必ずやかの厚顔無恥の獣を除かねばならぬと決意した。
織姫は激怒した。
必ずやかの厚顔無恥の獣を除かねばならぬと決意した。
織姫には彦星の生活がわからぬ。
織姫は機織りの娘である。
天の河原で機を織り、真面目に仕事をして暮らしてきた。
けれど、彦星のことには人一倍敏感であった。
年に一度の七夕の日に、やっと彦星に逢える。
そう思い、待ち合わせの場所に行くと、いつも決まって彦星は一匹の雌牛を連れている。
彦星は牛を育てるのが仕事。知ってはいたが、何もこんな日にまで連れていなくてもいいじゃない。
織姫は毒づくが、彦星は己を宥めるばかり。
やがて夜も更けようという頃だというのに、雌牛はずっと彦星に寄り添っている。
これでは牛が気になって接吻の一つもできないというもの。
欲求不満なまま、ふたりに残された時間が終わってしまった。
織姫は苛立った。そして怪しんだ。
彦星と雌牛との関係を、なんとか探ってやろうと思い、仕事そっちのけで望遠鏡をのぞき込む。
川辺で水を掛け合って遊ぶ一人と一匹。
草原で寄り添ってうたた寝をする一人と一匹!!
同じ寝床に入っていく一人と一匹!!!!
織姫は激怒した。怒りによって鬼のような形相になり、振り乱した髪が逆立った。
怒髪天を貫くとはこの故事によって生まれた言葉である。
「
このままだと雌牛から「うぇーい、織姫ちゃん、観てるー?」という台詞から始まるビデオレターが送られてきてしまう。
もはや一刻一秒の猶予もないとみて、織姫は包丁ひとつ懐にしまい込んで、えいやと天の川に飛び込んだ。
激流ともいえる川の流れ、そして冷たい水が織姫の感覚を奪っていく。
腕も足も徐々に動かなくなっていき、あわや過酷な川に流されてしまいそうになりながらも
タン塩、ステーキ、モツ煮。
魔法の言葉を糧に泳ぎ続ける。
恨みと復讐と食欲が、彼女の心を支えてくれた。
やがて向こう岸に着くと、休む間も惜しんで彼奴らの寝床へと歩を進める。
「ジャーキー!!!!」
叫びながらバンと小屋の扉を開けると、彦星のベッドの上には産気づく雌牛が……。
「この泥棒牛!!」
叫びながら織姫が包丁を手に、今にも刺してやろうと駆けだしたその時、
彦星が織姫を羽交い絞めにした。
「なにするのよ。こんな獣とまぐわっただけじゃなくて、子供まで作るだなんて!!」
「違うんだ。この牛は天帝さまのお気に入りで、無事に出産するまで預かっていただけなんだ」
「
「だから君の想像するようなことは誓って一切してない」
「あら、そうだったの」
誤解が解けるとともに、父親の性癖を知ってしまい複雑な気持ちになる織姫でした。
なお、生まれた子供は自分によく似た美少女に育って、より一層複雑な気持ちになるのでした。