鬼を斬る蝶と蝶を救う太陽   作:yuki_06090570

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【注意書き】
痣に関して、まだアニメで開示されていない情報が出てきます。
アニメ勢の方はネタバレご注意ください。

また、分割する予定だった刀鍛冶の里での戦いを前回の所に書き加えています。お読みでない方はそちらを先に読んでいただけると幸いです。




痣の謎と今後の構想

「…ん…」

 

目を覚ました時、場所は私の屋敷の病室だった。病室とはいっても、個室なのだけれど。

屋敷への帰路で意識を無くしていたみたいだ。

 

「あっしのぶ様!良かった…みんなー!」

 

目を覚ましたとき、アオイが側で看護してくれていた。

 

「「「しのぶ様!」」」

 

アオイが大声で呼ぶと、きよ、すみ、なほが入って来た。

 

「みなさん…私の代わりに治療を…ありがとうございます。…他の方は…」

 

「今はご自身の体を心配してください。」

 

「…そうですね。」

 

空腹だろうと気を利かせて(かゆ)を持ってきてくれた。栄養は点滴で摂れるとはいえ、胃に何かを入れたいと思っていたのでありがたく頂くことにした。

 

「他の皆さんはひとまず無事ですよ。」

 

食事の最中に話を聞いたところ、私は三日ほど意識を失っていたらしい。蜜璃さんと時透さんは前日に目を覚ましたそうだ。そして、炭治郎くんと玄弥くんはまだ目を覚ましていない。

 

「そうですか…そうだ、手紙を…お館様に手紙を送りたいので持ってきてくれますか?」

 

「はい。今お持ちします。」

 

お館様への手紙ということで、すぐに手紙を持ってきてくれた。

 

内容は

禰豆子さんが太陽を克服したこと。そして鬼舞辻は禰豆子さんを奪いに来るはず。

(じき)に鬼舞辻との戦いがやって来る可能性があるため、鬼舞辻を弱体化させる薬を作りたい。

そのために、炭治郎くんから聞いた『珠世』さんに協力を要請したいこと。

 

「お館様のところへ、お願いしますね。」

 

書き終えてすぐに(えん)に持たせ、運んでもらった。

 

同日、お館様から手紙が返ってきた。

お館様も同じことをお考えのようで、お館様からも珠世さんとの協力をして欲しいと申し付かった。

 

それから三日後には普段通り動ける程にまで回復した。

 

「自分で言うのも変だけど、明らかに傷の治りが早すぎる…」

 

蜜璃さんと時透さんも目を覚まして三日でほとんど回復したらしい。あの傷で三日は回復速度が異常だ。

 

翌日、

 

「しのぶ様!炭治郎さんが目を覚ましましたよ!」

 

それを聞いて、炭治郎くんの所へ急いだ。

 

「炭治郎くん、おはようございます。」

 

「しのぶさん、おはようございます。俺何日眠ってましたか?」

 

「七日ほど眠っていましたよ。」

 

ふと炭治郎くんの額の痣を見た。痣の形が元に戻っている。戦闘中は炎が燃えているような痣だったはずだ。

 

「遊郭のときは二ヶ月くらい意識なかったですし、少しは成長したってことですかね。しのぶさんはどれくらいでしたか?」

 

「私は三日ほどで目覚めましたね。まともに動けるようになるまでも三日かかりました。」

 

「凄いですね、尊敬します!」

 

「経験の差もあるでしょうが…今回はかなり特殊でしたから。普通はこれほど早く回復しないはずなんですよね…

一応言っておくと、蜜璃さんと時透さんは二日で目を覚まして、三日で回復したそうですよ。」

 

時透さんの方は分からないけど、蜜璃さんは首元に痣が浮き出ていた。痣と異常な治癒力には関係があるのかもしれない。

 

「改めて柱の皆さんが凄いことに気づかされます。俺ももっと頑張らないと…!」

 

