「それとね…あの子、誰かのために嘘吐くときに少し黙ってあー、って話しだすクセがあるんだよね」
「本当ですかアマツ?」
《はい。アビドスやミレニアム、百鬼夜行や山海経、レッドウインター…あとはこっちで支援した自治区の生徒が向かっています。それと、トリニティにブラックマーケットの構成員やカイザーが向かっているとの情報もあります。おそらくは司令を撃った弾丸の回収が目的かと》
「あいつら、性懲りも無く…わかりました。奴らを通さないようナギサさんらに伝えるので貴女は引き続きバックアップを頼みます」
《了解》
通信を終え、コハクは再び部隊指揮を再開すると同時にナギサのもとに向かっていった。
ムサシの通信の後、アリウスは撤退していき、追撃を求める声が出たものの負傷者の救助を優先するように命令して各自それに従っていた。
自分たちに居場所を与えてくれたムサシが撃たれ、傍目から見ても危険な状態となった様子を見て激昂する者もいたが、他でもないムサシ本人から過度な報復を禁止する旨を伝えられ、もしかしたら遺言になるかもしれないため、多少の遣る瀬無さを感じながらも救助活動を行っていたのであった。
とはいえ、偶々現場近くにいてスクワッドを捕捉しそのまま交戦、怒りに囚われたのもあり、普段通りの行動が出来ず返り討ちにあったという報告も何件か挙がっているのも事実ではあった。
(取り敢えず、今は二次攻勢に備えつつ、カイザーやマフィアの介入を阻止しなくては…コノミさんもすでに司令官の手当てに向けて移動してますし、あとはあの人の回復力次第ですが…掲示板にも繋がらないとなると、本当に意識が途絶えてるのでしょう…)
次に向けての思案を巡らせつつ、ナギサのもとに着いたコハクであったが、何やら様子がおかしく、近寄ってみると蹲って震えているミカをナギサが介抱しているのが見て取れていた。
「ナギサさん、ミカさんは何が…?」
「っ!コハクさん…それが、ムサシさんが撃たれてからずっとこのような様子で…」
「コハクちゃん…?私を、咎めに来たの…?」
こちらに気がついたミカが顔を上げてそう問うのを聞き、否定しようとしたコハクであったが、彼女の表情を見て一瞬固まってしまった。
その顔は『前世』でみた【
「そうだよね…?私がアリウスと関わらなければ、ムサシちゃんがあんな目に逢わずに済んだものね?これでムサシちゃんが死んじゃったりしたら、原因の私を罰するしかないもんね?」
(マズイ…⁉︎ミカさんが司令官を友人と同等かそれ以上に慕っているのは薄々勘付いていましたが、それが裏目に出るとは…!早く彼女をなんとかしないと、最悪の場合…《色彩》の襲来、ひいては『ミカさんのテラー化』の可能性が…‼︎)
色彩やテラー化の条件はハッキリしていないが、仮に生徒の深い絶望が条件ならば今の状況は非常に危険である。なにせ、自分たちの問題に真摯に向き合い、解決に臨んでいたムサシが撃たれ、瀕死の状態になる様を見てしまえばその絶望感は計り知れないだろう。
「あんなに血が出ちゃ、もう、手遅れ…「バカな事を言わないでください‼︎」え?」
「あの人を甘く見ないでください‼︎考えてみてください?ツルギさんと模擬戦でガチバトルしてほぼ全身骨折してたのに死ぬどころか半月足らずで後遺症なしで完治して、そのまま飛んで退院して近くにいた不良を素手で制圧したバケモンみたいな人です。たかが拳銃弾二発で死ぬと思いますか?寧ろそれで死んだら訳がわかりませんよ」
「え、えぇ…?」
凄い剣幕で殆ど悪口みたいな事を言っているコハクにミカはキョトンとしているとさらに言葉を続けていた。
「アレくらいで死ぬような人なら私はとっくに総司令官になってますよ。貴女も司令官の友人でしょう?なら、あの人が復帰するのを一緒に信じましょう?」
初めこそ冷静な様子を見せるコハクら設立組に対してミカは薄情なのではと感じていたが、よく見ると顔を強張らせてる者もいる事から、ムサシの生還を信じているが、下手に動揺すれば周りの士気に影響を与える事を理解しているため、感情を抑えているのだとミカは納得したのであった。
(そっか…ここで私が動揺したら周りも不安になる…そうなったらアリウスの思う壺だもんね…)
コハクが大声をだしたことで幾分か気持ちが整理され、このまま自分がメソメソしてるのはマズイと理解したミカは涙を拭い、落ち着きを取り戻したのであった。
「わかったよコハクちゃん。今はムサシちゃんが無事に回復するのを祈るよ…それでコハクちゃん?何が私たちに頼みたいことがあって来たんじゃないの?」
「あぁそうでした、お二人に頼みたい事がありまして…」
