教育実習生オンボロ、銃と青春の世界へ(試投稿) 作:北アフリカ大洋
流れ着いたモノは、また登場するときまで…
ある日、自宅に届いた一通の手紙。
大人としての自覚が芽生え始めた社会人生活に急転が訪れた当時の僕にとっては
それは眉唾ものの内容だった。
差出人、連邦生徒会長…
聞いたことの無い肩書きの先はコーヒー的な飲み物と思しきシミで汚れ、解読不能。
…いや、そんなことよりも。
(書いている内容、どれもこれも信じ難いことなんだけどなぁ‥)
本文を読んでまた内容に首を傾げつつ、ひとまずは手紙を信じてみることにした。
それが、つい数日前の話である。
そんな僕は今、エレベーターを出て指定された場所で待ち合わせをしていた。
どうにも眠れず迎えた朝、座りそびれた電車に揺られて辿り着いたせいか
今、僕はとてつもない眠気に襲われていた。
(まぁ、現実逃避がてら手を出したゲームで危うく徹夜をしそうになった自分が悪いんだけど・・ともかく。)
うつらうつらと待っていた僕は
どうやら居眠りをしていたらしく、
鋭い声と共に肩をたたかれてようやく気がついた…
「夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください。」
黒髪を伸ばし白い制服(なのだろう)に身を包む女性が、ため息混じりに話しかける。
っと、詳しい会話内容は別に確認する手段があるとのことなので少しだけまとめると
僕が今いるのは学園都市「キヴォトス」、そこで僕は“先生”という立場になって働いてもらうらしい。
そう説明してくれたのは僕を起こしてくれた女性だ。
連邦生徒会という組織の所属を名乗る彼女はまだ今一つ状況を飲み込めていない様子で…
というのは僕も同じだ。
何せ居眠りしている間にとある会社の応接間からここに移動したことになっている。
−そして、その間に何か重要なものを託された気がした。
そう、寝起きの爽快感とは明らかに違う、
ふっと気の引き締まるような思いが湧いているのを感じる。
その理由は、すぐわかるものでは無かった。
・・まぁ、そのうち気にしている場合ではなくなるんだけど。
というのも。
女性の案内でエレベーターに乗り込み、
外の景色を確認しながら
自分の状況を理解し直そうとしている最中。
チン…「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!-」
目的の階に着いた、と認識する間もなく
開く扉の前に立つ
隣の女性-七神リンという名前らしい-に向かって問い詰めかける。
「-連邦生徒会長を呼んできてちょうだい!」
その表情は僕に気づくまでは案の定険しく。更には
「主席行政官、お待ちしておりました…」
「連邦生徒会長に会いに来ました。
風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています。」
「今、数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒達について、一部が脱走したという情報もあります。」
「スケバンのような不良達が、登校中のうちの生徒達を襲う頻度も、最近急激に高くなりました。
治安の維持が難しくなっています・・」
その後ろから同じ不満を持っているらしい面々が合流し、
それぞれ違う制服に身を包んでリンに詰め寄っていった。
その圧に思わず、と言っていいか
「-あぁ、面倒な人に捕まってしまいましたね」
そう愚痴をこぼすリンに僕は
(混乱してるのは、僕だけじゃないみたいだ)
今思えば不謹慎ながら、
そんな気休めにしかならない安堵を覚えた。
そこへ。
「まったく、こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?
どうして何週間も姿を見せないの!? 今すぐ・・
‥うん?隣の大人の人は?」
続ける抗議の最中、ふとこちらに気づいたらしい菫色の髪の少女が僕について疑問を投げかける。
リンという女性は疲労を乗せたため息を挟むと口を開く。
「順を追って説明します・・
連邦生徒会長は今、席におりません。
正直に言いますと、行方不明になりました。
結論から言うと『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、
今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」
「・・え?」
「認証を迂回出来る方法を探していましたが、先ほどまでそのような方法は見つかっていませんでした・・」
「それでは、今は方法があると言うことですか?」
そんな落ち着いた雰囲気の黒制服の生徒の疑問。
答えとして放たれた
「はい、この先生こそが、フィクサーになってくれる筈です。」
そんな言葉と共にリンの視線が向けられた先は・・
「え?」
「“・・僕?“」
そんな意外な回答に、リン以外の一同が驚いた。
もちろん、ただでさえ話が飲み込みきれていない
僕だって例外ではない。ややあって
「キヴォトスではないところから来た方のようですが、先生だったのですね?」
「はい。こちらの猪戸先生は
キヴォトスの先生として、連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」
「行方不明の生徒会長が・・? ますますこんがらがってきたじゃないの‥」
「“よ、よろし・・く?“」
「え? あ、はい、私はミレニアムサイエンススクールの…
・・いや、挨拶なんて今はどうでもよくて!」
どうにも動揺任せに喋るだけでは話が進まないな、と後から思う。
その時はそう考える余裕もなかったが、
「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと…」
「誰がうるさいって!? 私は早瀬ユウカ、覚えておいてください先生!」
「“あ、うん よろしくね?“」
「・・コホン、続けます。」
リンが強引に話を進めたのは、思えばかなり有難かった。
僕が、学園都市キヴォトスの混乱を収める手段となる概要、それは話によれば
「連邦捜査部『シャーレ』。連邦組織のために、ひいては
ただ、就いていただくに当たり先生にお渡ししたいものがあるのですが、
それを持ち込んだ『シャーレ』の部室はここから約30km離れた外郭地区にあるのです。
先生をそこにお連れしなければなりません」
ということらしい。
問題があるとすれば。
「外郭地区!? それってどの方面よ!
