鬼を斬る蝶と蝶を救う太陽   作:yuki_06090570

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気持ちに気付く二人

炭治郎くんの稽古は基礎体力作り、疲れにくくなる体の動かし方、一つ一つの動作の高速化、太刀筋の矯正など炭治郎くんの足りない部分を改善していくこととなった。幸い彼は真面目で努力家なため、どの稽古も問題なくこなしていた。

そして時間がある時は炭治郎くんの任務に同行し、戦い方を見て長所と短所を逐一確認し、その後の稽古に活用したりした。

というのは半分建前で、継子が殺されるのが怖かったというのもある。カナヲは成長したから一人でも心配ないけれど、炭治郎くんはまだ成長途中だ。あとは鬼舞辻に目を付けられているから他の隊士よりも心配なことも同行する理由だ。

 

 

「今夜は任務なので、少し眠ってきます。」

 

「分かりました。おやすみなさい炭治郎くん。」

 

炭治郎くんは頭を下げて、部屋へ戻っていった。その少し後、私は鉄原さんから頂いた試作の刀と木刀で新しい刀を扱う練習をしようとしたところで

 

「師範、ただいま戻りました。」

 

「任務お疲れさまです。」

 

カナヲが任務から帰ってきた。今回の任務はそこまで苦労しなかったようで、特に疲れた様子は見られなかった。

 

「師範はこれから鍛練でしょうか?」

 

「ええ。刀を新調するかもしれないので、それに合わせた鍛練をする予定です。」

 

「その…御一緒しても構いませんか?」

 

カナヲは少しモジモジしながら言った。

カナヲが自分で考え、発言したことに少し驚いた。今までとは見違えるほどの進展だ。

 

カナヲは私の驚いた表情を見て不安そうにしていた。

 

「あの…駄目でしょうか…」

 

「構いませんよ。先程はカナヲが自分を気持ちを素直に言えるようになったことが嬉しくて、驚いただけです。」

 

笑ってそう言うと、カナヲもつられて笑顔になった。

しかしカナヲは任務から帰ってきたばかりなので、少し休憩を取らせてから稽古場に来るよう言い、その間に巻藁に向かって真剣で練習する。

 

従来の刀とは違い、かなり癖のある斬り方をしなければならないので、使いこなすには時間がかかりそうだ。そもそも頸を斬るための刀の振り方は久しくしていなかったため、そちらの方も慣れるのに時間がかかる。四ヶ月かけても実戦で扱うには心許ない程だ。

 

カナヲが来てからは木刀に持ち替え、実戦形式で立ち合い稽古をおこなった。

夕方頃までカナヲと鍛錬をして屋敷に戻る頃、入れ替わりで炭治郎くんが任務に出発するところだった。

 

「丁度出発ですか。お気をつけて、炭治郎くん。」

 

「はい。行ってきます!また明日、しのぶさん、カナヲ!」

 

そう言って出発していった。カナヲは特に話しはしなかったが、笑顔で手を振っていた。

 

「師範、どうして炭治郎だけを継子に?」

 

純粋に気になったのか、カナヲが質問してきた。こうして稽古以外の質問をされるのも初めてだ。

 

「彼に希望を感じたからです。炭治郎くんなら、柱と同等以上の強さになって鬼舞辻を倒すことが出来ると。

善逸くんと伊之助くんに希望を感じていない訳ではないんですよ。ですが二人にはもっと相性の良い師範がいますから。」

 

善逸くんには音柱の宇随さん、伊之助くんには風柱の不死川さんがいる。善逸くんは何かのきっかけがないと継子にはなれないかもしれないけど、伊之助くんは会えばすぐに継子になれると思う。彼の性格と不死川さんの呼吸と性格は似ているから。

…もし煉獄さんが生きていたら、炭治郎くんは煉獄さんの継子になっていたかもしれない。

 

「では、私もそろそろ任務に参りますね。」

 

「師範もお気をつけて。」

 

炭治郎くんが出発して数十分後に私も出発した。

 


 

今回の任務は特段難しいことではなかったので早々に終了した。

そして任務が終わり、蝶屋敷前まで戻ってきたとき、

 

「突撃〜!」「突撃〜!」

 

「ちょっ…てめーら!いい加減にしやがれ!」

 

玄関辺りで騒ぎになっているようだった。

俺は玄関のところまで急いで、

 

「女の子に何してるんだ!手を離せ!」

 

咄嗟にそう言ったが目の前の光景は、

 

(群がられている?捕まっ…どっちだ?)