「心配せずとも、君は他の隊士の方より頑張っていますよ。上弦と戦って生き残っているのですから。倒すことも重要ですが、大怪我せずに生き残ったことが大切です。」

 

二度も上弦と、十二鬼月だと四度戦っているのだ。柱の協力があったとはいえ、これだけ戦って五体満足なのだからそれだけの実力があるということ。

 

「あっ、そうでした!炭治郎くん。以前お話したと思いますが、珠世さんに協力していただけるように言ってもらえますか?一応お館様にも伝えていますが、君から言った方が信用されるでしょうし。」

 

「分かりました。丁度禰豆子の血を見てもらうために送る予定でしたから、一緒に手紙を送っておきます。」

 

「お願いします。」

 

これで珠世さんが来てくれれば鬼舞辻を倒すことがより現実的になるはずだ。

 


 

しのぶさんに禰豆子を連れてきてもらって、血液を採取すると

 

「にゃ~ん」

 

「ひゃあっ!」

 

猫の声が聞こえたと思ったら、しのぶさんのすぐ横に珠世さんの猫が現れた。しのぶさんは猫を見て、聞いたことない悲鳴を上げた。

 

「し、しのぶさん!?どうしました?」

 

「いえ…私、犬とか猫とかの毛の多い動物が苦手でして…」

 

「…ふふふ、あはは!」

 

苦手なのが意外だったのと、素早く逃げるように部屋の壁まで離れたのを見て、つい笑ってしまった。

 

「な、なんですか!苦手なものは苦手なんです!」

 

「しのぶさんでも苦手なものはあるんですね。…ふふ。」

 

「わ、笑わないでください!」

 

「…すみません。もう行きましたから大丈夫ですよ。」

 

鞄に手紙と禰豆子の血液を入れた後、珠世さんのところへ帰っていった。

 

「ふう…炭治郎くん。将来、毛の生えた動物は飼わないでくださいよ…」

 

「分かりました。しのぶさんが嫌なら飼いませんよ。」

 

さり気なく将来の話をしてくれたことが、自己犠牲の考えを完全に消したのだと分かって嬉しかった。

 


 

炭治郎くんが目を覚まして二日ほど経った。

 

「申し訳ありませんが、今日は緊急の柱合会議がありますので、少し出かけますね。」

 

「なんというか…前にも似たような状況が…」

 

私が刀鍛冶の里へ行ったときのことだろう。たしかに言ってることがほとんど同じだ。

あのとき同様、炭治郎くんは寂しそうにしている。

 

「まあ今回は会議で終わりますから…そこまで遅くはならないはずです。ごめんなさいね…」

 

前回はともかく、今回ばかりは柱である以上仕方がない。とはいえ寂しい思いをさせてしまうのも申し訳ないとは思っている。

 

「終わったら来ますから。それまでゆっくり休んでください。」

 

軽く抱きしめて部屋を後にした。

 


 

しのぶさんが部屋から出ていって数分後、

 

「よ。毎度毎度ボロボロだな、お前は。」

 

「後藤さん!」

 

後藤さんが病室に入ってきた。

しのぶさんが経過観察も含めて連れてきたのだろう。

 

「胡蝶様から聞いてるぜ。また上弦と戦ったんだってな。」

 

「はい。すごい敵でした。里の皆さんはどうなったんですか?」

 

鬼に里の場所がバレてしまったことは鬼殺隊にとって大打撃だ。

 

「既に里の復興と移転をやってるって話だぜ。」

 

「移転?」

 

「ああ。鬼殺隊はこういうときの為に空里っていうのをいくつか造ってんのよ。何かあったときすぐ移れるように。」

 

建物を整備しておいた上で利用しない。そうすることで鬼の目を欺くことができると同時に、現在拠点にしている場所が襲撃されても空里に移れば素早く作業の再開ができるということらしい。

 

