『……暇だな』
父である先代魔王が殺されてから百年。親のスネを齧って生きていたけどそうも行かなくなって来た。何故なら、今年新たな勇者が生まれるからだ。その勇者を倒さなければ、我々魔王軍は滅ぼされるだけ。なら、やられる前にやらなくてはいけない。
『じゃあ、頑張りますか』
また明日ね。
別に明日でも問題無いと思う。それに今日や明日来るのなら私だって焦るけど、流石にそんな急な話は無いと思う。だって今年産まれるんだし?オムツも取れてない赤ん坊が、ハイハイしながら魔王城に攻めて来るのは絵面がヤバすぎる。
「ハーフ様、今日もまた引き篭もるのですか」
『失礼だなぁ、守りを固めてるんだよ。知らないの?勇者が復活するんだよ?もし、勇者が来た時、私がいなかったらどうすんのさ』
またいつものかみたいな顔を側近はするのを見ないふりして、私は会話を続ける。
『だから、私は今日も此処にいる。別に外に出たくない訳じゃないし、怖い訳でも無いから』
「……はぁ。分かりましたよ、なら外には出なくて良いので、今日こそこのスライム倒して下さいね。ハーフ様」
そう言うと、側近は懐からビンを出して開けた。すると、ドロッとした塊が地面に落ちて嫌な音を立てた。これはモンスターですわ。
「じゃあ、自分はあっちで仕事をするんで」
『はい』
側近はそのまま立ち去ろうとして、振り返ってこっちを見た。
「今日の晩ご飯どうします?」
『ドロッとしてない奴が良い』
そうリクエストすると、ただ分かりましたと言って部屋を去って行った。
いなくなった事を確認して、私はスライムに視線を向けた。スライムもまた私を見ている。上の方にはレベル1と表示されていた。これは、私が持つスキル魔王の目の効果で相手のレベル、ステータスがわかるスキルである。が、弱点として同レベル。または、それ以下の物しか見る事が出来ない。
可愛いな。
つぶらな瞳を見て我慢出来なくなった私は、そっとを手を伸ばしてみる。抵抗も無く、柔らかいゼリーの様なヒンヤリとした感触が私の手にまとわりついた。
こんな可愛い者を殺せる訳が無いと思う。だからこそ、私はいつまで経ってもレベル1なんだと言われればそうなんだけど。この可愛さを犠牲にレベルを上げるなら、上げなくても良いんじゃないか?と思う。勇者だって、もしかしたら此処に来る途中で力尽きるかもしれないし。
扉が開き、誰かが入って来る音がした。どうせ、側近だろうと思い気付かないフリをしていると。
「おい。お前が魔王だな!俺は勇者!お前を倒しに来た者だ!!!」
大きな声が部屋に響いた。声の主は、そこら辺の村人の子供だろうか?それっぽい格好をしている。見た所、勇者が持つとされている聖剣を持っている様子も無く、ステータスも平均以下でレベルが1。
『ほう、面白い。それで私を倒せるとでも?』
だから私は怪しく笑って子供を煽る。どうやって此処に来たのかは知らないが、少し時間を潰せば側近が来るだろう。
「あぁ!なんか、神様が『今回の魔王は引きこもりのザコだからレベル1でも運が良ければやれると思いますよ』って言ってたからな!覚悟しろ!魔王!!」
覚悟しろって言われても何もしてないんだけど。まぁ、仕方無いか。今までの、親とかがやった過去の悪事は消せないし。それを言われると仕方無い。
考えている最中にも、自称勇者は叫びながら私に殴りかかって来ていた。考え事している時の癖で、手にあった物を触る癖があった私は。手にあったスライムを揉んでいたら滑り、手から離れた。そのままスライムは勢い良く。
「げ」
勇者に投げつける形になり、顔に当たってしまった。必死に取ろうとしているが、あぁなってしまうと中々取れない。少しすると、勇者は倒れ動かなくなってしまった。
勇者を倒したお陰で、私にほんの少し経験値が入った。多少の申し訳なさはあるけど、死にたく無いので生きれて良かったと思う事にした。
『おー勇者よ。死んでしまうとは情け……あっ、突っ込まないんですね。ハイハイ、見てましたよ。そうですね、アドバイスとしてはやっぱり早すぎましたね。魔王城まで転送させた私が言う事では無いですが』
じゃあ俺はどうすれば良いんだ?
『そうですね、強くなるか、仲間を作るか。または武器を集めるか。ここら辺ですかね』
わかった!取り敢えず、筋トレすれば良いんだな!
『まぁ、間違っては無いですが』
ありがとう!!
『本当に大丈夫ですかね……あんまり死なないでくださいよ?色々面倒くさいんですから』
だいじょーぶ大丈夫!俺、勇者だし。