 

その後話を聞いたところ、音柱の宇髄さんは任務で隊員が必要とのことだったので、

 

「アオイさんの代わりに俺たちが行きます!」

 

「あっそ、じゃあ一緒に来ていただこうかな。と言いたいところだが、お館様の屋敷で会ったお前。お前は最近胡蝶の継子になったと聞く。オレはわざわざ許可取りに行く気はないぞ。」

 

「その点に関しては問題ありません!しのぶさんと話はついてます!」

 

柱の任務に同行できる機会があれば、ある程度は同行しても構わないと言われている。柱の任務は強い鬼と遭遇することが多い。実戦以上に成長できるものはないので、経験を積む絶好の機会なのだ。

 

「カナヲ、しのぶさんが帰ってきたら説明しておいてくれないか?」

 

カナヲは戸惑いながらも了承してくれた。

話がついたのを見て、

 

「そうか、なら一緒に来てもらおうか。ただし、オレの言うことは絶対だからな。」

 

と言われ、その後任務先である遊郭へと向かった。

 


 

任務明けで帰宅して早々、カナヲが慌てた様子で、

 

「炭治郎たちが音柱様の任務に…」

 

途中でアオイが遮るように

 

「私の代わりに同行することになってしまって…」

 

話を聞いて大体把握した。恐らく炭治郎くんは戦えなくなってしまったアオイの代わりに任務に同行すると言ったのだろう。

 

「炭治郎くんには、柱の任務に同行できる機会があれば同行するようにと事前に言ってあります。それで、何処へ行くと?」

 

「遊郭に行くとだけ言っていました。」

 

遊郭と聞いて、炭治郎くんが同行したことに何故か嫌な気分になった。

それよりも…任務とはいえ、宇髄さんはアオイを遊郭に連れて行くつもりだったのかと…

私の中で宇髄さんの評価がガタ落ちしたとともに、次会った時に文句を言うと決めた。

 

「…分かりました。カナヲは今日任務でしたね。気を付けて行ってください。…私は少し体を動かしてきます。」

 

気分が優れないので、体を動かしてゆっくり考えようと、足早に稽古場へと向かった。

 


 

「しのぶ様…何処か気分でも悪いのかな…」

 

突然顔をしかめて、話も半ば強引に切り上げて稽古場へ向かってしまったし、任務終わりなのに休息も取らずに行ってしまったので少し心配になった。

 

「師範…炭治郎が遊郭に向かったって聞いたとき、嫌そうな顔してた。」

 

何故だろう…と二人で考えていたとき、

 

「こんにちはー!しのぶちゃんいるかな?少し薬を貰いに…ってカナヲちゃんにアオイちゃん、どうかしたの?」

 

薬を貰いに、恋柱の甘露寺蜜璃様がいらっしゃった。

 

「あっこんにちは、甘露寺様。しのぶ様なら今稽古場におられますよ。」

 

「わかった!ありがとう!それで、二人共どうかしたの?何か考え事?」

 

余程悩んでいるように見えたのか、再度聞かれた。

 

「あの、最近しのぶ様の継子になった炭治郎さんが、」

 

「ええっ!炭治郎くんしのぶちゃんの継子になってたの!?」

 

柱同士でその辺りの情報共有はされていないのだろうか。それとも忙しすぎて共有する暇がなかったのか。どちらにしてもご存じなかったようで、話を遮るくらいには驚いていた。

 

「はい、最近なられました。といっても四ヶ月前ですが。それで…」

 

考え事の内容を甘露寺様にお伝えした。

炭治郎さん、善逸さん、伊之助さんが音柱様の任務に同行し、行先が遊郭だということを。

そして、炭治郎さんが遊郭に向かったと伝えたときに、不満そうな顔をしていたということを。

 

