教育実習生オンボロ、銃と青春の世界へ(試投稿) 作:北アフリカ大洋
―あなた達はなんで、
ガシャァァン‥シュタッ
硝子の破片と共に、人気の無い路地裏に降り立つ少女。即座、駆けたそれを追って降り注ぐ弾の雨。
飛び降りた建物に再び駆け込むと、サブマシンガンを小脇に挟み…
(来る、なら‥)
ゴム手袋を嵌め、外の路地を睨み‥
(止まって、もらわないと!) ウィィィィ‥
懐から取り出したスタンガンが唸り声を上げる。
放電を始めるスタンガンの先を照準代わりに外を睨みつづけ‥
「!!」 バチィッ
キュゥッ 「ッぐあぁ‥」
瞬間、身を翻し開いた空間を飛び去る銃弾。
反撃に放たれた弾はスタンガンの電撃を迎え連れて翔び発ち、それは建物の影を飛び出して
スタンガンを下ろし真顔でそんな彼の気絶を見届ける少女の背後、続いて飛び降りた者たちが悟られまいと体勢を静かに整え…
「残、念!」 「合流っと。」 タタタタタタ
急襲する横殴りの弾丸の雨に圧されて逃げに移ろうとし、次々に力尽きて沈んだ。
少女が振り返れば親しげに手を上げて歩み寄る
後方の一人が先ほど
「なぁ、ミレっ子。コレは何? アンタなら性格的に他の奴巻き込むとか、無いよな?」
「…気付いたら、急に。」
「ギャングの連中にしては装備が…いや、ギャングの平均が分からんから何とも言えんけどさ。
これ、ハヤメに
「これで、気軽なケンカで済まなくなるって可能性もでてきたよなー。あー、ダルいったらありゃしねぇ‥
よぉ、ハヤメか?」
「…あ、マジで!?」
報告を聞いていたハヤメが投げかけた、懐疑の籠った叫び声。
状況をうまく飲み込めず、言葉に詰まる先生に代わって別場所にいたスケバンの少女が聞き返すには
『それ、前提変わらねーか? 思ってる以上にヤバい事起こってんじゃね?』
『ミレっ子が狙われてさ、その前はずっと張ってたウツキだろ? どーせそっちだって』 ズガァァン 『‥ウツキ?』
『あぁ、無事。妙な跳弾してたからまぁそんな気もしてたけどさ… どうするよ、ケンカ楽しんでるヤツらに
「“‥そうかもね、一応プラザムにもこの状況は伝えて。こういう状況に一番慣れてるのは彼のはず。ただ、僕からもできる範囲で考える。それで良いかな?”」
「そうすっか。プラザムには当事者は報告、私らの方でいっぺん状況を見て…」
「そこ止まれ! ヴァルキューレだ!!」
状況を整理している背後からかかる叫び声。一団が振り返れば
「…って
「一旦手を上げろ。今更
「(捕まるのも久しぶりか。というか)逃げる方が危険だっての…ま、むしろ丁度良さそうか。」
勧告に従い、手を挙げる。そんな途中、ハヤメに浮かんだ企みが先の言葉と共に表情に滲み出る。
「角立? 何を企んでる?」
「まぁ、とんでも無いことになったからさ?
「‥その様子、既に接触済みか。分かった、何処にいる?」
「…ま〜た澄溜とやらの勘か? ったく、スパイ仕込んでるわけでもあるまいしさ…」
ハヤメのそんな呟きに、見える僅かな動揺。
携帯を弄りながら呟いた本人もそれを見逃してはおらず…
「状況によってなら協力はする。あくまでも私らはそちらさんの迷惑にならないよう気をつけてケンカしてたんだけどよ。
追っかけてきたらしいのがコレだ。」
しかし今は特に追及もせず、
『ちなみにこの区域の管轄の一人が澄溜ってやつな? 荒れがちな
そんな注釈をモモトーク経由で送ってきていた。
確認しつつ、モモトークに並ぶ名前から先生はとある人物とのチャットを開く。
そちらでも大きく状況は動いたらしい。
送信された文章に曰く…
時は少し遡る。
(「例外、そっちはよろしく」、か)
「‥プラザム? ウツキは?」
「気軽とも言えん状況なんだろうな。切り忘れた通話から『ケンカなら、楽しくやるんじゃなかったのか』なんて愚痴が聞こえてきた。」
「切ってあげてよ‥まぁ、気軽なケンカって雰囲気じゃなくてもおかしくねぇか。」
「目標地点も見えてるし、早めに制圧しちまうか?」
「適当に因縁貰ってきて偶然、って段取りでやるぞ。気軽じゃなくなったら警察も…」
「あ、なるほど」 「来てもおかしくは無いよな?」
「っと、ウツキから‥オートマタの線濃し、きな臭ェな。とっとと始めるか?」
「丁度いいところに巡回が来たみたい。ちょっと騒ぐ?」
「オッケ、やるか!」
そんな会話もそこそこに、一同は動き出す。
と言いつつも肩の力を入れ直す訳ではなく…
「ウツキの奴、遅ェよな?」
「もうウチらでなんとかすっか? オラ動けよポンコツ!」
(人質役かよ!? 何の目的がある体で演技するつもりだコイツら!)
