鬼を斬る蝶と蝶を救う太陽   作:yuki_06090570

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蝶と鬼の共同研究

三日後、柱稽古が始まり、伊之助くんは上機嫌で、善逸くんは気怠そうに出発した。

 

炭治郎くんはというと、

 

「お館様から手紙をいただいたんですけど…」

 

と言って手紙を見せてきた。内容は冨岡さんの件だった。

 

「冨岡さんと話をしてきます。」

 

「分かりました。傷はまだ治っていませんし、十分気をつけて行ってくださいね。」

 

「はい。いってきます!」

 

炭治郎くんが冨岡さんの屋敷に行ったその日の夜、珠世さんともう一人の少年?が屋敷にやってきた。

 

「こんばんは。炭治郎くんからお聞きしているとは思いますが、胡蝶しのぶと申します。」

 

玄関前でお二方に自己紹介した。勿論、帯刀などはせずに。

炭治郎くんは人が良いとはいえ、信じるに値する相手かどうかを見極める力はある。彼に付け入ろうとするだけの者ならばここには来れなかったはずだ。さらに、お館様もお認めになっているのだ。まず問題はないだろう。

 

「はじめまして。私は珠世と申します。彼は愈史郎と言います。愈史郎…挨拶なさい。」

 

「…愈史郎だ…」

 

愈史郎さんは鬼狩りが嫌いなようでそっぽを向いていた。

 

私はどうしても聞きたいことがあった。

 

「…聞いてもいいでしょうか?」

 

珠世さんは頷く。

 

「何故、鬼である貴女が鬼舞辻を倒そうとしているのですか…?」

 

少し長くなりますが…と言われたので、先に屋敷内へ招いた。その後珠世さんは話し始めた。

 

鬼になったのは四百年ほど前。人であったときは病弱で、長くは生きられない状態であった。

子供が大人になるのを見届けたかった珠世さんは鬼舞辻からの提案を受け、鬼となった。しかし鬼となった直後は飢餓状態で自我が定まらず、気がついた時には自らの手で夫と我が子を手にかけていた。その後自暴自棄になってしまい、大勢の命を奪ってしまった。

 

「…私は地獄に堕ちるでしょうが、せめてもの償いとして鬼舞辻を道連れにしなければならない。これが、鬼舞辻を倒そうとしている一つ目の理由です。」

 

「一つ目の理由…では二つ目は?」

 

「とある鬼狩りとの約束です。名は継国縁壱、炭治郎さんと同じ赤い髪に赤い瞳を持っていました。縁壱さんは鬼舞辻をあと一歩のところまで追い詰めましたが、あの生き汚い男は逃亡しました。その時に約束したのです。いつか鬼舞辻を倒すと。」

 

「鬼舞辻をあと一歩のところまで追い詰めた…その方の刀の色は…」

 

「漆黒でしたね。」

 

間違いない。日の呼吸の使い手…始まりの呼吸の剣士だ。炭治郎くんの家系、竈門家は日の呼吸をヒノカミ神楽として継承していたのだ。

 

「ですが、戦いの間は赫くなっていました。」

 

「赫い日輪刀ですか…」

 

そんな話は聞いたことがない。もしかすると日輪刀にはまだ秘密があるのかもしれない。

 

「それと、これは言っておかなければなりません。鬼舞辻の弱点は頸ではありません。いえ、日輪刀では疲弊させることはできても殺すことはできないでしょう。あいつの弱点は陽の光だけと考えた方がよろしいかと。」

 

「やはり…陽が当たる場所に留めなければならないのですか…なんとしても薬を完成させなければなりませんね。早速ですが、始めましょう。」

 

私は立ち上がり、

 

「その前に、色々と勘繰ってしまい申し訳ございませんでした。」

 

私は珠世さんと愈史郎さんに謝罪した。それを見て珠世さんは驚いていた。愈史郎さんも謝罪されるとは思っていなかったようで、同じく驚いていた。

 

