教育実習生オンボロ、銃と青春の世界へ(試投稿) 作:北アフリカ大洋
だが、それを確保する方法が簡単に見つかるとは限らず…
1-5)娯楽という名の死活問題(だらしなさ)を前に
シャーレを立ち上げ、
始めた業務。
ただ、新しい仕事はスムーズにはいかず。
『先生・・大丈夫ですか?』
「“流石に、保たないね。
合間に色々試してるんだけど‥“」
机に突っ伏し、タブレット端末からの心配の声に
猪戸元治は力無く答えた。
「“アロナ、何か良い打開策は無いのかな‥“」
そんな惰性の質問に、画面上に写る青髪の少女・アロナは少し首を傾げると
突然何かを思い出し。
『先生、私たちは“連邦捜査部シャーレ”の一員で、
先生はその顧問です。
で、その部員はまだ誰もいませんが、
入部の条件には学年どころか学園の縛りも無いと聞いています』
「“つまり、力を借りることは出来る、ということかな。”」
『はい、なので入部までとはいかなくても、お手伝いを頼んでみるのはどうでしょう!
呼びかけてみるだけでもきっと解決するはずです!』
そんな、目を輝かせての彼女からの提案。
「“なるほど、それいいね。
…できれば、キヴォトスの政治にある程度知見があって、
忙しさの無い生徒に手伝ってもらいたいんだけどなぁ・・“」
『あはは、高望みですね・・』
アロナの視線は斜め上に逸れていく。
・・が。
『そういえば私たちが出会った時のことを先生は覚えていらっしゃいますか?』
「“突然だね。もちろん覚えてるよ。
プラザム相手に人見知りしてたのもバッチリね。“」
『そんなことはどうでも良いんです!
ちょっとだけ怖いなって思っただけです、忘れてください…
いやいや、本題はそこじゃなくて!』
頬を膨らませ、首を振って話を戻す。
申し訳なさそうな笑顔を浮かべながら
手刀を切って謝る先生を前に、彼女は続ける。
『その時に外で待機させていたメンバーで「早瀬ユウカ」さんが居たのを覚えてますか?
彼女に頼めば、力になってくれるはずです!
調べたところ、丁度仕事も落ち着いてるようですし…
何よりも』
アロナがそう力説していた時の事である。
ガチャ 「先生!少しだけお時間よろ…」
噂をすればやってきた
「失礼、します…」
その背中に隠れ、様子を伺うように覗く
青髪の少女、古澤アンズ。
…黒縁の眼鏡を掛けているのも相まって、この前初めて会った時とは大分違う印象を受ける。
などという感想を抱いている場合ではなく。
「"あ、ごめん!
いらっしゃい、よく来たね。"」
二人に手を上げて挨拶をする。
が、ダラリと根を上げていた様子はしっかりと見られており…
「思ったより苦労してそう、ですね。
その辺りも兼ねて少し相談があるのですが…」
そう切り出すユウカは呆れ顔を浮かべていた。
そんな自覚もなさそうだが、
突っ込んでは話が進まない。
「"うん、何かな?"」
「シャーレへの入部って学園の縛りが無い、でしたよね?
もし良ければこの子、古澤アンズちゃんを頼めないかな、と考えまして。」
そんな話に、隠れていた少女がちょこちょこと隣に立ち、
こそりと頭を下げる。
そんな様子に、色々な意味を込めて肩をすくめつつ
「"無理の無い範囲なら大歓迎だよ!
というか今すぐにでも手を借りたい状況で…"」
「みたいね…
よし、今日は私達が先生を手伝います!
先生がちゃんと真剣に向き合ってくれているのは
この前の指揮でちゃんと伝わってますし。」
「私も普段は先輩たちに色々教わってます、
迷惑は掛けません、お願いします!」
「"うん、よろしく"」
それからの作業は幾分か早く進んだ。
「先生、その件はこちらの雛型を使ってください。
これらの書類もその雛型で済む筈です!」
時にそんなアドバイスを貰いながら、
「ごめんなさい、それなら私にでも出来そうです…」
「"確かにそうだね。お言葉に甘えさせてもらうよ…"」
ぐぐぅ‥
そうして協力する内に気付けば昼を大きく回り。
室内に響く腹の音に一同の手が止まる。
パンッ パンッ
先生は苦笑いしながら手を叩くと
「"うん、流石に何か食べようか。
カップ麺しかないけど、いいかな?"」
「確かに。じゃあ、今度はこちらから…
先生? そのコッペパン一個は?
