教育実習生オンボロ、銃と青春の世界へ(試投稿)   作:北アフリカ大洋

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託す者、受け継ぐ者・・

そして、

それっぽい雰囲気で中継する部外者。


4.責任の戴冠、新たな部活の始動に向けて

 

(顧問? 僕の端末!? ・・いや、確かにそういう話だった気もするけど…)

 

猪戸元治は困惑していた。

 

部屋の中で待ち構えていたアンドロイドと和服狐面の少女。

少女の方はこちらを見るやこちらを一瞥だけしてすぐに部屋から出ていき、

アンドロイドの方は水色の眼灯を向けながらグイグイと話を進めてくる。

 

「“待ってくれ、えーと・・“」

「オンボロでいいよ。それかプラザムね。

って猪戸先生には名乗ったことなかったよな・・」

 

「“先っ!? いや、これから説明を受ける所だったんだよ。

そのためにこの建物にある“とあるもの“を受け取る必要があるって説明されて‥“」

 

しどろもどろに説明する僕に、プラザムと名乗った彼は納得する様子を見せる。そして

 

「ならこの端末、通称“シッテムの箱“はこれからアンタ、猪戸先生に渡されるものだったってことか。

なら、改めて・・」

 

改めてタブレット端末を差し出してきた。

僕がそれを受け取ろうとすると、彼は握ったタブレット端末を離さず、

そして目を合わせたまま(水色の灯が目の役割を果たしているのなら、という前提がつくけど)

 

「覚悟、できてるよな? アンタならそれを起動できるが、

ひとたび起動すれば、とてつもない責任がついて回る。そんな気配がするんだ。」

 

「“責任…“」

 

 

ー大人としての、責任と義務。

 

ーそして、その延長線上にあったあなたの選択。それが意味する心延えも。

 

「そういうこったな、“先生”・・候補さん?」

 

確認するように、問いかけてくる彼。

 

「誰かに信じられ、見届け、導いていく覚悟ができたのなら・・

その端末を起動する資格がある。大丈夫か?」

 

その問いかけに。

 

 

ー私が信じられる大人である、貴方になら、

 

 

緊張は、まだ残っているはずなんだけど、

不安も、やはり残っているはずなんだけど…

 

 

ーこの捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を‥‥‥。

 

ーそこへ繋がる選択肢は、きっと見つかるはずです。

 

 

不思議と、湧いてくる自信。

「“大丈夫、かな。

むしろ、どんな出会いが待っているのか楽しみなくらいだね。“」

 

その答えに、彼はようやく手を話すと目線を逸らし

 

「・・まぁ、やって行けない、なんてことはなさそうか。

悪いな、今までの全部感じたままの勘で言ってるだけだから

やってみたら大したこと無かった、なんてこともあるかも。

せいぜい頑張りな。目的が合えば、協力する。」

 

そう言い放ち、手を使って体を支えながら

何やら足をモゾモゾと動かしている。

・・もしかして。

 

「“…立てる? 手、借りる?“」

 

「あ、いや失礼。このまま離れるから

どうかお気になさらず。」

 

そう言うと、彼は足を引き摺ってその場を離れた。

 

・・さて。

 

「“シッテムの、箱。 本当にただのタブレット端末に見えるんだけど…“」

 

「でも、それは私たちでも正体がわかっていない代物なのです。製造会社やOS、システム構造はおろか

動く仕組みすら解明できていません。」

 

端末を観察していると、呟きに答えるように現れたのは

 

「“リン・・ちゃん。“」

 

「誰が“リンちゃん”ですか。・・ともかく、無事に受け取れたようですね。

連邦生徒会長は、その“シッテムの箱“は先生のもので、先生がこれで

タワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました。

私たちでは起動すら出来なかったものですが‥」

 

彼女の視線の先、状況からして

探っていた指が無意識に電源ボタンを押していたらしく

端末の液晶がとある画面を映していた。

 

 

  Connecting ToCreate of Shittem…

 

 

その様子を確認するや

彼女はその画面を詳しく見ることもなく

 

「やはり、先生なら起動できるようですね。

 

どう言うことなのかは私にもよくわかりませんが‥

ここから先は、全て先生にかかっています。

邪魔にならない位置で待っていますので、続けてください。

 

 ‥では、失礼を。」

 

そう言い、彼女もまた部屋の隅へ。

プラザムと名乗る彼も部屋の片隅で電源を切っており・・

 

(‥いや、ともかく続けよう。) 

 

タブレットに再び目をやる。

画面には続けて

 

 

  システム接続パスワードを入力してください。

 

 

そんな指示が。

いつ教えて貰ったのだろうか、心当たりがあった。

確か….