炭治郎くんから話を聞いて信用に足る方だと理解しているつもりだったけど、いざ対面するとやはり少し警戒してしまった。しかし鬼舞辻に報いると言ったときの表情はとても真剣だったし、名前を言っても呪いが発動しなかった。だから改めて信用できると確信し、疑ったことを謝罪した。

 

それからは薬の開発を進めていくこととなった。

 


 

義勇さんの過去を聞き、その上で説得した後、俺は義勇さんと『ざる蕎麦早食い競争』をしていた。結果的に義勇さんが情けをかけてくれたお陰で胃がはち切れずに済んだ。

 

「稽古に関してなんだが、胡蝶に関しては聞いてなかったな。胡蝶は何を教えているんだ?」

 

「しのぶさんですか?鬼舞辻を弱体化させるための薬を開発するから、隊士の稽古はできないと言っていましたよ。」

 

「そうか。そういえば炭治郎、お前と胡蝶とはどういう関係なんだ?」

 

「ぶは!?」

 

不意に聞かれて蕎麦が口から飛び出てしまった。義勇さんは柱合会議の途中で帰ったと聞いた。まさか義勇さんが知っていたとは…

 

「出すなよ。このままだとお前が負けるぞ。」

 

「そういうつもりで出した訳じゃ…」

 

「噂を少し耳にした。それで、どうなんだ?」

 

何も聞いていないのに知っている理由を教えてくれた。寡黙な代わりに察する力が強いのだろうか。それとも偶然なのか。

 

「…ありがたいことに、恋仲になってます。」

 

「そうか、よかったな。頑張れよ。」

 

「はい!ありがとうございます。」

 

そうこうしているうちに蕎麦を食べ切り、義勇さんは柱稽古に参加することとなった。

 


 

「ただいま戻りましたー!」

 

炭治郎くんが冨岡さんの屋敷に行った翌日、冨岡さんを連れて蝶屋敷へと帰ってきた。

 

「おかえりなさい、炭治郎くん。あら、冨岡さん、目の下に隈がありますよ?炭治郎くんに一日中声かけられてたんですか?」

 

「…その通りだ…」

 

冗談のつもりで笑いながら言ったのだけど本当だったようで、かなり憔悴していた。

 

「…冗談のつもりで言ったんですが、本当だったんですね…炭治郎くんも大物ですね…」

 

かなりお疲れのようだったので、ひとまず屋敷に招き入れた。

話を聞いたところ、遅れて柱稽古をおこなうことになったという。

 

「冨岡さん…残念ですが、もう手遅れかと…」

 

「えっ!?手遅れ?」

 

炭治郎くんは私の言ってる意味が分からず困惑していた。冨岡さんは察しがついてる様子だ。

 

「炭治郎くん。私の時間が空いたとしても隊士に稽古をつけられないと言った理由を覚えていますか?」

 

「確か、悲鳴嶼さんの稽古がとんでもなく過酷だって…」

 

「そういうことです。つまり悲鳴嶼さんの次に稽古を用意しても、ほとんどの隊士が悲鳴嶼さんの稽古を突破できないのですよ。」

 

「どれだけ過酷なんですか…その稽古…」

 

稽古する前から若干卑屈になってしまった炭治郎くんであった。

 

「まあ、柱の方々との稽古はできるでしょうね。できれば私もそちらには参加したいと思っていますから。一応鴉を飛ばしておいたほうが良いのでは?」

 

「そうだな。残りの五人に…」

 

そう言って冨岡さんは自分の鎹鴉を心配そうに見た。冨岡さんの鎹鴉はかなりご年配のようで、冷静沈着な冨岡さんも度々焦らされているらしい。

 

「指令ジャ…ギユウ…」

 

と言いながら炭治郎くんの頭に乗っている。

 

「指令ジャネエシ、ソイツハギユウジャネェ…コノワタシノ弟子ダ…」

 