コハクはナギサとミカに、ムサシ銃撃の報道を受け各学園が救援を行いにこちらに集結してきているため、彼女らのトリニティ出入りと救援及び戦闘活動を許可を降ろす事、ムサシを撃った弾丸の回収のためカイザーやマフィアの介入が予測されるため、少なくともカイザーの救援を断る事を頼んでいた。
「なるほど…わかりました。すぐに関係各所にその事を伝えておきますね」
「はい、よろしく頼みます」
《こちらコノミだわさ‼︎今しれぇを抱えてミネしゃんがトリニティ校舎に到着してこれから手術を行うけど、他の負傷者の手当てで人手と、もしかしたら輸血が足りないかもしれない!マコトしゃんに連絡して救急医学部を派遣させてくれる⁉︎》
「了解‼︎…もしもしマコトさん?これからトリニティ校舎内にてムサシさんの手術を始めますが、人手と輸血の不足が予想されるので救急医学部をお借りしたいのですが…」
《あぁ構わん‼︎すぐに向かわせるから桐藤ナギサに彼女らのトリニティ校舎立ち入りを許可させろ‼︎》
すぐにナギサはトリニティ校舎の関係者に連絡してから数分後、セナたちが現場に到着し、トリニティ生徒はゲヘナ生徒が校舎内に立ち入る事に嫌悪感があったものの、他ならぬナギサからの命令であることと、直前に血塗れのムサシを抱えたミネが来たことを知っているため事の重大さを理解し、大きなトラブルもなくセナたちは手術室に入り、ムサシの手術を開始したのであった。
(ヨシ、これであとはアリウスの二次攻勢を…しまったッ!アズサちゃんの事を忘れてた‼︎……いや確かヘイロー破壊爆弾はメリニさんが預かってる筈…あ、そういえば前に持ってない事を怪しまれた事と向こうは本物かどうかを区別できる方法があるとかで彼女に返したんでした⁉︎)
(よく考えたらそんな方法がある事自体が不自然でしたし、アレは万一を考えてアズサちゃんが吐いた嘘…?クソっ!ミサイルと先生襲撃を防げば使う必要は無いとたかを括ってた私たちのミスだ…‼︎)
放送を見る限り、サオリの精神はかなり不味い状態にあることは伺えた。そんな状態で原作通りにアツコが負傷してしまえば、怒りのままに残った一丁の拳銃でアズサを殺しかねない事態にコハクは焦りを感じていた。
そして少し前から雨が降り始めており、アズサが爆弾を起爆するのは時間の問題であった。そんななか、メリニから彼女宛にメッセージが届いた。
「メリニ?一体何が……っ!これは…⁉︎」
・・ー・ ・ー・ ・・ ・ ー・ ー・・ ・・・ *1
「サオリィィィィ‼︎」
「くッ‼︎」
廃ビルの中で、アズサは鬼気迫る表情でサオリに銃撃を行っていた。
既に仕掛けたトラップは粗方作動しており、見ての通り銃撃戦を行なっているのだが、その戦い方にサオリは動揺を隠さずにいた。
自分が教えたものが殆どだが、飛翔を交えた銃撃や格闘、そして銃剣を交えたその戦法は、先程まで相対したムサシのものと酷似していた事がサオリの精神を揺さぶっていた。
なにせ、脆弱な肉体だと知っているシャーレの先生ではなく、自分らと同じくヘイローを持った存在…即ち銃ではまず死ぬ事は無い存在に致命傷を与えたのだ、その精神的負荷は計り知れないだろう。それに加えてここに来るまでに一部の大和生徒からの追撃があり返り討ちにしたものの、自分らのように他者から植え付けられた憎悪ではなく、『本物』の憎悪をぶつけられた事も影響していた。
なにより、こちらに向けて優しい目を向けて歩み寄ったムサシを撃ったことに、本性は優しい性格であるサオリ自身に罪悪感を与えていたのであった。
そんななかでアズサの強襲を受け、ムサシと似た戦い方をする彼女の姿にサオリはムサシの幻覚が見え始めていた。
「何故だ⁉︎何故
「あ、う……私は、トリニティの奴らに…」
「まだそれを言うのかッ‼︎私たちにも内緒で特攻を命じたマダムが、本当にアツコを助けると思うのか?その時点で、
もうサオリの眼には、手塩にかけて育てた
「う、あああぁぁぁ‼︎」
恐怖に駆られたサオリはとっさに拳銃を構えるが、それは弾丸を回収される事を恐れてそのまま持ち去った壊れたものであるが、アズサはつい身構えて動きを止めてしまい、その隙をついたサオリはありったけの銃弾を叩き込み、半ば狂乱した様子でアズサをストックで殴りつけていた。
何度目かの殴打で、アズサの服からぬいぐるみらしきものが落ち、それを見て漸く幻覚が見えなくなり、自分が殴っていたのがアズサだと気づき、動きを止めたその隙にアズサはその場から逃げていった。
「アズサ…?つまり今まで私はアズサを殴り続けて…?いやそもそもムサシは私が殺したんだいるはずがない、なんで間違えていや間違えてないアイツは私たちを裏切ったんだ何の問題もないそれも全部姫やスクワッドのみんなを守るためなんだ…いやでもアズサもスクワッドのようなものじゃ…?じゃあなんだ?私は仲間を守るために仲間を傷つけて…?」
