妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします! 番外編 作:tom200
トレンドのある謎時空。この二人しょっちゅうしてるな、と思ったので書いてみました。
今日も今日とてお兄様と寄り添いながら日課のトレンドチェックをしているのだが、プチ炎上している言葉が目に入る。
(頭ぽんぽん…オタクはこのワードだけでもご飯が美味しくいただけるし嬉しくなるけれど、現実にやられるのは違う…ねぇ)
一般的にどうのこうの、というより炎上しやすい人の発言に乗っかってのプチ炎上だから、大した燃え草でもないのだけど。
お兄様はよく撫でてくださったり、ぽんぽんしてくださったりして構ってくださる。
それは単純、私が喜ぶから。中学時代からの刷り込みである。
私を落ち着かせる時だったり、褒める時だったり。用途はその辺り。
そして当然だけれどこれを嫌だと思ったことなど一度たりともない。
嫌だと思う理由が無い。
たまに誤魔化そうとしてるな、と思う時でも、お兄様が頭を撫でてくれてるからはぐらかされてあげましょう、となる。…都合の良い女?チョロイン?なんとでも言うがいい。お兄様のなでなでぽんぽんにはそれだけの威力があるのだ。
「難しい顔をしているね、なにかあったか?」
妹の変化に敏感なお兄様は、たとえ読書の途中でも気づいて下さる。
邪魔をしてしまった、と心苦しくもなるけれど気にかけてもらえることが嬉しくて、くすぐったい気持ちになった。
(…そうだ。お兄様はどうなのだろう)
言葉を返すより先に手を伸ばし、お兄様の頭に手を乗せ二回跳ねさせる。
「深雪?」
…うん、まあ戸惑うよね。唐突に意味もなくぽんぽんされたら、いかなお兄様でもびっくりもする。
「お兄様はいつも私の細かな変化に気付いて下さるから、感謝を込めてみました」
「そうか」
理由としては弱いかな、と思ったのだけどお兄様はそれでもよかったらしく、ふわり、と優しい笑みを浮かべられた。
嫌がられてはない。むしろ喜ばれているように思う。
「こんなご褒美がもらえるならば、どんな変化も見逃せないな」
「あら、条件付けになってしまいました?」
「うん?」
「実は――」
ネタばらしに端末を見せると、お兄様は表情こそ変わらないまでも首を傾げた。
「誰でもいいわけではない、というだけで、この行為が嫌悪されることではないと思うんだが」
「そうですよね。私もお兄様にされるのは大好きですもの。コミュニケーションの一つですよね」
ハグも手を繋ぐのも同じこと。触れられるのを許している相手かどうかが問題なのだと思う。
あとは、そうだな。
「愛に飢えているならば、どなたでも嬉しいと思ってしまうかもしれませんね」
孤独でいる時に手を差し伸べられたらどんな相手にでも懐いてしまいたくなるかもしれない。
悪い人だとわかっていても利用するつもりなのが見えていてもそれでも、その手の温かさはきっと冷え切った心には魅力的に映るだろうから。
もしくは希望を与えてくれる人、と盲信してしまうか。
どちらにしても必要としてくれるなら、と依存したくなるだろうな。
とは、小説やマンガを読みすぎだろうか。
くすっと笑うと、突然抱きすくめられた。
それも、力加減を間違えたのかと訊ねたくなるほど強い力だ。
「お兄様?」
何か怒るような、不安にさせるようなことを言っただろうか、と顔を覗けば――切なげな表情を浮かべていた。
「…深雪を飢えさせるなんて、俺には耐えられない」
あら、まあ。
「私が飢えているように思えましたか?」
くすくすと笑いながらなんとか手を伸ばしお兄様の頬に触れる。
そうすると、更に眉を下げられた。
「俺以外を許してしまう深雪を想像するだけで耐えられないんだ」
手に押し当てるように頬を傾け更に抱きしめる力が強くなる。
少し苦しいくらいだけれど、笑いが止まらなかった。
(お兄様ー、それ妹に言うセリフじゃないですよー、と突っ込みたいけれど、お兄様はシスコンだものね。妹に群がる虫は許せないってことかな)