炭治郎くんの鴉は呆れていた。というか炭治郎くんの鴉は炭治郎くんのことを弟子だと思っているらしい。

これはかなり心配だ。手紙が届くかどうかも怪しいのでは…

 

「…私と炭治郎くんの鴉も遣わせますか?」

 

「助かる、頼む。」

 

冨岡さんの稽古参加の件と薬の開発が終わり次第私も参加することを手紙に記し、鴉を飛ばした。

 

「ところで、お館様の屋敷で言っていた『俺はお前達と違う』って何なんですか?」

 

不死川さんは見下していると解釈をしていたので、詳しく説明しないと誤解されたままになってしまう。

 

「…言葉通りなのだが…」

 

「義勇さん…俺に話してくれたように義勇さんの過去を説明すれば良いんですよ。少し長くなっても良いですから!」

 

炭治郎くんに諭されて、最初から説明してくれた。

同じ育ての下で修業していた錆兎という少年が最終選別で命を懸けて助けてくれた。

最終戦別の初日に気絶してそのまま七日経っていたから、最終選別を突破したとは言えない。

柱になるべきは錆兎であって自分ではなかった。

だから柱の皆とは違うのだと。

 

私はそれを聞いて呆れるしかなかった。

 

「…きちんと説明すれば余計な誤解は受けなかったのではないですか…流石に口下手が過ぎますよ…」

 

説明をしておけば、あれ程嫌われるようなことはなかったはずだ。

 

「…ひとまず冨岡さんの件は終わりましたね。炭治郎くんは病室に戻って早く体を治してくださいね。」

 

「はい。分かりました。ではお先に失礼します。」

 

そう言って病室に戻っていった。

 

「胡蝶。」

 

「なんですか?」

 

「…おめでとう。」

 

率直に祝ってきた。何に対する祝いかは察しがつく。炭治郎くんとの関係についてだろう。

 

「…炭治郎くんから聞いたんですか?」

 

「ああ…噂が本当かどうかを聞いた。」

 

「最近色んな人にバレてきましたね…まあ別に構わないのですけど……ありがとうございます。」

 

その後、冨岡さんは自宅へと帰っていった。

 

そんなこんなで炭治郎くんも完治し、明日から柱稽古に参加できるようになった。

その日の夜、炭治郎くんはいつもの屋根の上で瞑想していた。私は一旦休憩を貰っていた。人である以上、鬼のお二方より体力が持たないのだ。

 

「いよいよ稽古ですね。」

 

「はい。稽古は良いんですけど…しのぶさんと暫く会えなくなるのが辛いです…」

 

柱稽古に出発すれば、おおよそ一ヵ月は帰って来れなくなるだろう。

 

「私も寂しいですよ。ですから頑張って早く稽古を終わらせて帰ってきて下さい。私も手早く薬の研究開発を終わらせますから。」

 

そう言って炭治郎くんを抱きしめた。初冬ということもあり、人肌はかなり温かかった。

 

「しのぶさん…」

 

「暫く会えないから甘えさせてもらいますよ。君のおかげで私は頑張れるんです。」

 

「俺もしのぶさんのおかげでもっと頑張れます。」

 

そう言って炭治郎くんも抱きしめ返してくれた。少し冷えていた背中側が炭治郎くんの手で温かくなった。

 

「君のお陰で私と姉の夢である、鬼と仲良くすることができました。愈史郎さんは少しぎこちないですが…

休憩中は禰豆子さんも遊んでくれているんですよ。金魚に夢中みたいですけどね。」

 

「…ありがとうございます、炭治郎くん。愛していますよ。」

 

抱きしめたまま、耳元でそう囁いた。

 

「お、俺もです…あ…愛してます…」

 

炭治郎くんは恥ずかしそうにしながらも、頑張って言ってくれた。

 

それからは、休憩が終わるまでしばらく抱き合ったままでいた。

 

