はい、こちらストーム1~仮~   作:えるらるら

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はい、こちらストーム1~ヒロアカ編~2

「ただいまです~。ハジメちゃーん、お客さんを連れてきました!」

 

「んぁ~おか~。わぁ、随分と個性的なメンバーじゃん。その人等がヒミちゃんが言ってた人達?」

 

「はい! トガの新しいお友達の弔くんと仁くん、ステ様ファンのスピナーくん、それとマグ姉さんに荼毘くんと黒霧サンと圧紘くんです」

 

 帰宅したトガヒミコが嬉々として一人一人紹介していく者達は、ストーム1からしても中々に個性的な印象を受ける者達が多い。

 

 不安になるほどの痩身に無造作な灰色の髪、何よりも頭部前後鷲掴みから始まり全身に「人の手」を模した7対14本の装飾をしており、苛立ちを隠さない者。

 黒と灰色を基調としたラバースーツを身に纏い、顔全体にも上下で灰色と黒で分かれたマスクを着用して、キョロキョロと落ち着きのない者。

 個性の影響だろうトカゲの様な様相とピンクの逆立てられた髪に加えて、どこか見覚えのある装いで、真っ直ぐにストーム1を見ている者。

 赤い長髪にサングラスで、紹介された中では布に巻かれた大きな棒状の何かを抱えて入るが、大柄というだけで一般的。ヒラヒラとこちらに手を振るものの警戒をしている者。

 訝しげに睨む蒼い瞳に黒髪。しかしその顔は顎から首元、耳は焼けただれた様な皮膚を金属で無理やり縫合して繋ぎ止めている者。

 服装こそバーテンダーの様な襟の高いスーツで身を包んでいるが、頭部や見え隠れする範囲は黒い霧のみが漂い、静かにストーム1の言動を観察している者。

 白い仮面に羽つきシルクハットとトレンチコートの装いで、紹介に合わせて片腕を広げた後に胸に当て大げさに礼をする者。

 

 そして一番置くに佇む――

 

「最後に弔くんのセンセイです!」

 

 ――口元以外がのっぺらぼうの様でありながら、パイプが伸びるマスクにスーツで身を包む異様な雰囲気を纏う存在。

 

「へぇ……とりあえず立ち話も何だし、大したもてなしとかないけど入りなよ。座る場所は、テキトーに座っちゃって。ヒミちゃんはなんか飲み物いい?」

 

「お菓子も出しますかぁ?」

 

「だしちゃってー」

 

「ちうちうもいいですか?」

 

「あとでねー」

 

 その返事を聞いて嬉しそうにキッチンの方へ向かうトガヒミコを見送り、ソファーや椅子、階段と腰を下ろす面々を空いている椅子に座りながら改めて観察するストーム1。

 対する様に、紹介された面々も品定めをするようにストーム1を見る中で、最後にセンセイと紹介された者が口を開く。

 

「さて……君とは改めていつか話してみたいと思っていたんだ。(あらし) (はじめ)くん――いや、非合法ヒーローストーム1と呼んだほうがいいかい?」

 

「お好きにどーぞ。ヒミちゃんが連れて来るからどんな人達が来るのかな―って思ってたけど……そっかぁ、オー「今は先生と呼んで欲しいねェ」――あ、そう。去年の今頃以来じゃんね。こんな形で会うなんてビックリ」

 

「僕も驚いたよ。トガヒミコくんから聞いたときはまさかと思ったけど、縁というのも馬鹿にできないねぇ。どうかな? お友達も居るようだし、君も弔と共に来るかい?」

 

「いきなり勧誘はうける。前にも言ったけどお断り」

 

「それは残念だ。これから世界は荒れる。君だってオールマイトの事は気付いているんだろう? これからは弔達の時代だよ?」

 

「ハハッ、ヴィランの時代とかヒーローの時代とかどーでもいいかな――「先生の誘い断ったんなら、俺等の敵ってことだよなァ?」――手荒れすご」

 

 最初こそAFOが話しているからと抑えていた死柄木 弔ではあったが、ストーム1の返答も態度も気に入らず、訪れた限界により次の瞬間にはストーム1の顔を"ほぼ"鷲掴みにしていた。