「へえ…偉い人の考えることは凄いですね。」

 

「ほんとにな。つーかお前…」

 

後藤さんが改まって

 

「お前にとんでもない噂があるんだけど…」

 

「噂?どんな噂ですか?」

 

真剣な顔つきで言われたが俺には心当たりがなく、おにぎりを齧りながら聞いていた。

 

「お前と胡蝶様が恋仲だって噂だよ。」

 

「ぶはぁ!」

 

「おいおい!大丈夫か?」

 

衝撃的な噂で米粒が喉に引っ掛かってしまった。後藤さんは背中を擦って落ち着かせてくれた。

 

「で?それは本当なのか?」

 

「まあ…はい…本当です。」

 

恥ずかしくなり、顔を下げてしまった。

 

「まじかよ!案外噂って当たるもんなんだな!」

 

「その噂の出所ってどこなんですか…?」

 

「俺も詳しくは知らねえけど、仲良さそうに歩いてるのを一般隊士が見たって話だな。」

 

一緒に出歩いたのは買い出しの時くらいだが、近くに鬼殺隊士は居なかったはずだ。

もしかすると、一般大衆の方々が噂の出所なのかもしれない。しのぶさんは普段一人で買い出ししている。良くも悪くも人を目を惹く美人だから、隣に俺が居たことが話題になってしまったのだろう。

 

「お前を知らん奴からの妬み嫉み、自分の立場を理解してないって僻む奴が出てくるだろうな。」

 

「そうですよね…」

 

「頑張れよ。でもまあ、上弦とやり合って生き残ってんだから、普通の奴なら何も言わねえだろう。」

 


 

産屋敷邸に到着し、柱合会議が始まるまでの間に柱同士で情報共有していた。

 

「しのぶちゃん!ちょっと聞きたいことがあるんだけど!」

 

蜜璃さんが慌ただしく聞いてきた。

 

「どうしましたか?いえ、もしかしたら私の疑問と同じかも知れませんね。」

 

「あの鬼と戦ってるとき、しのぶちゃんの右頬に変な痣があったんだけど…」

 

考えていることは私と同じのようだ。

 

「あのとき蜜璃さんの首の所にも痣が出ていましたよ。」

 

「ええ!そうなの!?」

 

「あれは…なんだったんでしょうかね…そういえば炭治郎くんの額の痣と似た色でしたね。」

 

話をしている間に各柱が集まり、遅れて不死川さんと伊黒さんが来た。

 

「俺たちが最後か。」「待たせたようだ、申し訳ない。」

 

「問題ない。任務ご苦労だった。」

 

悲鳴嶼さんが労いの言葉をかけた。

 

「あいよ。甘露寺、時透、胡蝶は上弦とやり合ったらしいな?」

 

「うん、すごかったよ!なんかもう無理って感じだったけど、みんなで力を合わせて。ね、二人とも。」

 

「うん。」

 

「ええ、これまで隊士が負けていた理由がよく分かりました。あれに勝てたのは幸運でしたよ。」

 

頸を斬ると分裂、本体を殺しかけると合体してさらに強力になる。そして肝心の本体は小さ過ぎて見つけられない上、見つけたとしても逃げ足が速すぎる。炭治郎くんの嗅覚がなければ勝てなかっただろう。

 

「そうか、会議の後で聞かせてくれェ。にしても羨ましいことだぜ。なんで俺は上弦に遭遇しねえのかねェ。」

 

「こればかりはな、遭わない者はとんとない。」

 

特に鬼を嫌悪している不死川さんと伊黒さんは上弦と遭えず、残念そうにしていた。

 

「甘露寺、時透、胡蝶、その後体の方はどうだ?」

 

「あっ、うん!ありがとう!随分良くなったよ!」

 

「僕も…まだ本調子じゃないですけど。」

 

「私も概ね回復しています。」

 