「お兄様からはたっぷり愛を頂いておりますもの。そんな想像をする必要はありませんのに」
「深雪はグルメだからな。他に美味しいものがあったらそちらに行ってしまうかもしれないだろう?」
「まあ、浮気を疑われてますか?」
「浮気…」
おっと、お兄様から不穏な雰囲気が。
お兄様から振った話題なのに。
でも今のってそういうことよね。同じ味に飽きたから偶には別の物に手を出すんじゃないかって。
「信用が無いんですね」
「!そんなつもりじゃ、」
「ふふ、冗談です」
慌てて否定するお兄様こそ浮気を疑われた人みたいになってしまっているけれど、そんなことは言わない。
「いつもお兄様に翻弄されているのですから、偶には仕返ししませんと」
いつも慌てふためかせられているのでね、こんな機会見逃せない。
お兄様もふっと体の力を抜いて。
「いつも翻弄されているのは俺の方じゃないか」
「まさか!それはお兄様の勘違いでしょう。今日の学校での一幕をお忘れですか?」
「あれは兄妹のスキンシップだろう」
「…兄妹のスキンシップで妹を真っ赤にさせるのはどうかと思います」
今日のお昼に、近くの席に座っていた生徒たちがコーヒーを注文しに立ち上がった姿を見ていなかったわけではないでしょうに。
今や食堂で一番の売れ筋はコーヒーである、と実しやかに囁かれている。
おかしいね。学校でべたべたしないように、って頑張っているのに時折お兄様がノリノリで構いに来る。そして困っているところを友人たちが助けてくれるっていうね。仲良しグループです。もう一科生と二科生の差なんて見えない。
この関係性が学校全体に広がっていっているようで、いい風潮ですね。
…だからって私たちを娯楽扱いして、観察しながらげんなりしてコーヒーを飲むのはいかがなものかな?と思うのだけどね。
「頭に触れるような方はお兄様しかおりませんので、比べることはできませんし、恐らく比べること自体無いのでしょうね」
「それは、何故?」
「だって、お兄様はお兄様でしょう。目を瞑っていてもお兄様を間違えることはあり得ません」
もうお兄様の撫でる癖は体に染みついている。
「…それは検証できないからなぁ」
「そうですね」
お兄様以外が撫でたりぽんぽんすることは無いからね。テイスティング?比較はできませんでした。
「残念です。100%間違えない自信がありますのに」
腕の中、笑っていると右腕だけで頭を抱えられて撫でられる。
その触り方が落ち着かないように感じられて、何か不安を感じているみたいだけれど、一体お兄様が何を不安がるというのか。
「一体何を心配されることが?」
「…心配、なのかな。よくわからない」
「そういう触り方をされてます」
断言すると、またふっと力が弱まる。
「俺よりも深雪の方が俺に詳しいな」
「そうですか?でもお兄様も私の小さな変化に気付いて下さいましたから。お互いがお互いをよく見ているということですね」
「お互い様か」
「お互い様です」
ふふ、と二人して笑い合って。
「とにかく深雪を飢えさせないよう、せっせと愛を伝えるとしようか」
「これ以上はお腹がいっぱいで食べられなくなりそうです」
「甘くすれば入るんじゃないか」
「ずっと甘いモノばかりですと、別腹におさまらないかと」
「受け取ってくれないのか…?」
「…少しくらいでしたら」
おかしいなぁ。ただ頭ぽんぽんについて聞きたかったはずなのに。
その後、お兄様の少しと私の『少し』には認識にかなりの差があるようで、たっぷり話し合いをした。
話し合ったところできっとこの溝は埋まらない。
妹は気づかないうちに丸め込まれて、お兄様に有利な落としどころで落着したことに気付かない。もしくは今はこれくらいにして次こそは、と考えるのだけどそのまま定着しちゃう。
原作でもお兄様は良く妹の頭をぽんぽんしていたけど、あれは宥めるとか落ち着かせるとか理由があったよね。
ここでは…どうなんでしょうね。