「おやすみなさい、炭治郎くん。私は作業に戻ります。」

 

「おやすみなさい。あまり無理しすぎないでくださいね。」

 

久しぶりの夜の逢瀬(おうせ)はこれで終了した。

 

翌日、

 

「では、いってきます!」

 

「行ってらっしゃい。頑張ってきてください。」

 

「はい!」

 

炭治郎くんは元気そうに柱稽古を開始した。

 

 

「お前、炭治郎と恋仲なんだな。」

 

研究の最中、ふと愈史郎さんが言ってきた。愈史郎さんから話しかけてくることは珍しかったのと、話の内容で驚いてしまった。

 

ちなみに珠世さんは休憩のため、少し席を外している。なお、お二方の安全のため、屋敷の窓は一時的に内と外から木の板で挟み、追加で窓掛け(カーテン)をしている。

 

「え…ええ、そうですけど…それがどうかしましたか?」

 

「いや、成就する恋ってのは羨ましいもんだなと思っただけさ…」

 

物思いに耽っているようにそう言った。

 

「愈史郎さんは珠世さんがお好きなんですね…」

 

「ああ…だがあのお方は無惨に使う薬と一緒に吸収される…俺にはどうすることもできない…それに俺は、俺の血鬼術は視覚を共有したり、姿を眩ませることができる。珠世様が喰われた後でもあんたたちの力になるべきなんだ。だから、俺から想いを告げるわけにはいかない。珠世様の枷には死んでもなりたくない…」

 

『鬼は悲しい生き物だ』

炭治郎くんの言っていたことが少し理解できた気がした。

 

「愈史郎さんはお強いですね…」

 

「あんたもな。匂いからして、元々敵討ちで自分を喰わせようとしてただろ。」

 

鬼は藤の花の匂いに敏感なようで、匂いが薄れた今でも気づいたようだ。

 

「…はい。当時の私には頸を斬る力がありませんでしたから。炭治郎くんのおかげで変わることができたんです。」

 

「そうか。…俺が言うのもなんだが、後悔はないようにな。…手が止まってしまったな、作業を再開するぞ…」

 

「…そうですね。」

 

少し、お互いを認めあうことができたような気がした。




【あとがき】(長いです)

今更ですが『炭しの』『しの炭』どちらも良いですよねえ。年齢差も三つで、そこまで違和感もないですし。まあ炭治郎は15、16歳なんですが…

個人的にぎゆしのは微妙なんですよね。義勇はしのぶに対しては「話しかけてくれる」程度のイメージ、しのぶは「ちょっかいかけてる」程度のイメージで恋愛感情は無いような気がします。
那谷蜘蛛山での一件ですが、そもそも好意を持ってるなら顔面にナイフを刺そうとか思わないかと…

炭カナは公式ですが、終盤まで炭治郎がカナヲに好意を寄せてる雰囲気が全くないんですよね。

正直炭しの以外思いつかないんですよ。過去のしのぶを知らない人の中で本心を見抜いたのは炭治郎だけですし、夢を託すとか期待してるとか言ってますし。炭治郎も顔を赤くしてましたし。距離が近すぎただけかもしれませんが。


それはそうと、次回は柱稽古の開始で、炭治郎視点がメインになる予定です。
本来まだその稽古に居ない主要キャラが居たりと、柱稽古の時系列も結構ぐちゃぐちゃになると思います。

原作でしっかり言及されていませんので、勝手な解釈で薬の研究場所は蝶屋敷にしています。



ちょっとした考察

調べたら既出でしたが、日の呼吸が黒刀の理由は全ての呼吸(色)が混ざっているからなのかもしれませんね。
熱の吸収・放熱が他の色より強いというのもあるかもしれません。こちらも既出でしたが…

ちなみに『霞の呼吸』は白刀ですが、光(光の三原色)が全て混ざると白色になります。色と光で相違点はありますが、ある意味では日の呼吸といえるかもしれませんね。
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