脱走された矯正局、
万が一、ウチの後輩が巻き込まれでもしたら‥あぁ!?」
取り出したスマートフォンを片手に
そんな悲鳴をあげながらユウカと名乗った女子が問い詰める。
懸念は既に悪い方向へ当たっているらしい。
リンは何やら同僚と話していたようだが、何度目か分からない溜息をつくと
生徒会長を訪ねてきた女子たちを見回し…
「えぇ、シャーレは今 矯正局を脱走した生徒たちの襲撃に遭っているようです…
ですが問題ありません。
ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです。」
「ねぇ、それってもしかして‥ちょっと!?」
もうもはや声をあげて戸惑っているのは
いやその時になって思えば
「“ところで気になってたんだけど、みんなが持ってるソレって“」
ふと気になり、みんなが持っている銃について聞いてみる。
「・・あ、そうでした。先生は外の世界から来たので見慣れないかもしれません。
私たちはコレを持っていないと言わば裸同然のようなものなのです。
理由は‥外に出たらまた説明しますね。」
答えてくれたのは、風紀委員の腕章をつけた、鈍めの茶髪の女生徒だった。
ゲヘナ学園の“火宮チナツ“というらしい。
ともかくである。
当の現場は大混乱であった。
飛び交う銃弾、手榴弾。
警察官(もよく見れば女生徒である)が避難誘導をしながら時々交戦してはいるものの…
「“これは、確かにすんなり着きそうにはないね。
あと、それよりも…“」
同行していたユウカという生徒が流れ弾を受け、「傷が残る」と文句を溢していた。
そして今、黒長髪の生徒(羽川ハスミという名前らしい)に宥められている。
それだけではない。
吹き出す硝煙。
しかし撃ち合っている彼女たちにとってはさながら
エアガンを使った攻防を繰り広げているようで。
火宮チナツは僕の質問に頷いて返すには
「はい、私たちは弾丸を受けても致命傷には至りません。
ただ先生は一つでも生命の危機に晒される可能性があるでしょう…」
「あの建物の奪還が目標ではありますが、最優先は先生を守ることです。」
そう言われれば目の前の光景も相まってキヴォトスが“そういう世界”なのだと実感する。
ただし…
・・ただし、である。
「分かってるわ、
先生、先生は戦場に出ないでください!私たちが戦っている間は、この安全な場所にいてくださいね!」
そう言われて、落ち着ける気分ではない。
彼女たちに頼りっぱなしでは、自分勝手ながらプライドが許さないからである。
それに、だ。
「“いや、少し試したいことがある。
確かに僕は戦えないけど、その戦い方を“指揮させて“もらえないかな?“」
そんな僕の申し出に、
「え、えぇっ!? 戦術指揮をされるんですか?
まぁ、先生ですし‥‥。」
無理があったのだろう。
彼女たちは戸惑って….
「分かりました。これより先生の指揮に従います。」
「先生が生徒を導くのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします。」
…いや、戸惑っていたのは1人だけだったようだ。
他の面々はこういった場に触れる機会が多いのだろうか、冷静である。
ただ、そんな無条件に近い信頼に一瞬気後れしそうになるが。
(…経験ではなく、選択。
それも僕だからこそ頼まれた仕事、だよね。
思い返せば)
−今、
−やがて混乱の産んだ綻びは生徒を蝕み、そしてこの世界を滅ぼす…
手紙に綴られたそんな意味の内容に、この現場を見て
ようやく少し現実感を覚えた。
・・同時に。
何時の記憶かは解らない。
でも、確かに覚えていることがある。
『‥‥今更図々しいですが、お願いします。
きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません…』
そんなどこで頼まれたかも今や分からない、心の奥底に刻まれた声が、
どこで会ったか分からない、この世界の楽しげな
「“うん、僕にだからこそできる役割だと思うからね。じゃあ、行くよ!“」
章の区切りが付き次第、2話以降を投稿するつもりです。
それまでは暫定単発ということで…
その文言が外れたら、期待してください!
…原作で言及してない後輩がいる?
あ、オリキャラですね。
詳細は続けばいずれ。
というか続けていく場合、このように
既存キャラの関係に割り込んで登場させることもあるので
苦手な方はごめんなさい。
P.S.
他作品様に倣い、先生の台詞に“”を追加しました。
原作の一人称はプレイヤー層への対応の意味を込めて「私」でしたが、
少し思いついたことがあるので変わらずここでは「僕」とします。
オリ主的な側面も多少あるので・・
Next.(8/9更新予定)
オンボロ機械人形と仮面の生徒たち