我慢してくださいね。」

 

子どもは頷き、それを見てしのぶは擦り剥いた箇所に汲んできた水道水をゆっくりかけて汚れを洗い流す。その後ガーゼで優しく水を拭き取り、絆創膏を貼って処置を終わらせる。

 

「はい。よく頑張りました。」

 

視覚的に怪我がなくなり、それによって気分的な痛みが和らいだようで子どもは泣き止む。

 

「ありがとうございます…!」

 

「いえ、困ったときはお互い様ですから。」

 

子どもの親がしのぶに頭を下げるが、しのぶは笑顔で答え、頭を上げさせる。

そしてその後、子どもを安静にさせるために親は子どもを抱き抱えて家へと帰った。帰るとき、子どもは炭治郎としのぶに笑顔で手を振っていた。

 

「私たちも帰りましょうか。」

 

「あ、はい。」

 

先刻より周囲の視線が集まり居心地が悪くなってきたため、しのぶは炭治郎の手を取って足早に帰宅する。

 

蝶屋敷に到着し、玄関から入る。玄関には沢山の靴が綺麗に並んでいた。

 

「皆さん来てるんですね。」

 

「はい、広間の方に居るはずです。」

 

靴を脱ぎ、しのぶは炭治郎を広間の方へと連れて行く。

広間に近づくにつれて賑やかな声が聞こえてくる。

 

「炭治郎くん、どうぞ。」

 

不思議そうにしながらも、言われるがまま戸を開ける。

 

「おーっす!遅かったな、今日の主役よ!」

 

戸を開けると、天元がお酒を持ちながら炭治郎の方を向く。二人を待っていたのか、お酒を持っているがまだ飲んではいないようだ。

 

「あ、ご無沙汰してます、宇随さん。」

 

広間全体を見ると、禰豆子、善逸、伊之助、玄弥、蝶屋敷の皆、柱たちが座っている。机には昼食が置かれていた。

 

「えっと…これは…?」

 

「今日は君の誕生日祝いを兼ねて宴会をしようということになったのですよ。

改めて…炭治郎くん、誕生日おめでとうございます。」

 

「おめでとー!」「早く食いてぇぞ!」

 

しのぶの言葉と同時に、皆が騒がしくなる。約一名はいい加減昼食が待ち切れないらしく、手をバタバタと振っていた。

 

「あ、ありがとうございます。

待たせてごめんな、伊之助。」

 

空いている隣り合った二席に炭治郎としのぶが座り、

いただきます

という声とともに皆ご飯を食べ始め、お酒が飲める者はお酒も飲んでいく。

 

宴会ということもあり、皆近況を各々話しながら楽しく食事を摂る。

 

「炭治郎くん、元気にしてた?」

 

炭治郎としのぶが座った場所の机を挟んだ前には蜜璃と小芭内が座っており、ご飯を食べ始めると同時に蜜璃が話しかける。

 

「おかげさまで健康ですよ。

甘露寺さんも伊黒さんも、お元気そうで何よりです。お二人はその後はどうですか?」

 

「まあ…楽しくやってるぞ。」

 

最後の戦いが終わって意識を失う前、小芭内と蜜璃は互いに想いを告げて恋仲となった。その後は今までよりも一緒に居る時間を増やし、仲を深めようとしているのだ。

 

「お二人が恋仲になられて良かったです。今の私があるのは、蜜璃さんが助言をしてくれたおかげでしたから。」

 

「それを言うなら、炭治郎くんとしのぶちゃんのおかげで私は小芭内さんと恋仲になれたんだよ!」

 

しのぶと蜜璃が楽しく話している横から、炭治郎と小芭内は二人のやり取りを眺め、お互い頬が緩む。

 

「伊黒さんと甘露寺さんはご結婚の予定が?」

 

炭治郎はふと気になり小芭内に質問するが、小芭内は少しバツが悪そうに首を横に振る。

 

「いや…それは考えていない。痣の代償が本当なら、俺は二年と少しで死ぬ。蜜璃はあと四年だ。子を育てるには余裕がなさ過ぎる。」

 

