教育実習生オンボロ、銃と青春の世界へ(試投稿) 作:北アフリカ大洋
ある世界に降り立った後は自身の機能を整理し、
その世界に根ざす社会を分析した上で社会に混じり…
その世界を去る前は必ず自身の身分を整理し、
自身の機能を修復整備して、万全を期した上で飛び立つ。
着陸に成功した試しは彼の持つ気質上
降り立った数に比べれば数えるのには
はるかに楽と言えるほど少ない。
故に万全を期すことを心がけていた。
しかし、キヴォトスに“流れ着いた”時の状況は
万全とは程遠かった。
なぜなら‥‥
ー俺に気を取られて大丈夫かな!
ーサンキュー、プラザム。…くらえ!
すこし、予定が狂った。
討ち果たしたら、ゆっくりと自分のメンテナンスに時間を割いて
次の場所へ飛び立つ算段であった。
暴走する"魔王"を倒すところまでは予定どおりだったのだ。
権力階級に生まれ、人を導く力に恵まれながら
度重なる不幸に信念や縁を破壊され、
いつしか社会を憎むようになった経歴を持っていた。
彼の経緯に何故か同情を覚えたプラザムは負情から彼を解放すべく、
勇者と呼び讃えられた青年の一行に加わりさまざまな手を尽くしたが
彼を引き戻すにはどれも後一歩及ばず、
故にこの状況が起こる可能性を考えていなかった。
ーッ権力とは! 僕みたいな!!
ー圧倒的な
ー後の奴らは踊らされるだけで十分なんだよッ!
ーッそれが…それがァッ!
抵抗する
ーたかだかオマエらのような!
ー踊るだけの、
ー滅ぼされる器じゃ、俺は・・ねェんだよ・・
なぜだかそれを遮ることが出来なくて、プラザムは彼を見届けていた。
それが、失敗につながる最初の引き金だったのかもしれない。
ーッ哀れったらしい態度、取りやがって、
不意に放たれた魔法を回避するには、反応が遅れすぎた。
避け切れず、飲まれ異空間に放り込まれて現状に至る。
不意に感じる地面。
(!? ‥通常空間でもない場所に何故っ)
戸惑い、起こそうとした身の内側から騒つく何か。
(あの時食らった魔法か?
いや、それだけじゃなさそうだが‥)
早く自身を“修理”できる空間に出ないと。
そんな焦りに周りを見渡す。
ー彼は‥彼も同じ境遇だったりするのかな?
ふと聞こえる声。
ーでも、僕たちには相性が悪いみたいだ。
⬜︎⬜︎⬜︎、…⬜︎⬜︎⬜︎?
騒めきが強くなる。
気づけば
(白髪、狼耳を備えた…黒ドレス?)
目の前に、いつの間にか立っている女性。
彼女は手に持っている銃を構え
「!! ・・!?」
応戦しなければ。
そう考えるまでもなく取っていた臨戦態勢。
ー腹、立ツ面構エダ・・
振り抜かれていた腕、彼女は躱すと銃口が頭部を捉え、
とっさに射線を外す。そして
(
片腕を目の前に引き、そして真横に振り抜くと内臓兵器が起動し腕が帯電を始めた。
すぐさまその腕で銃口を掴み・・
ブゥン 「・・まぁ、気づくか。」
掴み損ねたらしい。帯電する拳は宙を掴み、彼女は離れた場所でやはりこちらを警戒している。
拳を彼女に向け、応戦体勢は保ちつつ
「アンタは、誰だ?」
「…キヴォトスを、定められた未来に導く存在。
貴方は、その邪魔になる。」
どうにも、気に入らない。
ただ、ここで戦っても勝ち目は…
(無くは、無いんだろうな。ただ・・)
課せられているのであろうモノを失うかもしれない。
時間を稼ぐしか、好手はなさそうだ。
その結論に至った時である。
ー彼を、排除するよ。
また、体から重力が抜け落ちる。
彼女は銃を下げ、背を向けて歩き出した。
(誰だろう。敵でもあるようだが‥)
目の前が陰る。そして掛かる負荷は
やがてこの空間で体験した記録を読み込み不可なものとした。
(いや、それだけか?
…だめだ、今となっては)
……
………
……………
さて、ここから時は前話の最後に続く。
プラザムは再起動してすぐに、狐面の危険人物“狐坂ワカモ“とどこかの施設にある部屋で
身体を起こしてみる。
…とりあえず問題は、無い
仮に交戦しても、多少はあしらえる程度には身体の
ただ無理ができるほどの回復はしておらず…
しかし好奇心に駆られた
「・・今思いついた、見え透いた出まかせにあっさり騙されるほど私は莫迦じゃありませんわ。
もっとも…」
言いながら、彼女の被る狐面が少し揺れる。
そして降ろしていた銃をプラザムに向けると肩を小さく上下に揺らし始めながら
「“シッテムの箱“とやらより貴方の方が、ありそうですわね?
・・ウフフ、壊し甲斐が!」
(ッ来るか!)