「リーダー…?」
既に精神的に限界がきているのか、ミサキの問いかけにも答えずブツブツと言葉を発しているサオリだったが、ふとぬいぐるみを見ると不自然な出っ張りが見え、手に取りぬいぐるみの腹を割くと、中にはヘイロー破壊爆弾が顔を覗かせており、サオリはおもわず取りこぼしてしまった。
不味い、と思ったサオリの視界にアツコが入り込んだ次の瞬間……
白い光が、辺りを照らした。
「うぐ……あぁ……!ヒフミ、みんな……ごめん、ごめん……‼︎」
降り頻る雨の中、アズサは膝を抱えて泣きじゃくっていた。
ムサシを撃たれた怒りに駆られて、勉強を頑張っている自分へのご褒美としてぬいぐるみを渡してくれたヒフミの好意を、自分の嘘を信じ、悪用しないと考えてヘイロー破壊爆弾を返してくれた大和の面々の信頼を最悪の形で踏み躙った事と、自分を庇い、育ててくれたサオリを手に掛けてしまったことに対する罪悪感、そしてこんな事をムサシは望んでいないと今になって気づいたアズサの胸中はいっぱいであった。
『そうだアズサ。私はね、爆弾全般が好きだが…人を楽しませられるこの花火という爆弾が、一番好きなんだ』
海に行き、花火を見た時のメリニの言葉が、今となっては酷く重く感じていた。そんな時であった、携帯が震え画面を見るとそのメリニ本人からのメッセージが届いていた。タイミングの良さに思わず驚きついメッセージを開いてしまうが、その文面に目を奪われていた。
《アズサ。これを見ているということは君はヘイロー破壊爆弾を起動したという事だね?そういうプログラムをミズホと協力して組んで置いた。さて、君の精神状態は絶対よろしく無いだろうから端的に言おう。
あのヘイロー破壊爆弾は私が精巧に作った偽物だ。安心したまえ、君は誰も殺してない》
「……え?」
同時刻、いつまで経っても痛みがこない事に気がつき目を開けたサオリは自分に覆い被さっているアツコに気づくもそのアツコも無事なのに違和感を抱き、ヘイロー破壊爆弾のあった方を見ると、バネ付きのプラカードが飛び出しており、それには
『安心したまえ 単なるフラッシュバンだ by有澤メリニ』
と書いてあった。
「有澤メリニ…報告にあった爆破物のスペシャリスト…嵌められたねリーダー」
(いや…あの様子はとても偽物を置いたようには…まさか、メリニ本人が独断で?)
再び場所は変わり、メリニからのメッセージにはまだ続きがあり、元々偽物自体はヘイロー破壊爆弾の解析時に並行して作っていた事、その後の交流でアズサがいざとなれば使うタイプの人物と見抜いたため、彼女の手を汚さないために返却時に偽物を渡したという事であり、決して信用してないからというわけでは無いと書かれていた。
『さて、ここまで読んで疑問に思うだろう?なら本物はどこにあるのかと。アズサ、この前花火を見せた時に、グレネードを間違えて入れたやつがあるといったろう?アレだ。あんな危険な爆弾は処分するに限る。なお、これに関しては完全に私の独断でやってるのであとでムサシ司令官から怒られるかと思うと少々恐ろしいのは内緒だ』
そこまで読むと、アズサは先ほどとは違う涙で画面を濡らしていた。
「メリニ……‼︎ありがとう…ありがとう…!」
しばらく泣いていた彼女であったが、その後涙を拭い取り、立ち上がった。
偽物である以上サオリらは健在であり寧ろおちょくられたと思い激昂してる可能性があるだろう。それに、ユスティナはまだ存在している。彼女らは再び攻め込んでくるのは明白であった。
(だから止めなくてはならない…!でも、今度は殺すんじゃなく、救うことで止めてみせる…‼︎ムサシのやりたかった事は私が成し遂げてみせる…‼︎)
アズサが決意し、行動を開始した後、アビドスのメンバーが途中で拾ったヨウカと共にトリニティに到着したのであった。
ちなみにミカとムサシが交際してる状態で撃たれる、もしくはサオリがヘッドショットしてしまった場合、ミカ*テラーまたは複数生徒がテラー化してバッドエンド確定でした。
サオリのメンタルはかなりガタガタです。復讐しに来た生徒たちの様子を見て本気でムサシは自分らを助けようとしたのを嫌でも理解しましたからね。
そしてメリニ、超絶ファインプレイをかましました。しかしそのためアツコが負傷せずユスティナは弱体化しませんが…それを補えるのがもうすぐ来ますからね。
…周年はセイアしか来ませんでしたし、天井分は悩んだ末にヒナにしました。許さんぞアロナ…!通常ミカが出たけどそれでも許さんぞ…