 遊ばせ見せつける様にわざと触れさせていない親指。それが触れれば死柄木 弔の個性は効果を発揮し、ありとあらゆるモノが崩壊を始めるという状況。

 

 当然ストーム1は死柄木 弔の個性を知らない。しかしどうすれば何かが起こる事は薄々理解している。

 立ち位置、雰囲気、そして座るにしろ何をするにしろ五指全てが触れないように触る癖。

 それらから導き出した予想……しかし、だからといってストーム1からすればどうでもいい。

 

「オススメのハンドクリーム教えたげようか? 通販の口コミ情報だけど」

 

「状況分かってんのか?」

 

 ソファーから驚異的な身体能力で移動してきたのも見えていた。

 この状況が死柄木 弔からすれば優位性があると判断する事も理解している。

 それでもストーム1は命の危機を感じない。ひりつくような。己の矮小さを感じるような。見えているはずの視界が真っ暗に染まるような絶望も危機も感じない。

 

 一方で死柄木 弔は苛立ちが募るばかりだった。

 最初から気に食わない目は、今も変わらず自分を見ている。殺意を込めた視線を向けても、明らかに敵対行動をされている状況になっても、その他大勢を見る様な視線が変わらない。

 抑揚のない喋り方も、作っている口調も何もかもが気に食わない。だから怒られるなら後で怒られればいいと――

 

「もういいや、死ねよ」

 

 ――五指の全てでストーム1に触れた。

 

「は?」

 

「あーね。そんな感じね」

 

 しかし何か変化が起こることはなかった。

 その様子に死柄木 弔だけではなく、AFOとこの場に居ないトガヒミコを抜いた面々は驚きの表情や声を漏らす。

 ストーム1だけは何かに納得したようで、ろくな抵抗も見せずに唖然としている死柄木 弔の胸元を指で押して距離を取らせば、その視線をAFOへと向ける。

 

「こらこら弔、いきなり攻撃は失礼じゃないか」

 

「あわよくばアタシが死なないかなぁ~とか思ってたくせに~」

 

 おどけた様子で言うAFOに返すストーム1。やりとりの雰囲気は先程と一切変わらず、その間に飲み物を用意してきたトガヒミコが言葉を聞いて何が起きたのか分からずにキョトンとしている。

 

「ハッ! もしかして、弔くん……ハジメちゃんに一目惚れ?」

 

「その口閉じてろ。クソガキ」

 

 そして、まさか……とばかりにニヤニヤしながらふざけた事を抜かしたトガヒミコに、怒りや癇癪を通り越して死柄木 弔は痛む頭を抑えていた。

 その様子を横目に、トガヒミコが持ってきた飲み物を全員に配りながら、何事もなかったかのように、極めて自然に、当たり前のことを言うように、その場に居る全員に向けて言う。

 

「まぁさ、安心して悪ことしたら? アタシからすればヒーローに憧れるのも失望するのも勝手だし、執着するのもかまってちゃんするのも勝手にすればいいじゃんって感じだからさ。何かやるってゆーなら、応援するよ。がんばれ、がんばれって」

 

「お前、本当にヒーローか?」

 

「んー? プロって意味で聞いてるならノー、英雄って意味で聞いてるならイェス。正義の味方かどうかって聞いてるなら、アタシは人類の味方。だから基本的に人助けはするし、現行犯逮捕ぐらいはする感じ? やんちゃくん的にアタシは敵かもしんないけど、アタシからすればやんちゃくんもプロヒーローも、AFOもオールマイトも、そこら辺歩いてるおばあちゃんも生まれたばかりの赤ちゃんも大差ないんだよねぇ」

 

「ハッ、神様気取りかよ」

 

「むしろ殺す側。アレは人類の敵だから」

 

 自身の問に答えたストーム1に対して嫌味のつもりで死柄木 弔が言えば、まるで対峙した事があり、悩む素振りも含まれる熱も無くそれが当然と言わんばかりの返答に、やりとりを聞いていた何名かは気持ち悪さすら覚えてしまう。

 

「頭ハッピーすぎて気持ちワリィなお前」

 

「ちょー素直すぎてうける」

 

