〇月×日[しゃべる羽ペンと夢見る少女]
何でもない異世界の、
何でもない国にある、
何もないただの村で、
少女は魔法使いに憧れるのでした。
羽ペンを持つ少女は今日も考えます。
「どうしたら魔法使いになれるのかなぁ」
「いい加減その夢を諦めた方がいいと思います」
声の主は、
少女と羽ペン。
喋る羽ペンはこの世界ではちょっと珍しいです。
「ソドは、すぐそういうことを言う」
「ソドじゃありません。私の名前はライティ・ソードです」
「毎回思うけど、その名前言いにくいもん」
川に捨てられていたクセにと少女は口をとがらせます。
「貴方のメイク・ナイタースカイだって言いにくいですが」
「うるさい、私だって思ってるよ」
赤髪、貧乳、一般的な顔、
どうして自分は名前以外普通なんだ、
というのが彼女の最近の悩みとなっています。
「メイク、洗濯物取り込んで頂戴」
「あー分かったよ、お母さん」
少女は自分の部屋から出ていき、
部屋には羽ペンが一つ取り残されます。
くるくると回る様子はまるで困っている様子。
「魔法使いになるためには魔力が必須。
ですがメイクあなたには魔力がありません、
って、夢見る少女に言える訳ないじゃないですかぁ」
魔法使い。
それは魔力を元に魔法を使う職業。
そもそも魔力がないメイクには就けない職業です。
「いい加減、諦めてくれませんかねぇ」
羽ペンの悩みは今日も解決しそうにありません。
◇◆◇
続 〇月×日[ヘンテコ魔法使いと夢見る少女]
「メイクー、それ終わったら掃除お願いできるーぅ?」
「まーかーせーてー」
頑張って声を響かせます。
外の空気はみずみずしいです。
「えっと、洗濯物を取り込んで......」
物干しには服、服、服、服。
その量は少女の手には余る量です。
家に一往復して減るのはちょっとだけ。
(こんな時魔法があったらなぁ)
そう思ってしまうのも仕方ありません。
一瞬で綺麗になる魔法の壺があるとは聞いたことがありますが、実際に実物を見たことはありません。
「アレぇ? こんな服あったけ」
それは黒いコート。
お父さんが着るには、
豪華すぎ、サイズも小さいです
「誰が、服だ」
「服が動いたッ」
逃げようとするが時すでに遅し。
服から腕が伸び、
がしっと掴まれます。
少女の力では動けません。
こちらを覗くはヤツれて血走った眼。
「ご......」
「ゴミクズの様に始末してやる?」
「ち、違う」
「ご苦労様、死ね?」
「誰だ、少女にこんな教育したのはッ」
羽ペンです。
「こんな状態で悪いが、ご飯をください」
「えっと、その状態ですか」
「できれば温かい家で」
「不審者はちょっと」
「お願いしますッ」
黒コートの人物に恥という概念は無いようです。
その熱意に負けたのか、
そう思うように仕向けられたのか、
少女は仕方なくお母さんと交渉を始めます。
「はあ、また変なのにあっちゃったなぁ」
お母さんとの交渉の結果、
昼飯の残りならという話になった。
◇◆◇
金髪の女性はお腹をさすります。
顔は満足、口元にはソース、服装は黒コート。
「いやァ、ホントに感謝だぜ」
「この数分で全部食べてる」
「ああ実に旨かった」
机の上には空になった器。
スープの一滴まで綺麗にすすられて、
まるで洗い立てのような状態になっています。
「えっと、えっと」
「そうだ名乗り忘れてたな」
あーだ、こーだと繰り返し、女性は名を名乗ります。
「オレの名前はブイ・レブ。
しがない魔法使いをやっている。
ブイでも、レブでも好きに呼んでくれ」
身振りに合わせて、
黒いコートに覆われた、
豊満な胸がプニっとゆれます。
きっと食べた物は胸で栄養として蓄えられるのでしょう。
「では、レブさんで」
「むず痒い呼び方だ」
「そんなつもりはないですけど」
私は皿のかたづけが終わり、
会話がゆっくりと始まります。
「レブさんは魔法使いなんですか」
「そうだぞ、実物を見て感動したか?」
「本音を言えば、ちょっと悲しくなりました」
少女は、魔法使いには威厳があると信じていました。
羽ペンは、ただのがめつい亡者だよっと言ってました。
どうやら後者の方が事実なようです。
「えっと、どうして物干しに」
「魔法の出力間違ってぶっ飛んだからだ」
「実は村に何か用が」
「いや、方向も真逆にぶっ飛んだ」
本来は、村の真逆にある首都に行きたかったそうです。
「まあ飯の礼だ。頼み事ぐらいなら解決するぞ」
不安しかない魔法使いは、おとぎ話のような提案をしてきます。
「頼み事ですか」
「もちろん、できる範囲で頼む」
おとぎ話の人物ほど万能ではないようです。
「なら、魔法使いになる方法を教えてください」
「ほう、オメー魔法使いになりたいのか」
「はい、めちゃくちゃなりたいでぅ」
思わず噛んでしまう少女。
はっはっはと笑う
「だが、オメーには魔力が無いから魔法使いは無理だ」
「えっ」
「でも、魔法は使えるかもしれん」
「えェ」
「まあ、オレに任せろ」
「えぇ」
残酷な事実と、
妙な期待を胸に、
少女は家から連れ出されます。
「お母さん、夕食は食べるからッ」
「できれば、オレの分も頼むぞッ」
家に残るは二人分の声のみ。
「まったく、気を付けるんだよ」
それを聞く人物はもういませんでした。
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