仮に今二人が結婚して子を産んだとしても、小芭内は一年、蜜璃は三年しか子の近くに居られない。一歳で父を亡くし、三歳で母を亡くす子どもの気持ちを考えた結果、小芭内と蜜璃は結婚を諦めることとなった。

 

「そうですか…」

 

「だがまあ、蜜璃の両親への挨拶はしておいた。ほとんど結婚のような状態になるのだからな。」

 

小芭内が甘露寺家へと挨拶に行ったとき、家族は蜜璃の無事を泣いて喜んでいた。そして両親は蜜璃から小芭内の話を聞き、感謝すると同時に

「先が短くても良い…どうか、蜜璃を幸せにしてやってください…」

快く小芭内に蜜璃を任せた。

 

「そっちはどうだ。お前たち二人は俺たちより多少は時間があるだろう?」

 

「漸く俺が十七になったので、近い内に…とは思っています。しのぶさんも子どもは欲しいと言っていますし。」

 

「そうか…それなら後悔しないよう、なるべく早い内にな。」

 

「はい、そのつもりです。」

 

炭治郎が少し笑うと、小芭内も「ならいいが…」と言いながら微笑する。

 

「ねえ、炭治郎くん、しのぶちゃん!さっきから気になってたんだけど…その指輪はどうしたの!?」

 

蜜璃は目を輝かせながら二人の指輪を指差す。

 

「これは…今朝外出したときに買ったんです。外国では祝言のとき、相手同士で指輪を交換するのですよ。

まあ、これは結婚指輪ではありませんが。」

 

しのぶが指輪を見せながら言うと、蜜璃は目を輝かせたまま小芭内の方に向く。

 

「小芭内さん!私たちもどうかな?」

 

「ああ。今日は宴会だからな。明日にでも買いに行こう。」

 

その後も色々話をして、昼食が終わった。

ただ昼食が終わっても宴会は当然のように続き、机にはお酒とそれに合うお菓子が並ぶ。

 

 

「炭治郎」

 

昼食が終わり、離れた所に座っていた義勇がお酒を持って炭治郎の近くに座る。

 

「義勇さん、あれからお元気ですか?

カナヲがかなり心配していましたが…」

 

「ああ、特に変わったことは無い。栗花落に手間を掛けさせてしまっているのが申し訳ないくらいに。」

 

義勇は申し訳なさそうに苦笑いしており、表情は以前に比べて柔らかくなっている。

 

そしてカナヲは片腕を失った義勇を心配しており、度々義勇の屋敷に顔を出している。何故カナヲが義勇の心配をしているのかは、無惨との戦いだけでなく、猗窩座との戦いでも共闘したからである。それ程までに無惨と猗窩座は強かったのだ。

 

「ただ俺にはよく分からないのだが、栗花落は何故…これ程まで気にかけてくれるのだろうか。」

 

「うーん…単純に義勇さんが心配だからというだけだと思いますよ。あとカナヲも義勇さんも、以前の雰囲気が似ていたので、親近感…とかですかね。」

 

純粋に不思議に思う義勇に対して、炭治郎はある程度思いつく理由を義勇に伝える。

炭治郎が恋愛感情に結び付けない理由は、カナヲからは"恋"の匂いがしないからである。カナヲが隠しているだけなのかもしれないが、少なくとも炭治郎の鼻はその匂いを感じなかったのだ。

 

「カナヲも嫌々顔を出してるわけではないでしょうから、あまり気にしなくて良いんじゃないですか?」

 

「そういうものなのか…」

 

「そういうもんだ。だから他人からの善意は大人しく受け取っておけ。」

 

いまいち納得し切れない義勇の後ろから実弥がやって来る。玄弥は別の人たちと楽しく話をしており、居るのは実弥だけである。

 

「実弥さん、ご無沙汰してます。」

 

「おう。元気そうだな。」

 

炭治郎が軽く頭を下げると、実弥は笑って片手を軽く振る。もう片方の手にはお酒の入った椀を持っている。若干顔が赤くなっており、それなりに出来上がっているようだ。

 