瞬間、半身に構えて左手を伸ばし、突かれた銃剣の軌道を逸らす。
そのまま・・
ザッ 「おぉ、ほう・・」
またしても銃身を掴み損ね、
飛び退くワカモ、離れる距離。今のうちに
「そりゃ相棒封じさせてもらうってわけには、簡単にはいかんわな?」
(
片腕を目の前に引き、そして真横に振り抜くと内臓兵器が起動しその腕が帯電する。
その腕をワカモの方に向けると
「閉所でぶっ放すべきじゃないモンは」 スパァッ
握りしめた拳の形を模倣し飛ぶプラズマの塊。
横に飛ぶワカモから僅かに動揺が見られ、
好機とばかりに腕を構え
「お預けにッ!?」
絞った狙いの先、ひらりと舞う和服。
気付けば背後から
「手持ち無沙汰で挑むなど無謀なお方だと思っておりましたが、
なるほど、面白い
「!!」
火を吹き彼女のライフルから飛び出した一条の弾が、
咄嗟にしゃがむプラザムの後頭部を浅く抉る。
(ってくれるじゃねェか!)
握りしめた拳に手のひらを当て、咄嗟に踏ん張ると後ろを向き‥
「って隙に正面に回り込み直してるのは常套手段よな!」
叫び、同時に振り回されたプラザムの踵と
盾の如く突き出されたライフルの銃身が青い火花を散らした。
踏ん張っていた足を緩めて肘に乗せた勢いを
回し蹴りへとうまく転用した形である。
が、この機転は大した打開策にはならず。
プラザムが足を降ろす暇も与えずワカモが狙いをつけ
「ッくぉぉぉ?!」
二発、三発と放たれたそれは確実にプラザムの身体へ傷を残していく。
…が。
カチャ、カチャ…
「・・あら?」
訪れる弾切れは彼女の把握している装弾数より早くに訪れ。
ようやく両足を地面に付けたプラザムは弾倉を覗くワカモの方を向くと
「それが、アンタ曰くの“面白いカラクリ“ってやつの力さ。
ご感想はいかがで?」
「・・弾薬を使えなくする、ということですのね?
回し蹴りを受け流した隙に仕込んだ、と?」
「あの腕を振る動作さえとれば無条件で作動するように設定してあるのさ。
で、出力を合わせてやれば銃だろうが手榴弾だろうが一発よ。
…丁度暴れたそうな気配撒いてたからチューニングがてら試し射ちで、な?」
悠々と会話していた時のことである。
「えぇ、そのようですわね。一杯食わされた気分‥」 タァン
不意にワカモのライフルが暴発した。
翔んだ弾はプラザムの膝を地につけ…
「・・だと思ってたのですが。」
「思ったより
計算まで狂うようになったか?」
なんとも言えない空気が漂うなか、互いの戦意は自然消滅していった。
そして
「どうにも持っている
貴方に興味が湧いてきました。ここで壊してしまうには惜しいですわね。」
「一旦の万全ですら3日そこらじゃ全然時間が足りない程どうしようもない損耗だけど、
ハハハ、確かに悪くなかったかもな。さて・・」
そう言葉を切上げ、プラザムが手膝の付いた体勢を
「“確か、この部屋に・・あれ?“」
扉を開けてこちらを覗く、年若い青年。
プラザムはふと違和感を感じて2人を見比べれば、
ワカモという少女には頭上に桜らしきものを模った模様が浮かんでいた。
青年にはそれがない。代わりに、なんというか…
とりあえず。
「あー、部屋主のお方で?」
「あら、新しい
ワカモへは直感で例外的な対応をとったものの、本来は社会に敵対する真似は取りたくない。
そんなスタンスの元質問をするプラザムに対し
ワカモは咄嗟にむけていた銃口を下すとズレていたらしい仮面を掴んで被り直すと・・
そのまま無言で飛び上がると相手いたらしい天井の換気口を素早く登り、部屋を脱出していった。
「“・・ごめん、今のは?“」
唖然と見上げていた青年は視線を戻すと取り敢えずと言った風にプラザムへそんな質問を投げかける。
ただ、正直のところ‥
「寝起きのオンボロに知り得る内容では、確実に無いデス。
・・所でそちらは何の用? というか家主は?」
答え、そして反対に聞くと、やや戸惑っている様子の彼が答える。
「“や、やぁ、僕は猪戸元治。
これからここ、キヴォトスで“先生“として働くことになったんだけど…“」
「あ、あぁぁ!!」 「“おぁぁ!?“」
猪戸元治と名乗る青年への違和感の正体に唐突に気付き、
プラザムは指を刺して叫び声をあげてしまった。そして
「俺の中にいつの間にか保管されてた“これ”、アンタの物だったのか!」
右手を上に向けると少し上に投影されるタブレット端末。
その端末はやがてはっきり見える形に映ると物理法則を与えられたかの如く落下を始め…
カッ 「じゃあ返すよ、それ。新しく始まる部活の“顧問“ってやつに就くのに必要だろ?」
言いつつプラザムは空中で端末をキャッチし、青年に差し出した。
話の前半と後半で大分印象変わってると思われますが、
後半が彼の素の対応です。
何もなければ愉快なアンドロイド、それがプラザムという人物の基本ですね。
更新:後々の展開用に数文字程度追記
Next. (8/11更新予定)
責任の戴冠、新たな部活の始動に向けて