各々自分の状態を報告した。任務に出られるほど回復はしていないけれど、鍛練することくらいはできるだろう。

 

「これ以上、柱が欠ければ鬼殺隊が危うい。死なずに上弦二体を倒したのは尊いことだ。」

 

「にしても、胡蝶。任務を一時休止すると聞いた時は何を言っているのだと思ったが…」

 

伊黒さんの言っていることは至極当然だろう。

 

「説明もせずに申し訳ありませんでした。呼吸に変化が起きてしまい、今までの呼吸法が使えなくなってしまっていたので、新しい呼吸を作る時間をいただいていました。」

 

「まあ、構わんだろう。結果的に上弦と戦って倒してんだからな。んで、その新しい呼吸はできたのか?」

 

不死川さんは新しい呼吸が気になるようだ。

 

「できましたよ。これなら私の力でも鬼の頸を斬れそうです。」

 

「そうか、そいつは良かったなァ。それも後で聞かせてくれ。そろそろお館様が来る頃だしな。」

 

 

その後すぐにあまね様が来た。

痣の謎はあまね様から聞くことになった。

 

痣を出す条件は、体温を三十九度以上かつ、心拍数を二百以上にするということだった。

普通に考えれば命に関わる重体だ。しかし実際に経験すると、むしろ体が軽くなるような感覚だった。

ここまでは何も問題なかった。最後の情報が問題で、痣が発現した者は例外なく二十五歳を迎えたときに命が終わるということだった。

 

柱合会議は特に問題なく終了した。問題は会議の後だ。冨岡さんは相変わらずの言葉足らずのまま帰ってしまった。

 

「全く、なんなんだあいつは…」

 

帰ってしまった冨岡さんの方を見ながら不死川さんは憤っていた。

 

「…ひとまず、冨岡さん抜きで話し合いますか…」

 

その後六人での話し合いの結果、一般隊士の実力底上げのために柱稽古をおこなうこととなった。

 

「では各々稽古内容を決めるとしよう…」

 

そう悲鳴嶼さんが言った後に

 

「その前に私から言いたいことがありますので良いでしょうか?」

 

「…胡蝶、言いたいこととは?」

 

「私は鬼舞辻を極限まで弱体化させるための薬の開発をさせていただきたいので、隊士の稽古は皆さんにお任せしてもよろしいでしょうか?」

 

上弦の肆であの強さなのだから、本調子の鬼舞辻と戦っても瞬殺されるのが目に見えている。

 

「承知。しかし、鬼舞辻はいつ来てもおかしくはない状況にある。時間の方は足りるのだろうか?」

 

「薬学に精通している方に協力を仰ぎます。その方が協力してくださればなんとかなるはずです。」

 

「胡蝶が言うその方とは誰なんだ?」

 

「伊黒さん、いえ、皆さんが納得されるかどうかは分かりません。私も実際には会ったことがありませんので。それを承知でお聞きください。

その方は珠世という鬼舞辻の呪いを解いた鬼です。」

 

「なに!?」「鬼だとォ!?」

 

みんな驚いていたが、特に伊黒さんと不死川さんは声に出すほどだった。

 

「はい。今回私は上弦の肆と戦い生き残りましたが、正直に申しますと死ぬ直前でした。戦闘を終えた時、足は動かず、腕は上がらない、息も絶え絶えになるほど追い詰められました。上弦の肆であの強さであれば、鬼舞辻と対峙しても瞬殺される可能性が極めて高いです。」

 

私の話をみんな真剣に聞いていた。

 

「あの戦いを経験したからこそ、使える手は全て使わなければならないと考えているのです。それに、これはお館様からのご依頼でもあります。」

 

「お前さんの言いたいことは分かったぜ。鬼舞辻を殺せば残党も死ぬだろうしな。お館様も仰るのなら信用できるんだろォ。まあ不本意だが、使える手は使うことに関しては俺も同意するぜ。だが、お前自身はそれで良いのか?相手は鬼なんだぞ、信用できんのかァ?」