ちょっと、もしかして…」
薄目のユウカから感じる圧。
心当たりがあるような顔を逸らすアンズに
ユウカが目配せをすると差し出された
受け取るとその顔を徐々に険しくし…
「あぁ、やっぱり。
先生? この出費はなんなんですか!?」
「"車ってさ? 燃料が無いと動かない、でしょ?"」
「その燃料がプラモデルへの10万円ですか?!
それですら食費に回せば優に1ヶ月分以上の食費になるじゃないですか!」
どうにも言い返せない気がして、少し頭を下げる。
少し遠巻きに見ていたアンズがそれを見かねたのか
「・・先輩、誰だってストレスは溜まる物ですし。」
そんな助け舟を出すものの。
「栄養不足で倒れたら元も子もないでしょ!?
お小遣いをもらってすぐパーっと使う子供じゃないんですから、
もう少し計画的に、こういうお金は使ってください!
私、そうやって何回もお世話になった例を見ているので、こういうのはすぐ分かりますから。」
真剣な顔で力説しながらユウカは目を逸す後輩へ視線を流す。
「“だから、こういうことには目敏いんだね・・“」
「感心してないで家計簿を・・付けてないんですか!?
だからこうなるまで衝動的に買い物をしてしまうんじゃ…
先生、私が手伝いますから、これまでの領収書を全部集めてください。
今から領収書を整理して、先生の消費をチェックします!」
「・・先輩、麺が伸びるのでまず食べません?」
そんな言葉に振り向いて見れば、アンズは既にカップ麺の蓋を開けながら掛けていた眼鏡を曇らせていた。
そうしてカップ麺の容器を傍に、ユウカは早速ペンを取ると
「片方私の方に持ってきて。あと
そうして日毎の金遣いを読み上げながら家計簿をつけている。
そんな合間に
「何で領収書に混じってカードが・・ってこれ! ゲームセンターに入り浸ってたんですか先生!」
「こんなにプラモデルを買っても組み立てる時間がないじゃないの‥」
そんな小言を聞かされる。ただ、表情に面倒そうな感じは浮かべはするものの
その様子を見ていて浮かぶ疑問。
気にしている立場ではないのだが‥
「“案外、怒ってなかったり?“」
「確かに、私の時とは違います。何というか…」
「未遂と再犯ならどれだけの差があるか、解るよね‥?」
睨む彼女に、アンズは口を固く結んだ。
そして目線を落とし…
再び目線を上げるとおもむろに先生の方を向いて
「先生、リフレッシュの方法を探ってたりしません?」
「“確かにそうだね。まだ答えは出てないけど。“」
「これだけ使っておいてですか!?」
「“時間が、足りなかったんだよ。冷静に考えれば気付けたものもあったのだけど…“」
そう懺悔する猪戸元治は大人には見えない、ある意味悩める同級生のような感覚を覚える。
そんな錯覚めいた印象が生んだのだろうか。
「なら先生、お出かけしませんか?」
そんなアンズの提案に、二人は同時に顔を上げた。
口を硬く結び、勇気を振り絞った様子が見て取れる。
さて、翌日のことである。
浪費の内訳が多方面の趣味に割かれていることが分かり、その問題を解決しないことには安心できないというユウカの命令により
僕は今待ち合わせをしている。その相手は
「あ、先生…」
「“アンズ、こっちだよ!“」
彼女一人である。
ユウカは自分の学校でやることがあるらしく、今日は来ていない。
理由を話す彼女が心底名残惜しそうにしていたが、また頼ってもいいだろうか。
ともかく、である。
「先生、私服は?」
「“人間の男って見たところ僕だけでしょ?
それがいるシャーレって発足したての部活、みんなが注目してるんだから僕がちゃんとしないと! …“」
そう意気込むと、彼女は恐る恐るといった様子の薄目を向けてスマホの画面を見せてくる。
そこに写っていたのは昨日の一場面、呆れながら家計簿をつけるユウカだった。
「‥はい、先生。」
「“…うん、ちゃんと、しないとね。
その写真、いつの間に撮ったの?“」
その質問に、彼女は目を閉じ切って天を仰いだ。
ともかく、今日はそう言う目的である。が、
「あくまでも浪費を止めるのが最終的な目標、とのことです。
先輩を心配させないために頑張ります、ので…」
言葉に反し据わった目でアンズが告げる。
片手に持った端末には先生との
「少し、先生の試した趣味をリストアップしてもらいましたよね?
