転生少女は恋も未来も諦めない   作:紅琳檎

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18.風神雷神

[Side:上鳴電気]

 

「「さァ膨れた腹もレクでスッキリした頃だろ!! やっぱり最後はタイマン張るのがいっちばん面白いと思うよなリスナァーーー!?!?」」

 

マイク先生の言葉に、スタジアムは今日一番の絶叫で応える。

反比例するようにステージは冷え切って……いや。

 

「オイオイオイ初戦の轟焦凍と上鳴電気、アイツラまだステージにも上がってねーのにバッチバチだぞオイ!!!」

「えーっと、轟はエンデヴァーの息子で個性は『半燃半冷』、上鳴の方は『帯電』かぁ」

「炎と氷のハイブリッド対電気系個性の対決か……個性だけならここ数年で1番のマッチアップじゃないか?」

「でもなんか雰囲気悪くね?」

 

どろどろとした熱を感じる。

轟のやつ、なんかおかしいような気がすんな。

確かに余裕のないやつではあったけど、でも対人訓練とかUSJのときはこんな感情的じゃなかった。

 

「オイ」

「おっ爆豪! 激励?」

「ンなわけあるか無様に負けろ。 ……いやあんな半分ヤロウには負けんなあとで殺す」

 

いつも思うけどヒーロー志望が言っていいセリフじゃないんだよなぁ。

 

「お前さぁ……まぁいいや、何用?」

「様子が変だ。 エンデヴァーすら轟に何が起きてるのか分かってねぇ。 『普段はぎこちなくともコミュニケーションは取れるし、さっきアイツが出久に話した内容は既に済んだ話で今更蒸し返すようなものじゃない』らしい」

「……異常ではあるんだろうけど、俺に出来ることがあるとは思わねぇよ?」

「ハナから期待してねえわ。 ただ……何かしらの個性の影響の可能性が高い。 早いところ伸して明々ンところ連れてくぞ」

 

珍しくも突き出された拳に、俺も合わせて。

好戦的に歯を見せる笑みで爆豪も俺と戦いたいんだと知って。

 

「爆豪! 決勝で会うぞ!」

「いちいちンなもん、言わんでもわかっとるわ」

 

一層やる気が出た。

 

 

――――――――――

[Side:轟焦凍]

 

「エンデヴァー……親父……!」

 

見ている。

観客席で、珍しく戦闘服じゃない、轟炎司として見ている。

あの憎々しい炎を抑え、まるで一般人のように。

 

「母さんを、兄さんをあんな目に合わせて……踏ん反り返りやがって……!」

 

そうだ、()()()()()()()()()()()()()()()間違いだ。

俺は母さんの、氷結の力だけでヒーローになるんだ。

否定して否定して否定して……この忌まわしい炎(有用な力)を献上するんだ。

 

「両者、ステージへ!」

 

ミッドナイト先生の声でステージへ上がる。

正面には上鳴電気。

使いこなせていない『帯電』なんて相手じゃない。

一瞬で最高出力の氷結に閉じ込めてしまえば、誰にだって勝てる。

トップヒーローだなんだ持て囃されてるオールマイトだって怪我の影響で衰えてるんだから俺の敵じゃない。

全員倒してあの方に、

 

あの方って誰だっけ

 

「おい轟」

 

はっと顔を上げれば、どこか心配そうな表情の上鳴が。

 

「お前、なんか……どうした?」

「うるせぇ」

 

そうだ、早いところ全員倒して、先生に連絡しなきゃ。

遅いよりはもちろん、早いほうがいいだろうし。

 

「轟くん、大丈夫かしら?」

「はい」

「……では第一戦、轟焦凍vs上鳴電気! 開始!!」

 

先手必勝。

一切の情け容赦も無く、全力の氷結を叩きつける。

ステージの2/3、更に場外から客席を這うような大氷結。

プロヒーロー共でも対応できるような代物じゃない。

まぁ電気系統の個性も喜んでもらえるだろうから、凍傷で脚くらいは奪っておこう。

 

「ミッドナイト先生、勝負は付きました」

 

早く全員凍らせなきゃ。

 

「おいおい、初っ端からご挨拶じゃんか」

「……何?」

 

規模と凍結の到達時間からして避けられる攻撃じゃなかった筈。

氷結の影響を一切感じさせない様子で、生み出した氷の上に佇む上鳴はどこか見たことのある笑みを浮かべていた。

 

「流石は推薦組。 とはいえ芸がねぇわ。 お前これ戦闘訓練の時の規模デカくしただけだろ?」

「その程度で十分だと思ったんだけどな」

「んじゃ怠慢だわ。 1ヶ月近く経ってて対応できないんじゃ、天下の雄英高校ヒーロー科の名が廃るってもんよ」

 

研ぎ澄ませ続けたこの力を怠慢と言われ、敵意は殺意に変わった。

再度、大氷結を繰り出すために氷結をコントロールしようとした瞬間。

 

「走雷」

 

バチリ、と、ブラックアウト。

ステージに倒れ込んだ衝撃で意識を取り戻さなければ、気絶したと気付く間もなく負けていただろう。

何が起きたのか全く分からなかった。

 

「うぉっ手加減したとはいえ気絶しねーのはすげーな」

「ぐっ、なに、が」

 

手足が痺れて上手く動けない。

立ち上がれない。

何をされたのかもわからなかった。

 

「単純な話だよ轟。 感電したんだから根性とかじゃ起きらんねぇ」

「ん、だと……!? 感電……!?」

 

かなり距離はあった筈だ、『帯電』の距離感で戦うつもりは一切無かったし、現に近寄らせてもいなかった。

俺は何を見誤った……!?