 

不死川さんが同意しつつも信用できるのかと聞いてきた。言い方的に私の心配をしてくれているようだ。

 

「聞いた話によると、炭治郎くんが浅草で鬼舞辻と遭遇したとき、一人の一般人が知性のない鬼にされた。珠世さんはその方から鬼舞辻の呪いを解き、自我を取り戻させた。さらに、少量の血で生きられる体に変化させたそうです。普通の鬼ならばそのようなことはするはずがありません。

まあ、実際にこの目で見て改めて信用に足る方かを見極める必要はあると思いますが。」

 

信用する理由を話した。すると不死川さんと伊黒さんが

 

「チッ、また竈門か。あいつ、妹だけでなく別の鬼ともつるんでいやがったのか…」

 

「鬼殺隊をなんだと思っているのか…」

 

確かに炭治郎くんは、その辺りのことは聞かなければ全く話さなかっただろう。珠世さんの身の安全を優先した結果なのだろうけれど。

 

「確かに、彼のおこないは良いとは言えません。しかし私は竈門兄妹が信用に足る人物であると確信しています。

あの里での戦いで、お二人とも命を賭けて鬼を倒しました。禰豆子さんに至っては自分が陽の光に灼かれながらも、上弦の頸を斬ることを優先しました。結果的に陽の光を克服しましたが、もしそうでなければあのとき塵になって消えていたでしょう。」

 

二人を信用する理由を話すと、あの場にいなかった方々は少し考えていた。

 

やがて最初に言葉を発したのは伊黒さんだった。

 

「あの胡蝶が言うんだ。少しは認めてやろう。だが実力は認めない。俺がこの目で判断してやる。」

 

相変わらず、素直に言えない伊黒さんだった。次に言葉を発したのは不死川さんだった。

 

「ナメたガキめ…。鬼殺隊なら命を賭けて当然だ。稽古に来たらボコボコにしてやる。」

 

この方も相変わらず、素直に言えない人だ。

最後に悲鳴嶼さんだ。

 

「私も…稽古時に、この目で見て信用に足る存在か…見極めるとしよう…」

 

端的にそう言った。

 

「それにしても胡蝶。随分と竈門炭治郎に肩入れするのだな。」

 

「ええ…まあ色々ありまして…」

 

伊黒さんに痛い所を突かれ、言葉がたじたじになった。

炭治郎くんとの関係性が露見する分には構わないけど、自分から言うようなことでもないのでわざわざ言うつもりはない。

 

「まあそっちは一旦良いとして…それで、新しい呼吸はどんなもんだ?」

 

不死川さんは早く聞きたいと言わんばかりに詰め寄ってきた。流石は強さに貪欲な人だ。

 

「呼吸は…『雪の呼吸』と名付けました。」

 

「雪か…水の派生なのか?確か蟲の呼吸も水の派生だったよな。」

 

「はい。私は水の呼吸に近いものと相性が良いみたいです。水の呼吸は使えませんが…」

 

厳密に言えば使うことは可能なのだ。しかし一撃の威力、斬り方などの理由で、私では使い物にならなかった。花の呼吸も同様だ。

 

「それと、風の呼吸が合わさっています。」

 

「オメェ…なんか色々とスゲェな…作れんのは毒だけじゃねぇのな…」

 

不死川さんは褒めているのか、呆れているのか。分からなかったが、まあどちらでも良い。

 

「技は見せてくれんのか?」

 

「勿論です。連携のためには仲間を知る必要がありますから。」

 

上弦の鬼はまだ三体残っている。今後は柱複数人で戦うことになるだろう。少しでも連携がとれるようにしておきたい。

 

「ですが、ここでは出来ませんから、皆さん蝶屋敷にいらしてください。稽古前の検診もしておきたいですし。」

 