困惑するプラザムに、届くチャット。曰く
『喋んなくて良いんならチャットで指示お願い。バレるまではコレで凌げるだろ』
『…最悪のケースに入りそうなら、その設定は無視するからな!?
まぁ、それまでは“人質になり切って”、で良いんだよな?』
『そゆこと』 ドスッ
「ゴヘェッ!? 背中蹴んなテメェ!」
「黙れ」 キュゥッ
『おいコラ。キヴォトスじゃ人質にヘッショをカマすんか!?』
『雰囲気。』 『なんとなく?』
『おい待て どういう認識してんだテメェら!?』
チャット越しの会話ながら、お互いに仕草が漏れていたのだろうか。リーダー格の一人が呆れながら
「…偽装とはいえさ、カツアゲ相手にイチャつくなよ。そんな奴らのどっちが脅してんだ?」
「「悪ぃ」」 (‥ッたく、なんで
…いや待て?)
『接敵目前、迎撃態勢整え!』
『りょ』
チャット越しの警告に、軽く緊張を走らせる一同。やがて
「いたぞ!」
「『居た』? ‥うぉえ!?」
角から出てくるなり、こちらの姿を見て発砲する一団。
掠めて慌てる一人を他所に、準備を整えて銃を構える数名。すぐさま
「ッきなり何すんだテメェッ」ズダァン
「テメェらが黙れば良い話だろうがよォ」 タタタァァン、タァァン
始まる銃撃戦。牽制に撃ち合う数名を除いた一部は互いに物陰へと急ぎ…
スチャッ
「因みにその右にあるポリバケツはさぁ!」 パァン‥ズガァァ
炎の尾を引いて翔ぶドラゴンブレス弾はゴミ箱を突き破り仕込まれていた爆弾を起爆させ。
『問題は、もう一方にあるゴミ箱の中身が補給物資なんだよなぁ…』
『撃ち込んじゃえよ。 勘違いしている隙に突撃して回収すれば良いじゃん?』
『ま、それもそうか』 スチャッ、パァァン…
「…教えてくれてありがとヨォ、受け取んなァ!」 タタタタ…
「っぶね、てか何でバレてんだよアレ!?」
「顔に出過ぎだ馬鹿モンが! 返事打ってる暇があれば実行しろっての!!」
カラン‥ 「「うぇぇぇ!?」」 ズゴォォォン
投げ込まれ、破裂する手榴弾。そして絶え間なく撃ち込まれる弾の雨を避けながら逃走する一行は。
「くっそぅ、逃げ込むぞ!」
「場所は適当でいいだろ‥(ガラッ)‥いや、ここは!?」
「うわぁ、コレ全部、弾薬?」 「あれ、この形は
そんな場所に迷い込んだ…いや、
(…あれ?コレ予定通りじゃね? いや、そういう打ち合わせだったか!?)
震えるズボンのポケットに気付き、手を突っ込む。
取り出し、スマートフォンの画面を確認すると
「ほほぉ?」
珍しい相手だったのだろうか、そう呟きながら電話に出る。
「どうした?」
『緊急だ、奴らを止めろ。』
そんな一言と共に、共有された一枚の写真。
眺め、再び耳に当てると
「‥“先生”の見張り、まさか
『大義名分を失えば、依頼は失敗同然だよ。
「その一番槍、自習組陣営のアイツなんだろ? 別に時間は稼げるんじゃねぇのか?」
『その手の言い訳まで担っては、ウチらのアシが付くだろ? それに、見返りとして情報源になってもらう約束は付けている。
貴重な手だ、なるべく逃したくない。』
「なら、アタシが出たって同じだろうが…まさか“なりすませ“、なんて言わねぇよな?