「不死川、顔が赤いが…結構飲んだのか?」

 

「それなりにな。だが多分お前の方が飲んでると思うぜ。」

 

実際義勇の方がお酒を飲んでいるのだが、義勇の顔は全く赤くなっていない。

 

「義勇さんはお酒強いんですね。」

 

「人よりは強いな。」

 

「人よりはってお前な…お前が酔ったとこ見たことねぇぞ。」

 

自身のお酒の強さをよく分かっていない義勇を見て、実弥はため息をついて呆れる。

 

「そんなになんですか!?」

 

「…柱同士で飲むときがあったんだが、皆が酔ってる中で宇髄と冨岡は何食わぬ顔で飲み続けてたんだぜ…」

 

柱の中で一番は天元、二番は義勇であり、この二人のお酒への強さは群を抜いている。

 

「う〜ん…」

 

「しのぶさん!?」

 

義勇、実弥と話をしている途中、突然しのぶが炭治郎の肩に寄りかかってきた。顔は真っ赤になっており、お酒を飲んだのだろうというのがよく分かる。

 

「あれ!しのぶちゃん、私のを飲んじゃったの!?」

 

蜜璃は慌てて確認すると、椀同士を近くに置いていた所為か蜜璃の椀としのぶの椀が入れ替わっていた。

蜜璃の飲んでいたお酒はそれなりに強いものであったため、あまりにもお酒に弱いしのぶは一口で酔いが回りきってしまったのだ。

 

「ん〜……」

 

しのぶは目を瞑った状態で唸り、そのまま眠ってしまった。

 

「お酒…本当に弱いんですね…」

 

「姉妹で違いすぎんだよ…」

 

実弥は異常なまでのしのぶの酔いやすさに苦笑する。

 

「カナエさんはお酒強かったんですか?」

 

「ああ。宇髄、冨岡に並ぶ酒豪だった。あんな量の酒、あの身体の何処に入ってたのか分からねぇよ。」

 

(すぅ…すぅ…)

 

「兄弟姉妹って、似ないときはとことん似ませんよね。」

 

炭治郎は自分の羽織で簡易枕を作り、寝息を立て始めたしのぶを部屋の隅にゆっくり移動させて寝かせた。

 

「派手に酔いやがったなあ。

竈門、折角だ。お前も飲んでみたらどうだ?」

 

「そうですね。折角の宴会ですし、少しだけ…」

 

「おう、そうこなくちゃな!お前らもどうだ?」

 

天元は禰豆子たちもお酒の席に誘う。流石にきよ、すみ、なほは誘わなかったが。

 

「少しだけなら飲んでみます!」

 

「よしきた!」

 

天元は愉快に弱めのお酒を人数分だけ椀に注ぐ。そのお酒を炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助、玄弥、カナヲ、アオイがゆっくり飲む。

 

「不思議な味ですね、お酒って。」

「ちょっと辛いね。」

「この辺のお菓子と合いそうだよ。」

「本当だ、美味え!」

「…俺、胡蝶さんと同じでお酒弱いかもしれねえ…」

「私は強い方かも。思ったより美味しい。」

「私は苦手かな…しのぶ様ほどではないけど、玄弥さんと同じで私もお酒弱い気がします。」

 

炭治郎、禰豆子、カナヲは少しずつ飲み進め、善逸、伊之助はお菓子と一緒に飲み、玄弥とアオイは一口で飲むのを諦める。

 

「不死川弟と神崎以外はいける口だな!