あのあと、ゲームに詳しい
「“うん、ちょっとニュアンスが気になるけど、信頼していいんだよね?”」
「純粋元気ないい子ですよ、勢い良すぎて取材がいつの間にか襲撃になってしまうくらいには。
私、事実上セミナーの
見に行ったりしてるんです。」
「”…大変だね。でもそれくらいの付き合いがあると言うことは!“」
「あくまでもゲームに関しては、ですので。さぁ、行きましょう!」
そう言い、駆け出す彼女について行き…
「あれが噂の先生?」
「回らなくなった生徒会の仕事を今は手伝ってるって噂だけど、さ。
大人がああなるんだからオモテの破綻が見え始めて当然というべきか…
或いは、あの大人が別の分野で秀でているか、だよな?」
「どうにせよさ、まだ“売れる”タネを零すまでにはいかない、よな。
へへ、どういう
「探りはじめなんてこんなモンだろ。愚連隊の矜持にかけて、成果を取るまでは
‥てな。」
「ハイハイ、
タネ見逃しても知らんぞ。」
暫く歩いて着いたショッピングモール。
アンズの目的の場所ではないが、立ち寄った理由としては‥
「私の、趣味‥ですよね?」
「“参考にね。知らないモノに案外答えやヒントがあるかもしれないでしょ?”」
「なるかどうかは正直自信ないのですけど…例えばですね。」
そう言って彼女が向かった先、ファンシーな雰囲気の一角で。
一風変わったような表情の鳥をはじめとしたキャラクターモノのぬいぐるみを前に、
少女は浮き足立っていた。
「ハイ、ペロロ様ですね。と言っても先生は…」
「“これが、人気なんだ!?”」
多少前衛的に感じるキャラクターデザインに少し戸惑うが。
そこをアンズに勘付かれたようで。
「うーん、惹かれるような第一印象じゃないみたいですね‥」
「”あ、ごめん!“」
「いえ、私も同じでしたから。見た目で好きになる人もいればアニメシリーズ等で魅力に気付いてハマる人も居るんです。
私は後者ですね、体感そっちが多数派なのかなと思います…」
「”そうなんだ。たまたま知ったの?“」
「いえ、SNSで布教してる人が居るんです。私はそこからですね。
結構本気の人らしくて、たまに同級生っぽい人から『テスト明日だよ?』とか言われてるのが心配ですかね。
「”えぇ…“」
「魅力に気付いてくれる人がまだ(比較的)少ないという点では同意できるのですが、もっとちゃんと解ってもらうにもモモグループにはアニメシリーズ等をもっと推すとかして貰わないと、グッズに関しては口コミとかで十分宣伝になるというか、いやでも…」
そこまで熱く語りかけ、アンズはこちらを見て固まると
「ゴホン、先生の趣味探しですよね。参考になりまし、た?」
顔を赤らめて俯きつつそう聞いてきた。
漸く終わった説明に取り敢えず頷くと考えを整理し、
「“熱量と状況は伝わったかな、ペロロ様の…
他にも何があるか、教えてくれるかな。先生である以上、参考にならなくても知っておくとどこかで役に立つかもしれないしね。”」
なんの変哲もない、キヴォトスの日常。
時々響く銃声、しかし
それでもどこかで、ただならず騒ぐ声が響いている。
それに応えるため、
それでも足りない時のため、
そしてこの日、趣味探しに出かけたついでに立ち寄った路地裏が
その活動の第一歩を踏み出すのだが、数刻前たる今の
今はただ、少女に引かれてショッピングモールを駆け回っていたのだが…
「で、路地裏自習組とやらが最初の標的ってか?」
「あぁ、奴らは大した危機感も持ってはいないが、あの区域の注目だけはやけに集中している。
ブッ倒せば、制圧もやりやすくなるだろうさ…」
構成の予定変更につき、本編一話を追加。
本当はバレンタインイベントを元に色々書こうかと考えていたんですが、流石に早いかなと思い直し…
(そういえばスケバンと顔見知りみたいな描写あったよな…)
といううろ覚えからミニストスケバン章を捏造しようかなと考えてます。
本作はオリキャラがそこそこ多めに出るのですが、
本話と次章でその顔見せに出来たらなぁ、と。
アンズも一応その枠です。
Next.始まりは静かに、賑やかに(公開日未定)