稽古内容を決めた後、冨岡さんを除いた柱の方々を蝶屋敷に招いた。

 

鬼の被害が激減したとはいえ、完全になくなったわけではなく、軽傷を負った一般隊士は蝶屋敷で治療している。

そんな方々が複数人の柱を同時に見たらどうなるか。

 

「は…柱だ…六人も…」「は…は…柱…」

 

大半の隊士は怯えていた。ちなみに伊之助くんなら「猪突猛進〜!」と言いながら突進してきそうなものだけど、

 

「伊之助、伊之助、伊之助、伊之助!」

 

「いもすけ!いもふけ!」

 

「親分、伊之助!」

 

「おやぷん、いもすけ!」

 

「伊之助、伊之助、伊之助、伊之助!」

 

今は禰豆子さんに自分の名前を覚えさせることに必死のようだ。柱の皆さんはそちらに注目していた。

 

「何やってんだァ…あいつ…」

 

「喋れるようになった禰豆子さんに自分の名前を覚えさせてるみたいですよ。」

 

「どっちもかわいい〜!」

 

「と言うか…なんだあの被り物は…人間なのか…?猪なのか…?変な奴だ…」

 

「純粋な子どもとは尊いものだな…」

 

「伊之助くんは炭治郎くんと同じ年齢ですけどね…あの子もかなり独特な呼吸を使いますよ。見た限りでは風の呼吸の派生かもしれませんね。」

 

荒々しい、というと語弊があるかもしれないけど、その点で風の呼吸に近いものを感じる。

 

「ほぉ?俺の稽古に来たときはみっちり鍛えてやらァ。」

 

「私から見た感じだと、不死川さんとの相性は良いと思いますよ。継子にしてあげたらどうですか?」

 

伊之助くんの性格なら不死川さんが引くくらい無限に稽古をしようとするだろう。

 

「稽古のときに見極めてやる。俺のお眼鏡に叶うかどうかをなァ。伊之助だったな。覚え…る必要はねェな。見りゃ分かるか…」

 

「ふふっ。猪の被り物ですからね。」

 

と話しながら稽古場…ではなく中庭に来た。呼吸を使うため、建物に何かあったら後が面倒になる。

 

呼吸の型を柱の方々に披露した後はみんなの検診をおこない、全員健常だったので帰っていった。

 

不死川さんだけは少し残っていた。

 

「不死川さん、どうかされましたか?」

 

「毎度毎度聞いてるが、今回は元気そうだな…」

 

そう、不死川さんは私の姉を知っている。いや、今なら分かる。あれは好意を持っていたに違いない。だから妹である私を気にかけてくれる。

姉が殺されてから、不死川さんは私と合うたびに『元気かァ?』と聞いてくるようになった。最初は姉が死んだことに対して心配してくれていた。しばらくしてからは私が毒を摂取していたことで、顔色が悪かったのを心配していたのだろう。

最近は毒の摂取も止めているし、ここ最近は炭治郎くんのお陰で元気にできている。

 

「何があったのかは敢えて聞かねェっつうか聞くまでもねェんだが…

俺は稽古でアイツがお前に見合うかどうかを見定めさせて貰うとするわ。」

 

「バレていたんですね…」

 

「まあ、伊黒に肩入れするとかなんとか言われてたときの反応でなんとなくなァ…」

 

不死川さんも人のことを良く見ている人だ。あれだけで気づかれるとは思わなかった。流石は長男といったところだろうか。

 

「まあ頑張れよ、色々と。あとこれ渡しとくわ…」

 

かなり大きいものを渡された。中を見ると西瓜(スイカ)だった。

 

「あら、玄弥くんに渡しておきますね。」

 

不死川さんは顔を背けながら、何も言わずに足早に帰っていった。

 

 

柱の方々が帰った後、すぐに炭治郎くんの病室に行った。

 

「ただいま戻りましたよ、たんじ…ろ…」

 