だが、初めてで飲み過ぎんのも良くないからよ。今日はそんだけにしとけな。」

 

天元は自分の椀にお酒を入れて、今後の飲み仲間が増えることに期待しつつ飲む。

その後は柱たちはお酒を飲み、それ以外の者はお茶などを飲んで宴会を楽しんだ。

 

 

日が暮れた頃、

 

「…う〜ん…」

 

しのぶは目を覚まし、気怠げに身体を起こす。

宴会は既に終わっており、しのぶは自室の布団で寝ていた。

 

「あ、しのぶさん。大丈夫ですか?」

 

しのぶが起きて数分、炭治郎が雑炊の入った小さい鍋を持って、しのぶの私室に来た。

 

「…はい。少し頭が痛い気はしますが、今は大丈夫です。」

 

しのぶは少しでも痛みを減らすために軽く頭を押さえる。

 

「雑炊作ったので、お腹が空いてたらどうぞ。」

 

「ありがとうございます。いただきますね。」

 

しのぶは小鍋を受け取り、ゆっくり食べ始める。

塩味が少し効いた卵雑炊にはほぐした鮭が入っており、これ一つで大体の栄養が摂れるようになっていた。

 

「…温かくて美味しいです…」

 

「それは良かったです。しのぶさん、身体が冷えてましたからね。」

 

その後もしのぶは雑炊を美味しそうに食べ進め、やがて食べ終わる。

 

「ごちそうさまでした。炭治郎くん、お話良いですか?」

 

「少し待ってもらえますか?これだけ浸けて来ますので。」

 

炭治郎は空いた小鍋を受け取り、台所へと持って行って水に浸ける。そしてしのぶの私室に戻る。

 

「お待たせしました。何でしょうか?」

 

部屋に戻ると、しのぶは布団から出て座布団に座っていた。その隣にもう一つの座布団が置いており、炭治郎はそこに座る。

 

「昼間、炭治郎くんが伊黒さんと話してたことなんですけど…」

 

「伊黒さんと話してたこと…結婚と子どもの話ですか?」

 

「はい。お二人ほどではありませんが、私たちもあまり時間はありません。」

 

「そうですね。では、いつ祝言を挙げます?」

 

炭治郎は指折り数えながら、何日後に祝言を挙げようかと悩む。

祝言を楽しみにしている炭治郎を見て、しのぶは嬉しそうに笑う。

 

「祝言を挙げるにも準備が必要ですから、おおよその日付を決めておきましょうか。」

 

それから少し話し合い、今月末には挙げることとなった。

 

「さて、もう少しで炭治郎くんの誕生日が終わりますが…何か欲しいものはありますか?」

 

しのぶがそう言うと、炭治郎は唸りながら欲しいものを考える。そして、ある一つの"欲しいもの"が思いつく。

 

「お風呂、一緒に入りたいです。」

 

炭治郎は少し緊張しながらしのぶの手を握る。

そしてしのぶは、炭治郎の緊張する姿を見てくすくすと微笑する。

 

「良いですよ。一緒に入りましょう、久し振りに。」

 

しのぶは握られた手で手を握り返し、そのまま立ち上がる。

そして炭治郎も立ち上がり、二人は風呂場へと向かった。




【あとがき】

耀哉の結婚年齢を考えると、炭治郎の年齢を気にする必要はないような気がしますが、正式な結婚は炭治郎が17歳になってからということにしました。


炭治郎のイメージカラーは赤か緑で迷いましたが、目と髪が赤色なので今回は赤にしています。


炭治郎の各キャラへの呼び方が結構悩みどころです。「義勇さん」は当然ながら、「実弥さん」も個人的には違和感ないんですが、「天元さん」「小芭内さん」「蜜璃さん」は違和感があるんですよね…


酒への強さ設定
天元=義勇(=カナエ)>蜜璃(=杏寿郎)>実弥=小芭内≫≫しのぶ
実弥と小芭内が一般的な強さと思ってください。=はほぼ同じですが、左側の方が強いです。

五感組と禰豆子、アオイを加えた場合、
天元=義勇(=カナエ)>伊之助>蜜璃(=杏寿郎)=禰豆子>カナヲ=善逸>実弥=小芭内=炭治郎>アオイ>玄弥≫しのぶ

ちなみに、未成年(20歳未満)飲酒禁止の法律は1922年(大正11年)に制定されましたが、このお話は1916年(大正5年)なので未成年キャラも飲酒しています。
以前のあとがきにも書いたような気がしますが、念のためです。


各キャラの子どもの名前はオリジナルで付ける予定ですが、あまり凝った名前にはならないと思います。
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