 それから……

 

 

「えー、ほんとに腕にメジャーついてる~」

「へへっ、これは俺の武器さ!! 俺の個性はとってもシンプル! 二倍!! それに必要なのはイメージ!! しかーし、それが不完全なら――!! ――ってことで!! ――!!」

「すっごい教えてくれるじゃん」

 

 

「その包帯とかマフラーってステインくんリスペクト?」

「あぁ、俺はステインを継ぐ者だからな。まだまだ遠く及ばないが、まずは形からでもって」

「ふーん……まぁ、がんば。ステインくんの意志が続くか楽しみにしとく。でもとりあえず形からなら、もーちょい毛先遊ばせてみない?」

 

 

「そうそう、あそこの新メニュー。おいしそーだから気になってるんだよねー」

「先月のはとっても美味しかったから、私も気になってたの! 良かったら一緒にいかないかしら?」

「いいじゃん。いこいこ」

 

 

「へー、蕎麦好きなんだ。アタシ、ざる派」

「温盛りつけそば」

「知らないの来た」

 

 

「やんちゃくんの保護者役かぁ。好き嫌いとか多そうで大変そう」

「好き嫌いは特に無く食べてはくれるのですが、ジュースとお菓子で済まそうとしたり、食事自体を面倒がるのが悩みですね。あと脱いだ服をその辺に投げ捨てるんですよ。何度言っても治りません」

「めっちゃママさんしててうける」

 

 

「マスクいっぱいあるじゃん。あ、これとか可愛い感じする」

「フフフ、お近づきのサービスで欲しかったら一枚あげるぜ?」

「んー、いらないかな」

 

 

 と、他の面々との交流を終えたストーム1が死柄木 弔とAFOが座っているテーブルへと戻れば、待ってましたとばかりに背中にトガヒミコが張り付き首筋に噛みついた。

 噛みつかれた本人は特に気にした様子もなく、トガヒミコが落ちないよう手を回しおんぶしつつ、背もたれのない丸椅子に腰を下ろす。

 その様子を見ていた死柄木 弔は、蟀谷を強く抑えて一呼吸置いてから色々言いたいこと諸々無視することを選択して気になっていたことを聞くことにした。

 

「……そういや、なんで俺の個性受けて無事だったんだァ?」

 

「説明めんどい。アタシは分かってるし相性が悪かったで良くない? ――良くなさそうな目しててうける」

 

「いいから教えろ」

 

「詳しくは本気でめんどいなぁ。簡単に言えば、やんちゃくんの個性じゃ一生掛けてもアタシの体力ゲージは削りきれないって感じ? 今後に期待みたいな?」

 

「フゥー……なんとか死んでくれねぇかなァ!」

 

「おこじゃん」

 

 青筋を立てながら首筋を強めに搔き毟りつつも、死柄木 弔は飛びかからずに冷静さを保とうとしている。

 僅かな時間で一種の成長を見せた死柄木 弔の様子に、AFOは面白いものを見たような雰囲気で二人のやり取りに口を挟む。

 

「彼女の個性は"アーマー値"と言ってね。弔が分かりやすい言い方をすれば、仮体力みたいなものを持っているんだよ。一日で回復するその仮体力は、攻撃を受けた際に最適な受け方をするから今の弔とは相性は良くないね。僕でも彼女の限界は分からないんだぜ? 果たして本当に個性と言っていいかもね」

 

「は? チートかよ」

 

「チートっちゃチートかなぁ? 仮にどうにかして他の誰かがアーマー値を持ったところで、やんちゃくんのワンタッチで殺せると思うし。ねぇ、先生?」

 

「はて、僕には分からないな」

 

「ふーん……まぁいいや」

 

 個性届けの際に自己申告した個性の内容をAFOが知っていようと、それ以上に詳しい情報が今漏れていたとしてもストーム1にとってはどうでもよく、満足したトガヒミコが背中から降りて前から抱き着いてきたのを膝に乗せて抱きしめ返していると、ふとある事を思い出した。

 

「あ、そういえばさぁ、ステインくんが捕まった時にステインくんと一緒になって暴れてたアレ。やんちゃくん達のでしょ? アレが何かはどうでもいいけどアタシ判定でアレは赤色だからさぁ、見かけたら処理するから。そのつもりでよろ」