 

  “我々は望む、七つの嘆きを。

  我々は覚えている、ジェリコの古則を”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『先生』が"箱"と向き合っている間、

リンは部屋の隅をそーっと歩いていた。

それは、先生を追ってこの部屋に入ったときに

目の端に映った、持ち込んだ覚えの無い人形。

そして、思い出せば

 

(先生はこの部屋で、誰かと話していた風にも聞こえました。

もしかしたら…)

 

ガガッ、ガッ…  「!!」

 

人形から、唐突に鳴り響く音。

慌てて半歩後退(あとずさ)り…

ハッとして先生の方を確認するも、

幸い彼の邪魔をした様子は見られず…

安堵の一息を吐き、もう一度人形の方を見れば

 

「………」

 

目の位置にある細長いものが、水色に灯っていた。

そして

 

「連邦生徒会、会長代行、七神リン。

・・先生の案内役、だよな?」

 

「!! …何者ですか?」

 

眼灯の点いた頭が持ち上がり、リンの方を向くと

 

「異空間からの流れ者、と考えていただければ結構。

オンボロ、若しくはプラザムと呼んでくれたらわかりやすいか。」

 

若干気取った声でそんな答えが返ってきた。

確かに、キヴォトスの住人にこのような外観の市民はいない。

ただ、それが判ったからといって解決する不安もないのは変わらず。

 

「では、貴方に質問します。」

 

「オンボロでいい。なんだ?」

 

少し、疲れる。

学園都市(キヴォトス)の天才は軒並み一癖ある。

今日押しかけた、殆ど計算だけで思考を成り立たせる自信家もそうだったが、

今まさにその人形との会話が同じカロリーの消費の仕方を・・

 

「あ、この喋り方じゃそっちが疲れる? 俺も肩の力ぬこうか?」

 

「ただでさえ面倒続きなんです、気を遣われても今更変わりません。」

 

「本当は大の字で寝転がりたいんだけど、人様の施設だし…」

 

「その“人様の施設”で戦闘行為を働いていたようですが?」

 

そう言いつつ、リンは壁の弾痕へと目線を向ける。

その様子に彼は目線を逸らし

 

「アハーハハ、デハデハ、ハタライテ、カエシマース・・」

 

棒読みで返事を返した。

が、すぐにこちらを向くと

 

「ただ、先生の作業がそろそろ終わるころだと思う。

質問聞かなくて悪いが、そっちに戻ったらどうだ?」

 

その提案に振り向いた瞬間である。

灯る部屋の明かり。

 

シッテムの箱を覗く彼、猪戸先生は話を聞くように頷くと

 

「“大丈夫だよ、アロナ。連邦生徒会に権限を“『戻してあげて』“。」

 

そう話しかけた。

 

「アロナ?」

 

ふと気になった、先生の呼んだ名前。

遅れて受け入れた頭の理解を補助するように

プラザムがつぶやきに答える。いわく

 

「AIの秘書の名前じゃね?

大方その“アロナ”とやらが箱の能力を司る力を持ってるんだろ。

使う側からしたら分厚い説明書なんかよりずっと気楽だ、

手厚いサポート体制組んでるんだな、会長とやらも。」

 

「なるほど、先生は彼女に干渉することで、問題を解決した、と。

私たちには見えないようですが・・と」

 

リンの携帯から、業務用のチャットの通知音が鳴る。

先生がこちらに気付き歩み寄るなか内容を確認すると

 

「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。

お疲れ様でした、先生。

キヴォトスの混乱を収めていただいたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝します。」

 

「“そっか、行政にまつわる仕事だったからね。

こんな感じでいいのかな、僕に任されたことは“」

 

「本格的なやり口についてはこれから、だろうな。

ともかく代行、行政についてはこれでなんとかなりそうってこと?