「それってさ…しのぶちゃん!炭治郎くんのこと好きなんじゃないの!?キャー!しのぶちゃんに殿方が!さっそくしのぶちゃんの所に行かないと!キャー!」

 

自己完結して一人で盛り上がっていた。

結局私たちにはよく分からず、?が浮かんでいた。

そして、甘露寺様は来た目的であった薬をそっちのけで稽古場へと走っていかれた。

 


 

稽古場に着き、木刀を振りながら先刻の妙な不快感について考えていた。

何故不快になったのだろう…場所が場所だから?でも善逸くんと伊之助くんが行くのはそこまで抵抗感はない。どうしてだろう…

 

そんなことを考えていたため、人の気配に気づかなかった。

 

「しのぶちゃん。何か考え事?」

 

「ひゃっ!蜜璃さん!?」

 

笑顔で後ろから声をかけられて、間抜けな声を出して驚いてしまった。

 

「えっと…何か用が?」

 

「うん!薬を少し貰いに来たんだけど…さっき玄関で気になる話を聞いたの!」

 

蜜璃さんは私に羨望の眼差しを向けていた。何故そんな顔で見られているのか、私にはよく分からない。

 

「えっと…私の顔に何か付いてますか?」

 

「ううん!付いてはないよ!ただ、考え事の内容が気になってね!何を悩んでたの?」

 

「えっと…変な話なんですけど、」

 

そう言って、今の悩みを打ち明けた。

 

「…ってことなんですけど、どういう感情なんでしょうか…」

 

話を聞いた蜜璃さんは今までにないほど目を輝かせていた。

 

「しのぶちゃん、それはね…恋だよ!恋!」

 

「…こい?」

 

「そう!しのぶちゃんはね、炭治郎くんのことが好きなんだよ!」

 

「は?えっ?そうなんでしょうか?」

 

いまいち自分の気持ちが分からず、曖昧な返答しかできなかった。男性を好きになったことがないので、恋というものが何なのか分からなかった。

 

「しのぶちゃん、自分の気持ちに気づいてないでしょ。少し教えてあげる!」

 

そう言われて、振るのも持ってるのも忘れていた木刀を置き、床に座った。それからいくつか質問が始まった。

 

「炭治郎くんと話をしているときはどんな気分になる?」

 

「…楽しいですし、落ち着きますね。ずっと話をしていたいとも思ったりします。」

 

炭治郎くんとの会話は心が躍るというか、自然と笑顔になる。張り付けた笑顔ではない笑顔が出る。

 

「うんうん!いいね!じゃあ次に、どうして今回、嫌な気持ちになったの?

それと、善逸くんと伊之助くんだったっけ?その二人も遊郭に向かったって聞いたけど、その二人はどう思う?」

 

「それが…よく分からなくて、善逸くんと伊之助くんにはそういう気持ちにはならないんですけど…」

 

「じゃあ少し話の方向変えてみよう!炭治郎くんには幸せになって欲しいと思う?」

 

「それは、勿論そう思います。」

 

これまで色々な苦労をしてきたのだから幸せになって欲しいと、心からそう思う。勿論、禰豆子さんも。

 

「それでもし、仮に炭治郎くんが他の誰かと、誰でも良いんだけど…例えば私と幸せになっていたとしたらどう思うかな?」

 

想像すると、嫌な気分になる。炭治郎くんの隣に居たい、私を見ていて欲しいと思ってしまった。

 

「…嫌な気持ちに、胸が苦しくなります…」

 

「自分が幸せにしたいと思う?」

 

「…はい。」

 

「答え出たでしょ?」

 

独り占めにしたいという気持ち。これが好きという感情なのかと思った。炭治郎くんが好きだったのか…と認識すると恥ずかしくなり、自分でも分かるほど顔が真っ赤になった。

蜜璃さんは終始笑顔でこちらを見ていた。

 

しかし私は、命を賭してでも姉の仇敵を倒すと決めているし、そのための準備は既に進めてしまっている。

だからこの気持ちを打ち明けるかどうかは慎重に考えなければならない…

 

