──命からがら逃れてきたユニクロン頭部の闇の中、アルファQは硬質なその身体を小さく縮め込む様にしてうずくまっていた。
ガルバトロン。あの暴虐の王。
ユニクロンに喰われ物言わぬガラクタと化し、命永らえるためにはこそこそとエネルゴンを盗み食いするしかなかったはずのあの男。
……やつをこのままにはしておけない。
野放しにすれば、必ずや我らの悲願に立ちはだかる。
薄緑の装甲の中、アルファQの“人格”達は目まぐるしく意見を巡らせる。
だが、ユニクロン胴体部を奪われ、無二の忠臣メガザラックも奴の手の内に落ちた。命ある限りこちらの為に力を尽くしてはくれるだろうが、自由に動かせる戦士が手元から離れてしまったのは本当に手痛い。
新たな戦士が必要だ。
我らに仕える、忠実なる新たな戦士が。
焦燥に浮かされ、鋏のような両腕をカシカシと動かしながらあたりを見回したアルファQの目に、闇の中に点在する小さな光の数々が映る。かつてユニクロンの齎した戦乱の中で命を失い、ユニクロンに吸収された者達の魂たるスパークだ。
やり方は分かっている。どれでもいい、スパークにエネルゴンを注いで再び生命と身体を与えてやれば良いだけだ。
……だが、問題は残された僅かなエネルゴン、どのスパークに与えてやるべきか。
逡巡する中、ふととあるスパークに目が留まった。数ある輝きの中、どこか儚げに明滅する燐光を放つ、小さな一粒。
──きぃらきら、きれい!
橙の顔が歓喜の声を上げた。
──この輝き、間違いない。気高く強き者だったのだろう。正に、我らが戦士に相応しい。
白の顔も頷く。
だが、
──ダメだ、これは。
緑の顔の落胆の声が響く。間髪入れず、青の顔の静やかな声がそれに重なった。
──ひどく傷つき果てている。今にも崩れ、消えてしまいそうだ。これでは今ある全てのエネルゴンを与えても、しっかりとした実体を結ぶことはできない。
ああ、と全ての人格が落胆の息をついた。
ここに流れ着くまでに一体どんな目にあったというのだろうか。青の顔の述べた通り、その翡翠の輝きの輪郭は削れ、ひび割れ、今にも砕けてしまいそうだった。
淡くも気高いその光は、死に瀕した矮星の放つ最期の輝き。今にも燃え尽きんとする灯火の絶命の光に相違なかった。
しかし、
──だいじょうぶ。
幼い声が割って入った。
滅多に口を開くことのない、“第五の人格”の声だった。
──このこはきっと、どこにいたっていっしょうけんめい、やくめをはたしてみせるよ。
だってこんなになっても、ひっしにいきようとしているのだもの。
故郷の星を奪われ、自身も巨星に飲み込まれ。
突如降りかかった不条理に傷つき怯えて心の深層に逃げ込んだまま、表に出なくなってしまった最も幼い人格の祈りにも似た声に虚を突かれ、全ての人格が静まり返った。
しん、と音の絶えた空間の中、スパークの光だけが明滅を続ける。暗がりの中灯るそれらは、宇宙の闇を点々と飾る星々の瞬きに似ていた。
やがて、徐に。
孤独な亡星の王は両の腕を掲げ上げた。
見せかけの夜空、その中の小さな光に手を伸ばす。
今にもかそけく掻き消えそうな、しかし胸の奥まで沁み入るようなその輝きは、重ねた手の中確かに拍動を返してよこした。