アタシの
『そこまでの無茶は流石に言わないって。得物も、パーカー・仮面と一緒に用意しておくさ。
万が一アンタの得物を使うことになったって、ソイツであるなら説得力も出るだろ?』
「あぁわかった、了解。‥ったくバクチなんて肝の冷える賭けはとっとと済ますに限るって感性、備わってすらいないのかよ。」
通話を切り、愚痴を吐きつつポケットへ乱雑に戻すと茂みから立ち上がる。
その全身には何処にも銃器が見当たらず…
「目標の倉庫…この広さならコイツ一本でなんとか出来る可能性もあるかな。
ともかく‥さてと、何時もの潜入だと思って始めるか!」
口元に笑みを浮かべて言い切ると同時に掴んでいたのは手を突っ込んだ袖口の中、腕に巻きつけていた厚めの紐であった。
「やっぱ そういう算段だったのか…」
「逃げて10歩目くらいで『丁度良くね?』って思い始めてさ。バレた張本人はさっき気付いたけど。」
「作戦、すっかり忘れてたわ。当初の目的ってそうだったっけ…」
追手を撒き、息を潜めながら会話する一同。
「というか見張りとか居ねぇし。結果論、悪手だったんじゃね?」
「把握してるけど、という可能性もあるな。というか照明何処?
「それならさ。さっきそこにスイッチがあったわ。それ触れば点くと思う。」
「おっしゃ でかした! じゃあ早速その松明着ける準備をしてくれ!!」
「あいよー」 「‥いや、照明の話じゃねぇのかよ!」
思わず声を張り上げ、プラザムに怒鳴るスケバン。暗闇の中、眼灯をこちらに向けて彼が話すには
「確かに危ないかもしれないけど、反面 脅しに使えるだろ? 引火させるぞ〜って。」
「あー、なるほど…いいね、悪どくて」
「パチンコ引っ付けるか?」 「お、いいじゃん!」
「んじゃ、お前らで設営頼むな。ウチらは迎撃準備しとくから。」
(まぁ、問題はアイツら踏み込んでくる様子も無いんだよな。連絡待ちっぽいから内容さえ横取れたら良いんだけど…)
盛り上がる彼女たちを他所に、
(来た! の前に) 「一人来るぞ、気を付けろ!」
「
「じゃあ、隠れといて」
「のわぁ!?」
言うなり、頭部のみで待機していた彼を持ち上げると背後のコンテナへ放り投げた。
彼は
「来る‥!」 「構えろ。」
警告した相手はすぐそばに居た。
緑一色の
(顔は…!) (ガスマスク‥
知り渡ったその姿が、彼女たちに緊張を与えた。
歩みを止め、そのまま後ろ足を引いてこちらを向くと包帯らしきものを巻いた手でガスマスクの呼吸部を撫でる。
そして被りを振ると
「警告する。今すぐここから出ろ…敵は、もう居ない、安心して良い。」
「敵? アンタはアイツらの…」「荒らされては困る事情がある。が、それだけで動いているわけでは無い。」
「訳あって付いてはいるが、ウチらにくたばられても困る…訳分かんねぇがまぁ一旦置いとくか。…」
そう言って睨みつける一人、それに隠れて
『…敵は居ないって話、本当か?』
『確かに間違ってはいない。追ってきた連中は退いた、けど』
モモトークを開き、プラザムに確認を取ると顔を上げると
「仮にそうだとしたら何だ?この弾薬庫を捨てろ、と?」
「ソイツらは警察、或いはアンタらより深い場所の住人のの領分だ。浅瀬のお前らが簡単に手をつけて良いものではない。
この前の騒動で暗躍していたニヤニヤ教授とやらも、事が終わって手を引いている。責任転嫁なぞ無理な話だ。 無論試したとして今更
「本当にそうだろうか。 どうせでっち上げだろ‥」
『待て、確かにこの場所の持ち主の所在が隠蔽されている。経験上、ココに見られる隠し方をする奴等はそれなりの権力を持ってる可能性が高い。
ただし、俺はキヴォトスに詳しく無いから『そういう傾向』程度に参考にしてくれ』
「協力者が居るみたいだな。ただ、どうだ? 信用出来そうか?」
「悔しいけどアンタの言ってる事について、ソイツのお墨付きを貰ったよ。わかった、出て行く。」
『プラザム、放っておく形になるけど、良いか?』
『拠点が出来たなら良しとしておくわ。丁度、
念の為として予備機を出す、と言うことがあるかも知んないが、
『了解』
そんなやりとりを交わしつつ、広げていたものを片付けて移動の準備をする。
多少ほどしか時間はかかっていないはずだったが、いつの間にか緑衣の彼女は姿を消していた。
これ以上続けてもグダりそうだったのでヴァルキューレ生投入。
現状まだキヴォトス慣れしていない本作先生が消極的なままだと話を動かしづらいな、と思いこんな形になりました。
プラザム絡みのスケバンが軒並みギャグしてるの、なんなのだろうか…
Next.(9/5 更新予定)
膨らむ情勢の観察者