「しのぶちゃんが羨ましいわ!私にも素敵な殿方が…」

 

誰かの名前を言っていたみたいだけど、考え事をしていて聞こえなかった。しかし好きという気持ちを理解した今なら、蜜璃さんが誰の名前を言ったのかは何となく分かる。

 


 

俺たち三人は宇髄さんについていき、遊郭に到着した。

吉原遊郭と呼ばれているこの場所は、夜とは思えないほどに明るく賑やかだ。しかし、東京府の浅草とはまた違った雰囲気が漂っていて、宇髄さんが言っていた『男と女の見栄と欲。愛憎渦巻く夜の街』というのが少し理解できた。

到着が想像より早くて時間ができたので藤の花の家紋の家に伺い、任務開始前に食事を摂ることになった。

 

「なあ炭治郎、お前ってさ…しのぶさんのこと好きなのか?」

 

食事中、突然善逸にそう聞かれた。

伊之助は全く興味がないのか、相変わらず素手でご飯を食べていた。

宇髄さんは話題が降ってきたことが面白かったのか、こちらに意識を向けたのが匂いで分かった。

 

「うーん。好きって感覚がよく分からないんだよ。鬼殺隊の前は炭焼きしかしてなかったし、鬼殺隊に入ってからは忙しい毎日だからな。」

 

それを聞いた善逸と宇髄さんはお互い目を合わせて若干呆れていた。

 

仕方ないだろうと心の中で言い返す。実家にいたときは炭を売ることと買い出しに行くこと以外で山を下りることもなかったので、同年代の他人と話す機会も少なかった。

鬼殺隊に入ってからは、鬼を狩ることが最優先であったし、鬼殺隊に関わる人としか話をする機会はないと言っていい程なのだから。

 

「じゃあ竈門。お前、胡蝶が他の隊士と仲良くしてたらどう思う。例えば、診察中じゃれ合ってるとかな。」

 

「それは、面白くないですね…」

 

「つまり嫉妬してる訳だ。自分だけの人にしたい、独占欲ってやつだ。」

 

「独占欲、ですか…」

 

「…まあ偶にその独占欲が気持ち悪い奴が居るんだが、お前には関係ないか…」

 

改めて好きという感覚を自覚すると妙な気持ちになる。しのぶさんはどうなんだろう…俺と同じ気持ちだったらいいな…

なんてことを考えている間、善逸が宇髄さんに

 

「流石です祭りの神!あの超鈍感な炭治郎を一発で気付かせるなんて…

やっぱり嫁さんが三人もいると貫禄が違いますね!」

 

とか、都合の良いことを言っていた。

 

「そうだろうそうだろう!もっとこの祭りの神を崇め讃えろ!」

 

宇髄さんは宇髄さんで愉悦に浸っていた。

伊之助は相変わらずご飯に夢中のようだった。

 

「俺にも惚れさせる秘伝の技を教えてくだせえ!禰豆子ちゃんと結婚するために!」

 

「それは無理だ。可能性が無いもんはどうにも出来ん。」

 

善逸の願いを静かに却下し、追加で叩き潰していた。言われた善逸は絶望して箸を落とし、嘆いていた。

 

「ひとまず考えるのは後にして、今は任務に集中しろよ。女のことを考えてたら鬼に殺されたなんて地味な死に方するんじゃねぇぞ。いや、遊郭でその死に様ならある意味では派手かもな。」

 

食事を終わらせ、いよいよ遊郭に潜入することとなった。




自分の気持ちに気付いた描写は少々無理矢理かもしれませんが、投稿主に恋愛経験も初恋経験もございませんのでお察しください。

カナヲがこの時点で自分の気持ちを素直に言えるようになっていたり、炭治郎に対する好意がなかったり(全くない訳ではない)と、ご都合展開ですが二次創作ということで大目に見てください。

今後出てくる戦闘シーンですが、書くのが個人的に難しいので、かなり拙い文章になりそうです。暖かい目で読んでいただけると嬉しいです。
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