それとも先生に少し協力してもらう形?」

 

「はい、これで連邦生徒会長がいた頃と同じように行政管理が進められるわけですが…

・・シャーレにも平時は行政を少し手伝ってもらう、名案かもしれませんね。

何せ連邦生徒会長が不在という事実に変わりはありません。

あと、なぜ見ず知らずのあなたが話についていけてるのでしょうか。」

 

 

 

 

言われて、気づく。

と、いうか。

 

「“え、連邦生徒会が用意した説明役じゃないの!?“」

 

「あ、いや、気づいたらここに流れ着いてたんだよ!

で、よく分からないから状況把握のためにネットワークにアクセスしてさ?

やっべ、何にも準備してないのに無防備に体制のど真ん中で寛いでることになるのか・・」

 

そんな彼の焦りように、本当に無関係だったことを悟り、困惑する。

そして

 

「あ、じゃあほな、サイナラーッ!」

 

そう言い残し、僕たちの間をすり抜けて

プラザムは匍匐前進(ほふくぜんしん)でその場を後にした。

 

(と言うか、匍匐前進であんな逃げ去る蛇みたいなスピード出せるんだ・・

いや、今は関係ないか。それよりも)

 

切り替えよう、彼に害はないのかもしれない。

そんなことより気になることがある。

 

「“僕は、さ?

・・シャーレ、の顧問になるんだよね。

具体的に何をすれば良いのかな?“」

 

そんな質問にリンはハッとしたように肩をピクリとさせると

 

「そうでした。この建物が、連邦捜査部の建物です。

具体的な説明も兼ねて私が案内いたします。

 ・・ついてきてください。」

 

彼女はそう言って、部屋を出る。

僕は彼女について行くことにした。

 

 

 

 

ー私が背負うはずだった覚悟を受け継いでしまった、みんな…

 

ーこんな大役、いきなり言われて困惑するかもしれないし、混乱しているかもしれない。

 

ーけど、受け継がれたということは、私の信じた選択を…

 

ーいや、学園都市(キヴォトス)の信じた選択を、選んでいける人間である証でもある・・

 

ーだから、心配は、いらないよ。

 

ー私“たち”が信頼を築き上げる、これから出会う生徒たちを・・

 

ー或いは、みんなが信じた道の先で出逢う、私の出会わなかった生徒たちも、かな。

 

ー彼女たちを、どうか、頼みます…

 

 

 

 

 

 

(権限はあるけど目標は特に無し、活動の全ては僕の判断・・

と言っても、連邦生徒会の手伝いを引き受けてるから

平時はそれを仕事にする訳だけど。)

 

一通り説明を受け、協力してもらった生徒たちにお礼を言った後

今、猪戸元治は部室の机、

初めて座る椅子に背中を預けながら考える。

 

これから使い込んでいくであろうパソコン。

これから書類が積まれていくであろう机に

入部する誰かを預けるかもしれないもう一つの椅子。

 

今は新鮮に見えるこの光景も、これからは日常になっていく。

 

ーよろしく、シャーレ。

ーよろしく、キヴォトス。 そして…

 

机の反対側、窓の外に見える大きな(ヘイロー)の浮かぶ、

スッキリと晴れたこの地(キヴォトス)の大空を見上げる。

 

よろしくね。

ユウカ、ハスミ、スズミ、チナツ、アンズ。

そして・・

 

これから出会う、生徒のみんな。




さて、一部省略こそしたものの
ようやくチュートリアル部終了です。

ということは、これからアビドスに…
行かずにもう少しだけD.U.周りでのお話は続きます。
ごめんね、行く時プチ予告挟むから…

せっかくの新キャラなのにミレニアム所属だから
メイン二章まで本格的な出番がないので
今のうちに少し交流させてみようかなと。

と言っても入り口は‥
みんな大好きあの場面から!

ただ、もう一度書き溜めに戻るのでまた今度。
目処立ったら下の次回話予告更新するので。

追記。
完走はせずに区切る予定になりました。
就いて数日の内の出来事、となると完走には早すぎるとの判断です。
うーむ…



Next.(投稿日時未定)
娯楽という名の死活問題(だらしなさ)
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