 

「んだよ、結局は邪魔すんのかよ」

 

「人助けも現行犯逮捕もするって言ったじゃん。見かけたら処理するだけだから、率先して邪魔は多分しないよ。何したいか知らないけど、赤色にならなきゃ応援するのもホントだし」

 

「意味わかんねぇが、どっちにしろ邪魔にはなるんだろ? やっぱここで消えとくか? チートでも別に無敵ってワケじゃねぇだろ」

 

「なんかあれだね、あれ。先生みたいなタイプが教えてるのに、表に出てくるパッションがすごいね。狡猾さが無い感じ? ちょー素直じゃん」

 

「……マジでどういう感性してんだコイツ」

 

 本当に理解不能で、気味悪さもさることながらある意味珍獣を見ている感覚になってしまった死柄木 弔は、伸びかけていた手を下ろして静かに観察することにした。

 

 その後もストーム1は、方や無表情で抑揚も無く淡々とAFOと談笑を繰り広げていたり、寝落ちしたトガヒミコを二階の寝室に移動したり、他の面々と交流をしたりと過ごし、気がつけば夜も更けたということで別れ際には意図的にではあるが敵意は無く握手を交わして死柄木 弔達は改造コンテナハウスを後にする。

 

 帰路の途中、握手した手を見ていた死柄木 弔は落ち着いた様子で口を開く。

 

「なぁ先生、ありゃ一体なんなんだ」

 

「弔は彼女が気になるのかい?」

 

「そりゃあな。先生に相手でも、俺にアレだけやられても、他の連中を相手にしてる時も――トガヒミコ(あのガキ)相手ですら一切の変化がなかった。言葉を理解しただけのポンコツロボットって言われたほうがまだ納得するレベルだ。だが確かに、なんだろうなァ……人間らしいチグハグな感じはあったんだ。初めてみるタイプの人間だ」

 

 死柄木 弔の言葉を聞いてAFOは嬉しそうに頷く。

 そして死柄木 弔の前に立ち、後ろを付いてきていた面々にも向けて答える。

 

「彼女は間違いなく英雄だよ。ただ本人も言ったように正義の味方じゃあない。僕の主観だけど明日隣人が死んだとしても、彼女は何も変わらないだろう。同居人が見るも無惨に殺されたとしても眉一つ動かさないと思うぜ……そうだね、オールマイトが平和の象徴なら、彼女は戦争の象徴だ。ただ僕達なんか眼中にない、別のナニカに対する暴力装置」

 

 言い終えたAFOが一息置くと、纏う雰囲気が一変する。

 先程までの嬉々としたものではなく、息がし辛くなるほどの冷たい雰囲気。続く言葉も酷く冷たく、どことなく苛立ちを含んだように重く発せられる。

 

「いいかい弔、そして弔と仲良くしてくれている君達にも忠告しておこう。学べる事もあるだろうからね、関わるなとは言わない。でもね、アレの様になってはいけないよ。次の瞬間に世界から自分に関する全てが消えても問題ないような、あんなつまらない在り方は耐えきれるものじゃない。あまりにも無価値すぎて少なくとも僕は耐えきれない」

 

 その言葉を聞いた死柄木 弔は一瞬きょとんとした後に、堪えきれない笑い声を漏らす。

 

「ハハハハッ! 安心しろよ先生。俺等の誰も、あんなモンにはならねぇよ。そもそも成りたくて成れるモンじゃねぇってのぐらい分かる。チート過ぎて今手が出せねぇってのはイラつきはするが、アイツのスタンスは分かった。邪魔ならどかして進むだけだ」

 

「あぁ、流石だね。僕がいちいち言う必要はなかったようだ」

 

 不気味な雰囲気こそ変わらぬものの、AFOから発せられる苛立ちは鳴りを潜め、改めてAFO達は帰路へとついた。

 

 

 その後、たまに蕎麦を食べに来たり、お出かけのお誘いをしたり、ただ寄ってみたりと個々での交流はあるのだが、それが今後どう影響していくのかはストーム1にとってはどうでもいい事である。





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