炭治郎くんの寝台(ベッド)の左後ろにある窓が割れていた。

 

「あっ…しのぶさん…おかえりなさい…」

 

「胡蝶様…これはその…」

 

「すみませんが、何があったのか説明してもらえますか…?」

 

玄弥くんは我関せずを貫いていた。

炭治郎くんと隠の後藤さんは怯えながら説明してくれた。

ほんの少し前、伊之助くんがここから窓を割って入ってきたそうだ。

 

「はあ…まったく…一度本気で叱っておかないと…

…あっすいません。ついうっかり。」

 

昔の自分が少し出てきてしまった。

二人はさらに怯えていた。そんなに怖いのだろうか。いや、今のこの状況だからこそだろう。

 

「胡蝶様も帰って来られたし、俺は出てくわ。炭治郎、風さんの弟、胡蝶様…は前より元気そうだから心配ないかもだけど、体を大切に。

…にしても噂以上だったなぁ…あの刀鍛冶…あれで穏やかだったのか…?」

 

後藤さんは病室を出ていった。炭治郎くんが刀を持っているから、鋼鐵塚さんと会って、あの激昂を見たのだろう。独り呟きながら帰っていった。

 

「胡蝶さん…炭治郎と部屋を別にして欲しいっす…」

 

玄弥くんは随分お疲れのようだ。

理由は大方予想がついた。炭治郎くんの周りには色々と変わった人が多い。鋼鐵塚さんと伊之助くんが来たことで、五月蠅(うるさ)くて体を休められないのだろう。

 

「構いませんよ。ごめんなさい、配慮すべきでしたね。移動の準備をしますから少し待ってください。あとこれ、お見舞い品ですよ。」

 

先刻渡された西瓜を切った状態で渡した。

 

「西瓜…誰がこれを…」

 

「さあ?私には分かりませんねぇ。あっそうでした、顔が傷だらけの人だったかもしれません。」

 

私はニコニコしながら部屋移動の用意をしにいった。

そうして玄弥くんを別の病室に移動させた。

 

すると部屋には炭治郎くんだけになる。

今は鬼の被害が極端に減っているので重症の隊士も滅多に来ない。

 

「炭治郎くん、体の調子はどうですか?」

 

「かなり良くなりました。まだ鍛練はできそうにありませんが…」

 

「そうですか。柱稽古は少し遅れて参加になりそうですね。」

 

稽古は三日後からだけど、一週間近く遅れそうだ。

 

「柱稽古?もしかして伊之助が言っていた合同強化訓練ですかね。」

 

伊之助くんは禰豆子さんに名前を覚えさせながらも、私たち柱の会話をしっかり聞いていたみたいだ。窓を割ったこととは全く関係ないけど…

 

具体的に柱稽古についてを話した。

一番目は宇髄さんの基礎体力向上訓練。

二番目は時透さんの高速移動訓練。

三番目は蜜璃さんの柔軟体操。

四番目は伊黒さんの太刀筋矯正訓練。

五番目は不死川さんの無限打ち込み稽古。

六番目は悲鳴嶼さんの筋肉強化訓練。

 

「冨岡さんとしのぶさんはどんな稽古を?」

 

「冨岡さんは何処かへ行ってしまって…

私は…ごめんなさい、鬼舞辻対策の薬を開発しなければならないので稽古は参加しないんです。」

 

「そうですか…」

 

想像以上に落ち込んでしまった。冨岡さんのこともだけど、余程私との稽古が楽しみだったのだろう。

 

「薬の開発が終われば時間が取れますから、その後であれば構いませんよ。まあ時間が取れても、炭治郎くんとカナヲだけになると思いますが。そもそも各柱の稽古を突破できるかどうかですからね。」

 

一般隊士に割く時間は恐らくない。そしてもう一つの理由は、最後である悲鳴嶼さんの稽古は単純ながらも一番難しい稽古だからだ。

 