というより、何を見て、何を考えていた?

()()()()()()()()()()()()()()()!?

 

「どうみても行動不能だけど一応聞いとくわ、降参するか?」

「く、そ……!」

 

こんなところで、何も出来ずに負けるわけにはいかねぇんだ。

今日、この日のために訓練して使えるようになった(親父)氷結(母さん)とで1人前のヒーローになるために。

立て、轟焦凍。

俺は、俺自身を以てして、家族をもういちど繋ぐために。

そう決めたんだろ。

 

「……おぉ……あそこから立つとは思わなかったぜ」

「っ……悪ィな上鳴。 なんか、妙に曇った思考をしてたけど、お前の電撃で目が覚めた」

「目覚めの一撃にしちゃちょっと刺激的だったろ? でもようやく、お互いに本気か?」

「あぁ……待たせたな」

 

さっきの思考の濁りについてはまた後だ。

今の俺はやらなきゃいけないことがある。

轟焦凍のレゾンデートルをこの世界に示す一歩目だ。

痺れて動かないなんて言い訳は今じゃない。

今は吼えろ、親父、エンデヴァーを、オールマイトすら超えるヒーローになるために、覚悟を。

 

「時間はかけねぇ。 互いにデカい一撃で決めよう」

「轟……お前、漢だなァ」

 

身体を巡る炎と氷結を、体の前面でぶつけ合わせ、膨張していく力を更に炎と氷結で包み込むように。

麻痺が抜けない身体では長期戦は不利、だったら……自分の出せる最大火力で短期決戦し回復する。

勝ち進むことを考えるのも戦略の上では大事なことだ。

完成した炸裂寸前の力を撃ち出す瞬間、上鳴と目が合った。

とんでもない量のスパークを纏った上鳴は、とんでもなく楽しそうに笑っていた。

きっと、俺も同じ顔をしてるのだろう。

 

「俺は勝つぞ!! エンデヴァーを、オールマイトを超えて、轟家がみんなで笑い合えるように!!!」

 

炎と氷結で気流を生み、力の通り道を作る!

最早、目の前の上鳴を格下だなんて思っていない。

全力全開だ、死んでくれるな!!

 

「俺だって超えてェ奴らばっかだ!! 轟ぃ!! お前も!!!」

 

水蒸気爆発。

炎を操れるようになった俺の、今の最大限の技。

セメントス先生の壁が何重にも展開されるが、一瞬すら保たない、だが確信があった。

上鳴電気は。

 

 

――――――――――

 

「……」

「あ、起きた」

「……明々」

 

目が覚めれば、知らない天井。

明々がいるってことは救護室、と、いうことは。

 

「負けたのか」

 

敗北した苦々しさは、あまり無い。

自分の限界値を叩き出して負けたから、いっそ清々しさがある。

それに今の自分の現在地点を知れた。

ならば精進するだけだ。

 

「負けたけど内容はとんでもないねぇ。 負けて強し、って言葉通りな感じ」

「でも足りなかった。 上鳴のやつ、あんなに強かったんだな」

「そりゃそうだよ、私が育ててるんだから」

 

ぱちりと目が合う。

そういや、緑谷があれだけ強いのも明々が育成計画を立てたんだっけか。

上鳴も、爆豪もとなれば……。

 

「きみも来るかい、轟焦凍くん」

「いいのか」

「もちろん。 ただ、ちょっときみは検査と事情聴取が必要だから、体育祭の後に少し時間をもらうよ」

「……あぁ、あの思考に靄が掛かったような、変な感じの」

「多分、何かしらの個性の影響のハズなんだよね。 捜査はこれからだけども、多分……精神感応系の個性。 あまりに様子が変だったから」

 

あの妙な、誰かに捧げなければならないという意思。

明確な名称は無いものの、異様な存在感。

 

「何に狙われてかは分からないけど、でも無事でよかったよ」

「あぁ……上鳴には礼をしないと」

 

記憶に残っている、皆に対しての刺々しい発言。

操られているような状態だったとしても、あまりにも……あまりにもな台詞をたくさん吐いてしまった。

友人を作るというのも、まぁ難しいだろう。

 

「邪魔すンぞ」

 

ノックとほぼ同時に扉が開かれた、爆豪だ。

 

「……ンだよ、まだ呆けてんならブッ叩いて治してやろうと思ってたんだが」

「悪ィ、心配かけたか?」

「誰も心配なんてしてねェよ。 俺はちっと様子見に来ただけだ」

 

少し居住まいを正した爆豪は、俺を真正面から見て。

 

「ちゃんと見たか。 見えたか、その目ン玉でよ」

「……ああ。 なんというか、久しぶりにはっきりと見えた。 もう曇ってねぇ」

 

ならいい、と爆豪は踵を返して部屋を出ていこうとする。

その背中に爆豪、と呼び掛ける。

 

「ンだよ」

「今日は戦ってやれなくて悪ィ。 次の時には舐めたこと言わねぇ、全力で闘ろう。 頑張れ」

 

返事はせず、こちらも見ず、扉を開いて止まったままの爆豪は、俺の言葉を聞いてから出ていった。

友達というには少し遠い気がするけど、これからもっと仲良くなれる予感がした。

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