「頑張ります…!」

 

「お互い頑張りましょうね。」

 

炭治郎くんは柱稽古、私は薬の研究・製作。お互いに苦労するだろう。

 

「…そういえば、俺としのぶさんの関係が鬼殺隊内で広まったみたいです。」

 

「こちらも、柱の方々に勘付かれましたよ。全員にかどうかは分かりませんが。」

 

「そうですか。なら…」

 

炭治郎くんは手を伸ばしてきて、私は抱き寄せられた。

 

「これからは人目を気にせず触れていいですか…?」

 

「えっ…!?えっと…あの…」

 

不意に抱き寄せられたので、驚きで声が震えてしまった。

炭治郎くんは人前でくっついても平気な人らしい。私はあまり平気ではないので言葉がでなかった。

 

「…駄目ですか…?」

 

「…駄目ではないですが…手を繋ぐのを想像しただけでも…」

 

人前で手を繋ぐと想像しただけで恥ずかしくなり、蜜璃さんの如く顔を真っ赤にしてしまった。

炭治郎くんの顔を見ると、満面の笑顔を浮かべていた。

 

「…その顔はなんですか…」

 

「いえ、しのぶさんが凄くかわいかったので…つい…すみません。」

 

少し怒った匂いを感知して謝罪してきたけれど、変わらず笑ったままだった。

 

「…馬鹿にされてるような気がします…」

 

「そ、そんなつもりは…」

 

暫くすると流石に申し訳ないと思ったのか、炭治郎くんの顔から笑顔が消え始めた。

 

「…良いですよ。許してあげます。人前でも手を繋ぐくらい…なら構いませんよ。」

 

「良いんですか!ありがとうございます!」

 

抱き寄せられた体を離して言うと、今度は目を輝かせて口角を上げ、私の手を握ってきた。

手を見ただけでも分かるほどに怪我が酷かった。

 

「…早く傷を治して、稽古を終わらせてきてくださいね。」

 

「はい。なるべく早く終われるように頑張ります!」




【あとがき】

伊之助の刷り込みや窓割りなど、時系列がぐちゃぐちゃな気がしますが、二次創作なので大目に見てください。

この時点でしのぶの鬼(禰豆子と珠世)に対する嫌悪は9割以上消えています。
理由としては、炭治郎の鼻は嘘をついているかどうかを判別できて、その炭治郎が信用しているのだから問題ないだろうということです。愈史郎のことはまだ知りません。

しのぶの痣の形状については、皆さんのご想像にお任せします。
蝶柄かなあ…と考えたりはしましたが、他の痣はシンプルなデザインなので蝶柄は複雑過ぎる気がするんですよね。

しのぶは犬や猫などの毛の生えた動物が苦手だそうです。
原作で愈史郎と仲が悪い描写がありましたが、鬼だからという理由以外に、愈史郎が茶々丸を嗾けたりしたのかなぁ…なんて思ったりしてます。






雪の呼吸
水の呼吸が派生して、風の呼吸と合わさった。

壱ノ型 垂り雪(しずりゆき)
『蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ』のように高速で横切ると同時に攻撃する。
状況によって『突き』『斬撃』を使い分ける。

参ノ型 風花(かざばな)
相手の隙を斬り込む連撃技。
隙が多ければ多いほど斬撃の数は多くなり、隙が大きければ大きい程強い斬撃になる。

肆ノ型 銀華白風(ぎんかしらかぜ)
『水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦』のように体を捻り、自身の周囲に強力な斬撃を放つ。
防御技としても使える。


しのぶ本来の性格(少し短気な性格)が風の呼吸に合うと思ってこうなりました。
水の呼吸に関しては、蟲の呼吸の大元が水の呼吸だからという理由です。

いくつか技は作りましたが、先は未定なので全部出るかは分かりません。
念のため、今までで出た技は毎度後書きに記載しておきます。
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